衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問48|疲労の分類・精神的疲労vs身体的疲労・主観的評価

問題

衛生管理者 | 労働衛生(有害業務以外)

労働における疲労に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は ア
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

誤りはアです。VAS(Visual Analogue Scale)等を用いた主観的疲労評価は産業保健分野で広く活用されており、推奨されていないという記述は誤りです。精神的疲労・全般的疲労感は客観的指標での測定が難しいため、主観的な自己評価が疲労研究・産業保健の実践において重要な評価手段として位置づけられています。

身体的疲労(筋肉疲労)はある程度客観的に測定できますが(乳酸値・筋電図等)、精神的疲労の客観的指標はまだ確立途上です。主観的評価は「当事者の体験」を捉える上で不可欠な手法です。

各選択肢の正誤と根拠:

  • エ(正): 身体的疲労(特に筋肉疲労)は、乳酸などの代謝産物の蓄積・ATP(アデノシン三リン酸)やグリコーゲンの枯渇・体液の電解質バランスの変化などによって生じます。これらは血液検査・筋電図・酸素摂取量測定等によって比較的客観的に評価できます(ただし「比較的客観的」であり完全ではない)。
  • イ(正): 精神的疲労の特徴として「主観症状が主であり客観的指標が乏しい」ことが挙げられます。集中力低下・眠気・意欲低下・頭重感等は本人の訴えとして現れますが、血液検査・脳波等での客観的測定は確立した方法がなく、主観的評価が評価の中心になります(フリッカー値・反応時間等は部分的な客観指標として用いられますが限界がある)。
  • ウ(正): 急性疲労が不十分な回復のまま繰り返されると慢性疲労が蓄積します。慢性疲労は一晩の睡眠では回復しない持続的な疲労感であり、慢性疲労症候群(CFS)・職業性ストレスによるバーンアウト・筋骨格系の慢性障害(頸肩腕症候群等)の発症に関与します。
  • ア(誤): 主観的な疲労評価は産業保健の現場で実際に用いられており、推奨されていないという記述は誤りです。厚生労働省は、過重労働による健康障害を防止するため、労働者本人による「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を作成・公表し、積極的な健康管理に活用するよう呼びかけています。日本産業衛生学会産業疲労研究会も、自覚症状から疲労を評価する調査票「自覚症しらべ」を公開しています。産業保健活動では、こうした主観的評価と客観的評価を組み合わせて疲労をとらえます。
  • オ(正): VDT作業疲労は多因子性であり、視覚系(毛様体筋の過緊張・ドライアイ・調節力低下)と筋骨格系(頸部・肩・前腕の筋緊張・頸肩腕症候群)の2つの系統の疲労が同時進行します。さらに情報処理の精神的負荷・時間的プレッシャー・職場の対人ストレスがこれらの身体的疲労を増幅させる相互作用があります。

【理論的背景】

疲労は単一の現象ではなく、複数の成分が複雑に絡み合った生体反応です。産業保健においては疲労の適切な評価・管理が労働者の健康維持・労働生産性の維持に不可欠です。

疲労の分類:

1. 身体的疲労(末梢疲労・筋疲労)

  • 発生機序: 筋収縮に伴うATP枯渇→乳酸蓄積→筋内pH低下→筋収縮力の低下。グリコーゲン(エネルギー貯蔵物質)の枯渇も重要な要因。
  • 客観的評価指標: 血中乳酸値・血糖値・クレアチンキナーゼ(筋損傷マーカー)・筋電図(EMG)による電気的活動の変化
  • 特徴: 比較的評価が容易・休息・睡眠・栄養補給で回復しやすい

2. 精神的疲労(中枢疲労・神経疲労)

  • 発生機序: 長時間の認知処理・情報処理・感情労働によって中枢神経系(大脳)が消耗する状態。セロトニン・ドーパミン等の神経伝達物質のバランス変化が関連している可能性が研究されている。
  • 主観的評価指標: VAS・VAS-F(疲労VAS)・疲労調査票(Chalder Fatigue Scale・多次元疲労尺度等)・POMS(Profile of Mood States)
  • 客観的評価の試み: フリッカー値(視覚チラツキ認知閾値)・反応時間測定・唾液中コルチゾール等(いずれも補助的指標)
  • 特徴: 客観的評価が難しい・慢性化しやすい・精神疾患(うつ病・バーンアウト)との境界が曖昧

急性疲労 vs 慢性疲労:

  • 急性疲労: 一時的な労働・運動・精神活動によって生じ、適切な休養で回復する「生理的疲労」
  • 慢性疲労: 急性疲労が蓄積した状態。一晩の睡眠では回復せず、週末の休息でも完全回復しない慢性的な疲弊状態。職業病・精神疾患の前段階となりうる「病的疲労」

【実務・条文構造】

産業保健における疲労評価の実践:

1. 主観的評価ツール:

- VAS(Visual Analogue Scale): 10cm の線分上に自分の疲労感を印で示す。0mm(全く疲れていない)〜100mm(これ以上ない疲れ)で定量化。

- 疲労調査票: 複数の質問項目(疲れた・だるい・集中できない等)への回答パターンから疲労の強度・種類を評価。

- 自覚症しらべ(日本産業衛生学会産業疲労研究会): ねむけ感・不安定感・不快感・だるさ感・ぼやけ感の5つの群(各5項目)ごとに疲労状況を評価する調査票。作業開始時、大休憩の前後、定時の終了時などに繰り返し実施する。

- 労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(厚生労働省): 過重労働による健康障害を防止するため、労働者本人が疲労蓄積度を判定するチェックリスト(平成16年6月公表)。家族による労働者の疲労蓄積度チェックリストもある。

2. 客観的評価の限界と補完:

主観的評価は「信頼性が低い」のではなく、「個人差が大きい」「測定変動が大きい」という特性を持ちます。これを補完するために、心拍変動(HRV: 自律神経機能の指標)・コルチゾール(ストレスマーカー)・フリッカー値等の生理学的指標と組み合わせた多面的評価が研究・実務で行われています。

3. 情報機器作業疲労の評価と対策(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン・令和元年7月12日基発0712第3号):

配置前健康診断の「自覚症状の有無の調査」は、(a)眼疲労を主とする視器に関する症状、(b)上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状、(c)ストレスに関する症状の3つを対象としています。自覚症状により目の疲労を訴える者には眼位検査・調節機能検査を行うなど、主観的な訴えを入口に客観的な検査へつなげる構成です。

【試験での位置づけ】

疲労の問題では「身体的疲労と精神的疲労の特徴(評価方法の違い・客観vs主観)」「急性疲労と慢性疲労の区別」「VAS等の主観的評価が産業保健で有用(推奨されない、は誤り)」「VDT疲労の多因子性(視覚・筋骨格・精神)」の4点が出題されます。アのように「主観的評価の信頼性が低く推奨されない」という誤り選択肢は、主観的評価の性質(個人差・変動が大きい)を否定的に誤解させる典型的な引っかけです。「主観的評価は有用だが限界を理解して使う」が正しい理解です。

【各選択肢の発展補足】

  • エ: 乳酸蓄積が「筋疲労の原因」という従来の説明は、現在では部分的な修正が加えられています。乳酸自体がすぐに筋疲労を引き起こすのではなく、乳酸と同時に生じる水素イオン(H+)の蓄積によるpH低下が筋収縮力低下の主因とされています。また中枢神経疲労(脳内の運動命令の低下)も末梢疲労と並んで重要な役割を果たします。
  • イ: 精神的疲労の評価における「フリッカー値」は、視野内で点滅する光が連続して見えるように感じる最小の点滅周波数(CFF: Critical Flicker Frequency)を測定するものです。中枢神経系の興奮水準が低下すると(疲労が蓄積すると)CFFが低下する傾向があるため、精神的疲労の補助的客観指標として用いられています。
  • ウ: バーンアウト(燃え尽き症候群)は慢性疲労の一形態であり、「感情の枯渇・非人格化・達成感の低下」を三主徴とするMaslachのモデルが代表的です。慢性疲労→バーンアウト→うつ病という移行プロセスの早期段階での介入が重要です。
  • ア: 「自覚症しらべ」は、作業開始時・大休憩の前後・定時の終了時などに繰り返し記入させ、同じ人の疲労感の変化を追う使い方が示されています。主観的評価は「信頼性が低いから使わない」のではなく、個人差が大きいという性質を理解したうえで、同一個人内の変化や集団の傾向をとらえるために用います。
  • オ: VDT疲労の相互作用の具体例として、業務上のプレッシャー(上司からの期待・納期等)が増大すると、画面を見る時間が増加し(視覚疲労増大)、肩に力が入る(筋骨格系疲労増大)という連動が生じます。逆に作業環境(照明・椅子・モニター位置)を改善して身体的負担を軽減することで、精神的疲労も間接的に改善される場合があります(物理的不快感の除去がストレスを減少させる)。

【根拠】医学的事実(産業保健学・疲労医学)。厚生労働省「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」、日本産業衛生学会産業疲労研究会「自覚症しらべ」、厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」。

【補足】身体的疲労: 乳酸・グリコーゲン枯渇・客観的評価可能。精神的疲労: 主観的評価が主(VAS等は有用・推奨される)。急性疲労は休養で回復・慢性疲労は蓄積・職業病のリスク。VDT疲労は視覚・筋骨格・精神の三成分。

この問題の根拠根拠: 医学的事実(産業保健学・疲労の評価)。主観的な疲労評価は産業保健で用いられている手法(厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」、日本産業衛生学会産業疲労研究会「自覚症しらべ」)。情報機器作業の健康診断項目は「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)。
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(産業保健学・疲労の評価)。主観的な疲労評価は産業保健で用いられている手法(厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」、日本産業衛生学会産業疲労研究会「自覚症しらべ」)。情報機器作業の健康診断項目は「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 疲労の分類・精神的疲労vs身体的疲労・主観的評価
  • 頻出度B

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