登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問24:人体の働きと医薬品(腎臓・排泄・腎機能低下・高齢者)
腎臓の有害事象および腎機能低下時の医薬品の取扱いに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア腎臓は主に尿として医薬品や代謝物を排泄する重要な臓器であり、腎機能が低下すると腎排泄型の医薬品が体内に蓄積し、副作用が生じやすくなる。
- イ一般的に高齢者は加齢に伴い腎機能が低下しているため、若年成人と同じ用量・用法の医薬品を使用した場合に、血中濃度がより高くなりやすい。
- ウNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、プロスタグランジン産生を抑制することで腎血流量を低下させるおそれがあり、腎機能が低下している患者では慎重な使用が必要である。
- エ腎機能低下患者に対して一般用医薬品を販売する際は、添付文書の「相談すること」欄に「腎臓病の方」という記載の有無を確認し、記載がある製品は医師・薬剤師への相談を勧めることが適切である。
- オ腎機能が低下していても、医薬品が腸管から吸収される量(吸収率)が変化するため、実際の血中濃度への影響は少なく、腎機能低下患者でも通常と同じ用量を使用できる。正答
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正答はオです。
腎機能が低下しても、腸管からの薬の吸収率自体が変化するわけではありません。問題は「吸収後に体内に入った薬が腎臓でうまく排泄できなくなる」ことです。腎排泄型の医薬品は腎機能が低下すると体内に蓄積し、血中濃度が上昇して、通常の用量でも過剰な作用や副作用が生じやすくなります。「吸収率が変化するから血中濃度への影響は少ない」という論理自体が誤りです。
腎機能は高齢者では特に低下していることが多く(イ正)、解熱鎮痛薬(NSAIDs)等は腎血流量を低下させる成分があるため腎機能低下患者では注意が必要(ウ正)です。添付文書の「相談すること」欄の確認も重要です(エ正)。
腎臓における医薬品排泄の仕組みと腎機能低下の影響:
| 過程 | 内容 | 腎機能低下の影響 |
|---|---|---|
| 糸球体濾過 | 小分子薬物が濾過される | GFR低下→濾過量が減少 |
| 尿細管分泌 | 有機アニオン・カチオントランスポーターで能動的に排泄 | トランスポーター活性低下 |
| 尿細管再吸収 | 脂溶性薬物が一部再吸収される | 変化は少ない |
各選択肢の解説:
- ア(正): 腎排泄型の医薬品では、腎機能(GFR)の低下に伴い排泄が遅延→薬物の蓄積→血中濃度上昇→副作用発現リスクの増大。処方薬では腎機能に応じた用量調整が必須。
- イ(正): 高齢者は加齢に伴いGFR(糸球体濾過量)が低下します(「成人の年間約1mL/min/1.73m2の低下」という目安があります)。同じ用量でも血中濃度が高くなりやすく、副作用が現れやすい状態です。
- ウ(正): NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン等)はシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジン(PG)産生を抑制します。腎臓ではPGが求心性細動脈を拡張して腎血流を維持するため、NSAIDs使用でPG産生が抑えられると腎血流が低下し、腎機能が悪化する(急性腎障害)おそれがあります。
- エ(正): 添付文書の「相談すること」欄に「腎臓病の方」と記載されている製品は、腎臓への負荷または腎排泄に影響する成分を含む可能性があります。腎機能低下患者には必ず医師・薬剤師への相談を勧めることが登録販売者の適切な対応です。
- オ(誤・正答): 腎機能低下が影響するのは主に「排泄段階」であり、腸管からの吸収率には通常大きな影響はありません(腸管に腎障害の直接的影響はない)。腎機能が低下すると排泄が遅れて血中濃度が上昇します。「吸収率が変化するため血中濃度への影響は少ない」という論理は全くの誤りです。
【腎機能の評価指標と薬物排泄への定量的理解】
腎機能の主な評価指標:
| 指標 | 内容 | 正常値の目安 |
|---|---|---|
| GFR(糸球体濾過量) | 腎臓が1分間に濾過する血漿量 | 約90〜120 mL/min/1.73m2 |
| eGFR(推算GFR) | 血清クレアチニン・年齢・性別から推算 | 60以上が正常 |
| BUN(尿素窒素) | タンパク代謝産物。腎機能の間接指標 | 8〜20 mg/dL |
| 血清クレアチニン | 筋肉由来の老廃物。腎排泄 | 男0.6〜1.1 / 女0.4〜0.8 mg/dL |
GFRが60未満:慢性腎臓病(CKD)の基準。30未満:重症。15未満:腎不全(透析が必要になる可能性)。
高齢者の腎機能低下の特徴:
加齢による腎機能低下は:
- 40歳以降、GFRは年間約0.75〜1 mL/min/1.73m2程度低下(個人差大)
- 80歳代ではGFRが30〜50程度まで低下している場合も多い
- 筋肉量の減少(サルコペニア)により血清クレアチニン値が見かけ上「正常」に見えても実際のGFRは低下している(「クレアチニン正常でも腎機能低下」の落とし穴)
NSAIDsと腎機能への影響(プロスタグランジンの役割の詳細):
通常の腎血流:
- アンジオテンシンII・ノルエピネフリン → 求心性細動脈収縮(腎血流低下のシグナル)
- 局所産生のプロスタグランジン(PGE2・PGI2) → 求心性細動脈拡張(腎血流を維持する代償機序)
NSAIDs使用後:
- COX-2阻害 → PGE2・PGI2産生低下 → 求心性細動脈の代償的拡張が失われる
- アンジオテンシンII等による収縮が優位になる → 腎血流低下 → GFR低下 → 急性腎障害(AKI)
リスクが高い状況:
- 腎機能低下患者(CKD)
- 脱水状態(下痢・嘔吐・発汗過多・飲水不足)
- 心不全(腎血流が元来低下)
- 高齢者(上記リスクの複合)
- 利尿薬・ACE阻害薬との併用<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 手引きはNSAIDs(イブプロフェン等)について腎機能への影響・むくみ等の副作用、腎臓病の人への注意(相談すること)を記載しており本文と整合。正答オ(腎機能低下で吸収率が変化し血中濃度への影響が少ない=誤)は一意で適切。腎機能低下が影響するのは排泄段階であり吸収率ではない -->
「NSAIDsで腎機能が悪化する」場面の登録販売者の実務対応:
購入者が「腎臓が悪い」「透析しているわけではないが数値が悪い」等を言った場合:
1. 解熱鎮痛薬(イブプロフェン・ロキソプロフェン等のNSAIDs)の販売前に「腎臓病の方はご使用の前に医師・薬剤師にご相談ください」と説明
2. アセトアミノフェンは腎への影響がNSAIDsより少ないが、やはり腎機能低下患者では使用量・使用期間に注意
3. 脱水を伴う状況(発熱・下痢・嘔吐中)でのNSAIDs使用は特に危険→十分な水分補給と短期使用を強調
腎機能低下患者における蓄積リスクが高い一般用医薬品成分(参考):
腎排泄が主の成分で腎機能低下患者での蓄積リスクがある例:
- ロキソプロフェン・イブプロフェン: NSAIDsとして腎血流低下に加え代謝物の腎排泄が低下<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): イブプロフェン・ロキソプロフェン(OTC解熱鎮痛薬の主成分)、ファモチジン(H2ブロッカーOTC)、ジフェンヒドラミン等の抗ヒスタミン薬はいずれも一般用医薬品に実在し、腎機能低下時の蓄積・過剰作用リスクの記述は薬理学的に正確で手引きの注意喚起と整合 -->
- H2ブロッカー(ファモチジン等): 腎排泄型。腎機能低下で用量調整が必要(処方薬では調整されるが、OTCでは購入者が気づきにくい)
- ジフェンヒドラミン等(抗ヒスタミン薬): 腎機能低下者(高齢者多数)での催眠・認知機能への過剰作用
登録販売者が習得すべき腎機能チェックの実践的視点:
「腎臓が弱い」という自覚のない高齢者でも実際にはCKDが潜在している場合が多い点が重要です。特に75歳以上、高血圧・糖尿病の既往がある購入者には、解熱鎮痛薬・一部の胃腸薬の長期使用について積極的に確認・説明することが求められます。「腎臓の病気を知らないが体のだるさ・むくみ・食欲不振が続く」という症状が腎機能低下のサインである可能性もあり、受診勧奨の判断材料とします。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第3節「泌尿器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。