ITパスポート 令和4年度 問51:ITサービスマネジメント・SLAに関する問題
ITサービスマネジメントにおけるSLAに関する次の記述において、a、bに当てはまる語句の組合せとして、適切なものはどれか。 SLAは、[a]と[b]との間で交わされる合意文書である。[a]が期待するサービスの目標値を定量化して合意した上でSLAに明記し、[b]はこれを測定・評価した上でサービスの品質を改善していく。
- aa:経営者 b:システム監査人
- ba:顧客 b:サービスの供給者正答
- ca:システム開発の発注者 b:システム開発の受託者
- da:データの分析者 b:データの提供者
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答えは b「a:顧客 b:サービスの供給者」 です。
SLAは、サービスを「使う人」と「提供する人」が交わす“約束の紙”です。たとえばレストランで「料理は注文から10分以内に出します」と店が約束するようなイメージ。お客さん(顧客)が「これくらいの早さでお願いね」と希望を出し、お店(供給者)がその数字を守り、もっと良くしていきます。
👉 覚え方:SLA=「サービスの品質の約束」。約束するのは“使う側”と“出す側”。
ほかの選択肢:a 監査人=ちゃんとしてるかチェックする人なので当事者ではない/c 開発の発注・受託は『作る側』の話で、運用サービスとは別/d データの分析・提供も今回の主役ではありません。
なぜこれが正解か
正解は b。SLA(Service Level Agreement=サービスレベル合意書)は、ITサービスを受ける『顧客』と提供する『サービスの供給者(サービスプロバイダ)』との間で結ぶ合意文書。顧客が期待するサービス目標値(稼働率・応答時間・復旧時間など)を定量化して明記し、供給者がそれを測定・評価して品質を改善する。
各選択肢の解説
- a:システム監査人は中立的に評価する第三者で、SLAの当事者ではない。
- c:開発の発注者・受託者は『システムを作る契約(請負)』の関係で、稼働後のサービス品質を約束するSLAとは別物。
- d:データの分析者・提供者という組合せはSLAの当事者として不適切。
覚え方・ひっかけ注意
『SLA=顧客 と 供給者 の約束』。cの『発注者・受託者』は開発契約と混同させるひっかけ。SLAは“作る”ではなく“運用サービスの品質”を約束する文書だと区別する。
理論的背景
SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意書)はITIL(IT Infrastructure Library)のサービス設計知識エリアで定義される合意文書であり、正解bの通り「顧客([a])」と「サービスの供給者([b])」の間で締結される。顧客が期待するサービスの質・量・可用性・応答時間などを数値目標として明記し、供給者はそれを継続的に測定・評価・改善する義務を負う。
SLAを構成する主要な要素として以下が挙げられる。①サービスの範囲と除外事項(何が対象で何が対象外か)②可用性目標(稼働率 99.9%等)③パフォーマンス指標(応答時間・スループット)④サポート時間とエスカレーション手順⑤インシデント対応時間(P1障害はRTO 2時間以内等)⑥SLA違反時のペナルティ(サービスクレジット)⑦報告頻度と報告形式⑧変更管理手続き。
SLAは顧客・供給者間の「契約上の合意」であるが、ITIL v4ではさらにOLA(Operational Level Agreement:運用レベル合意)とUC(Underpinning Contract:基礎契約)の概念を追加する。OLAは供給者内部の各チーム間の合意(例:インフラチームとアプリチームの間のサポート時間合意)、UCは供給者と外部委託先の間の契約であり、SLA履行を支えるために3層の合意体系が形成される。
実務での使われ方
クラウドサービスのSLA事例として、Googleクラウドは「Compute Engine SLA:月間稼働率99.99%(月間最大ダウンタイム約4.3分)」を保証し、違反時には10〜50%のサービスクレジットを返還する。AWSのEC2 SLAは「月間稼働率99.99%未満の場合10%、95%未満で30%のクレジット」という段階的ペナルティ構造を採用している。日本の企業システムでは国内SIer(NTTデータ・富士通・NEC等)との契約でも24時間365日サポート・インシデント応答4時間以内といったSLA条件が標準化されている。
SLAの定量指標として実務でよく使われるものに以下がある。MTBF(平均故障間隔)=稼働時間÷故障回数、MTTR(平均修復時間)=総修復時間÷故障回数、可用性(Availability)=MTBF÷(MTBF+MTTR)×100(%)。これらをSLAの数値目標として設定し、月次または四半期のサービスレビュー(ITIL:サービスレビューミーティング)で実績と照合して改善アクションを議論する。
試験での位置づけ
ITパスポートのITサービスマネジメント・SLA分野では、SLAの当事者(顧客×供給者)の識別が最頻出ポイントである。選択肢aの「経営者×システム監査人」は内部統制・システム監査の文脈の組み合わせであってSLA当事者ではない。選択肢cの「発注者×受託者」はシステム開発契約(請負・準委任)の当事者であり、SLAではなくSoW(Statement of Work:作業範囲記述書)や開発契約書の当事者である点でSLAと混同しやすいが区別が必要である。選択肢dは全く異なる組み合わせである。
基本情報技術者(FE)・ITサービスマネージャ試験(SM)では、OLA・UCとSLAの3層体系、SLA違反の検出とペナルティ計算、可用性・MTBF・MTTRの計算問題、SLAとSLA管理(SLAM:SLA Monitoring)の違いまで詳細に問われる。クラウド利用が普及した現在では「クラウドSLAの解釈・交渉」が情報システム担当者の必須スキルとして重要性を増している。
選択肢の発展補足
選択肢aの「経営者とシステム監査人」の組み合わせは、システム監査の文脈では「被監査部門(経営者・IT部門)と監査人の関係」として登場する。監査人は経営者から独立した立場で監査を実施するため、SLAのような双方向の合意文書を締結する関係にはない。独立性の確保がシステム監査の要件であり、監査人が被監査部門とサービス品質を合意するというモデルは監査の独立性を損なう。
選択肢cの「発注者と受託者」はSLAとよく混同される概念で整理が必要である。SLAは「継続的なサービス提供」に関する合意で、運用フェーズに主眼がある。一方、発注者・受託者間の「システム開発契約」は開発フェーズの成果物・品質・納期・代金を定めるものであり、請負契約(完成物引渡義務あり)または準委任契約(作業提供義務・成果物なし)の形を取る。開発完了後の保守・運用に移行した段階でSLAが締結されるケースが多く、両者は時系列的に連続する別の合意文書である。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和4年度 問51/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。