登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問5:医薬品に共通する特性と基本的な知識
小児(特に乳幼児)への医薬品使用に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア乳幼児は体重が成人より少ないため、成人の1日量を体重に比例して単純換算すれば適切な小児用量が得られる。正答
- イ小児は肝機能・腎機能が未発達であるため、医薬品の代謝・排泄が成人と異なり、薬物が体内に蓄積するリスクがある。
- ウ小児は成人と比較して、医薬品が体重あたりの量として過量になりやすく、特に乳児では注意が必要である。
- エ家庭内での誤飲事故を防ぐため、小児の手の届く場所への医薬品保管は避ける必要がある。
- オ小児の医薬品使用では、保護者が添付文書の用法・用量を確認し、「子供の使用は相談すること」の記載がある場合は専門家に相談することが求められる。
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正答はア(誤っているもの)です。
小児の適切な投与量は、単純な体重換算では求められません。小児は代謝・排泄機能が未発達で、成人と同じ薬物動態を示しません。特に新生児・乳児では体内水分量の割合・タンパク質結合・酵素活性が成人と大きく異なります。
イは正しい。小児では肝臓のCYP酵素や腎機能の発達が未完成なため、薬物が成人より長く体内に残ることがあります。ウは正しく、体重が小さい分、同じ量でも体重比で過量になりやすいという実態を正確に述べています。エ・オは保護者への注意と添付文書確認という基本的な安全確保手順を正しく述べています。
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): 小児の投与量を「体重比例の単純換算」で算出するのは誤りです。小児は代謝酵素(CYP系)の発達段階・体内水分割合・血液脳関門の成熟度・タンパク結合率が成人と大きく異なります。単純な体重換算は過量または過少投与につながるリスクがあり、小児向けに開発・試験された用量設定(添付文書の小児用量)に従うことが必要です。
- イ(正): 新生児・乳幼児では、肝臓のCYP酵素系・グルクロン酸転移酵素(抱合系)・腎臓の糸球体ろ過機能が成人に比べて発達途上です。これにより薬物の代謝・排泄が遅延し、血中に薬物が蓄積しやすくなります。半減期が長くなる結果として副作用リスクが高まります。
- ウ(正): 体重が小さいほど、「単位体重あたりの薬物量」が同じ絶対量でも大きくなります。成人向け製品を小児が誤飲・使用した場合に過量となりやすく、特に生後3ヶ月未満の乳児は特段の注意が必要です。
- エ(正): 小児の誤飲事故は家庭内での医薬品保管不備が主な原因です。チャイルドレジスタンス包装(子どもが開けにくいキャップ等)の普及が進んでいますが、薬は子供の手の届かない場所・視界に入らない場所に保管することが基本原則です。
- オ(正): 添付文書に「15歳未満は使用しないこと」「医師・薬剤師・登録販売者に相談すること」等の記載がある場合、保護者は必ずその指示に従い、専門家に確認してから使用することが求められます。
【小児の薬物動態の特殊性:発達段階による変化】
小児は均質な集団ではなく、成長段階によって薬物動態が大きく変化します。
年齢区分(手引きの定義参考):
- 新生児(出生後4週未満)
- 乳児(1歳未満)
- 幼児(1〜7歳未満)
- 小児(7〜15歳未満)
各段階での薬物動態の特徴:
1. 吸収
- 胃のpHが成人より高い(胃酸分泌少ない)ため、酸性薬物の吸収が変化する
- 消化管の蠕動運動が不規則で、薬物の吸収速度が予測しにくい
- 皮膚の角質層が薄く、経皮吸収が成人より高い(外用薬でも全身への影響が出やすい)
2. 分布
- 体内水分割合が成人より高い(新生児約75%、成人約60%)→水溶性薬物の分布容積が大きい
- 血漿タンパク(アルブミン等)濃度が低い→遊離型薬物の割合が高い→薬効・副作用が増強されやすい
- 血液脳関門が未発達→中枢神経系への薬物透過が成人より容易→中枢作用が強く出やすい
3. 代謝
- 肝臓のCYP酵素の発達は年齢依存的(CYP3A4は生後1年で成人レベルに近づくが新生児期はほぼゼロ)
- グルクロン酸抱合系(Phase II代謝)も未発達→抱合による不活化が遅延
- クロラムフェニコールの「グレーベイビー症候群」はグルクロン酸抱合不全による蓄積毒性の典型例(OTCとは無関係だが小児薬物動態の教訓として重要)
4. 排泄
- 腎臓の糸球体ろ過速度(GFR)は生後1〜2年で成人値に達するが、それまでは低い
- 尿細管分泌・再吸収機能も発達途上
- 結果として腎排泄型薬物の半減期が延長→蓄積リスク
【「体重換算」の限界と実際の小児用量設定】
体重比換算(mg/kg)は最も基本的な算出方法ですが、それだけでは不十分です:
- 体表面積換算(mg/m²): 体重換算より生理機能に近い(成人との比較で用いられる)
- 成熟度考慮: 在胎週数・出生後週数により薬物動態が異なるため、早産児・低出生体重児はさらに別の考慮が必要
- 小児用製剤の必要性: 成人用製剤を分割・粉砕して使う場合、均一性(同一成分量)・安定性(分解・吸湿)の問題が生じる
登録販売者として認識すべき実務ポイント:
- 添付文書に「小児の用量」が明記されていない場合は、その薬を小児に使用すべきでない
- 「子供の体重にあわせて減らせばいい」という判断は危険
- 保護者への説明は「添付文書の確認と専門家への相談」を軸に行う
- 5歳未満はOTC薬のリスクが特に高く、受診勧奨が最優先される場合が多い
【チャイルドレジスタンス包装と保管管理の重要性】
誤飲事故予防の観点から、医薬品の保管管理は安全性の一部です:
- 子どもは視覚的に魅力的な錠剤・カプセルをお菓子と誤認することがある
- 使用後の容器を適切に処分すること
- 大量包装より使い切りサイズを選ぶことで誤飲リスクを低減できる
【試験での位置づけ】
「小児の用量は体重に単純比例する」という誤記述は頻出ダミーです。「単純比例で求められない」「代謝・排泄機能が未発達」「添付文書の小児用量に従う」の3点を確実に押さえてください。また年齢区分(新生児・乳児・幼児・小児)の定義も問われることがあります。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章第3節・第4節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 小児への配慮を手引きと突合。①小児の用量は単純な体重比例換算で求められない(代謝・排泄機能が未発達)が核心で、設問ア「体重に比例した単純換算で適切な小児用量が得られる」は明白な誤り→正答アは一意に確定。②手引きの年齢区分(新生児=生後4週未満、乳児=1歳未満、幼児=7歳未満、小児=15歳未満)と本文記述が整合。③小児は肝・腎機能未発達で薬物が蓄積しやすい、誤飲防止のため手の届かない場所に保管、添付文書の小児用量・相談記載に従う、はいずれも正確。④CYP発達時期・グレーベイビー症候群はOTC無関係と明記済みの教育的補足で正答判定に影響なし。設問・正答の事実誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第4節「医薬品の適正使用と安全対策」、第3節「適切な医薬品選択と受診勧奨」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。