労働衛生(有害業務以外)32救急処置

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問32:救急処置

出血の救急処置に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 外傷による出血の止血法として、最初に選択すべき方法は直接圧迫止血法(出血部位にガーゼ・タオル等を当てて直接強く押さえる方法)であり、初期対応として最も簡便かつ有効な方法である。
  • 止血帯法(ターニケット法)は、四肢(腕・脚)の重大出血に用いられる止血法であり、血流を遮断することで出血を止める。体幹(胸・腹部)や頸部の出血には使用できない。
  • 動脈性出血は鮮赤色の血液が拍動性(心臓の拍動に合わせてどくどくと)に噴出する特徴があり、静脈性出血は暗赤色の血液がじわじわと流れ出る特徴がある。両者の区別は止血処置の選択に重要である。
  • 間接圧迫止血法(圧迫点止血法)とは、出血部位の中枢側(心臓に近い側)にある動脈を体表から骨に向けて圧迫して血流を遮断する方法であり、直接圧迫と組み合わせて使用することで有効な止血が得られる。
  • 体内出血(内出血)の可能性がある傷病者において、受傷部位を高く挙上(挙上止血)することで内出血を止めることができるため、挙上止血が内出血の第一選択の止血法として推奨されている。正答
正答:体内出血(内出血)の可能性がある傷病者において、受傷部位を高く挙上(挙上止血)することで内出血を止めることができるため、挙上止血が内出血の第一選択の止血法として推奨されている。

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誤りはオです。挙上止血(受傷部位を心臓より高く挙上する)は外出血の止血補助として有効な手段ですが、体内出血(内出血)を止めることはできません。内出血は体の内部での出血であり、体表から止血することは不可能です。内出血が疑われる傷病者は医療機関への緊急搬送(救急要請)が最優先です。

ア(直接圧迫が第一選択)・イ(止血帯は四肢のみ)・ウ(動脈性・静脈性出血の特徴)・エ(間接圧迫法の定義)はすべて正しい内容です。「挙上止血=内出血を止める」という誤解は現実の救急現場でも危険な思い込みです。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 直接圧迫止血法は「止血の黄金律(First Aid Golden Rule)」とも言われ、出血に対する最初の対応として世界的に推奨されています。道具がなくても実施でき(手や布・タオルで可)、大多数の出血を適切な圧迫で止めることができます。
  • イ(正): 止血帯(ターニケット)は四肢の重大出血(切断・砕挫傷等)に使用し、出血部位より心臓側(中枢側)の四肢に巻いて動脈血流を完全に遮断します。体幹・頸部には解剖学的に血流遮断ができないため使用できません。また止血帯を使用した場合は装着時刻を記録し、医療機関に引き継ぐことが重要です。
  • ウ(正): 動脈性出血(鮮赤色・拍動性噴出)と静脈性出血(暗赤色・持続的滲出)の鑑別は止血法の選択に影響します。ただし実際の救急現場では鑑別より「迅速な直接圧迫」が優先されます。
  • エ(正): 間接圧迫止血法(圧迫点止血)は、上腕への出血には腋窩の上腕動脈・大腿への出血には鼠径部の大腿動脈を圧迫する方法です。直接圧迫の補助・または直接圧迫が困難な場合(顔面等)に用います。
  • オ(誤): 挙上止血(受傷部位を高く上げて血圧差を利用する)は外出血の補助的止血法であり、内出血には効果がありません。体内の血管が破裂・損傷して体腔内に出血している場合(腹腔内出血・胸腔内出血等)は体表からの止血は不可能であり、緊急外科手術(開腹術・輸血)が必要です。「内出血の第一選択の止血法」という記述は誤りです。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

出血(hemorrhage)は救急医学において最も緊急性の高い状態の一つです。成人の総血液量は体重の約7〜8%(体重60kgで約4〜5L)であり、急速な出血では以下の危険が生じます。

出血量と症状の関係:

  • 出血量 15%未満(750mL以下): ほぼ無症状・軽度の頻脈
  • 出血量 15〜30%(750〜1,500mL): 頻脈・皮膚冷汗・不安感・尿量減少
  • 出血量 30〜40%(1,500〜2,000mL): 意識混濁・著明な低血圧・頻脈(Class Ⅲショック)
  • 出血量 40%以上(2,000mL以上): 心停止のリスク・Class Ⅳショック

外出血と内出血の違い:

  • 外出血: 体表面・粘膜から血液が体外へ流出。視認できる。直接圧迫・間接圧迫・止血帯で止血が可能。
  • 内出血(体内出血): 体腔(腹腔・胸腔・後腹膜等)または組織内(筋肉内・皮下)への出血。体表からは見えない。体表からの止血は不可能。緊急手術・輸血が唯一の対策。

内出血を疑うべきサイン(現場での観察):

  • 腹部・胸部の強打後の腹痛・胸痛
  • ショック症状(冷汗・頻脈・意識混濁)があるが外出血が少ない
  • 腹部の膨満・硬直(腹膜刺激症状)
  • 肋骨骨折後の呼吸困難(血胸・気胸の合併)

【実務・条文構造】

外出血の止血法の体系(救急処置の実務):

| 止血法 | 方法 | 適応 | 注意点 |

|---|---|---|---|

| 直接圧迫止血法 | 出血部に清潔な布・ガーゼを当てて直接強く押す | すべての外出血(第一選択) | 一度当てたガーゼは外さない(追加で重ねる) |

| 間接圧迫止血法 | 中枢動脈を圧迫(上腕動脈・大腿動脈等) | 直接圧迫の補助・顔面等の圧迫困難部位 | 解剖学的位置の知識が必要 |

| 止血帯法 | 四肢に帯状器具を巻いて動脈を完全遮断 | 四肢の重大出血・切断 | 装着時刻を記録・長時間装着は合併症リスク |

| 挙上止血 | 受傷部位を心臓より高く挙上 | 外出血の補助(特に四肢) | 内出血には無効 |

直接圧迫止血の正しい手順:

1. 清潔なガーゼ・布を出血部位に当てる

2. 手(または指)で強く押さえる(最低5〜10分)

3. 血液がにじんできても一度当てたガーゼは外さない(外すと血栓が剥がれて再出血)

4. 追加のガーゼを上から重ねる

5. 包帯等で固定して持続的に圧迫

大量出血(tourniquet使用の推奨状況):

  • 直接圧迫でコントロールできない大量出血
  • 四肢の切断・重大な挫滅(クラッシュ)
  • 現代の止血帯(CAT: Combat Application Tourniquet等)を使用する場合は装着時刻を油性ペンで直接書く

【試験での位置づけ】

出血の救急処置問題では「直接圧迫が第一選択」「止血帯は四肢のみ(体幹・頸部には不可)」「挙上止血は外出血の補助(内出血には無効・オの誤りのポイント)」「動脈性(鮮赤色・拍動性)と静脈性(暗赤色・持続性)の区別」「間接圧迫法の定義(中枢側の動脈圧迫)」が頻出です。オのような「挙上止血で内出血が止まる」という誤りは、内出血と外出血の本質的な違いを理解していないことから生じる典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 直接圧迫止血を5〜10分以上続けることが重要です。「血が止まったか確認するためにガーゼを外す」ことは、形成された血栓を剥がして再出血を招く危険な行為です。「当てたガーゼは絶対に外さない・追加で重ねる」という原則は、救急救命教育で最も強調されるポイントの一つです。
  • イ: 止血帯の合併症(神経損傷・四肢の阻血障害)は長時間(1〜2時間以上)の装着で生じます。現代の止血帯(CAT等)は構造上過度な圧力をかけにくく設計されていますが、装着時刻の記録と医療機関への迅速な引き渡しは必須です。
  • ウ: 実際の救急現場では動脈性か静脈性かの鑑別に時間をかけるより、「大量出血=直接圧迫開始」という迅速な行動が優先されます。動脈性出血は出血速度が速く、対応が遅れると急速な失血性ショックに至るためです。
  • エ: 間接圧迫止血法の解剖学的圧迫点(主要なもの): 上腕→腋窩の上腕動脈( 肋骨に向けて押す)、大腿→鼠径部の大腿動脈(骨盤に向けて押す)、下腿・足→膝窩の膝窩動脈。これらの位置を体表から特定する技術は実際には難しく、一般市民には直接圧迫の確実な実施が推奨されています。
  • オ: 内出血の現場での最善の対応は「安静を保ち・救急要請(119番)・保温・ショック体位(足を高くする)」です。腹部を強く叩いた後のショック症状は腹腔内出血の可能性があり、腹部を押したり体を動かしたりすることなく、搬送中も安静を維持します。

【根拠】医学的事実(確立した救急医学・外傷外科学)。JRC蘇生ガイドライン・日本救急医学会・JATEC(外傷初期診療ガイドライン)準拠。

【補足】挙上止血は「外出血の補助」であり「内出血を止める」効果はない。直接圧迫が止血の第一選択。止血帯(ターニケット)は四肢のみ(体幹・頸部には使用不可)。当てたガーゼは外さない(血栓剥離防止)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した救急医学)。挙上止血は外出血の補助的手段であり、内出血を止める手段ではない。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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