問題
薬物の体内分布に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエです。
脂溶性が高い薬物は脂肪組織に取り込まれて蓄積することがあります。血中の濃度が下がってくると、蓄積した薬物が少しずつ血中へ戻るため、作用が長引くことがあります。
アは誤りで、脳には血液脳関門、胎盤には血液-胎盤関門があります。イも誤りで、血漿タンパク質と複合体を作った成分は代謝されにくく、腎臓でも濾過されないため、作用が長く続く原因になります。ウは逆で、脳に移行しにくいのは大きな分子やイオン化した物質です。オも逆で、アルブミンが減ると遊離型が増え、作用が強まることがあります。
血漿タンパク質との複合体(イの根拠・手引き 第2章Ⅱ-1)):
手引きは、血漿タンパク質との複合体について次のように整理しています。
- 多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成している
- 複合体を形成している分子は、薬物代謝酵素の作用で代謝されず、トランスポーターによって輸送されることもない → 代謝や分布が制限され、血中濃度の低下は徐々に起こる
- 複合体は腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まり、作用が持続する原因となる
イは「速やかに代謝され、濾過されやすく、作用の持続に関係しない」としており、3点とも手引きと逆です。
血液脳関門と血液-胎盤関門(ア・ウの根拠):
- 脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や、小分子でもイオン化した物質は脳の組織へ移行しにくい。この働きを血液脳関門という(手引き p46)。水溶性の物質も脳へ拡散しにくい(MSDマニュアル)
- 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)がある(手引き p20)
アルブミンが減ったとき(オの根拠):
血清アルブミンが急に減ると、遊離型(非結合型)の薬物の濃度が上がり、作用が強まることがあります(MSDマニュアル「Pharmacokinetics in Older Adults」)。オは結合率・遊離型・薬効の向きがすべて逆です。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 脳には血液脳関門、胎盤には血液-胎盤関門がある。
- イ(誤): 複合体は代謝されにくく、腎臓で濾過されないため、作用が持続する原因となる(手引き p51)。
- ウ(誤): 脳へ移行しにくいのは大分子・イオン化した物質・水溶性の物質であり、ウは通過しやすい性質として逆を挙げている。
- エ(正): 脂溶性の高い薬物は脂肪組織に蓄積することがあり、血中濃度が下がると蓄積分が放出されて作用が長引くことがある。
- オ(誤): アルブミンが減ると遊離型が増え、作用が強まることがある。
【分布を左右する3つの要素:関門・タンパク結合・脂肪への蓄積】
1. 血液脳関門の仕組みと年齢による違い
手引き(第2章Ⅰ-4-1))は、脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や、小分子でもイオン化した物質は脳の組織へ移行しにくいと説明し、この働きを血液脳関門と呼んでいます。MSDマニュアルは、脳の毛細血管の内皮細胞どうしが他の毛細血管より密に接合していて水溶性の薬物の拡散を遅らせること、脂溶性の高い薬物には脳へ入りやすいものがあることを挙げています。
年齢による違いとして、手引き(第1章Ⅱ-4))は、小児は血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすいとしています。
2. 血液-胎盤関門
手引きは、胎盤には胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)があるが、医薬品の成分の胎児への移行がどの程度防御されるかは未解明のことも多く、そのため妊婦の使用については「相談すること」としているものが多いと説明しています(p20)。関門は「ある」が「完全に防ぐとは限らない」という整理です。
3. 血漿タンパク質との複合体(イ・オ)
手引き(第2章Ⅱ-1))の要点は次の3つです。
- 複合体を形成している分子は薬物代謝酵素で代謝されず、トランスポーターでも輸送されない
- そのため代謝や分布が制限され、血中濃度の低下は徐々に起こる
- 複合体は腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まり、作用が持続する原因となる
また、アルブミンはホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成し、血液で運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする働きがあります(手引き 第2章Ⅰ-1-3))。
MSDマニュアルによれば、組織へ移行して作用を現せるのは結合していない(遊離型の)薬物で、急な病気や栄養不良で血清アルブミンが急に減ると遊離型の濃度が上がり、作用が強まることがあります。オはこの向きを逆にした記述です。
4. 脂肪組織への蓄積(エ)
MSDマニュアルは、薬物が体脂肪へ分配されて蓄積することがあり、脂肪は血流が少ないため平衡に達するまで時間がかかること、組織に蓄積した薬物は血中濃度が下がるにつれて放出されるため作用を長引かせることがあると説明しています。例として、脂溶性の高い麻酔薬チオペンタールは、脂肪組織への再分布でいったん作用が切れた後、脂肪からゆっくり放出されて血中濃度が保たれ、反復投与では脂肪に大量に蓄積するとされています。
試験での使い方: 登録販売者試験で問われるのは手引きの範囲(血液脳関門の性質、小児の血液脳関門の未発達、血液-胎盤関門、血漿タンパク質との複合体と作用の持続)です。「複合体は代謝されない・濾過されない・作用が持続する」の3点は、向きを逆にすると誤りになるため、手引きの言い回しのまま覚えておきます。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅱ-1)「薬の生体内運命」(手引き R8 PDF p51)、第2章 Ⅰ-4-1)「中枢神経系」(手引き R8 PDF p46)、第1章 Ⅱ-4)「小児、高齢者等への配慮」(手引き R8 PDF p18, p20)。補足: MSDマニュアル プロフェッショナル版「Drug Distribution to Tissues」「Pharmacokinetics in Older Adults」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

