ITパスポート 令和4年度 問55:情報セキュリティ・セキュリティ基準に関する問題
情報セキュリティにおけるPCI DSSの説明として、適切なものはどれか。
- aクレジットカード情報を取り扱う事業者に求められるセキュリティ基準正答
- bコンピュータなどに内蔵されるセキュリティ関連の処理を行う半導体チップ
- cコンピュータやネットワークのセキュリティ事故に対応する組織
- dサーバやネットワークの通信を監視し、不正なアクセスを検知して攻撃を防ぐシステム
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答えは a「クレジットカード情報を取り扱う事業者に求められるセキュリティ基準」 です。
PCI DSSは、クレジットカードの番号など“大事なお金の情報”をあつかうお店や会社が『これだけは守ってね』というルール集のことです。カード情報が漏れたら大変なので、世界共通の決まりがあるんですね。
👉 覚え方:PCIの『C』=Card(カード)。カードを守るルール、と覚える。
ほかの選択肢:b セキュリティ用の小さな部品(チップ)の話/c 事故が起きたとき対応するチーム(CSIRTのこと)/d 怪しい通信を見張って攻撃を防ぐ機械(IPSのこと)。どれもカードのルールではありません。
なぜこれが正解か
正解は a。PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は、クレジットカード会員データを安全に取り扱うために、加盟店・決済代行など『カード情報を扱う事業者』が遵守すべき国際的なセキュリティ基準。カードブランド各社が共同で策定している。
各選択肢の解説
- b:『セキュリティ処理を行う半導体チップ』はセキュリティチップ(TPM等)の説明。
- c:『セキュリティ事故に対応する組織』はCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の説明。
- d:『通信を監視し不正アクセスを検知して攻撃を防ぐシステム』はIPS(侵入防止システム)の説明。
覚え方・ひっかけ注意
『PCI DSS=カード(Payment Card)の情報を守る基準』。Cが“Card”だと覚えると、b(チップ)・c(CSIRT)・d(IPS)と取り違えにくい。略語の中身を分解するのがひっかけ回避のコツ。
理論的背景
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard:ペイメントカード業界データセキュリティ基準)は、正解aの通り「クレジットカード情報を取り扱う事業者に求められるセキュリティ基準」である。2004年にVisa・MasterCard・American Express・Discover・JCBの5大カードブランドが共同設立したPCI SSC(PCI Security Standards Council)によって策定・維持管理されており、カード会員データの保護を目的とした業界自主規制として機能している。
PCI DSS v4.0(2022年3月公開・2024年3月よりv3.2.1を完全置換)は以下の6つの目標・12の要件で構成される。①安全なネットワークとシステムの構築・維持(要件1:ネットワークセキュリティ管理策、要件2:デフォルト設定の変更)②カード会員データの保護(要件3:データの保存・保護、要件4:転送中の暗号化)③脆弱性管理プログラムの維持(要件5:マルウェア対策、要件6:セキュアな開発)④強固なアクセス制御の実装(要件7:必要最小限のアクセス制御、要件8:ID管理・認証、要件9:物理アクセス制限)⑤ネットワークの定期的な監視とテスト(要件10:アクセスログの監視、要件11:セキュリティのテスト)⑥情報セキュリティポリシーの維持(要件12:組織的なセキュリティポリシー)。
実務での使われ方
PCI DSSの適用範囲(スコープ)はカード会員データを「保存・処理・伝送」する全てのシステムコンポーネントに及ぶ。準拠要件はトランザクション件数や事業者の形態によってLevel 1〜4に分類され、Level 1(年間600万件以上)は第三者のQSA(Qualified Security Assessor:認定セキュリティ評価機関)による年次現地審査が必須となる。中小事業者(Level 2〜4)はSAQ(Self-Assessment Questionnaire:自己評価アンケート)で準拠確認を行う。
スコープを最小化する技術的手法として「トークナイゼーション」が広く採用されている。実際のクレジットカード番号(PAN:Primary Account Number)をランダムな代替値(トークン)に置き換えて処理することで、加盟店のシステム内にPANが存在しない状態を作り出しPCI DSSスコープを大幅に縮小できる。SquareやStripeなどの決済代行サービスもカード情報を自社のPCI DSS準拠環境で処理し、加盟店には取引IDのみを返すトークン方式を採用している。
試験での位置づけ
ITパスポートの情報セキュリティ基準分野で、PCI DSSはISMS(ISO/IEC 27001)・SOC2・NIST CSFなどの他のセキュリティ基準と対比して出題される。本問の核心は「PCI DSS=クレジットカード業界特有の業界標準」という識別であり、選択肢b(セキュリティチップ:TPMの説明)・選択肢c(CSIRT等のセキュリティ対応組織の説明)・選択肢d(IDS/IPS:侵入検知・防止システムの説明)と明確に区別することが求められる。
基本情報技術者(FE)では、PCI DSS・ISMS・SOC2・FISMA・GDPRなどの主要なセキュリティ・プライバシー基準の適用対象と目的の識別が問われる。情報処理安全確保支援士(SC)ではPCI DSSの技術的要件(暗号化強度・脆弱性スキャン頻度・ペネトレーションテスト周期等)の詳細まで試験範囲に含まれる。
選択肢の発展補足
選択肢bの「コンピュータなどに内蔵されるセキュリティ関連の処理を行う半導体チップ」はTPM(Trusted Platform Module)の説明である。TPMはISO/IEC 11889で標準化されたセキュリティチップで、暗号鍵の生成・保管・演算を安全な独立した環境で実行する。BitLocker(Windows)・FileVault(macOS)の暗号化キー管理や、BootのIntegrity確認(Secure Boot)に使われる。TPM 2.0はWindows 11の必須要件となり一般に広く知られるようになった。
選択肢cの「コンピュータやネットワークのセキュリティ事故に対応する組織」はCSIRT(Computer Security Incident Response Team:シーサート)またはSOC(Security Operations Center)の説明である。CSIRTは組織内・政府機関・業界横断で設置され、インシデント検知・分析・対応・情報共有を担う。日本では各企業のCSIRT連携組織NCA(日本CSIRT協議会)や政府機関のNICST(内閣サイバーセキュリティセンター)などが活動している。
選択肢dの「サーバやネットワークの通信を監視し、不正なアクセスを検知して攻撃を防ぐシステム」はIDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)+IPS(Intrusion Prevention System:侵入防止システム)の説明である。IDSは検知のみ、IPSは検知と自動ブロックを行う点で異なる。ネットワーク型(NIDS/NIPS)とホスト型(HIDS/HIPS)に分類され、Snort・Suricata(オープンソース)やPalo Alto NGFWなどが代表的な製品である。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和4年度 問55/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。