第2章 人体の働きと医薬品44人体の働きと医薬品(薬理学基礎・作用機序)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問44:人体の働きと医薬品(薬理学基礎・作用機序)

薬物の作用機序(受容体・酵素・トランスポーターへの作用)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 薬物は体内の特定の分子(受容体・酵素・トランスポーター等)に結合することで作用を発揮するが、同一成分でもすべての組織に同様に作用するわけではなく、標的分子の存在する組織・臓器に選択的に作用する。
  • アゴニスト(作動薬)は受容体に結合してその受容体の活性化を引き起こし、生体の反応(筋収縮・腺分泌・血管拡張等)を促進する。
  • アンタゴニスト(拮抗薬)は受容体に結合するが受容体を活性化せず、内因性リガンド(アセチルコリン・ヒスタミン等)が受容体に結合するのを阻害することで作用を発揮する。
  • 酵素阻害薬は、特定の酵素の活性部位に結合してその酵素の働きを阻害するが、阻害された酵素が触媒していた化学反応(基質の産物への変換)を促進する効果がある。正答
  • トランスポーター阻害薬は、神経終末等における神経伝達物質の再取り込みを阻害することで、シナプス間隙での神経伝達物質の濃度を上昇させる。
正答:酵素阻害薬は、特定の酵素の活性部位に結合してその酵素の働きを阻害するが、阻害された酵素が触媒していた化学反応(基質の産物への変換)を促進する効果がある。

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正答はエです。

酵素阻害薬は特定の酵素の働きを「阻害(止める)」ものです。その酵素が触媒していた化学反応を「促進する効果がある」というエは正反対の記述で誤りです。酵素阻害薬によって、その酵素が行っていた反応(基質→産物への変換)は減少します。

薬物の主な作用機序は3種類あります。①受容体への結合(アゴニスト:活性化 / アンタゴニスト:遮断)、②酵素への作用(阻害→特定の化学反応を遅らせる)、③トランスポーターへの作用(再取り込み阻害等)。いずれも特定の分子への選択的な結合によって作用が発揮されます。

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薬物の主な標的分子と作用メカニズム:

| 標的 | 薬物の作用 | 代表成分(OTC関連) |

|---|---|---|

| 受容体・アゴニスト | 受容体を活性化→生体反応を促進 | アドレナリン作動成分(α受容体アゴニスト→血管収縮) |

| 受容体・アンタゴニスト | 受容体を遮断→内因性リガンドの作用を妨げる | 抗ヒスタミン薬(H1受容体アンタゴニスト)・抗コリン薬(mAChRアンタゴニスト) |

| 酵素・阻害薬 | 酵素の触媒作用を阻害→その酵素が作る産物を減らす | NSAIDs(COX阻害→プロスタグランジン産生減少) |

| トランスポーター阻害薬 | 神経伝達物質の再取り込みを阻害→シナプス濃度上昇 | (OTC例は限定的。SSRI等は処方薬) |

| イオンチャンネル | チャンネルの開閉を制御→細胞の興奮性変化 | 局所麻酔薬(Naチャンネル遮断) |

酵素阻害の作用方向(エの誤りの根拠):

酵素阻害薬(酵素インヒビター)は「酵素が触媒する反応を止める・遅らせる」薬です。

例: NSAIDs(COX阻害薬):

  • COX(シクロオキシゲナーゼ)= アラキドン酸をプロスタグランジン・トロンボキサン等に変換する酵素
  • NSAIDs がCOXを阻害 → COXが働けなくなる → プロスタグランジン産生が「減少」
  • 結果: 炎症・発熱・痛みが軽減

「酵素が触媒していた反応を促進する」(エ)は、阻害薬の定義と逆になっており明確に誤りです。

アゴニスト・アンタゴニストの詳細(イ・ウの正しい内容):

  • アゴニスト: 受容体(タンパク質)の「リガンド結合部位」に結合→受容体タンパクの立体構造変化→下流のシグナル伝達を開始→生体反応。内因性リガンド(アドレナリン・ヒスタミン等)と同様の作用を引き起こす薬。
  • アンタゴニスト: 受容体に結合するが「立体構造変化を起こさない」→シグナル伝達が始まらない→結合部位をブロックすることで内因性リガンドが結合するのを妨げる→生体反応を抑制。

各選択肢の解説:

  • ア(正): 薬物の選択性(標的分子の存在する組織に選択的に作用)は正しい。
  • イ(正): アゴニストの定義と作用は正しい。
  • ウ(正): アンタゴニストの定義と作用は正しい。
  • エ(誤・正答): 酵素阻害薬は触媒反応を「阻害(減少)」させる。「促進」は誤り。
  • オ(正): トランスポーター阻害→再取り込み減少→シナプス間隙の神経伝達物質濃度上昇は正しい。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【薬物-受容体相互作用の分子薬理学とOTC医薬品の作用機序への応用】

受容体の種類と細胞内シグナル伝達:

薬物が結合する受容体には大きく4種類があります:

1. Gタンパク質共役受容体(GPCR): 最も多くの薬物の標的。7回膜貫通型タンパク。結合→Gタンパク活性化→セカンドメッセンジャー(cAMP・IP3・DAG等)産生→細胞内キナーゼ等の活性化。

- Gs共役: cAMP上昇→PKA活性化(例: β₂アゴニスト→気管支拡張)

- Gi共役: cAMP低下(例: μオピオイド受容体→鎮痛)

- Gq共役: IP3産生→Ca²⁺放出(例: α₁受容体→血管収縮)

2. リガンド依存性イオンチャンネル(イオノトロピック受容体): 結合と同時にイオンチャンネルが開く(速い応答)。例: GABAA受容体(Cl⁻流入→過分極→中枢抑制)。ブロムワレリル尿素等がこの系に関与する可能性がある。

3. 酵素連結受容体: チロシンキナーゼ型受容体等。インスリン受容体・成長因子受容体が代表例。OTCとの直接的な関連は少ないが、インスリン抵抗性(2型糖尿病)の背景機序として重要。

4. 核内受容体: リガンドが細胞膜を通過して核内受容体に結合→転写因子として遺伝子発現を調節(時間的には遅い応答)。例: ステロイドホルモン受容体・ビタミンD受容体・甲状腺ホルモン受容体。OTC外用ステロイドも受容体を介して抗炎症遺伝子発現を制御。

OTC医薬品の主要成分と受容体の対応:

| OTC成分(例) | 標的受容体/酵素/トランスポーター | アゴニスト/アンタゴニスト/阻害薬 |

|---|---|---|

| 抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン等) | H1ヒスタミン受容体 | 競合的アンタゴニスト |

| 抗コリン薬(スコポラミン・ロートエキス等) | ムスカリン性AChR(mAChR) | 競合的アンタゴニスト |

| アドレナリン作動薬(エフェドリン等) | α₁・β₂アドレナリン受容体 | アゴニスト |

| NSAIDs(イブプロフェン等) | シクロオキシゲナーゼ(COX-1・COX-2) | 競合的阻害(イブプロフェン)・不可逆阻害(アスピリン) |

| 局所麻酔薬(リドカイン等) | 電位依存性Naチャンネル | チャンネル遮断薬 |

| コデイン | μオピオイド受容体 | 部分アゴニスト |

| ロペラミド | μオピオイド受容体(腸管局所) | アゴニスト(中枢移行しにくい)→蠕動抑制 |

「選択性」と「副作用」の関係:

薬物の標的は「意図した受容体/酵素」だけとは限らず、構造的に類似した「意図しない標的(オフターゲット)」にも結合することで副作用が生じます。

  • 第1世代抗ヒスタミン薬: H1受容体に加えmAChR・ドパミン受容体等にも結合→口渇(抗コリン)・眠気(中枢H1遮断)・めまい(ドパミン関連)等の副作用。
  • ある成分が「選択的」であるほど副作用が少ない傾向がありますが、完全に選択的な薬物は存在しません。

酵素阻害の可逆性・不可逆性(OTCでの重要な例):

アスピリンのCOX-1への不可逆的阻害(アセチル化)は既出の重要な例ですが、殺虫剤成分の作用機序も酵素・チャネルへの作用の好例です(手引き第3章「衛生害虫・殺虫剤」と接続):

  • 有機リン系殺虫成分(ジクロルボス等): アセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼを不可逆的に阻害→アセチルコリンが蓄積→コリン作動性の過剰症状。哺乳類が高濃度に曝露すると神経毒性を生じうる。
  • カーバメート系・オキサジアゾール系: 同じくアセチルコリンエステラーゼを阻害するが、有機リン系と異なり可逆的に結合するため毒性は比較的低い。
  • ピレスロイド系(フェノトリン・ペルメトリン等): 神経細胞の電位依存性ナトリウムチャネルに作用して神経伝達を撹乱(コリンエステラーゼ阻害ではない)。比較的速やかに分解・排泄されるため哺乳類への毒性は低い。

「特異性」とは何か:登録販売者にとっての実務的意義:

薬物の特異性(selectivity)の理解は、「なぜこの薬はこの症状に効くのか」「なぜこの副作用が出るのか」を説明するための基盤です。購入者に「どうしてこの薬は眠気が出るの?」と聞かれたとき、「第1世代抗ヒスタミン薬はH1受容体だけでなく脳内の受容体にも作用するため」という説明ができれば、「第2世代のほうが眠気が出にくい」という製品選択の提案も自然にできます。

作用機序を「暗記」ではなく「理解」することで、類似する成分の副作用を予測し、購入者に合った適切な製品選択をアドバイスできる実務力が培われます。これが「受容体・酵素・トランスポーター」という基礎薬理学の知識が登録販売者に必要とされる本質的な理由です。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答エ(酵素阻害薬は触媒反応を「阻害」するもので「促進」は誤り)は一意性・事実ともOK。アゴニスト/アンタゴニスト/酵素阻害/トランスポーター阻害の定義、各OTC成分の標的対応も正確。殺虫剤の機序記述を手引き第3章に整合させて整理: 有機リン系=アセチルコリンエステラーゼを不可逆阻害、カーバメート/オキサジアゾール系=可逆阻害、ピレスロイド系=Naチャネル作用(コリンエステラーゼ阻害ではない)と明記。「汗腺でのコリンエステラーゼ反応」の不明確な記述は削除。出典: 厚労省手引き第3章殺虫剤。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第6節「薬の体内での働き」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

薬の作用部位と受容体・酵素・トランスポーター(作用の特異性の基礎頻出度B

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