ITパスポート 令和5年度 問44:service_managementに関する問題
A社のIT部門では,ヘルプデスクのサービス可用性の向上を図るために,対応時間を24時間に拡大することを検討している。ヘルプデスク業務をA社から受託しているB社は,これを実現するためにチャットボットをB社に導入して活用することによって,深夜時間帯は自動応答で対応する旨を提案したところ,A社は24時間対応が可能であるのでこれに合意した。この合意に用いる文書として,最も適切なものはどれか。
- aBCP
- bNDA
- cSLA正答
- dSLM
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答えは c「SLA」 です。
SLAは「このくらいのサービスを提供しますよ」という“約束の品質を書いた契約書”です。今回は「24時間対応しますね」という品質レベルの約束なので、SLAがぴったりです。
👉 覚え方:SLA=Service Level Agreement=「サービスの“レベル(品質)”の合意」。
ほかの選択肢:
- a BCP=災害などで止まっても事業を続けるための計画。
- b NDA=「秘密を漏らしません」という秘密保持の約束。
- d SLM=SLAの約束を守れているか管理し続ける“活動・しくみ”(文書ではない)。
「合意に用いる文書」を聞かれているので、品質を約束する文書 c が正解です。
なぜこれが正解か
正解は c(SLA)。SLA(Service Level Agreement/サービスレベル合意書)は、提供するサービスの品質水準(稼働率・対応時間・応答時間など)を提供者と利用者の間で取り決める文書。本問は「ヘルプデスクを24時間対応にする」というサービス品質レベルの合意なので、その内容を定める文書はSLAが最適。
各選択肢の解説
- a BCP(事業継続計画):災害・障害時にも事業を継続/早期復旧するための計画。品質合意の文書ではない。
- b NDA(秘密保持契約):機密情報を第三者に漏らさない約束。サービス品質とは無関係。
- d SLM(サービスレベル管理):SLAで定めた水準を維持・改善し続ける“管理活動(プロセス)”。文書名ではない。
覚え方・ひっかけ注意
SLA=文書(合意書)、SLM=それを回す活動と峻別するのが最大のポイント。「合意に用いる文書」と問われたらSLA。SLAとSLMはほぼ毎回ペアで出るひっかけなので、文書か活動かで切り分ける。
理論的背景
SLA(Service Level Agreement=サービスレベル合意書)はITSM(IT Service Management)における重要な合意文書であり、ITサービス提供者と利用者の間でサービス品質水準を定量的に定義・合意するものである。ITIL v4ではSLAは「サービスプロバイダーと顧客間の合意文書であり、サービスの目標値と双方の責任を定めるもの」として位置づけられている。SLAに記載される代表的な項目には、サービス可用性(稼働率・サービス提供時間帯)・インシデント応答時間・解決時間・性能(応答速度・スループット)・サポート対応時間帯などが含まれる。
本問の「ヘルプデスクを24時間対応に拡大する」というサービス品質水準の変更は、まさにSLAで定義・合意される「サービス提供時間帯」の変更に相当する。チャットボットによる深夜自動応答という手段の実装詳細よりも、「24時間対応可能か否か」というサービスレベルとしての成果がSLAの規定対象となる。A社(利用者)とB社(受託者)がこのレベルを合意するための文書がSLAである。
SLAの測定・管理・改善を行うプロセスがSLM(Service Level Management)であり、SLAが「文書・合意」であるのに対しSLMは「継続的な管理活動・プロセス」という本質的な違いがある。この区別が本問の最重要論点である。
実務での使われ方
実務のSLA策定では、合意した水準を客観的に測定できるKPI(重要業績評価指標)として定義することが不可欠である。「24時間対応」であれば、実際に24時間以内(深夜帯含む)に自動応答または有人対応が提供されているかを、システムログ・応答時刻の記録で検証できる形で定める。稼働率であれば「月間99.9%以上(月間ダウンタイム約43分以内)」のように数値化する。
SLAの三層構造も実務の重要な知識である。①顧客向けSLA(Customer SLA):利用者とITサービス提供者間。②OLA(Operational Level Agreement):サービス提供者内部の部門間の合意(B社がチャットボット運用チームと24時間対応について内部合意する場合)。③UC(Underpinning Contract):外部委託先との契約(チャットボットSaaSプロバイダーとの契約)。顧客向けSLAはこれらUCとOLAによって裏打ちされる構造になっており、SLAの目標値を確実に達成するためには下位合意・契約の整合が必須となる。
試験での位置づけ
ITパスポートのマネジメント系・サービスマネジメント分野でSLA・SLMは最頻出テーマの一つであり、ほぼ毎回何らかの形で出題される。「SLAは文書(合意書)、SLMは活動(プロセス)」という区別を確実に把握していることが正答の絶対条件である。さらに、BCP(事業継続計画)・NDA(秘密保持契約)・SLAという異なる目的の文書を同じ選択肢に並べて目的・用途の区別を問う問題も頻出パターンである。
稼働率計算(MTBF・MTTR・可用性の計算)とSLAの組合せ問題も出題される。稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)という公式と、稼働率99.9%が月間ダウンタイム約43分、99.99%が約4.4分を意味するという具体的な数値感覚も押さえておくと有効である。
選択肢の発展補足
BCP(Business Continuity Plan・選択肢a):自然災害・大規模障害・サイバー攻撃などの緊急事態が発生した際に事業を継続し、または早期に復旧するための事前計画。RTO(目標復旧時間)・RPO(目標復旧時点)などの目標値を設定し、バックアップサイト・代替手段・連絡体制を定める。通常の運用品質を定めるSLAとは目的・対象シナリオが異なる。
NDA(Non-Disclosure Agreement・秘密保持契約・選択肢b):契約当事者間で共有した機密情報を第三者に開示しないことを約束する契約。ベンダー選定プロセスや共同開発、M&A検討時などで締結される。本問のようなサービス品質レベルの合意には使われない。
SLM(Service Level Management・選択肢d):SLAで定めた目標値が実際に達成されているかを継続的にモニタリング・評価し、達成できていない場合は改善策を講じ、定期的なサービスレビューでSLAの見直しを行う管理プロセス全体を指す。「文書として合意に使う」ものではなく、「合意後の維持・改善活動」である。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和5年度 問44/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。