衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問8|温熱4要素・熱中症分類

問題

衛生管理者 | 労働衛生(有害業務以外)

温熱環境の評価と熱中症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ

タップするとすぐ答え合わせ

答え合わせ

正解は ウ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)

解説

誤りはウです。気流(風)は通常は体温冷却に有効ですが、気温が体温(約37℃)より高い場合、強い気流は逆に熱を体に運んでしまうため、冷却ではなく加温効果をもたらすことがあります。「常に有効」という断定が誤りです。

ア(温熱4要素)は正しい。4要素すべてが体感温度に影響します。イ(Ⅰ度の症状)・エ(熱射病の対応)も正しい内容です。オは重要な実務知識で、水分だけ補給すると血中ナトリウム濃度が下がって低ナトリウム血症になる危険があります。スポーツドリンクや経口補水液で水分と塩分を同時に補給することが推奨されます。

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 温熱4要素(気温・湿度・気流・熱放射)はWBGT算出式にも反映されており、それぞれ異なる体温調節機序に影響します。気温は対流による体からの熱移動、湿度は蒸発散熱、気流は対流と蒸発を促進または妨害、熱放射は輻射熱として体表面を直接加熱します。
  • イ(正): ガイドラインの「熱中症の症状と分類」では、Ⅰ度はめまい・生あくび・失神(熱失神)、筋肉痛・筋肉の硬直(熱痙攣)、大量の発汗で、重症度は最も小さい区分です。軽症の熱けいれんは、涼しい環境で休むことや塩分を含んだ飲食物の摂取で治るとされています(MSD)。
  • ウ(誤): 気流は通常、皮膚からの蒸発散熱と対流放熱を促進して体温低下に働きます。しかし気温が体温(37℃)より高い場合は、皮膚表面より熱い空気が気流によって体に当たることで、熱を体に「運び込む」加熱効果が生じます。このため「常に冷却に有効」ではなく、気温が体温を超える極端な高温環境では気流が有害になる場合があります。
  • エ(正): 熱射病は高温による病気の中で最も重い病態で、体温が通常40℃を超え、錯乱・見当識障害などの脳機能障害が現れます。直ちに体を冷やし、救急車を呼ぶべきとされています(MSD)。ガイドラインの分類では意識障害・痙攣・手足の運動障害・高体温を示すⅢ度・Ⅳ度にあたります。
  • オ(正): 汗をかくと塩分と水分が失われますが、水分だけを大量に摂取すると体内に残っている塩分が薄まります(MSD「熱けいれん」)。ガイドラインも水分及び塩分の作業前後の摂取と作業中の定期的な摂取を指導するよう求めています。

【理論的背景】

人体の体温調節は、核心温(深部体温)を約37℃に維持するために、体内での熱産生と体外への熱放散のバランスをとる精密なシステムです。熱放散の主要な機序は4つあります:①輻射(体表面から赤外線として放熱)、②対流(体表面の空気が流れることで熱が移動)、③蒸発(発汗・呼吸による水分蒸発)、④伝導(直接接触による熱移動)。

気流(風)がこれらの機序に与える影響は複雑です。気温が体温より低い(標準的な労働環境)場合、気流は対流放熱と蒸発散熱の両方を促進して冷却に有効です。しかし気温が体温より高い場合(熱波・高炉作業・砂漠環境など)、体表面より高温の空気が気流によって接触し、対流による加熱効果が生じます。この状態では発汗による蒸発散熱のみが冷却手段となりますが、湿度も高い場合はその蒸発効果も低下します。

【実務・条文構造】

熱中症の症状と分類(厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」表2):

分類主な症状重症度
Ⅰ度めまい・生あくび・失神(熱失神)、筋肉痛・筋肉の硬直(熱痙攣:発汗に伴う塩分の欠乏により生じる)、大量の発汗小
Ⅱ度頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感(従来の「熱疲労」)、集中力や判断力の低下↓
Ⅲ度・Ⅳ度意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温(従来の「熱射病」「重度の日射病」に相当)大

水分・塩分補給(ガイドライン・MSD):

  • 安衛則第617条により、多量の発汗を伴う作業場では塩及び飲料水を備え付けることが義務付けられており、飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴等を備え付けなければならない
  • 塩分を摂取するときは、0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク等を20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂取することが望ましい(摂り過ぎに注意)
  • 自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあるため、自覚症状の有無にかかわらず作業前後と作業中の定期的な摂取を指導する
  • 水分だけを大量に摂取すると体内に残っている塩分が薄まり、熱けいれんが起こる(MSD)

高温作業場での予防対策(ガイドライン):

  • 作業環境管理: WBGT値の把握、適度な通風又は冷房を行うための設備、直射日光や照り返しを遮る屋根等、休憩場所の整備
  • 作業管理: WBGT値の評価に基づく作業時間の短縮等、身体作業強度の高い作業を避ける、計画的な暑熱順化期間、透湿性・通気性の良い服装
  • 健康管理: 作業開始前の体調及び暑熱順化の状況の確認、職場巡視での水分・塩分の摂取状況の確認

【試験での位置づけ】

温熱環境の問題では「温熱4要素の全列挙(気温・湿度・気流・熱放射)」「気流が高温環境では加熱効果をもたらす場合がある(ウの誤り)」「熱中症Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ度の症状区分」「水分だけでなく塩分も同時補給(低ナトリウム血症の予防)」が頻出事項です。ウのような「気流は常に冷却に有効」という断定的誤りは、「暑い日に風が吹けば必ず涼しい」という日常感覚を利用した典型的な引っかけです。極端な高温環境(気温>体温)という条件を意識することが見分けのポイントです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 4要素のうち熱放射(輻射熱)は、近くに高温の熱源(溶鉱炉・高温炉・直射日光)があると体温調節に大きな負荷をかけます。体感では「じりじりと熱い」感覚であり、気温が低くても輻射熱が強い場合は熱中症リスクが高くなります。これがWBGTが気温だけでなく黒球温度(輻射熱)を取り入れている理由です。
  • イ: Ⅰ度の「熱失神」は、ガイドラインでは「立ちくらみ」という状態で、脳への血流が瞬間的に不十分になったことを示すと説明されています。意識障害を示すⅢ度・Ⅳ度とは区別します。
  • ウ: MSDマニュアルは、対流を「皮膚の上を流れる冷たい水や空気へと熱が伝達されること」と説明し、外気温が体温に近づいたときは主に発汗によって体を冷やすとしています。気温が体温より高ければ、風は冷却に働くとは限りません。ガイドラインも、送風や送水により身体を冷却する機能を持つ服など、深部体温の上昇の抑制に資するものの積極的な採用を求めています。
  • エ: 熱射病の治療として、MSDマニュアルは氷水または冷水に浸すことによる冷却、蒸発冷却を挙げ、冷水に体を浸すことができない場合は体に水の霧を吹きかけて扇風機で風を当てる方法を示しています。ガイドラインは、医療機関までの搬送の間や経過観察中は1人にしないことを求めています。
  • オ: 熱疲労の治療には、休息、暑い環境から離れさせること、口から(スポーツドリンクや、小さじ2杯程度[10グラム]の塩を溶かした約1リットル程度の水)あるいは静脈から水分と塩分を補給することが含まれます(MSD)。ガイドラインは、飲料水等の配備に当たり、糖分・塩分の含有量が摂取者に分かるものが望ましいとしています。

【根拠】厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」・労働安全衛生規則第617条・MSDマニュアル家庭版「熱中症の概要」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」。

【補足】気流は気温が体温より低い場合は冷却効果があるが、気温が体温より高い場合は加熱効果をもたらすことがある→「常に冷却に有効」は誤り。水分だけでなく塩分も同時補給(低ナトリウム血症予防)。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(表2「熱中症の症状と分類」、水分及び塩分の摂取)、MSDマニュアル家庭版「熱中症の概要」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 温熱4要素・熱中症分類
  • 頻出度A

関連する問題

ページの先頭へ