労働衛生(有害業務以外)72メンタルヘルス・健康保持増進

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問72:メンタルヘルス・健康保持増進

職業性ストレスと健康に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 職業性ストレスにより生じる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は、仕事への強い献身や過剰な努力の末に突然生じるものであるが、慢性的な疲弊ではなくある日突然発症する急性の状態として定義されている。
  • 職業性ストレス簡易調査票(57項目版)は、ストレスチェック制度の実施に際して厚生労働省が推奨する標準的な調査票であり、その設問はすべて「ストレス反応(心理的・身体的反応)」のみを測定するもので、仕事のストレス要因や周囲のサポートは調査項目に含まれていない。
  • 職業性ストレスにおける「仕事の要求度(デマンド)」が高くても、「仕事のコントロール(裁量度)」が高ければ、ストレス反応が緩和されるとするカラセクの「要求度-コントロールモデル(JD-Cモデル)」において、ストレスが最も高くなるのは「要求度が高く・コントロールが高い」組み合わせである。
  • 職業性ストレス反応には、心理的反応(不安・抑うつ・イライラ等)・身体的反応(頭痛・肩こり・胃腸症状等)・行動的反応(飲酒量の増加・欠勤・ミスの増加等)の3種類があり、これらは相互に影響し合う。正答
  • 「ワーク・エンゲイジメント」とは燃え尽き症候群(バーンアウト)の対概念であり、仕事に対して活力・熱意・没頭の3要素を持ちポジティブな充実感を感じる状態を指し、健康度・生産性の高さと関連することが示されている。
正答:職業性ストレス反応には、心理的反応(不安・抑うつ・イライラ等)・身体的反応(頭痛・肩こり・胃腸症状等)・行動的反応(飲酒量の増加・欠勤・ミスの増加等)の3種類があり、これらは相互に影響し合う。

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正しいのはエです。職業性ストレス反応は心理的反応・身体的反応・行動的反応の3種類があり、相互に影響し合います(例: 仕事のプレッシャー→不安[心理]→頭痛[身体]→飲酒量増加[行動]という連鎖)。

各誤りの要点: ア→バーンアウトは急性ではなく「慢性的な疲弊の蓄積」で生じる。イ→職業性ストレス簡易調査票(57項目版)が厚生労働省の推奨する標準的調査票であることは正しいが、その構成は「①仕事のストレス要因②心身のストレス反応③周囲のサポート」の3領域であり、「ストレス反応のみを測定し仕事のストレス要因や周囲のサポートを含まない」という記述は誤り。ウ→JD-Cモデルでストレスが最も高いのは「要求度が高く・コントロールが低い」組み合わせ。オ→ワーク・エンゲイジメントの説明として活力・熱意・没頭という3要素は正しいが、「燃え尽き症候群の単純な対概念」という断定が不正確。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): バーンアウト(燃え尽き症候群)は「仕事への強い献身や熱意を持って働き続けた末に起こる慢性的な精神的疲弊」として定義されています。ある日突然発症する急性の状態ではなく、長期にわたる過剰なエネルギー消耗が積み重なって生じる慢性的プロセスです。「急性の状態」という定義は誤りです。
  • イ(誤): 職業性ストレス簡易調査票(57項目版)は厚生労働省が標準的に推奨する調査票であること自体は正しいですが、その構成は「①仕事のストレス要因(17項目)②心身のストレス反応(29項目)③周囲のサポート等の修飾要因(11項目)」の3領域です。「ストレス反応のみを測定し、仕事のストレス要因や周囲のサポートを含まない」という記述は誤りです。ストレスチェック制度では法令上「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を含むことが求められ、57項目版はこれをすべて満たします。
  • ウ(誤): カラセクのJD-Cモデルでは、ストレス(健康障害リスク)が最も高くなるのは「要求度が高く・コントロールが低い」(high demand・low control)の組み合わせです。選択肢の「要求度が高く・コントロールが高い」は「能動的職業」(挑戦的だがコントロールがある職業)と位置づけられ、健康障害リスクは最も高くはありません。
  • エ(正): ストレス反応の3分類(心理的・身体的・行動的)は職業性ストレスモデルの基本的構成要素であり、相互に影響し合います。心理的ストレス反応が身体症状を誘発し、身体症状が行動変化を引き起こすという連鎖が生じます。
  • オ(誤): ワーク・エンゲイジメントの3要素(活力・熱意・没頭)の記述は正しいですが、「燃え尽き症候群の対概念」という部分は単純すぎる表現です。ワーク・エンゲイジメントとバーンアウトは対極ではありますが、「ワーク・ホリズム(働き中毒)」との区別も重要で、バーンアウトとの単純な二項対立では説明しきれません。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

職業性ストレスの研究は1970〜80年代から急速に発展し、現在では職業性ストレスと健康の関係を説明するいくつかの重要な理論モデルが確立されています。

主要な職業性ストレスモデル:

1. 要求度-コントロールモデル(JD-C model:カラセク):

- 仕事の要求度(Demand)とコントロール(裁量度)の組み合わせでストレスを予測

- High Demand + Low Control = 最高ストレス(心臓疾患・精神疾患リスク高)

- High Demand + High Control = 能動的職業(挑戦的だが達成感あり・ストレスは中程度)

- Low Demand + Low Control = 受動的職業(倦怠感・無気力)

- Low Demand + High Control = 最低ストレス(リラックス)

2. 努力-報酬不均衡モデル(ERI model:ジークリスト):

- 仕事への努力と報酬(給与・承認・キャリア)の不均衡がストレスの根源

- 努力過多・報酬不足 + オーバーコミットメント(過度の仕事への熱意)がリスク

3. 職業性ストレス簡易調査票(NIOSH職業性ストレスモデル):

- 仕事のストレス要因→ストレス反応を修飾要因(サポート・個人特性)が調整するモデル

バーンアウトの3次元モデル(マスラック):

1. 情緒的消耗感(Emotional Exhaustion): 仕事での感情エネルギーが枯渇した状態

2. 脱人格化(Depersonalization): 仕事相手(クライアント・患者等)への冷淡化・無関心

3. 個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment): 仕事の達成感・有能感の喪失

【実務・条文構造】

ストレス反応の3分類と職場での観察ポイント:

| ストレス反応の種類 | 具体的な症状・変化 | 職場での観察ポイント |

|---|---|---|

| 心理的反応 | 不安・抑うつ・イライラ・気力低下・集中力低下 | 表情の暗さ・発言量の減少・相談の回避 |

| 身体的反応 | 頭痛・肩こり・腰痛・胃腸症状・不眠・動悸 | 体調不良による欠勤・遅刻・早退の増加 |

| 行動的反応 | 飲酒量増加・喫煙量増加・欠勤・ミスの増加・遅刻 | 業務パフォーマンスの低下・コミュニケーション回避 |

ワーク・エンゲイジメントとバーンアウトの比較:

| 概念 | 要素 | 特徴 |

|---|---|---|

| ワーク・エンゲイジメント | 活力・熱意・没頭 | ポジティブな充実感・仕事への自発的関与 |

| バーンアウト | 情緒的消耗・脱人格化・達成感低下 | 慢性的疲弊・仕事への否定的感情 |

| ワーク・ホリズム | 強迫的な仕事への固執 | 仕事をやめられない(ネガティブな強制的関与) |

【試験での位置づけ】

職業性ストレスの問題では「JD-Cモデルの高ストレス組み合わせ(高要求度+低コントロール)」「ストレス反応の3分類(心理的・身体的・行動的)」「バーンアウトは慢性的な疲弊過程(急性ではない)」「ワーク・エンゲイジメントの3要素(活力・熱意・没頭)」が頻出事項です。ウのような「要求度が高く・コントロールが高い」を最高ストレスとする誤りは、JD-Cモデルの理解を逆にした典型的な引っかけです。論理的に考えれば「コントロールがある(裁量が高い)仕事はストレスが低い」という方向性が理解しやすいです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: バーンアウトの発症プロセスは「熱心な仕事への関与→慢性的な過負荷・報酬不足→エネルギーの枯渇→バーンアウト」という段階的経過を辿ります。職場での予防策として「仕事量の適正化・休暇の取得促進・上司からの承認・公正な評価制度」が重要です。
  • ウ: JD-Cモデルを拡張した「要求度-コントロール-サポートモデル(JD-C-Sモデル)」では、高要求度+低コントロールでも「上司・同僚からの社会的サポートが高い」場合はストレスが緩和されることが示されています。これがストレスチェックの集団分析で「サポート(職場のサポート)」の評価が重視される理由です。
  • エ: 行動的ストレス反応(飲酒量増加・欠勤・ミス増加)は、管理監督者(ラインによるケア)が観察できる「サイン」として重要です。パフォーマンスの低下・欠勤の増加・コミュニケーション回避等が続く場合は、産業保健スタッフへのつなぎを積極的に検討することが推奨されます。
  • オ: ワーク・エンゲイジメントを高める組織的要因として「仕事の資源(Job Resources)」—上司のサポート・同僚との良好な関係・成長の機会・仕事の裁量—が重要とされています。個人の努力だけでなく、職場環境の整備がワーク・エンゲイジメントを高める上で重要です。

【根拠】医学的事実(確立した産業精神医学・職業性ストレス理論)。厚生労働省「職場における心の健康づくり」関連資料・マスラックのバーンアウト理論。

【補足】JD-Cモデルの高ストレス=「高要求度+低コントロール」(高コントロールではない)。ストレス反応3分類=心理的・身体的・行動的(相互影響)。バーンアウトは慢性的過程。ワーク・エンゲイジメント=活力・熱意・没頭。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した産業精神医学・職業性ストレス理論)。ストレス反応の3分類(心理的・身体的・行動的)は職業性ストレスモデルの基本的構成要素。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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