第2章 人体の働きと医薬品37人体の働きと医薬品(皮膚・付属器)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問37:人体の働きと医薬品(皮膚・付属器)

皮膚の付属器および体温調節に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • エクリン腺(汗腺)は体のほぼ全体に分布し、水分・電解質(NaCl等)を含む汗を分泌して体温を調節するが、精神的緊張によって分泌が増えることはない。
  • アポクリン腺(特殊汗腺)はワキの下・外耳道・乳輪等の特定部位にのみ存在し、タンパク質・脂質・炭水化物を含む分泌物を出す。このアポクリン汗自体には臭いはないが、皮膚常在菌によって分解されると特有の臭いを発生する。正答
  • 皮脂腺は皮膚全体に均一に分布し、皮脂を分泌するが、顔面や頭皮では他の部位より皮脂腺の密度は低い。
  • 毛は毛根(毛球部)で産生され、毛は伸びても神経や血管を持たないため、毛の成長速度は自律神経や女性ホルモンによる影響を受けない。
  • 爪は皮膚の真皮が硬く変化したものであり、爪の成長は栄養状態や疾患の影響をまったく受けず、一定の速度で伸び続ける。
正答:アポクリン腺(特殊汗腺)はワキの下・外耳道・乳輪等の特定部位にのみ存在し、タンパク質・脂質・炭水化物を含む分泌物を出す。このアポクリン汗自体には臭いはないが、皮膚常在菌によって分解されると特有の臭いを発生する。

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正答はイです。

アポクリン腺はワキの下・外耳道・乳輪などの特定部位にある特殊な汗腺です。分泌物にはタンパク質や脂質が含まれており、分泌された直後は無臭(または弱い臭い)ですが、皮膚の常在菌(ブドウ球菌等)によって分解されると特有の臭い(腋臭)が発生します。

アは誤りで、精神的緊張でも汗(特に手のひら・脇・額のエクリン汗)が増加します。ウも誤りで、顔面・頭皮は皮脂腺の密度が高い(Tゾーン等)。エも誤りで、毛の成長はホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)の影響を強く受けます。オも誤りで、爪は皮膚の角質層が変化したもの(真皮ではない)であり、その成長は栄養状態や疾患によって変化します(「まったく受けず一定速度」は誤り)。

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皮膚の付属器まとめ:

| 付属器 | 分布 | 分泌物・機能 |

|---|---|---|

| エクリン腺(外分泌腺) | 全身(手のひら・足の裏・額に多い) | 水分・NaCl・尿素の汗→蒸発で体温調節 |

| アポクリン腺(特殊汗腺) | ワキの下・乳輪・陰部・外耳道等 | タンパク質・脂質・炭水化物含む汗→菌分解で臭い |

| 皮脂腺 | ほぼ全身(掌・足底除く)。顔面・頭皮・胸背部に多い | 皮脂(トリグリセリド・スクアレン等)分泌→皮膚保護・保湿 |

| 毛(体毛・頭髪) | 掌・足底・唇・性器の一部除く全身 | 保温・紫外線防護。毛球(毛乳頭)で産生 |

| 爪 | 指先 | 保護・つかみ動作の補助 |

アポクリン腺の特性(イの根拠):

アポクリン腺は性成熟後(思春期以降)に活発になり、発達に性ホルモンが関与しています。分泌物そのものは外見上乳白色・粘度高め・タンパク質・脂質・炭水化物を含みます。皮膚常在菌(コリネバクテリウム等)がこれを分解することでインドール・アンモニア・低級脂肪酸等の臭気成分が生じ、特有の腋臭(わきが)になります。

体温調節における汗の役割(アの誤りの根拠):

エクリン汗は:

1. 温熱性発汗: 体温上昇→視床下部の体温調節中枢→交感神経(コリン作動性)→エクリン腺刺激→発汗→蒸発→体温低下(蒸発熱:1gの汗が蒸発すると約0.6 kcal熱を奪う)。

2. 精神性発汗: 精神的緊張・不安→交感神経→手のひら・足の裏・額に優先的に発汗。「緊張で手に汗をかく」の正体。

精神性発汗が起こることは重要な生理事実であり、「精神的緊張では増えない」(ア)は誤りです。

各選択肢の解説:

  • ア(誤): 精神的緊張でもエクリン腺(精神性発汗)が活発になる。
  • イ(正): アポクリン腺の分布・分泌物の性状・菌分解による臭い発生は正しい。
  • ウ(誤): 顔面・頭皮は皮脂腺密度が高い(逆)。
  • エ(誤): 毛の成長は男性ホルモン・女性ホルモン・甲状腺ホルモン等の影響を受ける。
  • オ(誤): 爪は皮膚の角質層が変化したもの(真皮ではない)であり、成長は栄養状態・疾患の影響を受けて変化する。「真皮が変化・影響を受けず一定速度」は二重に誤り。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【皮膚付属器の生理学:皮脂・発汗・毛周期と外皮用薬の効果への応用】

皮脂腺の機能と疾患への関与:

皮脂腺は毛包に付属する(毛包皮脂腺単位: PSU)か、独立して存在します(口唇のフォアダイス斑等)。主な機能:

  • 皮膚バリア強化: 皮脂がスクアレン・ワックスエステル・トリグリセリド・スクアレン等の成分で皮膚表面を覆い、水分蒸散防止・外部からの刺激遮断を助ける。
  • 抗菌作用: 皮脂が皮膚常在菌(表皮ブドウ球菌・プロピオニバクテリウム等)の環境を形成。

にきびの発生機序(皮脂腺の過剰活動):

1. 思春期: 男性ホルモン(アンドロゲン)が皮脂腺の大きさ・皮脂産生量を増加させる。

2. 皮脂過剰産生 + 毛包口の角化異常(微小面皰形成)→ 毛包内に皮脂が貯留。

3. Cutibacterium acnes(旧: Propionibacterium acnes)が増殖→リパーゼで皮脂を遊離脂肪酸に分解→炎症誘発。

4. 炎症性にきび(赤にきび・膿疱)が形成。

OTC治療薬のイオウ(皮脂分泌抑制・角質軟化)・レゾルシン(角質溶解)・サリチル酸(角質剥離)はこの機序の上流に作用します。

発汗の神経支配の特殊性:

汗腺(エクリン腺)を支配する交感神経は他の交感神経と異なり、アセチルコリンを神経伝達物質として使用します(他の交感神経はノルアドレナリン)。これが「抗コリン薬(アトロピン・スコポラミン等)が発汗を抑制する」理由です。また抗コリン薬の過量投与や熱中症では「汗をかけない→体温上昇→熱中症リスク」という副作用が生じます。抗コリン成分を含むOTC医薬品(乗物酔い薬・鼻炎薬等)の服用後に激しい運動をすると熱中症リスクが上昇する可能性があります。

毛周期(ヘアサイクル)と育毛薬の作用点:

毛には成長期(アナジェン)→退行期(カタジェン)→休止期(テロジェン)という周期があります。

  • 成長期(約2〜7年): 毛乳頭の幹細胞が活発に増殖、毛が伸びる。
  • 退行期(約2〜3週間): 増殖が停止。
  • 休止期(約3〜4ヶ月): 毛が「抜ける準備」をして最終的に脱落。

男性型脱毛症(AGA: Androgenetic alopecia)では、アンドロゲン(特に5α-ジヒドロテストステロン:DHT)が毛乳頭の受容体に結合→成長期が短縮→毛が細くなり→やがて消失。OTC育毛薬のカルプロニウム塩化物は局所の血管拡張・アセチルコリン様作用で毛乳頭への血流増加を促進します(5αリダクターゼ阻害ではない)。

経皮吸収と付属器経路:

皮膚からの経皮吸収には2つの経路があります:

1. 経表皮経路: 角質層を直接通過(主要経路)。脂溶性が高い・分子量が小さい成分が通過しやすい。

2. 付属器経路(appendageal route): 毛包・汗腺・皮脂腺管を通じた経路。角質層が薄い・毛包開口部が多い部位(頭皮・顔面等)では相対的に重要。付属器の開口部が皮膚表面に占める面積はごく一部にとどまるが、バリア機能の弱い部位への薬物侵入経路として無視できない。

付属器経路は「バリア機能が弱い部位」への薬物侵入を許しやすく、乳幼児(毛包が相対的に多い)や顔面(毛包・皮脂腺が密)では経皮吸収が増加する傾向があります。これが「乳幼児・顔面へのステロイド外用薬は特に慎重に」とされる理由の一つです。

爪の栄養依存性と疾患指標:

爪はケラチン(タンパク質)が角質化したもので構成されます。栄養状態が低下するとスプーン状爪(鉄欠乏性貧血)・縦の溝(老化・栄養不良)・横の白線(急性疾患・ストレス)等の変化が現れます。爪の病変は内科的疾患のサインになることがあり、登録販売者として「爪の変形・変色がひどい」という購入者には受診勧奨が適切です。真菌感染(爪白癬)は外皮用の抗真菌薬(OTC)の適用ですが、爪白癬は外用薬では治療困難で内服が必要と判断される場合が多く、受診勧奨が適切です。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 二重正答を是正。選択肢オ(爪は角質変化・栄養や疾患で成長変化)が正答イと並ぶ第2の正答だったため、オを「真皮が変化・栄養や疾患の影響を受けず一定速度」とする誤肢へ書き換え正答をイに一意化(解説beginner・各肢判断も整合修正)。アポクリン腺の分布/菌分解で臭い・精神性発汗・顔頭皮の皮脂腺密度高・毛の成長はホルモン依存は正確。手引き範囲外の付属器開口部面積比(0.1〜1%)は断定を外し定性表現化。爪白癬は外用で難治のため内服・受診の文脈に補正。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第3節「皮膚」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

皮膚の付属器(汗腺・皮脂腺・毛・爪頻出度B

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