関係法令(有害業務以外)10安全衛生管理体制

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問10:安全衛生管理体制

労働安全衛生法の目的および事業者等の責務に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保することを目的とするものであり、快適な職場環境の形成については別の法律が定めることとされている。
  • 事業者は、単にこの法律で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。正答
  • 労働安全衛生法に定める義務の多くは「使用者」(労基法第10条に定める者)に対して課されており、「事業者」と「使用者」は安衛法上は同義として扱われる。
  • 元方事業者は、関係請負人及びその労働者が使用する機械等が安全基準に適合しているかどうかの確認義務を負うが、混在作業における安全衛生管理についての指導義務はない。
  • 機械・器具その他の設備の製造者は、当該設備を使用する事業者の安全衛生管理に対して一切の法的責任を負わない。
正答:事業者は、単にこの法律で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

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正しいのはイです。安衛法第3条第1項は事業者の責務として「最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するよう努めなければならない」と定めています。「最低基準を守るだけでよい」ではなく、それを超えた積極的な取組みが求められている点が重要です。

各誤り: ア→安衛法第1条は「快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と明示しており、別法律ではなく安衛法自体がこれを目的に含みます。ウ→安衛法の義務は「事業者」(事業を経営する主体)に課されており、労基法の「使用者」とは同義ではありません。エ・オ→元方事業者の指導義務・製造者の設計安全義務は安衛法で規定されています。

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安衛法の目的と関係者の責務の全体像:

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 安衛法第1条は「この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と定めています。「快適な職場環境」は安衛法自体の目的の一部です。
  • イ(正): 安衛法第3条第1項の記述そのものです。事業者は最低基準遵守にとどまらず、積極的に職場環境改善に取り組む責務があります。
  • ウ(誤): 安衛法の義務主体は「事業者」(企業・経営主体)であり、労基法の「使用者」(現場の指揮命令権者)とは概念が異なります。安衛法の「事業者」は法人格を持つ企業または個人事業主であり、労基法の「使用者」より範囲が異なります。
  • エ(誤): 元方事業者は安衛法第29条により、関係請負人に対し安全衛生管理に関する必要な指示・指導義務を負います。確認義務に加えて指導義務も法定されています。
  • オ(誤): 安衛法第3条第2項は機械等の製造者・販売者・輸入者に対し、設計・製造段階での安全確保の責務を定めています。製造者は設計・製造上の安全基準遵守義務を負います。
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【理論的背景】

労働安全衛生法(1972年制定)は、労働基準法の附属的位置づけから独立した形で制定されました。それまで労基法の一部として規定されていた安全衛生規制を独立させ、「自主的な安全衛生活動の促進」という新しい理念を加えた点が特徴です。

安衛法の目的(第1条)は2つの柱から成ります:

1. 労働者の安全と健康の確保(危害防止基準の確立・責任体制の明確化・自主的活動の促進)

2. 快適な職場環境の形成の促進(1992年改正で追加)

「快適な職場環境」の追加は、「最低限の安全確保」にとどまらず「積極的に良い職場をつくる」方向への転換を示しています。これが選択肢アが誤りである根拠です。

【実務・条文構造】

安衛法における責務の多層構造:

第1層: 事業者(安衛法第3条第1項)

  • 最低基準の遵守
  • 快適職場環境の実現と労働条件の改善を通じた安全健康確保への努力義務
  • 「努力義務」ではあるが、この規定を根拠に行政指導・改善指示が行われる

第2層: 機械等の製造者等(安衛法第3条第2項)

  • 設計・製造段階での安全確保
  • 製造物責任(PL法)とも連動
  • 危険な機械器具の設計・製造・販売・輸入に関する安全基準遵守

第3層: 元方事業者(安衛法第29条)

  • 関係請負人(下請け)への安全衛生管理の指示・指導義務
  • 混在作業場での協議組織の設置(安衛法第30条)
  • 建設業・製造業等の大規模現場での多重請負構造における安全管理の一元化

第4層: 注文者(安衛法第31条)

  • 設備・機械等を使用させる際の安全衛生上の措置義務

「事業者」と「使用者」の区別(安衛法と労基法の概念比較):

  • 安衛法の「事業者」: 事業を行う者(法人・個人事業主)で、安全衛生管理の最終責任を負う
  • 労基法の「使用者」: 事業主または事業の経営担当者、あるいは労働者の労働条件について指揮命令する者(管理職も含む)
  • 重要な違い: 安衛法の義務は「事業者」(経営主体)に集中。労基法の義務は「使用者」(管理監督者も含む広い概念)に課される

【試験での位置づけ】

「安衛法の目的に快適職場環境が含まれるか」は頻出の論点です。「快適な職場環境」が安衛法第1条に明示されていることを確実に覚える必要があります。また「最低基準を守るだけでなく積極的に改善する」という事業者の責務(第3条)は、衛生管理者試験の基本理念問題として頻繁に登場します。元方事業者の指導義務(安衛法第29条)は第一種特有の論点として出題されます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 快適職場環境が安衛法の目的に加えられた背景には、「職場の快適性が労働者の心身の健康維持に直結する」という認識があります。1992年の改正は過労死・職業性ストレスへの社会的関心の高まりを反映したものです。
  • イ: 「最低基準を守るだけでなく」という表現は、安衛法の「自主的活動の促進」理念を示しています。法令遵守(コンプライアンス)は出発点であり、その先の積極的な職場改善(自主安全活動)が求められます。
  • ウ: 安衛法の義務が「事業者」に集中している設計は、経営責任として安全衛生を位置づけるためです。現場の管理監督者(労基法上の使用者)も一定の安全衛生義務を負いますが、安衛法上の主たる義務者は事業者です。
  • エ: 元方事業者の指導義務(安衛法第29条)は、下請け業者が安衛法の要件を満たしているかの確認と指導の両方を含みます。建設現場での重大労働災害の多くが下請け作業者に発生していることへの対応です。特定元方事業者(建設業・造船業)にはより厳しい協議組織設置等の義務が課されます(安衛法第30条)。
  • オ: 機械等の製造者の責務(安衛法第3条第2項)と設計上の安全義務(安衛法第42条・機械等の規格基準)は、製造物の「本質的安全」確保のための規定です。危険な機械を製造・販売すること自体が規制対象となります。

【根拠法令】労働安全衛生法 第1条(目的・快適職場環境の形成)・第3条第1項(事業者の責務・最低基準を超えた努力義務)・第29条(元方事業者の講ずべき措置・指導義務)

【補足】安衛法の目的は「労働者の安全健康確保」と「快適職場環境の形成」の2本柱。事業者は最低基準遵守にとどまらず積極的な改善義務を負う(第3条第1項)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第1条(目的)・第3条(事業者等の責務)・第15条(元方事業者の講ずべき措置)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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