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法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問18|脳・中枢神経と血液脳関門

問題

登録販売者 | 第2章 人体の働きと医薬品 | (手引き令和8年4月版・令和8年5月施行改正反映)

脳・中枢神経系および血液脳関門(BBB: Blood-Brain Barrier)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はエです。「BBBはグルコースを厳密に遮断し、脳は主に脂肪酸をエネルギー源として利用する」は誤りです。

脳はエネルギー消費量が多く(全身の約20%)、グルコースを主要エネルギー源として使用します。BBBにはグルコース輸送体(GLUT1)が高発現しており、血中グルコースを脳内に積極的に輸送します。「栄養素も遮断する」という部分が誤りで、必要な栄養素はトランスポーター(担体)を介してBBBを通過できます。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アのBBBの構造(密着結合)、イの脂溶性薬物のBBB通過、ウの大脳皮質と延髄の機能分担、オの脳脊髄液の産生・役割はすべて正確な記述です。

各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): BBBの主要構成要素は脳毛細血管の内皮細胞のタイトジャンクション(claudin・occludin等のタンパク質による密着結合)です。加えて、周皮細胞(pericyte)・アストロサイト(足突起がBBBを包む)・基底膜が「神経血管ユニット(NVU)」として協調してBBBの機能を維持します。分子量500Da以上・水溶性・タンパク質は基本的にBBBを通過できません。
  • イ(正): 脂溶性が高く分子量が小さい物質はBBBを受動拡散で通過します。エタノール・ニコチン・モルヒネ・ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系)・一部の抗ヒスタミン薬(第一世代: ジフェンヒドラミン等)が代表例です。第一世代抗ヒスタミン薬の「眠気が強い」理由はBBB通過による中枢抑制です。
  • ウ(正): 脳の機能局在の基本: 大脳皮質(認知・記憶・感情・随意運動等)・大脳辺縁系(情動・記憶の統合)・小脳(運動協調・バランス)・脳幹(延髄・橋・中脳)(呼吸・心拍・嚥下・意識の維持等の自律機能中枢)。延髄は生命維持に直結した機能の中枢です。
  • エ(誤・正答): 脳はエネルギー代謝の面で特殊で、通常時はグルコースをほぼ唯一のエネルギー源として使用します(脂肪酸は通常時BBBを通過しにくく・脳での代謝も限定的)。BBBにはGLUT1(グルコース輸送体1)が高発現し、血中グルコースを積極的に脳内に取り込みます。ただし飢餓・長期絶食時には肝臓でケトン体が産生され、脳もケトン体をエネルギー源として利用できます。
  • オ(正): CSF(脳脊髄液)は脳室(側脳室・第3・第4脳室)の脈絡叢(ependymal cells + 毛細血管)で産生(1日約500mL)し、クモ膜下腔→矢状静脈洞のクモ膜顆粒で吸収されます(常時約150mL存在)。衝撃緩衝・物質輸送・老廃物除去(グリア系:グリンパティックシステム)を担います。

BBBの選択的透過性まとめ:

物質BBB透過性機序
グルコース高(能動輸送)GLUT1トランスポーター
アミノ酸高(能動輸送)LAT1等のアミノ酸トランスポーター
脂溶性小分子(エタノール等)高(受動拡散)脂質二重層を直接通過
水溶性大分子・タンパク質低(ほぼ不透過)タイトジャンクションにより阻止

【BBBの細胞生物学:神経血管ユニットとアストロサイトの役割】

BBBは単純な「壁」ではなく、複数の細胞が協働する動的な系統です(神経血管ユニット: NVU):

構成要素と役割:

1. 脳毛細血管内皮細胞: タイトジャンクションによる物理的バリア・多数の輸送タンパク(トランスポーター)を発現

2. 周皮細胞(pericyte): 内皮細胞の分化誘導・血流調節・BBBの維持に関与

3. アストロサイト(星状膠細胞): 足突起が毛細血管を取り囲む。内皮細胞へのシグナル(TGF-β等)でタイトジャンクションを強化

4. ミクログリア: 脳内のマクロファージ様細胞。炎症時にBBBの破壊を促進/修復に関与

5. 基底膜: ラミニン・コラーゲンⅣ等の細胞外マトリックス・物理的支持

BBBの輸送システム(薬物設計に重要):

システム方向例
受動拡散血液→脳脂溶性・低分子薬物(ジアゼパム等)
SLC(溶質キャリア)輸送体血液→脳GLUT1(グルコース)・LAT1(アミノ酸)・MCT1(ケトン体)
ABC輸送体(P-糖タンパク・Pgp/MDR1等)脳→血液(排出)多くの薬物を脳から排出(多剤耐性の原因)
受容体介在性エンドサイトーシス血液→脳トランスフェリン・インスリン等の大分子

P-糖タンパク(Pgp/ABCB1)とBBBの薬物排出:

  • 脳毛細血管内皮細胞に高発現するABC輸送体
  • 脳に入った薬物を能動的に血液側に排出(脳内濃度を低く保つ)
  • 脳腫瘍の化学療法耐性の原因の一つ(がん細胞もPgpを高発現)
  • 一部の薬物はPgp阻害薬と組み合わせてBBBを越えさせる戦略がある(研究段階)

【中枢神経作用薬とBBB通過性:OTC薬の「眠気が出る/出ない」の理由】

第一世代抗ヒスタミン薬(古いタイプ)vs 第二世代の違い:

世代代表薬BBB通過性中枢抑制眠気
第一世代ジフェンヒドラミン・クロルフェニラミン高(脂溶性・BBB透過)強い強い
第二世代フェキソフェナジン・ロラタジン・セチリジン低(P-gpにより排出等)弱い〜ほぼなし少ない

第一世代抗ヒスタミン薬の「眠気が強い」実用的意味:

  • 乗り物酔い防止薬: ジフェンヒドラミン(中枢抑制を積極的に利用)
  • 睡眠改善薬(OTC): ジフェンヒドラミン塩酸塩(BBB透過+中枢のヒスタミン抑制で眠気誘導)
  • 感冒薬・アレルギー薬: 「眠気が出る」という副作用が問題→自動車運転を避けるよう注意喚起

【脳血液関門の破綻と疾患:BBBが壊れるとどうなるか】

BBBの破綻を来す病態:

病態BBBへの影響結果
脳炎・髄膜炎(細菌・ウイルス)炎症性サイトカイン→タイトジャンクション破壊脳浮腫・脳圧上昇
虚血性脳梗塞低酸素→内皮細胞壊死→BBB崩壊出血性梗塞・脳浮腫
アルツハイマー病アミロイドβによる血管周囲への沈着BBB機能低下・神経炎症
多発性硬化症(MS)T細胞のBBB通過→中枢神経への自己免疫攻撃脱髄

グリンパティックシステム(近年注目の脳の老廃物排出機構):

  • アストロサイトのアクアポリン4(AQP4)チャネルを介した脳脊髄液の流れ
  • 睡眠中に活性化し、アミロイドβ等の老廃物を脳外へ排出する機構
  • 睡眠不足がアルツハイマー病のリスク因子になる可能性の生物学的根拠

登録販売者として知るべきBBBと薬物の実務的知識:

1. 「眠くなる薬」の説明: 「こちらの抗アレルギー薬は、脳にも作用して眠気が出やすいです。運転には向きません」

2. 「眠くなりにくい薬」の理由説明: 「この薬は脳に入りにくいので眠気が少ないです」

3. アルコールとの相互作用: エタノールはBBBを容易に通過→中枢神経抑制薬(睡眠薬・抗不安薬等)との相乗的な中枢抑制→危険

4. 高齢者: 加齢でBBBの機能が低下→薬物が脳に入りやすくなる→中枢作用副作用が出やすい(特に抗コリン薬・ベンゾジアゼピン系)

BBBの概念の理解は、第3章の中枢作用薬(鎮咳薬のコデイン・睡眠改善薬・乗り物酔い防止薬・抗アレルギー薬)の「なぜこの薬は眠気が出るか」「なぜアルコールと一緒に飲むと危険か」を論理的に説明できる基盤です。

この問題の根拠根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-4-1)「中枢神経系」
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-4-1)「中枢神経系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。