登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問35:人体の働きと医薬品(目・涙器)
涙液・涙器の構造と機能に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア涙液は主に眼瞼(まぶた)の皮脂腺から分泌され、目の表面を保護する脂質層のみで構成されている。
- イ涙は涙腺(主涙腺・副涙腺)で産生され、眼表面(角膜・結膜)を潤した後、涙点(上涙点・下涙点)から涙小管・涙嚢・鼻涙管を経て鼻腔へと排出される。正答
- ウドライアイ(乾性角結膜炎)は涙液の分泌量が多すぎることで起こり、目の異物感・充血の原因となる。
- エ点眼薬は眼の結膜嚢に滴下されると角膜上皮から眼内へ吸収されるのみであり、全身循環への移行は起こらない。
- オ涙液は常に一定量が分泌されており、精神的刺激(感動・悲しみ)や物理的刺激(ほこり・異物)によって分泌量が変化することはない。
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正答はイです。
涙は涙腺(主涙腺・副涙腺)で作られ、眼の表面を潤した後、まぶたの端にある涙点(小さな穴)から涙小管→涙嚢→鼻涙管を通って鼻腔へと流れます。泣いたときに鼻水が出るのはこの経路で涙が鼻に流れ込むためです。
アは誤りで、涙液は主涙腺から分泌され、脂質層・水層・ムチン層の3層構造です。ウも誤りで、ドライアイは涙液量が「少なすぎる」または「質が悪い」ことで起こります。エも誤りで、点眼薬は鼻涙管から鼻粘膜を経て全身に吸収されることがあります。オも誤りで、刺激によって涙液分泌量は変化します。
涙液の構造(3層):
| 層 | 産生源 | 役割 |
|---|---|---|
| 脂質層(外層) | マイボーム腺(眼瞼の脂腺) | 蒸発防止・表面張力維持 |
| 水層(中層) | 主涙腺・副涙腺 | 最も厚い層・角膜への酸素・栄養供給・洗浄 |
| ムチン層(内層) | 結膜杯細胞 | 角膜への涙液の濡れ広がりを助ける |
涙の排出経路(イが正しい理由):
```
涙腺(主涙腺・副涙腺)で産生
↓
眼表面(角膜・結膜)に広がって角膜保護
↓
まぶたの端(上涙点・下涙点)から吸引
↓
涙小管(上・下)→涙嚢→鼻涙管→鼻腔(下鼻道)へ
```
点眼薬の全身吸収(エの誤りの根拠):
点眼薬の一部は:
1. 角膜から眼内(房水)へ吸収→眼局所に作用
2. 結膜から吸収→眼内へ
3. 鼻涙管経路: 涙点→鼻涙管→鼻粘膜から全身循環へ(systemic absorption)
特に鼻粘膜は毛細血管が豊富で吸収が良く、点眼薬が全身作用を示す場合があります。β遮断薬点眼液(緑内障用・処方薬)が喘息患者に気管支収縮を引き起こす例が知られています。OTC点眼薬でも同様の可能性があり、心疾患・血圧・緑内障等の基礎疾患がある場合は注意が必要です。
ドライアイの病態(ウの誤りの根拠):
ドライアイは涙液量の「不足」または「質の低下」(特にムチン層・脂質層の異常による蒸発亢進)によって角結膜上皮が傷つく疾患です。症状は目の乾燥感・異物感・充血・視力変動等。涙液量の「多すぎ」は涙目(流涙症)として別の状態です。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 涙液は主涙腺で産生。脂質層だけでなく3層構造。
- イ(正): 涙の産生・排出経路として正しい記述。
- ウ(誤): ドライアイは涙液「不足」または「質の低下」が原因。多すぎるのは別の状態。
- エ(誤): 点眼薬は鼻涙管→鼻粘膜から全身に吸収される経路がある。
- オ(誤): 刺激(精神的・物理的)によって分泌量は変化する(反射性流涙)。
【涙液の生理学と点眼薬の薬物動態:OTC眼科用薬の合理的選択の基礎】
涙液の生理的役割の詳細:
涙液は単なる「目の潤い」ではなく、以下の複数の生理機能を担います:
1. 機械的洗浄: 眼表面の異物・微生物を鼻腔へ排出。
2. 免疫防御: リゾチーム(細菌細胞壁を溶解)・ラクトフェリン(鉄をキレート→細菌増殖抑制)・分泌型IgA(抗体)が含まれる。
3. 栄養供給: 角膜は血管のない組織。酸素・グルコース・アミノ酸を涙液から供給。
4. 光学機能維持: 角膜表面の平滑化→良好な視力の維持。涙液層が不均一になると視力が変動する。
ドライアイの病態分類(メカニズムによる大別):
1. 涙液(水分)の量が不足するタイプ: 主涙腺からの水分産生不足(加齢、シェーグレン症候群等の自己免疫疾患)。
2. 涙液が蒸発しやすくなるタイプ: マイボーム腺機能不全等による脂質層の異常→涙液蒸発が速まる。スマートフォン・PC使用でのまばたき減少とも関連。
3. 両者が混在するタイプ。
(注: ドライアイの詳細な分類体系は学術的に更新されることがあり、登録販売者試験では「涙液の不足または質の低下で角結膜が傷つく」という基本的理解が問われる。)
OTC人工涙液(ヒアルロン酸ナトリウム・メチルセルロース等含有)は水液層を補うことで水液欠乏型に効果的ですが、マイボーム腺機能不全(脂質層の異常)が主因の場合は温罨法(目の温め)や脂質含有人工涙液が有効とされます。
点眼薬の薬物動態(眼科薬物動態:OPK):
点眼薬を1滴(約30〜50μL)点眼した場合:
- 結膜嚢の容量は通常約7μL(最大約30μL)→大部分が溢れ出る
- 残った薬液の一部が角膜上皮→房水へ吸収(眼局所作用)
- 大部分が涙点→鼻涙管→鼻粘膜→全身吸収(systemic absorption)
- 鼻粘膜のバイオアベイラビリティは口腔粘膜に近く、肝初回通過効果を受けない→全身濃度が予想より高くなりやすい
点眼薬の全身副作用例(OTC含む):
| 成分 | 全身副作用のメカニズム |
|---|---|
| アドレナリン作動性血管収縮薬(ナファゾリン等・充血除去目的) | 鼻粘膜から吸収→α₁受容体刺激→血圧上昇・動悸(心血管系への影響) |
| 抗コリン薬(アトロピン等・処方点眼) | 全身のムスカリン受容体抑制→口渇・排尿困難・動悸 |
| OTCの血管収縮成分含有点眼薬 | 高血圧・心疾患・緑内障・前立腺肥大等の基礎疾患者は使用前に相談が必要 |
眼表面の吸収バリアと点眼薬の添加物:
角膜上皮は密着結合(タイトジャンクション)を持ち、親水性の高い成分は通過しにくい特性があります。点眼薬の製剤設計では:
- 等張調整: 涙液との浸透圧を合わせる(過高張・過低張は角膜上皮を刺激)
- pH調整: 涙液のpH(7.4)に合わせる(強酸・強塩基は刺激・角膜傷害)
- 保存剤(塩化ベンザルコニウム等): 抗菌のために添加されるが、長期使用で角膜上皮への毒性があることが知られており、コンタクトレンズ使用中は保存剤フリー(防腐剤フリー)製品が推奨される場合がある
コンタクトレンズ装用と点眼薬の注意:
コンタクトレンズ(特にソフトコンタクト)は点眼薬の成分・保存剤を吸着・変性させる可能性があります。「コンタクトレンズ装用中は使用しないでください」という注意書きのある点眼薬では、装用を外してから点眼→一定時間待ってから再装用することが推奨されます。登録販売者はコンタクト使用の有無を確認して適切な製品を案内する実務知識が必要です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答イ(涙の産生→眼表面→涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管→鼻腔の排出経路)は一意性・解剖事実ともOK。3層構造・点眼薬の鼻涙管経由の全身吸収・ドライアイ=涙液不足/質低下も正確。専門学会の分類名(TFOS DEWS II・ATD/EDE)は手引き範囲外のため、機序ベースの平易な大別に置換。再装用待ち時間は製品により異なるため「15分」の断定を「一定時間」に緩和。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第4節「目」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。