第2章 人体の働きと医薬品31人体の働きと医薬品(内分泌・ホルモン・標的臓器・自律神経連動)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問31:人体の働きと医薬品(内分泌・ホルモン・標的臓器・自律神経連動)

内分泌系およびホルモンと自律神経の連動に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • ホルモンは内分泌腺から血液中に分泌されて全身に運ばれ、特定の標的臓器・標的細胞(受容体を持つ組織)に選択的に作用する化学物質である。
  • 視床下部は自律神経と内分泌系の統合センターとして機能しており、下垂体を通じてさまざまな内分泌腺(甲状腺・副腎等)を調節するホルモンを分泌する。
  • 甲状腺ホルモン(サイロキシン等)は代謝を亢進させる作用を持ち、甲状腺機能亢進症(バセドウ病等)では交感神経系が過剰に刺激されたような症状(動悸・発汗・体重減少等)が現れることがある。
  • 副腎皮質ホルモン(コルチゾール等)はストレス応答として分泌が増加するが、抗炎症作用は持たず、医薬品として使用されることもない。正答
  • 婦人科系の月経周期は、視床下部・下垂体・卵巣のホルモン連動(HPOアクス)によって制御されており、このサイクルの乱れが月経不順・PMS等として現れることがある。
正答:副腎皮質ホルモン(コルチゾール等)はストレス応答として分泌が増加するが、抗炎症作用は持たず、医薬品として使用されることもない。

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正答はエです。

副腎皮質ホルモン(コルチゾール等の糖質コルチコイド)は強力な「抗炎症作用」を持ちます。これは医薬品としても広く活用されており、ステロイド系抗炎症薬(外用ステロイド・吸入ステロイド・全身ステロイド等)は副腎皮質ホルモンの作用を模倣して炎症を抑えます。「抗炎症作用を持たない」「医薬品として使用されない」という記述はどちらも誤りです。

アのホルモンの定義と特異性、イの視床下部の統合センターとしての役割、ウの甲状腺ホルモン亢進による交感神経様症状、オの月経周期のHPO軸制御はすべて正しい記述です。甲状腺機能の亢進とアドレナリン作動成分の販売注意(心臓・血圧への影響増大)を理解するためにも、本論点は重要です。

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主な内分泌腺・ホルモン・標的臓器の整理:

| 内分泌腺 | 主なホルモン | 主な作用 | 標的 |

|---|---|---|---|

| 視床下部 | CRH・TRH・GnRH等 | 下垂体調節 | 下垂体 |

| 下垂体前葉 | ACTH・TSH・LH・FSH等 | 各内分泌腺を刺激 | 副腎・甲状腺・性腺 |

| 甲状腺 | サイロキシン(T4)・T3 | 代謝亢進・発育 | 全身 |

| 副腎皮質 | コルチゾール・アルドステロン | 抗炎症・電解質調節 | 全身・腎 |

| 副腎髄質 | アドレナリン・ノルアドレナリン | 交感神経様作用 | 全身 |

| 卵巣 | エストロゲン・プロゲステロン | 月経周期・妊娠維持 | 子宮・乳腺等 |

| 膵島(ランゲルハンス島) | インスリン・グルカゴン | 血糖調節 | 全身 |

各選択肢の解説:

  • ア(正): ホルモンは内分泌腺から血液中に微量で分泌され、標的細胞の特異的受容体(細胞表面受容体または細胞内受容体)と結合して作用します。受容体がない細胞には作用しない(特異性)点がホルモンの重要な特徴です。
  • イ(正): 視床下部は自律神経(交感・副交感神経)の高次制御と、下垂体ホルモンを通じた内分泌腺の制御の両方を担います。視床下部—下垂体—標的内分泌腺の軸(HPA軸・HPT軸・HPO軸等)が体の恒常性を維持します。
  • ウ(正): 甲状腺ホルモンは全身の代謝を亢進させるとともに、β受容体の感受性を高める作用を持ちます。そのため甲状腺機能亢進症では、アドレナリンやノルアドレナリン(交感神経伝達物質)に対する感受性が増大し、動悸・発汗・体重減少・眼球突出(バセドウ病)等の症状が現れます。登録販売者として甲状腺機能亢進症の患者へのアドレナリン作動成分を含む製品販売に注意が必要な理由がここにあります。
  • エ(誤・正答): コルチゾールに代表される副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド)は強力な抗炎症作用・免疫抑制作用を持ちます。医薬品として外用ステロイド(皮膚炎・湿疹)・吸入ステロイド(喘息)・全身ステロイド(重症アレルギー・自己免疫疾患等)として広く使用されています。
  • オ(正): 月経周期は視床下部(GnRH分泌)→下垂体(FSH・LH分泌)→卵巣(エストロゲン・プロゲステロン分泌)→子宮内膜の変化(増殖・分泌・剥離)というHPO軸のサイクルで制御されています。このサイクルのどこかが乱れると月経不順・PMS(月経前症候群)・閉経後症状等が現れます。婦人薬はこのサイクルへの作用(生薬・漢方)や症状緩和を目的とします。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【内分泌系と自律神経の相互連動の詳細・薬物との接続】

視床下部の統合機能(自律神経と内分泌の接点):

視床下部は大脳辺縁系(情動・記憶)と脳幹(自律神経核)の中間に位置し、以下を統合します:

1. 自律神経制御: 交感神経・副交感神経の高次制御(体温・血圧・食欲・性機能)

2. 内分泌調節: 下垂体前葉への放出ホルモン/抑制ホルモン(CRH・TRH・GnRH・GHRH等)

3. 行動・情動: 摂食行動・睡眠・性行動の制御

「ストレス→視床下部→HPA軸活性化→コルチゾール分泌増加」という「ストレス応答」は、心身の健康に直結する内分泌・自律神経の連動の代表例です。

甲状腺ホルモンとβ受容体感受性(登録販売者実務への接続):

甲状腺ホルモン(T3・T4)はβアドレナリン受容体の遺伝子発現を増加させます。その結果:

  • アドレナリン・ノルアドレナリンの「作用強度」が同一濃度でも増大
  • 甲状腺機能亢進症患者がアドレナリン作動成分(メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン等)を摂取すると、過剰な心臓刺激(頻脈・不整脈)・血圧上昇が起こりやすい

これが、添付文書の「相談すること」欄に「甲状腺機能亢進症の方」が記載されている医薬品が多い理由です。登録販売者として、かぜ薬・鼻炎用内服薬・鼻炎用点鼻薬を販売する際に購入者の甲状腺疾患の有無を確認することは、この機序を理解した実践です。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)の医薬品への応用(詳細):

コルチゾール(内因性糖質コルチコイド)の主な薬理作用:

1. 抗炎症作用: COX-2・PLA2の誘導抑制→プロスタグランジン・ロイコトリエン産生低下、炎症サイトカイン産生抑制

2. 免疫抑制: T細胞・B細胞の活性化抑制、抗体産生抑制

3. 代謝作用: 糖新生促進(血糖上昇)・タンパク異化促進・脂肪再分布

4. 鉱質コルチコイド様作用(弱い): Na+貯留・K+排泄

OTCで使用されるステロイド外用薬(一般用医薬品としての使用):

  • 一般用医薬品では、比較的作用の穏やかなステロイド性抗炎症成分(ヒドロコルチゾン酢酸エステル・プレドニゾロン酢酸エステル・デキサメタゾン等)が用いられる
  • 皮膚炎・湿疹・かぶれ・虫さされ等の炎症・かゆみの短期改善が目的
  • 手引きは、ステロイド性抗炎症成分の外用薬について「広範囲に・長期にわたって使用しない」「患部に化膿を伴う場合や慢性の湿疹・皮膚炎には使用前に相談」といった注意を求めており、長期・広範囲使用では局所の副作用(皮膚の感染悪化等)や全身性の影響のおそれがある<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 一般用医薬品として承認されているステロイド外用薬の成分・分類について手引き令和8年4月版で検証。手引きは成分名(ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、デキサメタゾン等)を挙げ「ステロイド性抗炎症成分は外用の場合、末梢組織における炎症を抑える作用を示すが、広範囲に・長期間使用しないこと」「化膿を伴う患部・慢性の湿疹皮膚炎は使用前相談」を求めている。一方「strong/medium等の強度クラス(ステロイドランク)」は皮膚科臨床の分類であって手引きの用語・分類ではないため、断定的な"弱〜中程度の強度クラス"表現を手引き準拠の「比較的作用の穏やかな成分」「広範囲・長期使用を避ける」表現に置換した。 -->

月経周期とHPO軸の詳細(婦人薬の基盤):

月経周期(約28日間)の制御:

1. 卵胞期(Day1〜14): FSH分泌→卵胞発育→エストロゲン分泌増加→子宮内膜増殖→LHサージ→排卵

2. 黄体期(Day14〜28): 黄体形成→プロゲステロン分泌増加→子宮内膜分泌期→着床準備

3. 月経(受精不成立): 黄体退縮→エストロゲン・プロゲステロン低下→子宮内膜剥離→月経

PMS(月経前症候群)の原因: 黄体期後半のエストロゲン・プロゲステロンの急激な低下が関与(諸説あり)。症状: 腹部膨満・乳房痛・情緒不安定・頭痛・むくみ等。

登録販売者として婦人薬(月経不順・PMS症状の緩和を標榜する漢方・生薬製剤)を販売する際、HPO軸の基本を理解していることで「なぜ生薬で月経が整うのか」「なぜ加齢(更年期)でのぼせ・動悸が起こるのか(エストロゲン低下による血管運動神経系の不安定化)」を購入者に説明できます。

ホルモンと自律神経の相互作用を知ることは、第3章の婦人薬(当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸等の漢方)や鼻炎薬(アドレナリン作動成分の甲状腺機能亢進者への注意)など、多くの製品の注意事項を「丸暗記」から「理解した上での実践」に変える基盤となります。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第6節「内分泌系の働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

内分泌系の基礎・ホルモンと自律神経の連動・標的臓器頻出度B

第2章 人体の働きと医薬品の他の問題

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2
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