問題
THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはウです。THPは「有害業務に従事する労働者の職業性疾病(じん肺・職業がん等)の発症予防を主目的とした制度」ではありません。THPはすべての労働者を対象とした心身の健康保持増進を目的とする制度であり、一般的な生活習慣病の予防・運動習慣の改善・メンタルヘルスケアが主な内容です。
有害業務対策(じん肺予防・職業がん予防)は、特化則・粉じん則・石綿則等の作業環境管理・特殊健康診断によって別途対応されます。THPはあくまで「健康な・または健康度を高めたい」労働者全体を対象とした積極的な健康増進策です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛法第69条第1項は、事業者が健康教育・健康相談その他の健康保持増進のための措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めることを定め、第70条の2第1項は、その措置の適切かつ有効な実施を図るため厚生労働大臣が指針を公表すると定めています。THP指針はこの第70条の2第1項に基づく指針で、「全ての労働者を対象として心身両面の総合的な健康の保持増進を図ることが必要である」としています。
- イ(正): 指針は健康測定を「健康指導を行うために実施される調査、測定等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断を活用しつつ、追加で生活状況調査や医学的検査等を実施するもの」と定め、「産業医等が中心となって行い、その結果に基づき各労働者の健康状態に応じた必要な指導を決定する」としています。
- ウ(誤): THPは有害業務対策ではなく、全ての労働者の心身両面の健康保持増進を目的とした取組です。「有害業務従事者の職業性疾病予防が主目的」は明確な誤りです。
- エ(正): 現行の指針は、運動プログラムを作成し運動実践の指導を行うことができる者、メンタルヘルスケアを行うことができる者等の専門スタッフを養成し、活用することも有効であるとしています。かつての「運動指導担当者」等の職種名を列挙する方式は、令和元年度の改正以前の指針のものです。
- オ(正): 健康指導には、運動指導、ストレスへの気付きの援助やリラクセーションの指導などのメンタルヘルスケア、栄養指導、歯科保健指導、睡眠・喫煙・飲酒などに関する保健指導が含まれます。身体面と心の面の両方を含む総合的な取組です。
【理論的背景】
THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)は、労働安全衛生法第70条の2により厚生労働大臣が公表した指針に沿って、働く人が心とからだの両面にわたる健康的な生活習慣への行動変容を行うため、事業場で計画的に行う健康教育などの活動です(厚生労働省の手引き)。指針は昭和63年9月1日に公示され、令和2年3月31日(公示第7号)と令和3年2月8日(公示第8号)に改正されています。
指針の趣旨では、定期健康診断の有所見率が増加傾向にあること、メタボリックシンドロームが強く疑われる者とその予備群が男性の約2人に1人、女性の約5人に1人に達していること、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者の割合が高い水準で推移していることを挙げ、早い段階から心身の両面について健康教育等の予防対策に取り組むことが重要であるとしています。
令和2年の改正のポイント(手引き):
1. 生活習慣上の課題がある労働者だけでなく、すぐには課題が見当たらない労働者やより良い生活習慣・健康状態を目指す労働者も対象に含め、集団に対する「ポピュレーションアプローチ」の視点を強化
2. 事業場の規模・業務内容・年齢構成などの特性に応じて、柔軟に措置の内容を検討・実施できるよう見直し
3. 健康保持増進措置の「内容を規定する指針」から、PDCAサイクルに沿った「取組方法を規定する指針」へ見直し
令和3年2月の改正では、医療保険者と連携したコラボヘルスの推進が明確化されました。
【実務・条文構造】
健康指導の2ステップ(指針・手引き):
- Step1 労働者の健康状態の把握: 健康診断や、必要に応じて行う健康測定などにより行う。健康測定は医学的な視点をもつ産業医等が中心となって行い、その結果に基づき各労働者に必要な指導を決定する
- Step2 健診結果や健康測定結果を踏まえた健康指導の実施: 事業場内の推進スタッフ等が指導内容を労働者に伝え、理解を促す
健康指導に含まれる項目:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運動指導 | 生活状況・希望を考慮し、安全に楽しく効果的に実践できるよう配慮 |
| メンタルヘルスケア | ストレスに対する気付きへの援助、リラクセーションの指導など |
| 栄養指導 | 食習慣や食行動の改善 |
| 歯科保健指導 | 歯と口の健康づくり |
| 保健指導 | 睡眠、喫煙、飲酒などに関する健康的な生活に向けた指導 |
推進体制: 事業者は産業医等、衛生管理者等、事業場内の保健師等の事業場内産業保健スタッフや人事労務管理スタッフ等を活用して体制を構築し、運動指導やメンタルヘルスケアを行うことができる専門スタッフを養成・活用することも有効とされています。事業場外資源としては、医療保険者、地域の医師会や歯科医師会、地方公共団体、産業保健総合支援センターなどが挙げられています。
【試験での位置づけ】
THPの問題では「有害業務対策ではなく全ての労働者の心身両面の健康保持増進(ウの誤りのポイント)」「指針の根拠は安衛法第70条の2第1項、措置自体は第69条第1項の努力義務」「健康測定は健康診断を活用しつつ追加で調査・検査を行い、産業医等が中心となる」「令和2年改正で取組方法を定める指針へ」が問われます。ウのような「有害業務対策」という誤った位置づけは、特殊健康診断・作業環境管理とTHPを混同させる典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 第69条は「講ずるように努めなければならない」という努力義務の規定で、同条第2項は労働者も事業者が講ずる措置を利用して健康の保持増進に努めるものとしています。指針は第70条の2第1項に基づいて公表されたもので、第2項により厚生労働大臣は指針に従い事業者又はその団体に必要な指導等を行うことができます。
- イ: 手引きは、健康診断だけでは足りない項目について、専門職による問診などの生活状況調査や、令和元年度の改正以前の指針に基づく運動機能検査・運動負荷試験など、事業場の特色に応じた医学的検査や調査を活用することが重要としています。慢性疾患を有する労働者など配慮が必要な者もいるため、健康測定は産業医等が中心となって行います。
- ウ: 有害業務に起因する健康障害の防止は、特殊健康診断や作業環境管理などの別の仕組みで扱われます。THPは対象を特定の業務に限らず、全ての労働者の健康の保持増進を図る取組です。
- エ: 令和元年度の改正以前の指針では、別表に定める研修を修了した「心とからだの健康づくり指導者(THP指導者)」が運動プログラムの作成・運動実践の指導やメンタルヘルスケアを担っていました。現行の指針は職種名を限定せず、こうした専門スタッフの養成・活用を「有効」と位置づけています。
- オ: 指針は、健康保持増進措置を実施するに当たってメンタルヘルスケアとともに運動指導・保健指導等を含めた取組を実施する必要があるとしており、心と体の両面を扱う点がTHPの「トータル」の意味です。
【根拠法令・指針】労働安全衛生法第69条・第70条の2、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号、最終改正 令和3年2月8日同公示第8号)、厚生労働省「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」(2021年3月)。
【補足】THPは「有害業務対策」ではなく「全ての労働者の心身両面の健康保持増進」が目的。指針は安衛法第70条の2第1項に基づく。健康状態の把握(健康診断・健康測定)→健康指導(運動・メンタルヘルスケア・栄養・歯科保健・保健指導)の流れ。
- 労働安全衛生法第70条の2・第69条e-Govで原文を読む
- 特定化学物質障害予防規則e-Govで原文を読む
- 粉じん障害防止規則e-Govで原文を読む
- 石綿障害予防規則e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針。昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号、最終改正 令和3年2月8日同公示第8号)、厚生労働省「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」(2021年3月)、労働安全衛生法第69条・第70条の2。THPは有害業務対策ではなく、全ての労働者の心身両面の健康保持増進を目的とする。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

