登録販売者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問34|肝臓の解毒・代謝の詳細

問題

登録販売者 | 第2章 人体の働きと医薬品 | (手引き令和8年4月版・令和8年5月施行改正反映)

肝臓における薬物代謝に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ

タップするとすぐ答え合わせ

答え合わせ

正解は オ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)

解説

正答はオです。

肝臓のCYP酵素は「誘導(活性促進)」も「阻害(活性低下)」も両方起こります。「阻害だけが起こる」は誤りです。例えばリファンピシン(抗結核薬)やセントジョーンズワート(ハーブ)はCYP酵素を「誘導」(活性を高める)することが知られており、これにより他の薬物の代謝が速まって血中濃度が低下します。逆に「阻害」があると代謝が遅れて血中濃度が高くなります。どちらも薬物相互作用の原因となります。

肝臓の薬物代謝は第I相(酸化・還元・加水分解)→第II相(抱合:グルクロン酸抱合・硫酸抱合等)という順序で進み、最終的に水溶性が高まって排泄されます。

薬物代謝の2相:第I相と第II相

段階反応の種類主な酵素目的
第I相(Phase I)酸化・還元・加水分解CYP450系(CYP3A4等)、FMO、エステラーゼ等官能基を露出・修飾
第II相(Phase II)抱合(コンジュゲーション)UGT(グルクロン酸抱合)、SULT(硫酸抱合)等水溶性↑→排泄促進

CYP酵素の誘導と阻害(オの誤りの根拠):

作用内容相互作用の方向
誘導(Induction)CYP酵素タンパクの発現量が増加→代謝速度↑他の薬物の血中濃度↓(効果減弱)
阻害(Inhibition)CYP酵素活性が低下→代謝速度↓他の薬物の血中濃度↑(副作用・過量リスク)

誘導の代表例: リファンピシン(CYP3A4等)、セントジョーンズワート(CYP3A4・P-gp)、フェニトイン。

阻害の代表例: グレープフルーツ(フラノクマリン→CYP3A4不可逆的阻害)、フルコナゾール(CYP3A4阻害)。

腸肝循環(エの正しい内容):

グルクロン酸抱合体は胆汁中に排出され十二指腸に分泌されます。腸内細菌(β-グルクロニダーゼ)がグルクロン酸を切り離すと、活性成分が再生され小腸から再吸収されます。これが腸肝循環(enterohepatic circulation)であり、薬物の体内での半減期を延長する効果があります。

各選択肢の解説:

  • ア(正): CYP酵素は肝細胞小胞体(ミクロソーム分画)に存在。正しい。
  • イ(正): 第I相では不活性化だけでなく、活性代謝物が生じることもある(プロドラッグ活性化等)。
  • ウ(正): グルクロン酸抱合による水溶性向上・排泄促進は正しい。
  • エ(正): 腸肝循環の記述は正しい。
  • オ(誤・正答): CYP酵素は誘導も阻害も起こる。誘導だけが起きる、阻害だけが起きるという一方的な記述はいずれも誤り。

【肝臓の薬物代謝酵素の全体像とOTC医薬品への実務的影響】

CYP酵素系の種類と主な基質:

ヒトで重要なCYPサブタイプと代謝する主な薬物(基質):

CYPサブタイプ代謝する主な基質(例)特徴
CYP3A4ニフェジピン・エリスロマイシン・シクロスポリン・多くのスタチン最も多くの薬物を代謝(全体の約50%)。腸管にも存在
CYP2D6コデイン・デキストロメトルファン・β遮断薬遺伝的多型(PM/EM/UM型)が有名。OTCに関連多数
CYP2C9ワルファリン・NSAIDs(一部)・スルホニルウレア遺伝的多型で出血リスク変動
CYP2C19プロトンポンプ阻害薬・クロピドグレル遺伝的多型(日本人にPMが多い)
CYP1A2カフェイン・テオフィリンタバコ(PAH)が誘導。カフェイン関連OTCに関連

OTC医薬品に関連する重要なCYP2D6多型:

コデインはCYP2D6によってモルヒネに代謝されます(活性化)。

  • 超高代謝型(UM: Ultra Metabolizer): 通常量で過量のモルヒネが生成→呼吸抑制・乳児への乳汁移行で死亡事例あり(授乳中の母親へのコデイン処方が問題)。
  • 低代謝型(PM: Poor Metabolizer): コデインがモルヒネに変換されない→鎮咳効果が出にくい。

これが、コデイン類を含む一般用医薬品で12歳未満の小児が「してはいけないこと」とされ(平成29年度の安全対策調査会での検討による措置)、授乳中の人は服用しないか授乳を避けるとされる薬理的背景の一部です。

デキストロメトルファン(OTC鎮咳薬に多用)もCYP2D6で代謝されますが、コデインと異なりオピオイド活性を持つ代謝物を生じないため、依存リスクが低いとされています。しかし高用量では解離症状(幻覚・興奮)が生じる可能性があり、乱用される場合があります(CYP2D6との関係)。

第II相反応の代謝物の多様性:

第II相(抱合)反応は「毒性のある化合物を無毒化する」だけでなく、複雑な影響を持ちます:

1. グルクロン酸抱合(UGT: UDP-glucuronosyltransferase): 最も主要な抱合反応。胆汁排泄が多く腸肝循環に関与。ビリルビン(赤血球破壊で生じるヘム分解物)の排泄もUGTが担当→UGT欠損はジルベール症候群・クリグラー・ナジャール症候群の原因。

2. 硫酸抱合(SULT): グルクロン酸抱合と競合。一部の化合物では硫酸抱合体が活性化される(反応性スルフェート形成→DNA傷害性)。

3. グルタチオン抱合(GST): 反応性の高い求電子中間体を無毒化。アセトアミノフェン過量では肝臓内のグルタチオンが枯渇し、反応性中間体(NAPQI)が肝細胞タンパクと結合→肝細胞壊死(アセトアミノフェン肝障害)。

アセトアミノフェン(OTCに多用)の代謝と安全性:

アセトアミノフェンは:

  • 通常量: 約90%がグルクロン酸抱合・硫酸抱合(無毒→排泄)、約5%がCYP2E1でNAPQIに変換→グルタチオン抱合で無毒化。
  • 過量服用: NAPQI産生過多→グルタチオン枯渇→NAPQIが肝細胞タンパクにアルキル化→肝細胞壊死(急性肝不全の可能性)。
  • 飲酒(CYP2E1誘導): NAPQIがより多く産生→過量リスクが低い用量でも肝障害リスク↑。

これが「アルコール多飲者はアセトアミノフェンに注意」の薬理的根拠であり、添付文書の「相談すること」記載の背景です。

腸肝循環の臨床的意義:

腸肝循環が起こる薬物は半減期が延長します。コレスチラミン(コレステロール低下薬)は胆汁酸の腸肝循環を遮断してコレステロールを低下させる薬ですが、同様にグルクロン酸抱合体を腸で捕捉して腸肝循環を妨げることがあり、一部のOTC製品との相互作用に留意が必要です(ただしOTCでコレスチラミンは販売されていません)。

登録販売者として: 「飲み合わせが心配」という購入者への対応では、「グレープフルーツ・セントジョーンズワート等はCYP酵素に影響する可能性がある」という基本知識が、医師・薬剤師への確認を勧めるための根拠となります。

この問題の根拠根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-1-1)「消化器系」(肝臓)・Ⅱ-1)「薬の生体内運命」
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-1-1)「消化器系」(肝臓)・Ⅱ-1)「薬の生体内運命」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

この問題の関連トピック

  • 肝臓の解毒・代謝の詳細(第I相・第II相反応・グルクロン酸抱合・薬物代謝酵素
  • 頻出度A

関連する問題

ページの先頭へ