労働衛生(有害業務以外)9温熱環境・作業環境測定

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問9:温熱環境・作業環境測定

職場における熱中症の予防対策に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 暑熱順化(熱への馴化)とは、高温環境に繰り返しさらされることで体温調節機能が低下する現象であり、熱中症の発症リスクが増加するため、熱に慣れさせる作業管理は禁忌とされている。
  • 睡眠不足・過労・飲酒は熱中症のリスク因子であるが、肥満・糖尿病・高血圧は熱中症の発症リスクには関係しない。
  • 熱中症予防のための作業管理として、WBGTが基準値を超えている場合は、作業時間の短縮・休憩の増加・作業強度の軽減などの対策を講じる必要がある。正答
  • アルコールを摂取していても、翌朝には完全に代謝されて脱水状態は解消されるため、前日の飲酒は熱中症リスクに影響しない。
  • 暑熱環境での作業において、休憩中は高温の休憩室よりも直射日光下の屋外の方が体温回復に効果的である。
正答:熱中症予防のための作業管理として、WBGTが基準値を超えている場合は、作業時間の短縮・休憩の増加・作業強度の軽減などの対策を講じる必要がある。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

正しいのはウです。WBGT基準値を超えた場合は、作業時間の短縮・休憩の増加・作業強度の軽減など、労働者への熱ストレスを下げる作業管理が必要です。これは厚生労働省の通達にも明記されています。

ア→暑熱順化は体温調節機能が向上する適応現象であり、熱中症リスクを下げます(「低下する」は逆)。イ→肥満・糖尿病・高血圧はいずれも熱中症の基礎疾患リスク因子です。エ→アルコールは利尿作用があり、翌朝も脱水が残ることがあります。オ→休憩は涼しい屋内(空調あり)が推奨され、直射日光下は体温回復に逆効果です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 暑熱順化(heat acclimatization)は高温環境への適応反応であり、体温調節機能が向上します。具体的には発汗開始温度の低下・発汗量の増加・汗の電解質濃度の低下(ナトリウム損失の効率化)・心拍数の安定化などが生じ、熱中症リスクが低下します。禁忌ではなく、むしろ段階的な順化プログラム(初めの1〜2週間は作業強度・時間を段階的に増やす)が推奨されます。
  • イ(誤): 肥満は体表面積に対する体重比が大きく体熱放散効率が低い、糖尿病は自律神経障害で発汗機能が低下する、高血圧は心臓への負担が増大するなど、いずれも熱中症の増悪因子です。「関係しない」は誤りです。
  • ウ(正): WBGTが作業強度別の基準値を超えた場合は、①作業時間の短縮②休憩時間・回数の増加③作業強度の軽減④高温箇所での交代制導入などの作業管理が必要です(厚生労働省通達)。
  • エ(誤): アルコールは利尿作用があり、飲酒後は尿量が増えて脱水状態になります。翌朝もこの脱水が完全に解消されないまま暑熱作業に就くと熱中症リスクが高まります。「前日の飲酒は関係しない」は誤りです。
  • オ(誤): 休憩場所は日射や高温熱源を避けた涼しい場所(空調設備のある休憩室等)が推奨されます。直射日光下の屋外では体温回復どころか熱ストレスが継続します。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

暑熱順化(heat acclimatization)は、反復的な暑熱ストレスによって生じる体温調節系の適応現象です。この適応は通常1〜2週間の暑熱暴露で完成し、以下の変化が生じます。

1. 発汗機能の向上: 発汗開始温度が低下し、より早い段階から発汗が始まる。最大発汗量が増加する(未順化者の約2〜3倍)

2. 汗の塩分濃度の低下: 汗中のナトリウム濃度が低下し、電解質損失が減少する(同じ発汗量でもナトリウム保持能が向上)

3. 循環系の安定: 同一作業での心拍数が低下・安定する。血漿量の増加により心拍出量が改善する

4. 深部体温の低下: 同一作業強度での深部体温(核心温)上昇が抑制される

これらの変化により、順化した労働者は未順化者と比べてWBGT基準値をやや高く設定することができ、より安全に高温環境で作業できます。

【実務・条文構造】

熱中症リスク因子の分類(個人リスク因子と環境・作業リスク因子):

個人リスク因子(内因性):

| カテゴリー | 具体的リスク因子 | 機序 |

|---|---|---|

| 基礎疾患 | 心疾患・高血圧・糖尿病・腎疾患・精神疾患 | 体温調節機能の低下・循環器への負担増大 |

| 体格 | 肥満 | 体表面積/体重比の低下→放熱効率低下 |

| 生活習慣 | 睡眠不足・前日の飲酒・脱水・過労 | 体温調節予備能の低下 |

| 薬剤 | 抗コリン薬・利尿薬・β遮断薬 | 発汗抑制・脱水促進・心拍応答抑制 |

| 経験 | 暑熱未順化 | 体温調節適応の未完成 |

環境・作業リスク因子(外因性):

  • 高WBGT値(気温・湿度・熱放射の複合)
  • 直射日光・照り返し
  • 防護服・厚手の作業着による発汗蒸発の阻害
  • 重筋作業(熱産生増大)
  • 休憩・水分補給機会の不足

暑熱順化プログラムの設計指針(厚生労働省推奨):

  • 第1〜3日: 通常の50%の強度・時間で暑熱暴露
  • 第4〜7日: 75%の強度・時間
  • 第8日以降: 通常作業
  • 中断後の再順化: 2〜3週間作業を離れると順化が失われるため、再開時は同様の段階的プログラムが必要

【試験での位置づけ】

熱中症予防対策の問題では「暑熱順化は体温調節機能が向上する(低下ではない)」「肥満・糖尿病・高血圧はリスク因子」「WBGT基準値超過時の具体的対策(作業時間短縮・休憩増加・強度軽減)」「前日飲酒の脱水リスク」「休憩場所は涼しい屋内(直射日光下は不可)」が頻出事項です。アのように「順化によってリスクが増加する・禁忌」という誤りは体温調節の基本メカニズムを誤解させる典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 暑熱順化は段階的に行うことが重要です。急激な高強度の暑熱暴露(例:初日から最大強度での作業)はかえって熱中症を発症させる危険があります。新規採用者・長期休暇後の職場復帰者・季節の変わり目での高温環境作業開始時は特に段階的な作業管理が必要です。
  • イ: 薬剤も重要なリスク因子です。抗ヒスタミン薬(花粉症薬)・抗うつ薬・抗精神病薬の中には発汗抑制作用を持つものがあり、これらを服用中の労働者は熱中症リスクが高まります。産業医・保健師が労働者の内服薬情報を把握し、高温作業への配置に際して注意喚起することが望まれます。
  • ウ: WBGT基準値を超えた場合の対策の中でも「作業の中断・休止」が最も確実な対策ですが、生産活動への影響から実施が難しい場合があります。現実的には個人用空調服(ファン付き作業服)・クーリングベスト・氷嚢の携帯・飲水タイムの設定など複数の対策の組み合わせで対応します。
  • エ: アルコールが熱中症リスクを高める機序は2つあります:①利尿作用による翌日の脱水②アルコール代謝時の発熱(体温上昇)。「前夜に深酒した翌日は熱中症になりやすい」ことは職場の保健指導で必ず伝えるべき重要事項です。
  • オ: 休憩時の体温回復のために最も効果的な方法は、空調が効いた涼しい部屋での安静です。屋外の木陰や日陰でも一定の回復はできますが、輻射熱の影響を完全に排除できない場合があります。可能であれば冷やしたタオルや氷嚢を首・腋窩・鼠径部に当てることが深部体温の低下を促進します。

【根拠】厚生労働省「職場における熱中症の予防について(基発0620第3号)」・日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」。

【補足】暑熱順化は体温調節機能が「向上」する(禁忌ではない)。肥満・糖尿病・高血圧はリスク因子(「関係ない」は誤り)。WBGT超過時は作業時間短縮・休憩増加・強度軽減。前日飲酒は脱水リスクあり。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「職場における熱中症の予防について(基発通達)」・熱中症診療ガイドライン(日本救急医学会)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

熱中症予防対策・高温順化頻出度A

労働衛生(有害業務以外)の他の問題

1
温熱環境・作業環境測定
2
食中毒・感染症
3
救急処置
4
メンタルヘルス・健康保持増進
5
労働衛生統計
6
採光照明・換気・事務室環境

科目別に解いて、衛生管理者に合格

関係法令・労働衛生・労働生理を260問。第一種・第二種対応。各問に根拠法令とAI解説(3レベル)付き。