ITパスポート 令和4年度 問54:ITサービスマネジメント・サービスデスクに関する問題
顧客からの電話による問合せに対応しているサービスデスクが、次のようなオペレータ支援システムを導入した。このシステム導入で期待できる効果a〜cのうち、適切なものだけを全て挙げたものはどれか。 顧客とオペレータの会話をシステムが認識し、瞬時に知識データベースと照合、次に確認すべき事項や最適な回答の候補をオペレータのディスプレイに表示する。 a 経験の浅いオペレータでも最適な回答候補を基に顧客対応することができるので、オペレータによる対応のばらつきを抑えることができる。 b 顧客の用件を自動的に把握して回答するので、電話による問合せに24時間対応することができる。 c 対応に必要な情報をオペレータが探す必要がなくなるので、個々の顧客対応時間を短縮することができる。
- aa、b
- ba、b、c
- ca、c正答
- db、c
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答えは c「a、c」 です。
このシステムは、電話中の会話を聞き取って『次に聞くこと』や『答えの候補』を画面に出してくれる“カンペ表示マシン”です。あくまでオペレーター(人)を助ける道具。
・a 新人でもカンペがあるから対応がバラつかない ◯
・c 答えを探さなくていいから対応が速くなる ◯
でも b の『24時間自動で答える』はムリ。だって人(オペレーター)が電話に出る仕組みのままだから、人がいない時間は対応できません。
👉 覚え方:これは“人を助けるカンペ”であって“無人で答えるロボット”ではない。
なぜこれが正解か
正解は c(a、c)。このシステムは会話を認識して知識データベースと照合し、回答候補を“オペレーターの画面に表示”する支援ツール。最終的に顧客対応するのは人のオペレーターである点がポイント。
- a:回答候補が提示されるため、経験の浅いオペレーターでも一定品質で対応でき、対応のばらつきを抑えられる。○
- c:情報を探す手間が省け、1件あたりの対応時間を短縮できる。○
各選択肢の解説
- b:『顧客の用件を自動的に把握して回答するので24時間対応できる』は誤り。システムは回答候補を“表示”するだけで、実際に応対するのは人のオペレーター。オペレーターが不在の時間帯は対応できないため、24時間対応の根拠にならない。
覚え方・ひっかけ注意
キーワードは『オペレーターのディスプレイに表示』=人が介在する支援システム。bのように“自動応答・無人化・24時間”へ拡大解釈させるのが典型ひっかけ。仕様に書いていない効果を選ばないこと。
理論的背景
本問のオペレータ支援システムは「NLP(自然言語処理)+知識ベース参照によるリアルタイム回答候補提示」を組み合わせた「次世代サービスデスク支援技術」の典型例である。正解c(a, c)の根拠は、このシステムが「オペレータが回答を選択・使用する」前提で設計されており、「顧客との通話は継続中」であることから自動応答ではなく人間補助型(Augmented Intelligence)であることにある。
効果aが成立する根拠:知識DBとの照合・回答候補提示により、経験豊富なオペレータが持つ暗黙知をシステムが補完するため、初心者でも熟練者に近い回答品質が実現できる。オペレータ間のスキル差(知識量・経験年数・訓練度の違い)が解消されることで、サービス品質のばらつき(variance)が統計的に減少する。これは品質管理でいう「特殊原因変動の低減」に相当する。
効果cが成立する根拠:従来のフロー(顧客が問い合わせる→オペレータが内容を理解→マニュアル・FAQを手動検索→回答を組み立てる)の「手動検索工程」が自動化されることで、AHT(Average Handle Time:平均通話処理時間)が短縮される。
効果bが成立しない根拠:このシステムはオペレータを補助するシステムであり、顧客との電話通話に対して「オペレータが応対している」前提が変わらない。24時間対応のためには人間オペレータの夜間勤務体制が別途必要であり、システム単体での自動応答・電話応答にはなっていない。自動完結型のチャットボット・IVR(Interactive Voice Response)とは本質的に異なる点がポイントである。
実務での使われ方
オペレータ支援AIの代表的な商用製品として、Amazon Connect(AWSのコンタクトセンターサービス)のAgent Assist機能、Google CCAI(Contact Center AI)のAgent Assist、Salesforce Einstein for Service Cloudなどが企業のコールセンターに広く導入されている。これらは通話のリアルタイム文字起こし(STT:Speech to Text)→インテント分類→KB検索→回答候補提示という処理を数百ミリ秒の遅延で実行する。
コールセンターのKPI(重要業績評価指標)として主要なものに以下がある。①FCR(First Contact Resolution Rate:一次解決率):初回の問い合わせで解決できた割合(高いほど顧客満足度が高い)。②AHT(Average Handle Time:平均処理時間):問い合わせから解決・クローズまでの平均時間。③CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)。④NPS(Net Promoter Score):顧客のロイヤリティ指標。AI支援導入でFCR・AHTの改善が期待される一方、overbotなどのAI過信リスクへの対応も実務上の課題となっている。
試験での位置づけ
ITパスポートのITサービスマネジメント・AI活用分野では、「AIが何を自動化できるか・何を自動化できないか」という境界の識別が近年の重要テーマである。本問では「オペレータが応対する前提は変わらないため24時間対応(b)は実現されない」という論理的推論が求められており、AIシステムの機能範囲を正確に理解しているかを問う良質な問題である。
基本情報技術者(FE)では、AI・機械学習のビジネス適用として「自動化が適する業務(定型・反復・大量データ処理)」と「人間が担うべき業務(判断・創造・倫理・例外処理)」の区別が問われる。情報セキュリティマネジメント試験(SG)ではサービスデスクの組織形態(ローカル・セントラル・バーチャル)と本問のような技術支援の組み合わせが出題される。
選択肢の発展補足
効果bの「電話問い合わせに24時間対応」は、本問のシステムではなく「完全自動応答型IVR(Interactive Voice Response)」または「AIチャットボット」が実現する機能である。IVRはDTMF(プッシュボタン)またはSR(音声認識)によって顧客の意図を自動判定し、あらかじめ録音された音声またはTTS(Text to Speech)で応答する。大手銀行・航空会社・電力会社の問い合わせ窓口ではIVRによる24時間自動対応が標準化されており、よくある問い合わせ(残高照会・フライト情報・停電情報)は完全自動化されている。
効果aの「対応のばらつきを抑える」は統計的観点から「分散低減」として捉えることができる。知識ベースが均質な回答候補を全オペレータに提供することで、オペレータAとオペレータBの回答品質の差(ばらつき)が縮小する。これはシックスシグマの「プロセス改善(ばらつきの低減)」という考え方とも一致し、サービス品質管理の本質的な課題である「人に依存しない一貫した品質の実現」を技術で解決するアプローチである。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和4年度 問54/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。