登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問6:医薬品に共通する特性と基本的な知識
高齢者・妊婦・授乳婦への医薬品使用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**の組合せはどれか。 - ア. 高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、複数の薬を服用している場合、新たに一般用医薬品を追加する際はその相互作用に注意が必要である。 - イ. 妊婦への医薬品使用は、妊娠初期(器官形成期)よりも妊娠後期の方が胎児への影響が大きいため、後期に特に注意する必要がある。 - ウ. 授乳婦が医薬品を服用した場合、薬物成分が母乳中に移行して乳児に影響を及ぼす可能性があるため、添付文書の記載を確認することが重要である。 - エ. 高齢者は腎臓・肝臓の機能が低下している場合が多く、薬物の代謝・排泄が遅延して副作用が強く出る可能性がある。 - オ. 妊婦は一般用医薬品を服用しても胎児への影響は確認されていないため、自己判断で使用してよい。
- 1ア・イ
- 2イ・オ
- 3ア・ウ・エ正答
- 4ウ・エ・オ
- 5ア・イ・ウ
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正答は3(ア・ウ・エが正しい)です。
アは正しい。高齢者は複数の持病・薬を抱えることが多く、新たなOTC薬との相互作用チェックが必要です。ウは正しい。授乳中の薬物は母乳に移行する成分があり、乳児に影響を与えることがあります。エは正しく、高齢者は腎・肝機能低下で薬物が排泄されにくく副作用が出やすくなります。
イは誤りです。胎児への薬物影響が最も懸念されるのは妊娠初期(器官形成期・約4〜12週)であり、後期より初期の方が重要です。オは誤りで、妊婦は自己判断でOTC薬を服用してはならず、医師・薬剤師・登録販売者への相談が必須です。
各記述の解説:
- ア(正): 高齢者はポリファーマシー(多剤服用)が問題となりやすく、処方薬と一般用医薬品・サプリメントの組み合わせで相互作用が生じることがあります。「今どんな薬を飲んでいますか」の一言が重大事故防止になります。
- イ(誤): 胎児への薬物影響は「妊娠初期(器官形成期)」が最も大きいのが一般的です。心臓・四肢・中枢神経系などの主要臓器が形成される妊娠初期(受精後3〜8週・妊娠5〜10週相当)に薬物が作用すると、形態的奇形(催奇形性)のリスクが高まります。ただし、妊娠後期にも胎児の成長・機能発達(肺・腎機能等)への影響が問題になる薬物があるため「後期は関係ない」も誤りです。
- ウ(正): 多くの薬物成分は脂溶性・分子量等の性質に応じて母乳中に移行します。乳児は肝機能・腎機能が未発達なため、母乳経由で摂取した薬物が長時間体内に残る可能性があります。添付文書の「授乳婦への注意事項」を必ず確認し、「授乳中は服用しないか服用中は授乳を避けること」の指示がある場合は厳守します。
- エ(正): 高齢者では加齢に伴い腎・肝機能が低下し、薬物の代謝・排泄が遅くなることで血中濃度が長く維持されます。結果として副作用(転倒誘発性の眠気・低血圧・消化器症状等)が強く出やすくなります。また高齢者は個体差が大きく、同じ年齢でも機能差が著しい点も考慮が必要です。
- オ(誤): 妊婦は絶対に自己判断でOTC薬を服用してはいけません。多くの薬物は胎盤を通過して胎児に影響を与える可能性があり、OTC薬にも「妊婦または妊娠していると思われる方は服用しないこと・医師に相談すること」の記載があります。添付文書の確認と専門家への相談が必須です。
【妊婦への薬物リスク:胎児の発達段階と薬物影響の時期依存性】
薬物の胎児への影響は、投与時期・薬物の性質・投与量によって大きく異なります。
発達段階と薬物影響の関係:
- 受精〜着床前(0〜2週): 「全か無かの法則(all-or-none effect)」が適用される時期。この時期の薬物曝露は流産(影響があれば)または影響なし(生き延びれば正常)という二択に近いと考えられています。
- 器官形成期(3〜8週・妊娠5〜10週): 心臓・脳・四肢・眼・耳などの主要臓器が形成される最重要期。催奇形性リスクが最大。サリドマイドが典型例で、妊娠4〜9週に服用すると四肢形成不全(アザラシ肢症)等の重篤な奇形が生じました。
- 胎児期(9週〜出産): 臓器の成長・機能の成熟が進む。形態的奇形は起こりにくくなるが、機能的奇形(知的発達・性分化異常等)や胎児毒性のリスクは続く。特に妊娠後期のNSAIDs(イブプロフェン等)は動脈管収縮・羊水量減少のリスクが報告されています。
【薬物の胎盤通過とリスク評価】
胎盤は薬物の「完全なバリア」ではありません。多くの薬物が胎盤を通過して胎児循環に入ります。通過しやすい薬物の特性:
- 脂溶性が高い
- 分子量が低い(500〜600Da以下)
- タンパク結合率が低い(遊離型が多い)
- 非イオン化型(中性)
特定のOTC成分の妊婦禁忌例(手引き記載内容の確認が必要):
- アスピリン(妊娠後期): 動脈管早期閉鎖リスク
- イブプロフェン(妊娠後期): 同上
- ダイオウ・センナ含有漢方: 腸管への刺激・子宮収縮誘発の可能性
【高齢者の薬物動態変化と実務への影響】
加齢による薬物動態の変化:
1. 吸収: 胃酸分泌減少・腸管運動低下→一部薬物の吸収に影響するが大きな問題になることは少ない
2. 分布: 筋肉量低下・体脂肪増加→水溶性薬物の分布容積が減少(血中濃度上昇)、脂溶性薬物の分布容積が増大(蓄積)
3. 代謝: 肝血流量・肝細胞数・CYP酵素活性の低下→代謝速度低下→血中濃度上昇・半減期延長
4. 排泄: GFR(糸球体ろ過速度)は20歳以降に年率約1%低下→70歳で成人値の50〜70%→腎排泄型薬物の蓄積
実務での対応:
- 高齢者への販売時は「現在服用中の薬(処方薬を含む)」「腎臓・肝臓の病気の有無」を確認
- 転倒リスク:眠気・めまい・低血圧を起こす薬(第1世代抗ヒスタミン薬・血圧降下薬等)は高齢者の骨折・転倒の誘因になりうる
- 認知機能への影響:抗コリン作用のある薬物(第1世代抗ヒスタミン薬等)は認知機能低下・せん妄誘発のリスク
【授乳婦への対応の実務ポイント】
薬物の母乳への移行量は「乳汁/血漿比(M/P比)」と「相対的乳児投与量(RID)」で評価されます。RID<10%が一般的な安全性の目安とされますが、OTC薬の添付文書に「授乳中は服用しないこと」または「服用中は授乳を避けること」と記載されている場合は、その指示に従うことが優先されます。
【試験での位置づけ】
「妊娠初期より後期の方が影響大」という誤記述は典型ダミー。器官形成期(妊娠初期)が最重要という正確な知識が必要です。高齢者・妊婦・授乳婦の三者を一問で問うパターンも多く、それぞれの特性の組み合わせ正誤問題として出ることを想定して準備してください。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章第4節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 高齢者・妊婦・授乳婦への配慮を手引き・標準発生学と突合。①胎児への薬物影響が最も懸念されるのは妊娠初期(器官形成期)であり、設問イ「妊娠後期の方が初期より影響が大きい」は明白な誤り。高齢者の相互作用注意(ア=正)、薬物の母乳移行(ウ=正)、高齢者の腎肝機能低下による副作用増強(エ=正)、妊婦の自己判断使用は不可(オ=誤)。よって正しい組合せ=ア・ウ・エで正答3は一意に確定。②「全か無かの法則」「受精後3〜8週」「妊娠後期NSAIDsの動脈管収縮」は標準的発生学/PMDA安全性情報と整合する教育的補足で、器官形成期=妊娠初期という核心と矛盾しない。設問・正答の事実誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第4節「医薬品の適正使用と安全対策」(特別な配慮が必要な対象者) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。