第2章 人体の働きと医薬品19人体の構造と働き(薬物動態・代謝・排泄)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問19:人体の構造と働き(薬物動態・代謝・排泄)

医薬品の代謝・排泄および体内動態に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 薬物の肝代謝(第Ⅰ相反応)は主にCYP(シトクロムP450)酵素が担い、酸化・還元・加水分解によって薬物を化学的に修飾する。この過程で生じた代謝物は必ず無毒化(解毒)されて排泄される。
  • 腎臓での薬物排泄では、糸球体濾過によってタンパク結合の有無にかかわらず血中のすべての薬物(結合型・遊離型の両方)が等しく濾過され、尿細管での分泌や再吸収は薬物排泄には関与しない。
  • 血漿タンパク(主にアルブミン)と結合している薬物(結合型)は、遊離型(タンパク非結合型)と比較して糸球体を通過しやすく、そのままの形で尿中に排泄される。
  • 胆汁中に排泄された薬物や代謝物の一部は、小腸内で腸内細菌の働きや加水分解等により元の薬物に戻り、再び腸管から吸収されて体循環に戻ることがある(腸肝循環)。正答
  • 肝機能障害のある患者では肝代謝が低下するが、腎排泄型の薬物は肝機能障害の影響を受けないため、腎排泄型薬物は肝機能障害患者に安全に使用できる。
正答:胆汁中に排泄された薬物や代謝物の一部は、小腸内で腸内細菌の働きや加水分解等により元の薬物に戻り、再び腸管から吸収されて体循環に戻ることがある(腸肝循環)。

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正答はエです。

腸肝循環(Enterohepatic Circulation)とは、肝臓で胆汁中に排泄された薬物・代謝物が腸管に入り、腸内細菌や腸管の酵素で元の薬物に変換されて再吸収→肝臓に戻る→再び排泄…という循環のことです。この循環が起こる薬物は体内からの排泄が遅くなり、薬効が長く続きます。

誤りを整理します。アの「必ず無毒化される」は誤りで、代謝によって反応性の高い中間体(毒性代謝物)が生じることもあります(アセトアミノフェン→NAPQI等)。イは誤りで、糸球体濾過されるのは遊離型のみ(タンパク結合型は濾過されない)であり、また尿細管分泌・再吸収も薬物排泄に関与します。ウは逆で「タンパク結合型は分子量が大きく糸球体を通過しにくい」のが正しいです。オの「腎排泄型が肝機能障害の影響を受けない」は概ね正しい傾向ですが「安全に使用できる」と断言するのは誤りです(低アルブミン血症・肝腎症候群等の間接的影響があり得る)。

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各選択肢の詳細解説:

  • ア(誤): CYP(第Ⅰ相代謝)は酸化・還元・加水分解により薬物を修飾しますが、代謝物が「必ず無毒化される」わけではありません。むしろ代謝によって活性化される薬物(プロドラッグ: コデイン→モルヒネ)や、毒性代謝物が生じる薬物(アセトアミノフェン→NAPQI:肝毒性)の例があります。
  • イ(誤): 腎排泄には3機序が関与します。①糸球体濾過(GFR): 遊離型の薬物のみが受動的に濾過される(タンパク結合型は濾過されない)。②尿細管分泌: 有機アニオン輸送体(OAT)・有機カチオン輸送体(OCT)等による能動輸送。③尿細管再吸収: 脂溶性・未解離型の薬物が受動的に再吸収され排泄されにくくなる。選択肢イは「結合型・遊離型がすべて等しく濾過され、分泌・再吸収は関与しない」としており、二重に誤っています。
  • ウ(誤): タンパク結合型(アルブミン等と複合体形成)の薬物は分子量が非常に大きくなり、糸球体を通過できません(基準: 分子量約66,000DaのアルブミンはGFRで濾過されない)。糸球体を通過して尿中に出るのは「遊離型(unbound)の薬物」のみです。
  • エ(正): 腸肝循環の典型例: ワルファリン・経口避妊薬(エストラジオール)・一部の抗菌薬。腸内細菌が胆汁中のグルクロン酸抱合体(第Ⅱ相代謝産物)を加水分解→元のアグリコン(活性型)を遊離→腸管再吸収。これが「抗菌薬の内服が経口避妊薬の効果を弱める可能性がある」という相互作用の一因です。
  • オ(誤): 腎排泄型薬物は肝代謝の影響を直接受けにくいですが、「安全に使用できる」と断言することは誤りです。①肝不全では腎機能も低下することがある(肝腎症候群)、②低アルブミン血症→タンパク結合率変化→遊離型増加、③腹水・浮腫による分布容積の変化、等の影響があります。

薬物排泄の機序まとめ:

| 排泄経路 | 機序 | 影響因子 |

|---|---|---|

| 腎排泄(尿) | 糸球体濾過・尿細管分泌・再吸収のバランス | 腎機能・尿pH・分子量・タンパク結合率 |

| 胆汁排泄(糞便) | 肝臓での取り込み→胆汁中分泌→大腸で排出 | 肝機能・腸肝循環の程度 |

| 肺・呼気 | 揮発性薬物(エタノール・吸入麻酔薬) | 肺換気量 |

| 唾液・乳汁・汗 | 受動拡散(微量) | 脂溶性・pH |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【CYP酵素系の詳細:薬物相互作用の理解に不可欠な知識】

CYP(シトクロムP450)は肝臓の小胞体に存在する酵素ファミリーです。ヒトでは主に以下のCYPが薬物代謝に関与します:

| CYP種 | 基質の代表薬 | 阻害薬 | 誘導薬 |

|---|---|---|---|

| CYP3A4 | 約50%の薬物(ベンゾジアゼピン・スタチン等) | グレープフルーツ(フラノクマリン)・イトラコナゾール | リファンピシン・フェニトイン |

| CYP2D6 | コデイン・抗うつ薬・β遮断薬 | フルオキセチン・パロキセチン | − |

| CYP2C9 | ワルファリン・NSAIDs | フルコナゾール | リファンピシン |

| CYP2C19 | プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール等) | オメプラゾール自身・フルコナゾール | リファンピシン |

| CYP1A2 | テオフィリン・カフェイン | フルボキサミン(強力な阻害) | タバコ煙・オメプラゾール |

OTC薬との関連する相互作用例:

1. グレープフルーツ+CYP3A4基質薬: フラノクマリン類がCYP3A4を不可逆的に阻害→基質薬の代謝低下→血中濃度上昇→副作用増強

2. カフェイン(OTCかぜ薬等に配合): CYP1A2で代謝→喫煙者は誘導でカフェインの代謝が速い

3. ウルソデオキシコール酸(OTC): 胆汁酸の代謝に関与するCYP3A4の基質

CYP遺伝子多型(Pharmacogenomics):

  • CYP2D6は遺伝子多型が大きい(Poor Metabolizer: PM vs Extensive Metabolizer: EM)
  • PMの人はコデイン(プロドラッグ)→モルヒネの変換が遅い→鎮痛効果不十分
  • Ultra-rapid Metabolizerの人はコデイン→モルヒネの変換が速すぎ→新生児に授乳すると乳児に過剰なモルヒネが移行(死亡事例報告あり)→2019年12月12歳未満への使用禁止

【腸肝循環と薬物の半減期への影響】

腸肝循環が薬物動態に与える影響:

仮に薬物の50%が胆汁に排泄され、その70%が腸管で再吸収された場合:

  • 実際の排泄率 = 50% × (1 - 0.70) = 15%/サイクル
  • 残り85%が体循環に戻る → 薬物の実効消失が遅くなる → 見かけの半減期が延長

腸肝循環が起こりやすい条件:

1. 分子量 > 300〜500Da(大きな分子は胆汁排泄されやすい)

2. 胆汁中で親水性化(グルクロン酸抱合等の第Ⅱ相代謝)

3. 腸内細菌の酵素(β-グルクロニダーゼ等)で脱抱合→元の脂溶性薬物に戻る→吸収

腸肝循環を断ち切る薬(臨床的応用):

  • コレスチラミン(イオン交換樹脂): 胆汁酸・脂溶性薬物を腸管内で吸着→再吸収阻止→排泄加速
  • 一部の中毒解毒(過剰服薬時)に活性炭と組み合わせる

【尿pHと薬物の尿細管再吸収:解毒・過量服用の臨床応用】

尿細管再吸収は薬物の「解離状態(イオン型 vs 非イオン型)」に依存します(Henderson-Hasselbalch方程式):

弱酸性薬物(フェノバルビタール・アスピリン等):

  • pH低い(酸性尿)→ 非解離型(脂溶性)が増加 → 再吸収増加 → 排泄低下
  • pH高い(アルカリ性尿)→ 解離型(イオン型・水溶性)が増加 → 再吸収低下 → 尿排泄増加

過量服用時の解毒応用(尿アルカリ化療法):

  • アスピリン(弱酸)過量服用→尿をアルカリ化(炭酸水素ナトリウム投与)→アスピリンのイオン化促進→尿中排泄加速(「イオントラッピング」の原理)
  • 同様の考えでフェノバルビタール過量時にも尿アルカリ化を用いる(医療的処置)

弱塩基性薬物(アンフェタミン・コデイン等)は逆で、尿酸性化により排泄が増加します。

【登録販売者の実務に直結する代謝・排泄の知識活用】

1. 腎機能低下患者(高齢者・糖尿病患者等)へのOTC薬選択: NSAIDs(腎血流低下・腎毒性リスク)を勧める際は医師・薬剤師への確認を促す

2. 肝機能障害患者: アセトアミノフェン(NAPQI蓄積リスク)等の肝代謝薬に注意。大量飲酒者は特にリスクが高い

3. 多剤服用(ポリファーマシー)患者: CYP阻害による相互作用を念頭に「他に飲んでいる薬はありますか?」を必ず確認

4. グレープフルーツ・アルコール: OTC薬購入時に「グレープフルーツジュースは飲んでいますか?」「お酒は一緒に飲まないでください」と情報提供する根拠がCYP相互作用にあることを理解

代謝・排泄の理解は、薬物相互作用・特殊患者への用量調整・受診勧奨の判断の論理的根拠となります。「なぜグレープフルーツと薬を一緒に飲んではいけないか」を顧客に分かりやすく説明できる登録販売者は、信頼性の高い情報提供ができます。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【二重正答を修正】当初は正答エ(腸肝循環)と選択肢イ(腎排泄の3機序)が両方とも正しく、「正しいものを1つ選ぶ」設問で二重正答だった。選択肢イを「結合型・遊離型がすべて等しく濾過され、分泌・再吸収は関与しない」と誤りに変更して誤肢化し、正答をエに一意化(解説beginner/standardも整合修正)。CYP代謝物が必ず無毒化=誤り、タンパク結合型は糸球体非通過、腎排泄型でも肝障害患者で完全安全とは言えない、の記述は正確。CYP相互作用・尿pHの記述は手引き範囲外だが事実として正確。段差性維持。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第8節「薬の体内での働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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