衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問11:採光照明
採光・照明に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア照度とは、ある面に当たる光の量(光束)をその面の面積で割った値であり、単位はルクス(lx)で表される。
- イ採光においては、北向きの窓から入る光(北側光)は、直射日光が入らず一年を通じて均一な自然光が得られるため、製図作業や精密作業場では望ましい採光方向とされることが多い。
- ウグレア(まぶしさ)とは、視野内に著しく輝度の高い部分があることによって生じる不快感や視機能の低下であり、間接照明よりも直接照明の方がグレアが生じやすい。
- エ照明の光色については、作業内容に関わらず、高色温度(青白い光)の照明が常に作業効率と眼精疲労の両方の点で最優れている。正答
- オ作業面の照度と周囲の照度の差が極端に大きい場合(例えば、作業台だけが明るく周囲が暗い場合)、目の明暗への順応の繰り返しによって眼精疲労が増加する。
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誤りはエです。「作業内容に関わらず高色温度が常に最優れている」という断定が誤りです。照明の色温度は作業内容・場面によって適切なものが異なります。高色温度(昼光色・5000〜6500K)は覚醒感が高く精密作業や検査作業に向きますが、長時間使用すると眼精疲労を誘発することがあります。一方、低色温度(電球色・2700〜3000K)はリラックス感があり休憩室や応接室に向きます。「作業内容に関わらず常に最優れている」という絶対的な断定は誤りです。
ア(照度の定義)・イ(北側光の特性)・ウ(グレアと直接照明)・オ(照度差と眼精疲労)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 照度(illuminance)はE=Φ/A(Φ=光束[lm]、A=面積[m²])で定義され、単位はルクス(lx)。照度は光を受ける面の明るさの指標です。輝度(luminance)は光源自体の明るさ(cd/m²)とは区別します。
- イ(正): 北側光は太陽の直射光を受けないため、時間帯・季節によるばらつきが少なく安定した間接的自然光が得られます。製図・絵画・精密検査など「色の正確な識別」や「安定した照度」が必要な作業では北側採光が推奨されることがあります。
- ウ(正): グレアは「光源または反射光が視野内に入ることで生じる不快感や視力低下」です。直接照明は光源が直接視野に入る場合があり、高輝度の光源が露出したままだとグレアが生じやすいです。間接照明は天井・壁で反射した拡散光を使用するため輝度が均一化され、グレアが生じにくいです。
- エ(誤): 色温度と作業効率・眼精疲労の関係は一様ではなく、「高色温度が常に最優れている」は誤りです。一般に高色温度(昼光色系)は集中を要する作業に向きますが、長時間使用や夜間使用では覚醒過剰・睡眠障害のリスクもあります。適切な色温度は作業内容・滞在時間・利用者の年齢等によって選択します。
- オ(正): 視野内の照度差が大きいと、眼が明暗に順応するために筋(毛様体筋・瞳孔括約筋)が繰り返し伸縮し、眼精疲労が蓄積します。均一な照度分布が作業効率と眼の健康に重要です。
【理論的背景】
採光・照明は、労働者の視覚的快適性・作業効率・眼の健康に直接影響する重要な作業環境要素です。不十分な照明は眼精疲労・視力低下・作業ミスの原因となり、過剰な照明や不均一な照明はグレア・反射・疲労の原因となります。
色温度(Color Temperature)と演色性(Color Rendering Index: CRI)は異なる概念です:
- 色温度(ケルビン: K): 光の色合い(青白い/オレンジ)を表す。高色温度=青白い光(昼光色)、低色温度=オレンジ色(電球色)
- 演色性(Ra): 物体の色をどれだけ正確に見せられるか。Ra=100が自然光と同等。色の識別が重要な作業(印刷・検査・絵画)では高演色性(Ra≧90)が必要
色温度と作業の適合性(目安):
| 色温度 | 区分 | 向く作業・環境 |
|---|---|---|
| 6500K(昼光色) | 青白い光 | 精密作業・検査・製図 |
| 5000K(昼白色) | やや青白い | 一般事務・工場 |
| 3500K(白色) | 中間 | 店舗・教室 |
| 3000K(温白色) | やや暖かい | 医療・ホテルフロント |
| 2700K(電球色) | 暖かいオレンジ | 休憩室・応接室・寝室 |
【実務・条文構造】
照明に関連する法令・基準:
事務所衛生基準規則(事務所則)第10条(令和4年12月改正施行):
- 一般的な事務作業: 300ルクス以上
- 付随的な事務作業: 150ルクス以上
安衛則第604条(製造業等の作業場の照度基準):
- 精密な作業: 300ルクス以上
- 普通の作業: 150ルクス以上
- 粗な作業: 70ルクス以上
(※安衛則604条は製造業等の作業場に適用。事務室は事務所則第10条が優先適用される)
照明の均一性の重要性(JIS Z 9110照明基準総則):
- 最小照度/平均照度(照度均一度)は0.6以上が推奨
- 作業面と周辺(3倍の範囲)の照度比は1/3以上
- 作業面と周辺の照度差が大きいと瞳孔の収縮・拡張の繰り返しで眼精疲労が増大
グレアの分類と対策:
- 不快グレア(Discomfort Glare): 不快感を生じさせるグレア
- 失能グレア(Disability Glare): 視力を低下させるグレア
- 対策: 遮光格子・ルーバー・間接照明・拡散カバー・光源の位置調整(視野から外す)
【試験での位置づけ】
採光・照明の問題では「照度の定義(ルクス)と輝度の区別」「グレアの定義と直接照明での発生しやすさ」「北側採光の特性(均一・安定)」「照度の均一性と眼精疲労の関係」「色温度は作業内容によって選択する(常に高色温度が最良ではない)」が出題されます。エのような「常に最優れている」という絶対的断定は典型的な誤り表現パターンであり、こうした選択肢は誤りである可能性が高いと意識することが有用です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 照度(lx=lm/m²)と輝度(cd/m²)の区別は実務でも重要です。照度は「照らされる面の明るさ」、輝度は「光源または反射面が自ら発する明るさ(まぶしさ)」です。グレアは輝度の問題(高輝度の光源が視野内にある)であり、照度を上げるだけではグレア問題は解決しません。
- イ: 北側採光の均一性は、絵画・芸術・製図作業で歴史的に重要視されてきました。一方、太陽光の直射が入る南・東・西向きの窓からは、時間帯によって強い直射日光とグレアが生じ、作業面の照度が極端に変動するため、遮光対策(ブラインド・すりガラス)が必要になります。
- ウ: 情報機器作業(PC作業)では、モニター画面への照明・窓の映り込みがグレア問題として特に重要です。厚生労働省の情報機器作業ガイドラインでは、モニターへの照明・窓の映り込みを防ぐための照明計画(モニターを窓・照明と平行に配置、間接照明の活用)が推奨されています。
- エ: 夜間の高色温度照明(青白い光)は、短波長光(青色光)がメラトニン分泌を抑制して体内時計を乱す可能性があります(ブルーライト問題)。夜間勤務者・夕方以降の室内照明には低色温度(暖色系)が睡眠への悪影響を軽減することが知られています。
- オ: 局所照明(スタンドライトなど)で作業台だけを明るくして部屋全体が暗い設定は、眼精疲労の観点から望ましくありません。作業照度と背景照度の比は3:1程度以内が推奨されます。全般照明(部屋全体)と局所照明(作業台)の組み合わせ(補助照明)が作業環境管理の標準的なアプローチです。
【根拠】医学的事実(確立した照明工学・視覚生理学)。事務所衛生基準規則第10条(令和4年12月施行)・JIS Z 9110(照明基準総則)準拠。
【補足】色温度は作業内容によって選択するもので「常に高色温度が最優れている」という絶対的断定は誤り。グレアは直接照明で生じやすく間接照明では抑制される。北側光は安定した均一な自然光が得られる。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した照明工学・視覚生理学)。グレアの定義・間接照明の特性は照明学会・建築物環境衛生管理基準の基礎知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。