労働衛生(有害業務以外)47メンタルヘルス・健康保持増進

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問47:メンタルヘルス・健康保持増進

職場における心理的ストレスに関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • セリエ(Selye, H.)の全身適応症候群(GAS: General Adaptation Syndrome)は、ストレス刺激(ストレッサー)に対する身体の適応反応を「警告反応期」「抵抗期」「疲弊期」の3段階で説明するモデルであり、疲弊期では身体の抵抗力が低下して疾病が生じやすくなる。正答
  • 職業性ストレスのモデル(需要−資源モデル等)では、仕事の要求度(demands)が高いほど常に労働者のパフォーマンスが向上するとされており、ストレスは作業能率の向上に必ず貢献する。
  • 職場のストレスは、必ず身体的症状(頭痛・肩こり・胃腸障害等)として現れるものであり、精神的・行動的な変化(気分の落ち込み・飲酒量の増加等)は職場ストレスの症状には含まれない。
  • 「仕事の要求度−コントロールモデル」(Karasek)では、仕事の要求度が高くコントロール度も高い状態(「積極的仕事」)は最もストレスが高く、心疾患のリスクが最大になるとされている。
  • 職場のストレスを評価するためのストレスチェックは、労働者が自分のストレス状態を自覚するための検査であり、ストレスチェックの結果は事業者に自動的に通知され、産業医が直接就業上の措置を実施できる。
正答:セリエ(Selye, H.)の全身適応症候群(GAS: General Adaptation Syndrome)は、ストレス刺激(ストレッサー)に対する身体の適応反応を「警告反応期」「抵抗期」「疲弊期」の3段階で説明するモデルであり、疲弊期では身体の抵抗力が低下して疾病が生じやすくなる。

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正しいのはアです。セリエの全身適応症候群(GAS)は、ストレッサーに対する身体の適応反応を警告反応期→抵抗期→疲弊期の3段階で説明するモデルです。疲弊期では身体の抵抗力が低下し、疾病が生じやすくなります。

イは誤りで、要求度が高すぎると能率は下がります(逆U字曲線・ヤーキーズ・ドットソン則)。ウは誤りで、ストレスは精神的・行動的症状も含みます。エは逆で、「高要求度・低コントロール」が最もストレス高・心疾患リスク大。オも誤りで、ストレスチェックの結果は労働者本人にのみ通知され(事業者への通知は本人同意が必要)。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): セリエのGASは3段階で構成されます。①警告反応期: ストレッサーに直面した直後の「ショック相(抵抗力低下)→反ショック相(防御反応活性化)」。②抵抗期: ストレスに適応し、抵抗力が通常より高い状態を維持する。③疲弊期: ストレッサーが長期間持続し、適応能力が枯渇して抵抗力が低下、疾病・衰弱が生じる。慢性的な職場ストレスが最終的に疾病につながるメカニズムを示す理論です。
  • イ(誤): 要求度と能率の関係はYerkes-Dodson則(逆U字曲線)で表され、適度な要求度(課題適切なストレス)では能率が向上しますが、要求度が高すぎると能率は低下します。「常に向上する」「必ず貢献する」は誤りです。
  • ウ(誤): 職場ストレスの症状は身体的症状だけでなく、精神的症状(気分の落ち込み・不安・集中力低下・無気力)・行動的症状(飲酒量増加・喫煙量増加・欠勤増加・プレゼンティズム)を含みます。「精神的・行動的変化は含まれない」は誤りです。
  • エ(誤): Karasekの「要求度−コントロールモデル」では、「高要求度・低コントロール(裁量度)」の状態が最もストレスが高く、心疾患のリスクが最大とされています(「高ストレイン型」)。「高要求度・高コントロール(積極的仕事)」は要求度は高いが自律性もあるため、ストレスは「高ストレイン型」より低く、学習・成長につながるとされています。
  • オ(誤): ストレスチェックの結果は原則として労働者本人のみに通知されます。事業者への結果の通知は、労働者本人の同意が必要です(安衛法第66条の10第2項)。産業医は事業者から提供を受けた情報(本人同意済みのもの)に基づいて面接指導を行いますが、ストレスチェック結果が自動的に事業者・産業医に通知される仕組みはありません。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

職場のストレスに関する理論は複数あり、衛生管理者試験では特に「GASモデル」「要求度−コントロールモデル」「努力−報酬不均衡モデル」の3モデルが重要です。

1. セリエのGAS(全身適応症候群):

ハンス・セリエ(Hans Selye)が1936年に提唱した生理学的ストレス理論。あらゆる種類のストレッサーに対して、身体は同一の適応反応を示す(非特異的反応)とした革新的理論です。

- 警告反応期(Alarm reaction stage):

- ショック相: ストレッサー曝露直後。血圧低下・体温低下・心拍数低下(抵抗力が一時的に低下)

- 反ショック相: 防御反応の活性化。副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の大量分泌・交感神経系の活性化

- 抵抗期(Resistance stage): ストレスへの適応が成立し、抵抗力が通常より高い水準を維持

- 疲弊期(Exhaustion stage): ストレスが長期間持続し、適応機構が枯渇。抵抗力低下・疾病発症・最終的には死に至る可能性

2. Karasekの要求度−コントロールモデル(Job Demand-Control Model):

4つのタイプに分類(要求度と裁量度の高低の組み合わせ):

| タイプ | 要求度 | コントロール | 心理的影響 |

|---|---|---|---|

| 高ストレイン型 | 高 | 低 | 最も心理的負荷大・心疾患リスク最大 |

| 積極的仕事型 | 高 | 高 | 高活性化・学習促進・ストレスは中程度 |

| 低ストレイン型 | 低 | 高 | リラックス・ストレス小 |

| 受動的仕事型 | 低 | 低 | 意欲低下・スキル低下 |

3. Siegristの努力−報酬不均衡モデル(ERI: Effort-Reward Imbalance Model):

職場で費やす努力(demands)と受け取る報酬(賃金・地位・評価・安定性等)のバランスが崩れると(努力>報酬)、心理的ストレスが生じ、心疾患・うつ病のリスクが高まるとするモデルです。

【実務・条文構造】

ストレスチェック制度(安衛法第66条の10)の詳細:

1. 実施義務: 常時使用する労働者が50人以上の事業場(50人未満は努力義務)。年1回実施。

2. 実施者: 医師・保健師・厚生労働省が認める研修を修了した看護師・精神保健福祉士等

3. 検査の内容: 職業性ストレス簡易調査票(57問)が代表的。以下の3軸を評価:

- 仕事のストレス要因: 定量的・定性的な仕事の負荷、コントロール度等

- ストレス反応: 気分・活気・怒り・疲労感・身体愁訴等

- 周囲のサポート: 上司・同僚からのサポート状況

4. 結果の取扱い:

- 結果は実施者(医師・保健師等)から直接労働者本人に通知

- 事業者への結果提供: 労働者本人の同意が必要(同意なしに事業者への通知は不可)

- 高ストレス者: 実施者が「面接指導の申し出を勧奨」する

- 面接指導: 高ストレス者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務がある

5. 集団分析: 事業場全体または部署単位での集団分析(集団としてのストレス状況の把握)は義務ではないが厚生労働省が推奨。

【試験での位置づけ】

ストレス関連の問題は「GASの3段階(警告→抵抗→疲弊)」「Karasekモデルの4類型(高ストレイン型が最悪)」「ストレスチェックの結果通知先(本人のみ・事業者は本人同意必要)」が最頻出です。エのように「高要求度・高コントロール=最高ストレス」という誤り、オのように「結果が事業者に自動通知」という誤りは典型的な引っかけです。GASモデルの「警告反応期→抵抗期→疲弊期」という順序は必ず正確に覚えることが重要です(「抵抗→警告→疲弊」などの順序ミスが多い)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: セリエのGASで重要な生理学的背景として、ストレス反応の中心に「視床下部−下垂体−副腎皮質軸(HPA軸)」があります。ストレッサー→視床下部からCRHが分泌→下垂体からACTHが分泌→副腎皮質からコルチゾールが分泌、というカスケード反応が警告反応期・抵抗期を生理的に支えています。慢性ストレスでHPA軸が過剰活性化すると、免疫機能の低下・代謝障害・うつ病との関連が生じます。
  • イ: ヤーキーズ・ドットソン則(逆U字曲線)は「課題の難易度が低い場合は高い覚醒状態(高ストレス)で能率が高まるが、課題が複雑な場合は過度のストレスで能率が低下する」という法則です。単純な肉体労働では高い緊張感で能率が上がる場合がありますが、知的作業・創造的業務では過剰なストレスは確実に能率を下げます。
  • ウ: 職場ストレスの症状の多様性(身体的・精神的・行動的)を理解することは、職場での早期発見・早期対応に重要です。行動的変化(遅刻・欠勤の増加・ミスの増加・孤立・飲酒量増加)は、本人が自覚症状を訴えない場合でも上司・同僚が観察できるサインとして重要です。
  • エ: 「高ストレイン型(高要求度・低コントロール)」の具体例として、工場のライン作業(ペースを自分で調整できない)・コールセンター業務(応答数のノルマ+クレーム対応)・建設現場の特定作業(工期に縛られた高強度作業)等が挙げられます。この状態が長期間継続すると、心疾患(冠動脈疾患)・高血圧・うつ病のリスクが有意に高まることが多くの疫学研究で示されています。
  • オ: ストレスチェックの個人情報保護は厳格であり、事業者が同意なく結果を閲覧することは刑事罰(50万円以下の罰金)の対象となります。この規定により「ストレスチェックを受けると不利益を受ける可能性がある」という誤解を解消し、労働者が安心して受検できる環境を整えることが制度の前提です。

【根拠】医学的事実(ストレス医学・産業精神保健)。セリエのGAS・Karasekのモデルは確立したストレス理論。ストレスチェックの情報取扱いは安衛法第66条の10・第105条。

【補足】GAS3段階: 警告反応期→抵抗期→疲弊期(順序必須)。Karasekモデル: 高ストレイン=高要求度・低コントロールが最高ストレス。ストレスチェック結果は本人のみに通知(事業者は本人同意必要)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(心理学・ストレス医学)。セリエのGASモデルは確立したストレス理論の基本事項。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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ストレス反応の3段階・GAS理論・職業性ストレスモデル頻出度B

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