問題
耳の構造および乗物酔いの機序に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はオです。
乗物酔い防止薬の抗ヒスタミン成分は、延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示します。また、抗ヒスタミン成分は抗コリン作用を示すものが多く、この抗コリン作用も乗物酔いによるめまい、吐きけ等の防止・緩和に寄与すると考えられています。「抗コリン作用は寄与しない」とするオは誤りです。
ア・イ・ウ・エはすべて正しい記述です。外耳は音を集めて鼓膜へ伝え、中耳の耳小骨が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導し、内耳の前庭(耳石器官と半規管)が平衡感覚を感知します。乗物酔いは、反復される加速度刺激や動揺によって平衡感覚が混乱して生じます。
耳の3部構造:
| 部位 | 主な構造 | 機能 |
|---|---|---|
| 外耳 | 耳介・外耳道 | 音(空気振動)の集音・鼓膜への伝達 |
| 中耳 | 鼓膜・鼓室・耳小骨(ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨)・耳管 | 3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導。耳管は鼻腔や咽頭と通じ、耳抜き動作で鼓膜内外の気圧の均衡が戻る |
| 内耳 | 蝸牛(聴覚器官)・前庭(平衡器官:耳石器官と半規管) | 聴覚・平衡感覚(耳石器官=水平・垂直方向の加速度、半規管=体の回転や傾き) |
乗物酔いの機序(エの根拠):
手引きは、乗物酔い(動揺病)を「乗り物に乗っているとき反復される加速度刺激や動揺によって、平衡感覚が混乱して生じる身体の変調である」としています。前庭の内部はリンパ液で満たされており、リンパ液の動きが平衡感覚として感知されます。
乗物酔い防止薬の主な成分と作用(オの誤りの詳細):
| 成分種類 | 代表成分 | 主な作用(手引き) |
|---|---|---|
| 抗めまい成分 | ジフェニドール塩酸塩 | 内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用、内耳への血流を改善する作用 |
| 抗ヒスタミン成分 | ジメンヒドリナート、メクリジン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩等 | 延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える |
| 抗コリン成分 | スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減、末梢では消化管の緊張を低下 |
| キサンチン系成分 | カフェイン、ジプロフィリン | 脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減(カフェインが配合されていても他の成分による眠気が解消されるわけではない) |
手引きは「抗ヒスタミン成分は抗コリン作用を示すものが多いが、抗コリン作用も乗物酔いによるめまい、吐きけ等の防止・緩和に寄与すると考えられている」としています。抗コリン作用が寄与しないとするオは誤りです。
各選択肢の解説:
- ア(正): 外耳の集音機能は正しい。
- イ(正): 3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導する。
- ウ(正): 前庭は、水平・垂直方向の加速度を感知する部分(耳石器官)と、体の回転や傾きを感知する部分(半規管)に分けられ、内部はリンパ液で満たされている。
- エ(正): 手引きの乗物酔い(動揺病)の説明そのものである。
- オ(誤・正答): 抗ヒスタミン成分が示す抗コリン作用も、乗物酔いによるめまい、吐きけ等の防止・緩和に寄与すると考えられている。
【前庭系の神経解剖と乗物酔いの詳細な機序:鎮暈薬の合理的選択への応用】
前庭器官の構造と情報処理:
手引きでは、内耳の前庭は水平・垂直方向の加速度を感知する部分(耳石器官)と、体の回転や傾きを感知する部分(半規管)に分けられます。解剖学的には、耳石器官は「卵形嚢(utriculus)」と「球形嚢(sacculus)」の2つの袋からなり、半規管は3本(前・後・外側)あります。
- 卵形嚢: 水平方向の直線加速度を感知(「前に進む・止まる」感覚)。有毛細胞(感覚細胞)の上にオトリス(耳石)が乗り、加速度によってオトリスがずれて有毛細胞を刺激。
- 球形嚢: 垂直方向の直線加速度を感知(「上下に動く」感覚)。同様にオトリス機構。
- 半規管(3本): 三次元の回転加速度を感知。内部のリンパ液(内リンパ)の流れによってクプラ(感覚上皮)が偏位→有毛細胞が刺激。3本が互いに直交(水平・前垂直・後垂直)することで全方向の回転を感知。
前庭神経核(脳幹)→嘔吐中枢のシグナル経路:
前庭器官(有毛細胞)→前庭神経(第VIII脳神経)→前庭神経核(橋〜延髄)→複数の経路に分岐:
1. 小脳(平衡制御のフィードバック)
2. 眼球運動核(前庭眼反射→眼振・視線安定)
3. 脊髄(平衡姿勢制御)
4. 嘔吐中枢(延髄の孤束核・迷走神経背側核)→自律神経→嘔吐・吐き気
5. 大脳皮質(めまいの意識的知覚・視覚情報との統合→感覚矛盾の検知)
手引きは、乗物酔い(動揺病)を、反復される加速度刺激や動揺によって平衡感覚が混乱して生じる身体の変調と位置づけています。
乗物酔い防止薬の成分と作用(手引き第3章):
1. 抗ヒスタミン成分(ジメンヒドリナート・メクリジン塩酸塩・ジフェンヒドラミンサリチル酸塩等):
- 延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示す。
- 抗コリン作用を示すものが多いが、抗コリン作用も乗物酔いによるめまい、吐きけ等の防止・緩和に寄与すると考えられている(オの誤りはこの点)。
- ジメンヒドリナートはジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名で、専ら乗物酔い防止薬に配合される。メクリジン塩酸塩は他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く持続時間が長い。
- プロメタジンを含む成分は、外国で乳児突然死症候群や乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制を生じたとの報告があるため、15歳未満の小児では使用を避ける。
2. 抗コリン成分(スコポラミン臭化水素酸塩水和物):
- 中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させるとともに、末梢では消化管の緊張を低下させる。
- 消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされるが、肝臓で速やかに代謝されるため、抗ヒスタミン成分等と比べて作用の持続時間は短い。
- 抗コリン成分では、眠気を促すほかに、散瞳による目のかすみや異常なまぶしさを引き起こすことがある。緑内障や排尿困難のある人では、使用前に相談が必要とされる成分である。
3. キサンチン系成分(カフェイン・ジプロフィリン等):
- 脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させることを目的に配合される。カフェインには乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待される。
- カフェインが配合されているからといって、抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分又は鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではない。
抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分及び鎮静成分には、いずれも眠気を促す作用があるため、乗物の運転操作をするときは乗物酔い防止薬の使用を控える必要があります。また、乗物酔い防止薬には主として吐きけを抑えることを目的とした成分も配合されますが、つわりに伴う吐きけへの対処として使用することは適当ではありません。登録販売者として、こうした使用上の注意を購入者に伝えることが大切です。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-2-3)「耳」・第3章Ⅰ-5「鎮暈薬(乗物酔い防止薬)」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

