登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問39:人体の働きと医薬品(消化器・大腸)
大腸・直腸・肛門の機能に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア大腸での消化酵素分泌は活発に行われており、小腸で消化しきれなかった残渣を大腸内の消化酵素が最終的に分解する。
- イ大腸は主に水分・電解質の吸収と便の形成を行う器官であり、腸内細菌による発酵産物(短鎖脂肪酸等)も大腸粘膜から吸収される。正答
- ウ直腸は通常は空の状態が維持されており、便が直腸に到達することによって便意が生じる。ただし直腸が便で満たされても直腸壁の受容体が感知することはない。
- エ肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋があり、両方とも随意筋(意識的にコントロールできる筋肉)である。
- オ刺激性瀉下薬(センナ・大黄等)は大腸ではなく、主に小腸に作用して腸液の分泌を促進することで便通を改善する。
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正答はイです。
大腸の主な役割は水分と電解質(Na・Kなど)の吸収と、便の形成です。小腸でほぼ消化・吸収を終えた食べ物の残渣(液体状)が大腸に入り、水分が吸収されて固形の便になります。また腸内細菌が食物繊維を発酵させて短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸等)を産生し、これらも大腸粘膜から吸収されてエネルギー源になります。
アは誤りで、大腸では消化酵素はほとんど分泌されません。ウも誤りで、直腸壁に便が届いて受容体が感知されることで便意が生じます。エも誤りで、内肛門括約筋は不随意筋です。オも誤りで、センナ等の刺激性瀉下薬は主に大腸に作用します。
大腸の区分と機能:
| 部位 | 位置・特徴 |
|---|---|
| 盲腸・虫垂 | 右下腹部。小腸から大腸への接続部。虫垂は免疫組織あり |
| 上行結腸 | 右側面・上行 |
| 横行結腸 | 腹部を横断。移動性あり |
| 下行結腸 | 左側面・下行 |
| S状結腸 | S字状。便が一時貯留 |
| 直腸 | 骨盤内。便が蓄積→直腸壁の伸展受容体→便意→排便反射 |
| 肛門 | 内肛門括約筋(不随意)+外肛門括約筋(随意)で排便コントロール |
大腸の水分吸収量(イの根拠):
小腸から大腸に入る食物残渣の水分量は1日約1.5L。大腸での吸収後、便として排出されるのは約100〜150mL。つまり大腸で1.3〜1.4L/日の水分を吸収します。水分吸収が過剰→便秘(硬い便)、不足(腸が速く内容物を送り出す・腸液分泌過多)→下痢(軟便・水様便)。
瀉下薬の作用部位(オの誤りの根拠):
| 瀉下薬の種類 | 作用部位 | 代表成分 |
|---|---|---|
| 刺激性下剤 | 大腸(主) | センナ・大黄(アントラキノン)・ビサコジル(直腸) |
| 塩類下剤 | 小腸・大腸 | 酸化マグネシウム(浸透圧性) |
| 膨潤性下剤 | 大腸 | カルメロース(吸水膨張) |
| 上皮機能変容薬 | 小腸・大腸 | ルビプロストン(処方薬) |
刺激性瀉下薬(センナ・大黄等のアントラキノン配糖体)は腸内細菌によって活性体(エモジン・レインアンスロン等)に変換された後、大腸粘膜を刺激して腸管の蠕動運動を亢進させます。小腸が主な作用部位ではありません(オは誤り)。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 大腸での消化酵素分泌はほとんどない。腸内細菌の分解が主。
- イ(正): 水分・電解質吸収・便形成・腸内細菌の発酵産物吸収は正しい。
- ウ(誤): 直腸壁の伸展受容体が便を感知することで便意が生じる(感知しないは誤り)。
- エ(誤): 内肛門括約筋は「不随意筋」(平滑筋・自律神経支配)。外肛門括約筋は随意筋(横紋筋)。
- オ(誤): 刺激性瀉下薬の主な作用部位は大腸。
【大腸の機能詳細:腸内細菌叢・腸管神経系と瀉下薬・止瀉薬の作用機序】
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)と大腸機能:
大腸には約100兆個の細菌(主にバクテロイデス門・フィルミクテス門)が共生しており、これらが消化・吸収の最終段階と宿主の健康に重要な役割を果たします。
- 短鎖脂肪酸(SCFA)産生: 腸内細菌が食物繊維(セルロース・ペクチン等)を嫌気的発酵→酢酸(血中から筋肉・心臓へ)・プロピオン酸(肝臓でのグルコース新生制御)・酪酸(大腸上皮のエネルギー源・バリア機能維持・炎症抑制)を産生。イの「短鎖脂肪酸の吸収」は正しい。
- ビタミン産生: 腸内細菌がビタミンK₂・ビオチン・葉酸等を産生し、大腸から吸収される。
- 病原菌への防御: 定着抵抗性(colonization resistance)として外来の病原菌の増殖を抑制。
- 免疫調節: 腸内細菌叢と腸管免疫系(MALT: mucosa-associated lymphoid tissue)の相互作用で全身免疫が調節される。
腸管神経系(ENS: Enteric Nervous System):
大腸(消化管全体)は「第2の脳」と呼ばれる腸管神経系(マイスナー神経叢・アウエルバッハ神経叢)を持ちます。脳(中枢神経系)からの指令を受けずに自律的に消化管の運動・分泌を制御できます。
- マイスナー神経叢(粘膜下神経叢): 腸粘膜の分泌・吸収の調節。
- アウエルバッハ神経叢(筋間神経叢): 消化管の蠕動運動(輪状筋・縦走筋)を調節。
蠕動反射(peristaltic reflex): 内容物が腸壁を伸展→壁内神経が感知→近位側(口側)は収縮・遠位側(肛門側)は弛緩→内容物が肛門方向へ推進。この反射がなければ便通は起こりません。
止瀉薬(ロペラミド)の作用機序(大腸神経系への作用例):
ロペラミドはオピオイドμ受容体に作用(BBBを通過しないため中枢性鎮痛作用なし):
1. 腸管平滑筋のオピオイド受容体→蠕動運動抑制(大腸の蠕動が遅くなる→水分が多く吸収される→便が固くなる)。
2. 腸分泌抑制→腸液産生減少。
3. 肛門括約筋緊張増強→腸内容物の滞留時間延長。
ロペラミドは急性の軟便・水様便に有効ですが、感染性下痢(細菌性・ウイルス性)の場合は腸管内の病原体・毒素の排出を遅らせることで症状が悪化・重篤化する可能性があり、使用に注意が必要です(発熱・血便を伴う場合は禁忌)。
刺激性瀉下薬の代謝と副作用(センナ・大黄):
センナ・大黄に含まれるセンノシド(アントラキノン配糖体)は:
1. 小腸では吸収されずにほぼそのまま大腸へ到達。
2. 大腸内細菌のβ-グルコシダーゼによってセンノシドA・B→レインアンスロン(活性体)に変換。
3. レインアンスロンが大腸粘膜に作用→プロスタグランジンE₂・cAMP経路等を介して腸液分泌増加・蠕動亢進→排便促進。
副作用: 長期連用で大腸メラノーシス(大腸粘膜の黒色化・腸内細菌叢変化)・耐性形成(「下剤なしでは出なくなる」)・電解質異常(低カリウム血症)が生じる可能性があります。OTC内服瀉下薬の添付文書で「長期連用しない」と記載される理由はここにあります。
排便機序と排便障害の理解:
直腸に便が貯留→直腸壁の伸展受容体(ウの誤りの根拠:感知するのが正しい)→感知→骨盤神経(副交感神経)→大腸蠕動亢進・内肛門括約筋弛緩→排便反射。外肛門括約筋(横紋筋・随意筋)を随意的に収縮させることで排便を抑制し、トイレに行けるまで保持できます。
登録販売者として: 「便秘薬」の購入者には、①水分摂取・食物繊維摂取の生活習慣指導、②刺激性瀉下薬の長期連用リスクの説明、③酸化マグネシウム等の塩類下剤のほうが長期使用に比較的適していること(ただし腎機能低下者は高マグネシウム血症のおそれがあり要注意)の説明が有用です。「2週間以上使用しても改善しない・便に血が混じる」という場合は受診勧奨を優先します。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答イ(大腸は水分・電解質吸収と便形成、腸内細菌の発酵産物=短鎖脂肪酸も吸収)は一意性・事実ともOK。誤肢ア(大腸で消化酵素を活発分泌)・ウ(直腸壁が便を感知しない)・エ(内肛門括約筋が随意筋)・オ(センナ等が小腸に作用)はいずれも明確な誤り。センナ/大黄(アントラキノン配糖体)が大腸で細菌により活性体に変換され大腸を刺激、ロペラミドのμ受容体作用と感染性下痢での注意も正確。塩類下剤の例を炭酸マグネシウム→酸化マグネシウムに是正し腎機能低下者の高Mg血症リスクを明記。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第1節「消化器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。