問題
産業医の職務および巡視に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはウです。産業医が勧告をしようとするときに、あらかじめ求めるのは事業者の意見です(安衛則第14条の3第1項)。衛生委員会の承認を得る必要はありません。衛生委員会が関わるのは、勧告を受けた後に事業者が勧告の内容等を報告する場面です(安衛法第13条第6項)。
ア(誠実義務)、イ(巡視頻度と2か月に1回の要件)、エ(情報提供義務)、オ(勧告の記録・3年保存)はいずれも正しい記述です。
産業医の職務・権限・義務の全体像:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 産業医は、必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければなりません(安衛法第13条第3項)。
- イ(正): 産業医の巡視は原則「少なくとも毎月1回」ですが、事業者から毎月1回以上、衛生管理者の巡視結果などの情報提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは「少なくとも2か月に1回」となります(安衛則第15条)。
- ウ(誤): 勧告をしようとするとき、産業医はあらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求めるものとされています(安衛則第14条の3第1項)。衛生委員会の承認は要件ではありません。勧告を受けた事業者は、勧告の内容等を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告します(安衛法第13条第6項)。
- エ(正): 事業者は、労働者の業務に関する情報であって産業医が健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを、求められた後速やかに提供しなければなりません(安衛法第13条第4項・安衛則第14条の2第1項第3号・第2項第3号)。
- オ(正): 事業者は、勧告の内容と勧告を踏まえて講じた措置の内容(講じない場合はその旨と理由)を記録し、3年間保存しなければなりません(安衛則第14条の3第2項)。
【理論的背景】
産業医制度は、常時50人以上の事業場(安衛令第5条)に医師である産業医を選任させ、労働者の健康管理等を行わせる制度です(安衛法第13条第1項)。産業医の意見が事業場の対策に確実に反映されるよう、安衛法第13条と安衛則第14条の2・第14条の3は次の仕組みを置いています。
1. 産業医への情報提供(安衛法第13条第4項・安衛則第14条の2): 健康診断・長時間労働者の面接指導・ストレスチェック後の面接指導の結果に基づいて講じた措置(講じない場合はその旨と理由)の情報、1週間当たり40時間を超えた時間が1か月当たり80時間を超えた労働者の氏名とその時間の情報、産業医が必要と認める労働者の業務に関する情報を提供する
2. 勧告前の意見聴取(安衛則第14条の3第1項): 産業医は勧告をしようとするときは、あらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求める
3. 勧告の尊重と記録(安衛法第13条第5項・安衛則第14条の3第2項): 事業者は勧告を尊重し、勧告の内容と講じた措置の内容(講じない場合はその旨と理由)を記録して3年間保存する
4. 衛生委員会への報告(安衛法第13条第6項・安衛則第14条の3第3項・第4項): 勧告を受けた後遅滞なく、勧告の内容と措置の内容を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告する
これらにより産業医の勧告は「事業者と事前にすり合わせ→記録に残り→委員会に報告される」流れになっています。
【実務・条文構造】
産業医の職務と関連規定:
- 誠実義務(安衛法第13条第3項): 必要な医学に関する知識に基づいて誠実に職務を行う
- 勧告(安衛法第13条第5項): 労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に勧告をすることができる
- 総括安全衛生管理者への勧告、衛生管理者への指導・助言(安衛則第14条第3項)
- 衛生委員会に対する調査審議の求め(安衛則第23条第5項)
- 不利益取扱いの防止(安衛則第14条第4項): 勧告等をしたことを理由に、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない
巡視の詳細(安衛則第15条):
- 原則: 少なくとも毎月1回
- 2か月に1回とできる条件:
(1) 事業者から毎月1回以上、①衛生管理者が行う巡視の結果、②衛生委員会又は安全衛生委員会での調査審議を経て事業者が産業医に提供することとした情報の提供を受けていること
(2) 事業者の同意を得ていること
→ 両方を満たす場合に「少なくとも2か月に1回」
- 巡視の結果、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、産業医は直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(同条)
- 衛生管理者の毎週1回の巡視(安衛則第11条第1項)は変わらない
記録保存期間の整理:
- 産業医の勧告の記録: 3年(安衛則第14条の3第2項)
- 衛生委員会の意見・重要な議事の記録: 3年(安衛則第23条第4項)
- 健康診断個人票: 5年(安衛則第51条)
【試験での位置づけ】
産業医関連問題では、勧告の前後の手続(事前に事業者の意見を求める→勧告→記録3年保存→衛生委員会へ報告)の順序と相手を入れ替えた誤り選択肢が出題されます。「事前に求めるのは事業者の意見」「事後に報告する先が衛生委員会」と区別して覚えましょう。また「勧告記録の保存期間(3年)」は衛生委員会の議事の記録(3年)と同じで、健康診断個人票(5年)と異なる点も出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誠実義務は安衛法第13条第3項です。産業医は、研修修了・産業医科大学等の課程修了・労働衛生コンサルタント(保健衛生)など、安衛則第14条第2項の要件を備えた医師でなければなりません(安衛法第13条第2項)。
- イ: 2か月に1回とするには、情報提供(毎月1回以上)と事業者の同意の両方が必要です。提供される情報は、衛生管理者の巡視結果と、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が提供することとしたものです(安衛則第15条第1号・第2号)。
- ウ: 勧告の前に意見を求める相手は事業者です(安衛則第14条の3第1項)。衛生委員会は、勧告後の報告先(安衛法第13条第6項)であり、産業医は衛生委員会に対して必要な調査審議を求めることもできます(安衛則第23条第5項)。
- エ: 業務に関する情報は、産業医から求められた後速やかに提供します(安衛則第14条の2第2項第3号)。措置に関する情報は医師等からの意見聴取の後遅滞なく、80時間超の労働者の情報は時間の算定後速やかに提供します(同項第1号・第2号)。
- オ: 記録すべき内容は「勧告の内容」と「勧告を踏まえて講じた措置の内容(講じない場合はその旨と理由)」です(安衛則第14条の3第2項)。
【根拠法令】労働安全衛生法 第13条第2項〜第6項、労働安全衛生規則 第14条・第14条の2(情報提供)・第14条の3(勧告・記録3年・報告)・第15条(巡視)・第23条
【補足】勧告の前は「事業者の意見を求める」、勧告の後は「記録3年保存・衛生委員会へ報告」。巡視の2か月に1回は情報提供+事業者同意の両方が必要。
- 労働安全衛生規則第14条の3・第15条・第14条の2・第14条・第23条・第11条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法第13条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法施行令第5条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第13条第3項・第4項・第5項・第6項、労働安全衛生規則(安衛則)第14条の2・第14条の3・第15条。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

