関係法令(有害業務以外)9安全衛生管理体制

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問9:安全衛生管理体制

産業医の職務および巡視に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実に職務を行わなければならない。
  • 産業医は、少なくとも月1回作業場等を巡視しなければならないが、事業者が産業医に対して一定の情報を毎月1回以上提供し、かつ事業者が同意する場合は2か月に1回以上の巡視でよい。
  • 産業医は作業場等を巡視した結果、労働者の健康障害を防止するため必要と認めるときは、直ちに必要な措置を自ら講じなければならない。正答
  • 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として、労働者の業務に関する情報であって産業医が求めるものを提供しなければならない。
  • 産業医を選任した事業者は、産業医による勧告を受けたときは、当該勧告の内容および当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨とその理由)を記録し、これを3年間保存しなければならない。
正答:産業医は作業場等を巡視した結果、労働者の健康障害を防止するため必要と認めるときは、直ちに必要な措置を自ら講じなければならない。

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誤りはウです。産業医は巡視の結果として「労働者の健康障害防止のため必要と認めるときに事業者に対して必要な措置を講じるよう勧告する」権限を持ちます(安衛法第13条第3項)。しかし「自ら直ちに措置を講じる」権限はありません。産業医は医師として医学的な判断・勧告を行う立場であり、具体的な設備改善・作業変更等の措置を実施するのは事業者の責務です。「自ら措置を講じる」という表現が誤りです。

ア(誠実義務)、イ(巡視頻度と2か月緩和要件)、エ(情報提供義務)、オ(勧告記録・3年保存)はいずれも正しい記述です。

標準試験対策の基準レベル

産業医の職務・権限・義務の全体像(2018年改正後):

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 産業医には誠実職務義務が課されています(安衛法第13条第2項)。単に「医師を選任すれば足りる」のではなく、医学的知識に基づく誠実な職務遂行が求められます。
  • イ(正): 産業医の巡視頻度は原則「少なくとも月1回以上」(安衛則第15条第1項)ですが、所定の情報提供(衛生管理者の報告等)が毎月1回以上あり、事業者の同意がある場合に「2か月に1回以上」への緩和が認められます(2017年改正・安衛則第15条第1項ただし書)。
  • ウ(誤): 産業医は巡視の結果として「事業者に対し勧告する」(安衛法第13条第3項)権限を持ちますが、自ら措置を講じる権限は持ちません。事業者が勧告を受けて措置を決定・実施します。産業医が「直ちに自ら措置を講じる」とする記述は権限の範囲を超えた誤りです。
  • エ(正): 2018年施行の改正安衛法により、事業者は産業医が求める労働者の業務関連情報を提供する義務が明文化されました(安衛法第13条第4項)。これにより産業医が適切な健康管理を行える環境整備が強化されました。
  • オ(正): 安衛法第13条第6項・安衛則第14条の3により、事業者は産業医の勧告内容・措置(または不措置とその理由)を記録し、3年間保存しなければなりません(2018年改正)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

産業医制度は「事業場に医学の専門家を置くことで職業病・労働災害を予防する」ことを目的としています(安衛法第13条)。しかし長年、産業医の勧告が事業者に無視・軽視されやすいという実態が問題視されていました。2018年施行の働き方改革関連法(改正安衛法)はこの問題を解決するため、産業医の権限強化と情報環境整備を図りました。

改正の主要3点:

1. 産業医への情報提供義務の新設(安衛法第13条第4項): 事業者は長時間労働者リスト・健診結果・高ストレス者情報等を産業医に提供しなければならない

2. 勧告の衛生委員会報告義務(安衛法第13条第5項): 勧告を受けた事業者は衛生委員会に報告(kankei_02で扱った論点)

3. 勧告の記録・保存義務(安衛法第13条第6項): 勧告内容・措置の有無と理由を記録→3年保存

これらにより産業医の意見が「記録に残り、委員会で審議される」仕組みになり、実効性が高まりました。

【実務・条文構造】

産業医の権限の正確な範囲:

  • 勧告権(安衛法第13条第3項): 事業者に対して労働者の健康管理等に関する勧告をすることができる(「できる」=権限・義務ではない)
  • 意見申述権: 巡視や情報提供に基づいて医学的意見を述べる
  • 情報収集権: 事業者から必要な情報提供を受ける権利

産業医にない権限:

  • 設備・作業方法の変更を「自ら実施する」権限
  • 労働者の就業を「直接禁止する」権限(就業上の措置は事業者が決定)

巡視の詳細(安衛則第15条):

  • 原則: 月1回以上
  • 緩和条件(2017年改正・2017年6月施行):

(1) 事業者が産業医に毎月1回以上、所定情報(時間外労働実績・健康診断結果等・衛生管理者の職場巡視報告等)を提供すること

(2) 事業者の同意があること

→ 上記両方を満たす場合のみ「2か月に1回以上」に緩和可能

※ 緩和はあくまで「産業医の巡視頻度」のみ。衛生管理者の週1回巡視は別途維持される

記録保存期間の整理:

  • 産業医の勧告記録: 3年(安衛則第14条の3第3項)
  • 衛生委員会の議事記録: 3年(安衛則第23条第4項)
  • 一般定期健康診断記録: 5年(安衛則第51条)
  • 特殊健康診断記録(一部): 30年(特化則等)

【試験での位置づけ】

産業医関連問題では、kankei_02(勧告→衛生委員会報告)と本問(自ら措置を講じる権限なし・2か月緩和・記録3年保存)が補完関係にあります。試験では「産業医は直接措置を講じる」「産業医は自ら是正命令を出せる」という誤り選択肢が頻出です。産業医の立場は「医学的専門家としての意見・勧告」であり、「措置の実施者」は事業者であるという役割分担の明確化が重要です。また「勧告記録の保存期間(3年)」は衛生委員会議事録(3年)と同じ、定期健診記録(5年)と異なる点が出題されます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「誠実に職務を行う」義務(安衛法第13条第2項)は産業医固有の規定です。単に医師であれば誰でも選任できるのではなく、「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識」という要件(政令で定める研修修了等)を満たした医師が選任されます。
  • イ: 「2か月に1回への緩和」が認められる情報提供の具体例(安衛則第15条第1項ただし書・厚生労働省通達): 衛生管理者が行った作業場巡視結果・労働者の業務に関する情報・時間外・休日労働の実施状況・健康診断の結果等が含まれます。情報提供の記録も保存が必要です。
  • ウ: 産業医が「直ちに自ら措置を講じられる」と誤解される背景には、医師(国家資格保有者)への専門家的権威への期待があります。しかし労働法の構造では、事業場内の安全衛生措置は事業者の責任・権限であり、産業医はその責任を補助・支援する立場です。外部の産業医(嘱託産業医)は特にこの点が明確で、自ら現場で措置を実施することはできません。
  • エ: 情報提供義務の新設(2018年改正)により、以前は産業医が「情報が欲しい」と言っても提供を受けられないケースがありました。現在は事業者が積極的に提供する義務を負います。提供すべき情報の範囲は安衛則第14条の2に規定されており、長時間労働者の情報・健康診断結果・高ストレス者情報等が含まれます。
  • オ: 勧告記録の3年保存は2018年改正で新設された規定です。記録すべき内容は「勧告の内容」「講じた措置の内容(または不措置の理由)」であり、「産業医の意見が事業者にどのように扱われたか」を追跡可能にする設計です。

【根拠法令】労働安全衛生法 第13条第3項(勧告権)・第4項(情報提供義務)・第6項(勧告記録保存)、労働安全衛生規則 第15条(巡視頻度・2か月緩和要件)・第14条の3(記録保存3年)

【補足】産業医の権限は「勧告」であり「自ら措置を実施する」権限はない。巡視の2か月緩和は情報提供+事業者同意の両方が必要。勧告記録は3年保存。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第13条第3項・第4項・第5項・第6項、労働安全衛生規則(安衛則)第14条・第14条の2・第15条。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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