問題
職場における照明設計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはアです。「照度は高いほど常に良い・上限不要」「情報機器作業でも高いほど画面が見やすい」という記述はいずれも誤りです。情報機器作業(パソコン作業)では、強い光や画面への映り込み(グレア)があると、比較的暗い画面上の文字が見にくくなります。厚生労働省の情報機器作業ガイドライン(令和元年)は、書類上・キーボード上の照度を300ルクス以上としたうえで、画面と周辺の明るさの差をなるべく小さくするよう求めています。照度には作業に適した適正範囲があり、上限なく高ければ良いわけではありません。
ウ(全般照明と局所照明の比)・イ(間接照明の特性)・エ(グレア対策)・オ(照明のメンテナンス)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ウ(正): 全般照明と局所照明を組み合わせる場合、局所照明だけが極端に明るく周囲が暗いと眼精疲労を招きます。全般照明の照度が局所照明の1/10以上(明暗比10:1以内)になるよう設計することが推奨されます(JIS Z 9110の指針)。
- イ(正): 間接照明は天井・壁の反射を利用するため、光のロス(反射率による減衰)が大きく、直接照明と同じ照度を得るためにより多くの電力が必要です。ただしグレアの少ない均一な光環境が得られるメリットがあります。
- ア(誤): 照度は適正な範囲があり、高すぎると問題が生じます。厚生労働省の情報機器作業ガイドラインは、書類上及びキーボード上の照度を300ルクス以上とし「作業しやすい照度とすること」、ディスプレイ画面・書類・キーボード面の明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすることとしています。グレアがあると比較的暗い画面上の文字等は見にくくなり、つや消し処理の反射防止型ディスプレイは外光が明る過ぎると画面全体が光るようになるとも説明しています。「常に高いほど良い・上限不要」は誤りです。
- エ(正): ルーバー(格子状の遮光板)やパネルカバーで光源を覆い、直接光が目に入る角度(遮光角)を制御することは標準的なグレア対策です。遮光角が大きいほどグレアが抑制されますが、照明効率は低下します。
- オ(正): ランプの光束は使用時間とともに低下(光束減退)し、器具の汚染(ほこり・汚れ)も照度低下を招きます。定期的な光源交換・器具清掃による照明維持管理は、設計照度を継続して確保するために不可欠です。
【理論的背景】
照度は「高いほど良い」という単純な原則は成立しません。人間の視覚系は、絶対的な照度よりも「視対象と背景のコントラスト比」や「輝度の均一性」によって見やすさが決まります。過剰照明は以下の問題を引き起こします。
1. グレア(まぶしさ)の増加: 高輝度の光源や反射光が視野内に入ることで、失能グレア(視力低下)・不快グレア(疲労)が生じる
2. ディスプレイへの映り込み: 情報機器作業では、周囲照度が高いほどディスプレイ画面に周囲の明るさが映り込み(反射)、コントラストが低下して読みにくくなる
3. エネルギーの無駄: 必要以上の照度は省エネの観点からも問題
適正照度の概念:
事務所則や安衛則が定めているのは照度の下限値(「○○ルクス以上」)です。情報機器作業ガイドラインも書類上及びキーボード上の照度を「300ルクス以上とし、作業しやすい照度とすること」としたうえで、画面と周辺の明るさの差をなるべく小さくすること、グレアが生じないようにすることを求めています。現行のガイドラインで照度の数値が示されているのはこの「300ルクス以上」だけで、画面上の照度の上限値は数値では示されていません(平成14年の旧「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は令和元年に廃止)。
【実務・条文構造】
情報機器作業ガイドライン(厚生労働省・令和元年7月12日 基発0712第3号)の照度・グレアに関する主な規定:
- 書類上及びキーボード上: 300ルクス以上とし、作業しやすい照度とする
- 明るさの差: ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面の明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくする
- グレア対策: 太陽光等が画面に入射する場合はブラインド又はカーテン等を設ける、間接照明等のグレア防止用照明器具を用いる
- 輝度比の目安(解説部分): 近い視野内で1:3程度、広い視野内で1:10程度
照明器具の劣化と保守率(Maintenance Factor: MF):
- 保守率: 設計時の照度に対して実際の平均照度の比率
- 新設時: MF=1.0(設計照度通り)
- 経年後: ランプの光束低下 + 器具の汚染で MF が低下(例:0.7〜0.8程度)
- 設計では「設計照度 ÷ 保守率」で必要な初期照度を算出する
- 定期清掃・ランプ交換によって保守率を維持することが照度管理の基本
グレアの評価指標(UGR: Unified Glare Rating):
- 照明器具のグレア度を数値化した国際規格(CIE/ISO準拠)
- UGR値が小さいほどグレアが少ない
- 事務室推奨値: UGR 19以下(JIS Z 9110)
- 精密作業・医療施設: UGR 16以下
全般照明と局所照明の組み合わせ設計:
- 全般照明: 作業空間全体を均一に照らす(最低照度を確保)
- 局所照明: 作業台や特定の作業箇所を追加で照らす(高照度が必要な精密作業向け)
- 推奨比率: 局所照明照度:全般照明照度 = 10:1 以内(全般照明が局所照明の1/10以上)
【試験での位置づけ】
照明設計に関する問題では「情報機器作業の照度(書類上・キーボード上300lx以上、画面と周辺の明るさの差を小さく)」「間接照明の特性(グレア少・均一・効率低)」「グレア対策(ルーバー・遮光カバー)」「全般照明と局所照明の比率(1/10以上)」「照明の保守(ランプ交換・清掃)」が出題されます。アのような「照度は高いほど常に良い」という過度な一般化は典型的な誤りパターンです。情報機器作業での画面グレアの問題は、「明るさの差をなるべく小さくする」「映り込みを少なくする」というガイドラインの考え方で判断できます。
【各選択肢の発展補足】
- ウ: 全般照明と局所照明の1/10以上という比率は、眼が明暗に頻繁に順応することによる眼精疲労を防ぐためのものです。作業台が2000lxで周囲が100lx未満の場合、眼は視線を移動するたびに大きな明暗差に適応するために筋が収縮・弛緩を繰り返し、疲労が蓄積します。
- イ: 間接照明の光利用効率の低さは、天井・壁の反射率に依存します。天井・壁が白い(反射率が高い)ほど間接照明効率が改善します。一方で壁紙の汚れや経年劣化で反射率が低下すると、間接照明の照度が著しく低下するため、壁・天井の清潔維持が特に重要です。
- ア: 情報機器作業ガイドラインは、視野内に高輝度の照明器具・窓等があるとまぶしさを感じたりディスプレイの文字や図形が見にくくなったりして眼疲労の原因となり、これらが画面上に映り込む場合も同様であると説明しています。映り込みがある場合には画面の傾きを調整するなどして映り込みを少なくすることが必要とされ、照度を上げれば解決するという考え方はとられていません。
- エ: グレア対策としてのランプ交換・器具選択も重要です。LEDランプは光点が小さく高輝度になりやすいため、カバーやディフューザーなしで使用するとグレアが強くなる場合があります。LED照明導入時は適切な拡散カバーの装着が推奨されます。
- オ: 照明の保守計画(維持管理計画)には、ランプの交換周期(寿命の70〜80%での計画交換が推奨)と清掃周期(半年〜1年ごと)を設定することが含まれます。特にクリーンルームや食品工場では、異物混入防止の観点からランプ交換時の管理(カバー付き器具使用・交換手順の管理)も重要です。
【根拠】厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月)・JIS Z 9110(照明基準総則)・医学的事実(照明工学・視覚生理学)。
【補足】情報機器作業ガイドライン: 書類上及びキーボード上の照度は300lx以上、画面と周辺の明るさの差はなるべく小さく(強い光や映り込みは画面を見にくくする)。照度に適正範囲あり・高いほど常に良いわけではない。間接照明はグレア少・均一・効率低。
- 事務所衛生基準規則e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生規則e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(照明工学・視覚生理学)。情報機器作業ガイドライン(厚生労働省・令和元年)は書類上及びキーボード上の照度を300ルクス以上とし、画面と周辺の明るさの差をなるべく小さくするよう求めている。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

