衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問67:救急処置
職場における救急用具の備え付けに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア安全衛生規則(安衛則)では、労働者が就業している全事業場において、負傷者の救急処置に必要な救急用具・材料を備え、その備え付け場所・取扱い方法を全労働者に周知させることが義務付けられている。
- イ救急箱に備えるべき主な品目として、包帯・ガーゼ・三角巾・絆創膏・ピンセット・消毒薬等が挙げられる。これらは使用するたびに補充し、常に十分な量を確保しておく必要がある。
- ウAED(自動体外式除細動器)は、安全衛生規則により全事業場に設置が義務付けられており、設置していない場合は安衛法違反となる。正答
- エ救急用具の備え付け場所は、労働者が作業中にいつでも取り出せる場所に設け、保管場所を全労働者に知らせておくことが求められる。
- オ救急処置を担当する者(救急担当者)に対して、心肺蘇生法・止血法等の応急処置について定期的な訓練を行うことが推奨される。
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誤りはウです。AED(自動体外式除細動器)は、安全衛生規則によって全事業場に設置が義務付けられているわけではありません。AEDの設置は多くの公共施設・事業場で推奨されており、「公共の場所への設置推奨指針(AED普及啓発委員会等)」や各自治体の指針に基づく努力義務的な性格のものです。安衛則の救急用具備え付け義務はAEDを明示的に全事業場に義務付けるものではありません。
ア(救急用具備え付けと周知義務)・イ(救急箱の品目・補充)・エ(備え付け場所の設定・周知)・オ(救急担当者の訓練)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛則第633条により、事業者は労働者が就業する事業場に「負傷者の救急処置に必要な救急用具・材料を備え、使用者に周知させること」が義務付けられています。単に置くだけでなく「使い方と場所を全員に知らせる」ことがセットで求められます。
- イ(正): 救急箱の基本的な品目(包帯・ガーゼ・三角巾・絆創膏・ピンセット・消毒薬・テープ・ハサミ等)は事業場の業種・規模に応じて適切に備えることが求められます。使用後の補充は、緊急時に「いざ使おうとしたら材料がない」という事態を防ぐために重要です。
- ウ(誤): AEDの設置を安衛則が全事業場に義務付けているという規定は存在しません。AEDの普及は厚生労働省・消防庁の推奨・自治体の指針等に基づく努力義務的な施策であり、設置しないことが「安衛法違反」となるわけではありません。ただし、多数の者が利用する施設(学校・商業施設・競技場等)ではAED設置が事実上求められる場面が増えています。
- エ(正): 救急用具は緊急時に迅速に取り出せる場所(作業場に近い目立つ場所・鍵がかからない場所等)に備えることが求められます。全労働者への場所・使い方の周知は安衛則に基づく義務です。
- オ(正): 心肺蘇生法(CPR)・AED使用法・止血法・骨折の固定法等について、救急担当者が定期的に訓練することは、実際の緊急時に適切な処置を行える能力を維持するために重要です。消防署等の主催する救急講習会の活用が推奨されます。
【理論的背景】
AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)は、心室細動(致死的な不整脈)を自動的に検知して電気ショックを与えることができる機器です。心停止(特に心室細動)からの生存率は、除細動が行われるまでの時間と密接に関係しており、「1分ごとに生存率が7〜10%低下する」と言われています。
AED普及の背景(日本):
2004年(平成16年)7月から、医療従事者以外の一般市民でもAEDを使用できるよう規制が緩和されました。以降、駅・空港・ショッピングモール・学校・スポーツ施設への設置が急速に普及し、年間数百件単位での社会復帰例が報告されています。
AEDが全事業場への義務設置ではない理由:
AEDは高価(機器本体10〜50万円程度・メンテナンス費用も必要)であり、かつ心室細動が発生する頻度は一般的な事業場では低いため、すべての事業場への義務設置は経済的・実用的に課題があります。代わりに「不特定多数の者が利用する公共性の高い場所」を中心に設置が推進されています。
【実務・条文構造】
救急用具に関する安衛則の規定:
安衛則第633条(救急用具等):
- 事業者は、負傷者の救急処置に必要な救急用具・材料を適切な場所に備えること
- 備え付け場所・取扱い方法を全労働者に周知させること
安衛則(関連規定)に基づく救急体制の要件:
1. 救急用具の備え付け(場所・品目・数量が事業場の状況に応じて適切)
2. 救急用具の場所と使用方法の全員周知
3. 緊急時の救急処置担当者の指定(推奨)
4. 消防署・病院への緊急連絡体制の整備
AEDに関する設置推奨の根拠(法的義務ではない):
- 厚生労働省・消防庁の「AED普及・啓発に向けた指針」
- 「不特定多数の者が利用する施設へのAED設置推奨」(公共施設・学校・交通機関・商業施設等)
- 事業場での導入を推奨する通達(強制ではなく推奨)
救急用具の標準的な品目(安衛則に基づく一般的な備え):
| 品目 | 用途 |
|---|---|
| 包帯(各種サイズ) | 創傷の保護・骨折の固定補助 |
| 三角巾 | 腕の固定・止血補助 |
| ガーゼ(滅菌済み) | 創傷の保護・止血 |
| 絆創膏(各種サイズ) | 小創傷の保護 |
| 消毒薬(ポビドンヨード等) | 創傷の消毒 |
| 体温計・血圧計 | 体調確認 |
| ピンセット・ハサミ | 処置の補助 |
【試験での位置づけ】
救急用具の問題では「安衛則による全事業場への備え付け義務と周知義務」「AEDは全事業場義務ではない(推奨)」「救急箱品目の定期補充の必要性」「救急担当者の定期訓練の推奨」が頻出事項です。ウのような「AEDは安衛則で全事業場義務」という誤りは、AEDの重要性と法的義務の有無を混同させる典型的な引っかけです。「AEDが有効・普及推奨されていること」は正しいが「全事業場への安衛則による義務設置」は誤りという区分が重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「使い方と場所を全員に知らせる」という周知義務は見落とされやすいポイントです。救急箱が設置されているだけでは不十分であり、新入社員研修・定期安全衛生教育での救急用具の場所・使い方の説明が義務的に求められます。
- イ: 救急箱の品目は事業場の業種(化学品取扱い・高所作業・食品製造等)に応じて追加します。化学品取扱い事業場では目洗い用の生理食塩水・中和薬、高所作業では骨折固定用の添木、食品製造では熱傷対応の冷却材等が追加されます。
- ウ: AEDの普及効果は明らかであり、「設置しないことが安衛法違反ではない」としても、事業場内でAEDが必要な事態(心停止)が発生した際に未設置だった場合の民事上の責任(安全配慮義務違反)が問われる可能性は否定できません。リスク管理の観点からは、多くの労働者が働く事業場へのAED設置は強く推奨されます。
- エ: 救急用具は「鍵がかかった場所・高い場所・目立たない場所」に保管すると緊急時に取り出せない事態が生じます。AEDと同様に「壁面取付・目立つ位置・鍵なし・24時間取り出し可能」が理想的な保管方法です。
- オ: 心肺蘇生法(CPR)の技術は「定期的な練習なしに維持できない」という特性があります。研究では訓練後6か月〜1年で技術・判断力が低下するとされており、年1回以上の再訓練が推奨されます。消防署・日本赤十字社・日本ACLS協会等が提供する救急講習会(一般市民向け・BLS)の活用が実務上有効です。
【根拠法令】労働安全衛生規則(安衛則)第633条(救急用具等)。AEDは安衛則による全事業場義務設置規定なし(推奨・努力義務的性格)。
【補足】救急用具の備え付けと周知は安衛則による義務。AEDは「全事業場義務設置」ではない(安衛法違反にはならない)。救急担当者の定期訓練は推奨。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生規則(安衛則)第633条等(救急用具等)。AEDの設置は安衛則による全事業場への義務付け規定はなく、設置推奨(努力義務的)であり、法的義務とは異なる。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。