問題
毒素型食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはオです。「毒素型食中毒は感染型より一般に潜伏期間が長い」という部分が誤りです。正しくは、毒素型食中毒の潜伏期間は感染型より短いのが一般的な特徴です。黄色ブドウ球菌食中毒の潜伏期間は0.5〜6時間(平均3時間)と短く、これは食品中で既に産生された毒素を摂取するため(菌の増殖時間が不要)、すぐに症状が出るためです。
感染型(サルモネラ・カンピロバクター等)は菌が腸管内で増殖する時間が必要なため、潜伏期間が数時間〜数日と長くなります。ア(ボツリヌス菌の嫌気性)・イ(毒素の神経作用)・ウ(毒素と芽胞の耐熱性の違い)・エ(エンテロトキシンの耐熱性)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は芽胞を形成する偏性嫌気性の桿菌です。芽胞は低酸素状態に置かれると発芽・増殖し、毒素を産生します。そのためビン詰・缶詰・容器包装詰め食品・保存食品(特に自家製のもの)が原因となりやすく、国内では「いずし」や真空包装された辛子レンコンによる食中毒も起きています。
- イ(正): ボツリヌス毒素は神経‐筋接合部のシナプス末端でアセチルコリンの放出を抑制し、神経麻痺症状を起こします。複視などの眼症状、嚥下障害などが現れ、進行すると四肢の麻痺から呼吸困難に陥り死に至ることがあります。
- ウ(正): ボツリヌス毒素(タンパク質)は易熱性で、80℃で20分または100℃で1〜2分の加熱で不活化されます。一方、芽胞は耐熱性で、Ⅰ群の芽胞のように非常に強い加熱条件を必要とするものもあります。ボツリヌス食中毒のほとんどが自家製食品で起きているのは、原材料が芽胞に汚染されているためとされています。
- エ(正): エンテロトキシンは100℃・20分の加熱によっても完全には失活しない高い耐熱性を持ちます。黄色ブドウ球菌自体の耐熱性は高くないものの、毒素は通常の加熱調理では活性を失わないため、「加熱すれば安全」とはいえません。
- オ(誤): 毒素型食中毒は感染型より潜伏期間が短いのが一般的な特徴です。「感染型より長い」は逆の誤りです。黄色ブドウ球菌の0.5〜6時間(平均3時間)・ボツリヌス食中毒の一般に8〜36時間(毒素型の中では比較的長い)は、感染型(サルモネラ12〜48時間・カンピロバクター2〜7日)と比較する際の基準として覚えておく必要があります。
【理論的背景】
毒素型食中毒のメカニズムを理解するうえで重要なのは「毒素が食品中で既に産生されているため、菌の腸管内での増殖なしに即座に症状が発現する」という点です。
潜伏期間の決定因子比較:
- 感染型: 菌の腸管内での増殖→免疫応答→炎症→症状発現。腸管内での菌の増殖・侵入時間が必要。通常数時間〜数日。
- 毒素型: 食品中に既に産生された毒素を摂取→毒素が作用→症状発現。黄色ブドウ球菌では0.5〜6時間(平均3時間)と短い(ボツリヌスは一般に8〜36時間で、毒素型の中では長い)。
ボツリヌス毒素の性状:
- 産生される毒素の抗原性によりA〜Gの7型に分類され、ヒトの食中毒は主にA・B・E型毒素によって発生しています。
- 毒素は易熱性のタンパク質で、神経‐筋接合部のシナプス末端においてアセチルコリンの放出を抑制することにより神経麻痺症状を起こします。
- 症状は悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状に続き、複視などの眼症状、構音障害・嚥下障害などが現れ、進行すると四肢の麻痺から呼吸困難に陥って死に至ることがあります。国内では抗毒素療法の導入(1962年)以降、致死率は約30%から約4%に低下しています。
【実務・条文構造】
ボツリヌス食中毒の実務上の知識:
原因となりやすい食品(酸素のない状態の食品):
- ビン詰・缶詰・容器包装詰め食品・保存食品(ビン詰・缶詰は特に自家製のもの)
- 国内では「いずし」や、真空包装された辛子レンコン、サトイモの缶詰による食中毒が発生
- 市販の缶詰・瓶詰・真空パック食品でも、異常膨張や異臭があれば食べない
発芽・増殖の抑制:
- ボツリヌス菌は3℃未満、水分活性(Aw)0.94未満、または高酸性(pH4.6未満)では増殖・毒素産生ができません。
- 毒素が産生されていても、喫食前に十分加熱すれば食中毒を予防できます。
乳児ボツリヌス症(重要):
- 経口的に摂取された芽胞が乳児(生後1歳未満)の腸管内で発芽・増殖し、産生された毒素が吸収されて起こる
- 1歳未満の乳児は腸内細菌叢が成人と異なり、腸管内でボツリヌス菌の定着と増殖が起こりやすいとされる
- 予防: 1歳未満の乳児には、ハチミツやハチミツ入りの食品等を与えない(試験頻出事項)
黄色ブドウ球菌の特性:
- 健常人の鼻腔・咽頭・腸管等にも生息し、保菌率は約40%
- 化膿菌でもあり、手指等の傷口の化膿巣には本菌が多量に存在するため、食品取扱者を介した汚染が起こりやすい
- 食塩濃度16〜18%でも増殖する
- 菌自体の耐熱性は高くないが、エンテロトキシンは通常の加熱調理では活性を失わない
両毒素型食中毒の比較表(試験頻出):
| 特徴 | 黄色ブドウ球菌 | ボツリヌス菌 |
|---|---|---|
| 毒素 | エンテロトキシン(腸管毒) | ボツリヌス毒素(神経毒) |
| 毒素耐熱性 | 高(100℃20分でも完全には失活しない) | 低(80℃20分・100℃1〜2分で不活化) |
| 芽胞形成 | なし | あり(耐熱性) |
| 潜伏期間 | 0.5〜6時間(平均3時間) | 一般に8〜36時間 |
| 主症状 | 悪心・嘔吐(必発)・下痢 | 眼症状・嚥下障害・四肢の麻痺・呼吸困難(神経症状) |
【試験での位置づけ】
毒素型食中毒問題では「毒素型は感染型より潜伏期間が短い(長いは誤り)」「黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは耐熱性が高い」「ボツリヌス毒素は80℃20分で不活化できるが、芽胞は耐熱性」「乳児へのハチミツ禁止(乳児ボツリヌス症)」が最頻出事項です。オのような「毒素型は感染型より潜伏期間が長い」という逆の記述は、感染型・毒素型の潜伏期間の一般的な傾向を逆にした典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: ボツリヌス菌の芽胞は土壌などに広く分布しているため、原材料の汚染を防ぐことは困難とされます。そのため予防は食品中での発芽・増殖の抑制が中心で、原材料の十分な洗浄、冷蔵・冷凍保存、発酵食品(保存食)や自家製瓶詰でのpH調整などが挙げられます。
- イ: 神経麻痺は眼症状から咽喉部、四肢へと進み、呼吸困難に至ることがあります。消化器症状が主となる感染型食中毒との違いを押さえておきます。
- ウ: ボツリヌス菌は性状によりⅠ〜Ⅳ群に分けられ、芽胞の耐熱性は群によって異なります。Ⅰ群の芽胞のように非常に強い加熱条件を必要とするものもあるため、毒素が熱に弱いことと芽胞が熱に強いことを区別して覚えます。
- エ: エンテロトキシンは100℃・20分の加熱でも完全には失活しません。ブドウ球菌食中毒の予防は、食品中でエンテロトキシンを産生させないよう、黄色ブドウ球菌による食品の汚染や食品中での増殖を防ぐことが中心になります。
- オ: カンピロバクター食中毒の潜伏期間は2〜7日と他の食中毒に比べて長く、サルモネラ属菌は12〜48時間です。これに対し黄色ブドウ球菌は0.5〜6時間と短く、毒素型のほうが一般に潜伏期間が短いという傾向が読み取れます。
【根拠】食品安全委員会「ボツリヌス症(ファクトシート)」(最終更新日 令和3年3月30日)・「ボツリヌス菌の概要」・「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」・「黄色ブドウ球菌の概要」・「カンピロバクター(ファクトシート)」・「鶏肉におけるサルモネラ属菌(リスクプロファイル)」。
【補足】毒素型食中毒(黄色ブドウ球菌・ボツリヌス)の潜伏期間は感染型より「短い」(長いは逆の誤り)。黄色ブドウ球菌の毒素耐熱性(100℃20分でも完全には失活しない)とボツリヌス菌の毒素耐熱性の低さ(80℃20分で不活化)の違いを区別する。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 食品安全委員会「ボツリヌス症(ファクトシート)」(最終更新日 令和3年3月30日)、同「ボツリヌス菌の概要」、同「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」、同「黄色ブドウ球菌の概要」。毒素型食中毒の潜伏期間は「感染型より短い」(長いは逆の誤り)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

