登録販売者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問19|薬の代謝・排泄・肝代謝腎排泄タンパク結合

問題

登録販売者 | 第2章 人体の働きと医薬品 | (手引き令和8年4月版・令和8年5月施行改正反映)

医薬品の代謝・排泄および体内動態に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はエです。

腸肝循環(Enterohepatic Circulation)とは、肝臓で胆汁中に排泄された薬物・代謝物が腸管に入り、腸内細菌や腸管の酵素で元の薬物に変換されて再吸収→肝臓に戻る→再び排泄…という循環のことです。この循環が起こる薬物は体内からの排泄が遅くなり、薬効が長く続きます。

誤りを整理します。アの「必ず無毒化される」は誤りで、代謝によって反応性の高い中間体(毒性代謝物)が生じることもあります(アセトアミノフェン→NAPQI等)。イは誤りで、糸球体濾過されるのは遊離型のみ(タンパク結合型は濾過されない)であり、また尿細管分泌・再吸収も薬物排泄に関与します。ウは逆で「タンパク結合型は分子量が大きく糸球体を通過しにくい」のが正しいです。オの「腎排泄型が肝機能障害の影響を受けない」は概ね正しい傾向ですが「安全に使用できる」と断言するのは誤りです(低アルブミン血症・肝腎症候群等の間接的影響があり得る)。

各選択肢の詳細解説:

  • ア(誤): CYP(第Ⅰ相代謝)は酸化・還元・加水分解により薬物を修飾しますが、代謝物が「必ず無毒化される」わけではありません。むしろ代謝によって活性化される薬物(プロドラッグ: コデイン→モルヒネ)や、毒性代謝物が生じる薬物(アセトアミノフェン→NAPQI:肝毒性)の例があります。
  • イ(誤): 腎排泄には3機序が関与します。①糸球体濾過(GFR): 遊離型の薬物のみが受動的に濾過される(タンパク結合型は濾過されない)。②尿細管分泌: 有機アニオン輸送体(OAT)・有機カチオン輸送体(OCT)等による能動輸送。③尿細管再吸収: 脂溶性・未解離型の薬物が受動的に再吸収され排泄されにくくなる。選択肢イは「結合型・遊離型がすべて等しく濾過され、分泌・再吸収は関与しない」としており、二重に誤っています。
  • ウ(誤): タンパク結合型(アルブミン等と複合体形成)の薬物は分子量が非常に大きくなり、糸球体を通過できません(基準: 分子量約66,000DaのアルブミンはGFRで濾過されない)。糸球体を通過して尿中に出るのは「遊離型(unbound)の薬物」のみです。
  • エ(正): 腸肝循環の典型例: ワルファリン・経口避妊薬(エストラジオール)・一部の抗菌薬。腸内細菌が胆汁中のグルクロン酸抱合体(第Ⅱ相代謝産物)を加水分解→元のアグリコン(活性型)を遊離→腸管再吸収。これが「抗菌薬の内服が経口避妊薬の効果を弱める可能性がある」という相互作用の一因です。
  • オ(誤): 腎排泄型薬物は肝代謝の影響を直接受けにくいですが、「安全に使用できる」と断言することは誤りです。①肝不全では腎機能も低下することがある(肝腎症候群)、②低アルブミン血症→タンパク結合率変化→遊離型増加、③腹水・浮腫による分布容積の変化、等の影響があります。

薬物排泄の機序まとめ:

排泄経路機序影響因子
腎排泄(尿)糸球体濾過・尿細管分泌・再吸収のバランス腎機能・尿pH・分子量・タンパク結合率
胆汁排泄(糞便)肝臓での取り込み→胆汁中分泌→大腸で排出肝機能・腸肝循環の程度
肺・呼気揮発性薬物(エタノール・吸入麻酔薬)肺換気量
唾液・乳汁・汗受動拡散(微量)脂溶性・pH

【CYP酵素系の詳細:薬物相互作用の理解に不可欠な知識】

CYP(シトクロムP450)は肝臓の小胞体に存在する酵素ファミリーです。ヒトでは主に以下のCYPが薬物代謝に関与します:

CYP種基質の代表薬阻害薬誘導薬
CYP3A4約50%の薬物(ベンゾジアゼピン・スタチン等)グレープフルーツ(フラノクマリン)・イトラコナゾールリファンピシン・フェニトイン
CYP2D6コデイン・抗うつ薬・β遮断薬フルオキセチン・パロキセチン−
CYP2C9ワルファリン・NSAIDsフルコナゾールリファンピシン
CYP2C19プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール等)オメプラゾール自身・フルコナゾールリファンピシン
CYP1A2テオフィリン・カフェインフルボキサミン(強力な阻害)タバコ煙・オメプラゾール

OTC薬との関連する相互作用例:

1. グレープフルーツ+CYP3A4基質薬: フラノクマリン類がCYP3A4を不可逆的に阻害→基質薬の代謝低下→血中濃度上昇→副作用増強

2. カフェイン(OTCかぜ薬等に配合): CYP1A2で代謝→喫煙者は誘導でカフェインの代謝が速い

3. ウルソデオキシコール酸(OTC): 胆汁酸の代謝に関与するCYP3A4の基質

CYP遺伝子多型(Pharmacogenomics):

  • CYP2D6は遺伝子多型が大きい(Poor Metabolizer: PM vs Extensive Metabolizer: EM)
  • PMの人はコデイン(プロドラッグ)→モルヒネの変換が遅い→鎮痛効果不十分
  • Ultra-rapid Metabolizerの人はコデイン→モルヒネの変換が速すぎ→新生児に授乳すると乳児に過剰なモルヒネが移行(死亡事例報告あり)→授乳中は服用しないか授乳を避ける。別途、小児の呼吸抑制対策として12歳未満の小児は「してはいけないこと」とされた

【腸肝循環と薬物の半減期への影響】

腸肝循環が薬物動態に与える影響:

仮に薬物の50%が胆汁に排泄され、その70%が腸管で再吸収された場合:

  • 実際の排泄率 = 50% × (1 - 0.70) = 15%/サイクル
  • 残り85%が体循環に戻る → 薬物の実効消失が遅くなる → 見かけの半減期が延長

腸肝循環が起こりやすい条件:

1. 分子量 > 300〜500Da(大きな分子は胆汁排泄されやすい)

2. 胆汁中で親水性化(グルクロン酸抱合等の第Ⅱ相代謝)

3. 腸内細菌の酵素(β-グルクロニダーゼ等)で脱抱合→元の脂溶性薬物に戻る→吸収

腸肝循環を断ち切る薬(臨床的応用):

  • コレスチラミン(イオン交換樹脂): 胆汁酸・脂溶性薬物を腸管内で吸着→再吸収阻止→排泄加速
  • 一部の中毒解毒(過剰服薬時)に活性炭と組み合わせる

【尿pHと薬物の尿細管再吸収:解毒・過量服用の臨床応用】

尿細管再吸収は薬物の「解離状態(イオン型 vs 非イオン型)」に依存します(Henderson-Hasselbalch方程式):

弱酸性薬物(フェノバルビタール・アスピリン等):

  • pH低い(酸性尿)→ 非解離型(脂溶性)が増加 → 再吸収増加 → 排泄低下
  • pH高い(アルカリ性尿)→ 解離型(イオン型・水溶性)が増加 → 再吸収低下 → 尿排泄増加

過量服用時の解毒応用(尿アルカリ化療法):

  • アスピリン(弱酸)過量服用→尿をアルカリ化(炭酸水素ナトリウム投与)→アスピリンのイオン化促進→尿中排泄加速(「イオントラッピング」の原理)
  • 同様の考えでフェノバルビタール過量時にも尿アルカリ化を用いる(医療的処置)

弱塩基性薬物(アンフェタミン・コデイン等)は逆で、尿酸性化により排泄が増加します。

【登録販売者の実務に直結する代謝・排泄の知識活用】

1. 腎機能低下患者(高齢者・糖尿病患者等)へのOTC薬選択: NSAIDs(腎血流低下・腎毒性リスク)を勧める際は医師・薬剤師への確認を促す

2. 肝機能障害患者: アセトアミノフェン(NAPQI蓄積リスク)等の肝代謝薬に注意。大量飲酒者は特にリスクが高い

3. 多剤服用(ポリファーマシー)患者: CYP阻害による相互作用を念頭に「他に飲んでいる薬はありますか?」を必ず確認

4. グレープフルーツ・アルコール: OTC薬購入時に「グレープフルーツジュースは飲んでいますか?」「お酒は一緒に飲まないでください」と情報提供する根拠がCYP相互作用にあることを理解

代謝・排泄の理解は、薬物相互作用・特殊患者への用量調整・受診勧奨の判断の論理的根拠となります。「なぜグレープフルーツと薬を一緒に飲んではいけないか」を顧客に分かりやすく説明できる登録販売者は、信頼性の高い情報提供ができます。

この問題の根拠根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅱ-1)「薬の生体内運命」(b)薬の代謝、排泄
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅱ-1)「薬の生体内運命」(b)薬の代謝、排泄 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。