問題
肝臓の代謝機能および薬物性肝障害に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウです。
肝臓は医薬品の代謝(分解・解毒)の主要臓器です。肝機能が低下している場合(慢性肝炎・肝硬変等)、その代謝能力が落ちるため、医薬品が体内に長く留まり血中濃度が高くなります。その結果、通常の用量でも過剰な薬効や副作用が現れやすくなります。
誤りの選択肢を確認します。医薬品の主な代謝は肝臓で行われます(ア誤)。薬物性肝障害には中毒性だけでなく免疫アレルギー性もあります(イ誤)。胆汁は脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の消化吸収に必要であり、胆汁分泌が障害されると脂溶性ビタミンの吸収は低下します(エは「低下することはない」が誤り)。薬物性肝障害の初期症状はだるさ・食欲不振から始まることが多く、黄疸は比較的遅れて現れます(オ誤)。
肝臓の主要機能の整理:
| 機能 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 代謝・解毒 | 医薬品・アルコール・毒素をシトクロムP450等で代謝・不活化 |
| タンパク質合成 | アルブミン・凝固因子(フィブリノゲン・プロトロンビン等) |
| 糖代謝 | 血糖調節(グリコーゲンの合成・分解・糖新生) |
| 脂質代謝 | コレステロール合成・リポタンパク産生 |
| 胆汁分泌 | 脂肪の乳化・脂溶性ビタミン吸収補助・ビリルビン排泄 |
| 貯蔵 | グリコーゲン・脂溶性ビタミン(A・D等)・鉄・銅 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 医薬品の主な代謝は肝臓(シトクロムP450等の薬物代謝酵素)で行われます。腸管にも一部のCYP(特にCYP3A4)が存在し「初回通過効果」に関与しますが、主役は肝臓です。
- イ(誤): 薬物性肝障害の機序は2種類あります。①中毒性(用量依存性): 薬物や代謝物の直接的な細胞毒性。②免疫アレルギー性(特異体質性): 薬物・代謝物が抗原となり免疫反応を誘発。前者はアセトアミノフェン過剰服用が代表例、後者は抗菌薬・漢方薬でも起こります。
- ウ(正): 肝機能低下では薬物代謝が遅延→血中濃度上昇→過剰作用・副作用増強。添付文書の「相談すること」欄に「肝臓病の方」が記載されている製品が多い理由です。
- エ(誤): 胆汁(胆汁酸)は脂質を乳化し、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の消化吸収に不可欠です。胆汁分泌機能が障害される(胆道閉塞・重度の肝障害等)と、脂溶性ビタミンの吸収はむしろ「低下」します。「胆汁を必要とせず吸収される」「吸収が低下することはない」という記述は明確な誤りです。なお水溶性ビタミン(B群・C)は胆汁による乳化を必要とせず吸収されます。
- オ(誤): 薬物性肝障害の初期症状はしばしば非特異的です(だるさ・食欲不振・吐き気・右上腹部の違和感等)。黄疸(ビリルビン処理能の破綻による)は肝障害が進んでから現れることが多く、「常に黄疸が初期症状」は誤りです。
【薬物性肝障害(DILI: Drug-Induced Liver Injury)の病態・診断・リスク因子の詳細】
DILI 機序の分類(手引きの区分):
| 分類 | 原因(手引き 第2章 Ⅲ-1-3)) |
|---|---|
| 中毒性 | 有効成分又はその代謝物の直接的肝毒性 |
| アレルギー性 | 有効成分に対する抗原抗体反応 |
登録販売者が実務上特に注意すべきDILI:
1. 漢方薬によるDILI: 小柴胡湯・柴胡桂枝湯は、まれに重篤な副作用として間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られています
2. 肝機能障害を生じることがある主な成分(手引き 第3章 かぜ薬の脚注): アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、葛根湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、小青竜湯、麦門冬湯
3. いわゆる健康食品: 健康食品・ダイエット食品として購入された無承認無許可医薬品の使用による重篤な肝機能障害も知られています
肝機能低下患者に医薬品を使用する際のリスクの詳細:
肝機能低下時に特に注意が必要な医薬品の特性:
- 高タンパク結合率の薬物: 低アルブミン血症では遊離型が増加→効果・毒性が増強
- 肝初回通過効果が大きい薬物: 経口服用後に大部分が肝臓で代謝される薬物は、肝機能低下で初回通過の代謝が低下→血中濃度が大幅上昇
- 肝毒性自体を持つ薬物: アセトアミノフェン・一部のNSAIDs
肝臓の再生能力と慢性障害:
肝臓は高い再生能力を持つ臓器ですが、慢性的な障害(慢性肝炎・アルコール性肝障害等)では:
1. 肝細胞の繰り返し壊死・再生 → 線維組織の蓄積(線維化)
2. 線維化の進行 → 肝硬変(cirrhosis)
3. 肝硬変 → 肝細胞癌(HCC)のリスク上昇
肝硬変では機能する肝細胞数が大幅に減少し、代謝・解毒・タンパク合成のすべてが障害されます。登録販売者試験で「肝臓病の方は相談すること」が多い製品に記載されている理由の本質はここにあります。
ビリルビン代謝と黄疸の発現メカニズム:
肝臓は老廃した赤血球由来のヘモグロビンから生じる「間接ビリルビン(非抱合型)」を取り込み、グルクロン酸抱合して「直接ビリルビン(抱合型)」に変換し、胆汁として排泄します。
薬物性肝障害での黄疸の機序:
1. 肝細胞障害型DILI: 肝細胞の壊死・機能低下 → ビリルビン処理能の低下 → 血中ビリルビン上昇 → 黄疸
2. 胆汁うっ滞型DILI: 胆汁排泄の障害 → 直接ビリルビンの逆流 → 黄疸
「黄疸の前に全身症状(だるさ・食欲不振・吐き気)が数日〜数週間続く」という臨床経過の理解が、早期発見・受診勧奨に重要です。
肝臓における胆汁と脂溶性ビタミン吸収の関連:
胆汁酸は小腸(特に十二指腸)で分泌され、食事中の脂肪を乳化してリパーゼが作用しやすい状態にします。この乳化がないと脂溶性物質(脂溶性ビタミンA・D・E・K・脂溶性薬物)の吸収が大幅に低下します。
臨床的影響:
- ビタミンK吸収低下 → 凝固因子(プロトロンビン等)の産生低下 → 出血傾向
- ビタミンD吸収低下 → カルシウム吸収低下 → 骨軟化症・くる病
登録販売者の実践への接続:
購入者が「肝臓が悪い」「肝機能の数値が高い」と言った場合:
1. 確認事項: 現在服用中の薬・サプリ・健康食品
2. 注意する製品(手引き 別表5-2「肝臓病」の相談すること): 小柴胡湯/アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン/サントニン、ピペラジンリン酸塩等のピペラジンを含む成分/ガジュツ末・真昆布末を含む製剤
3. 対応: 肝臓病の方に相談することが記載されている製品は、医師・薬剤師への相談を強く勧める
薬物性肝障害は第3章の「まれな重篤副作用」としても頻出するため、第2章での臓器・機序の理解が第3章の暗記の「意味理解」を支えます。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅰ-1-1)「消化器系」(手引き R8 PDF p32)・第2章 Ⅱ-1)「薬の生体内運命」(手引き R8 PDF p51)・第2章 Ⅲ-1-3)「肝機能障害」(手引き R8 PDF p56-57)・第5章 別表5-2「肝臓病」(手引き R8 PDF p417) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

