衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問24:健康診断
健康診断の結果の通知および記録の保存に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事業者は、定期健康診断を行ったときは、その結果を労働者に通知しなければならない。
- イ事業者は、定期健康診断を行ったときは、健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない。
- ウ事業者は、健康診断の結果に基づき作成した健康診断個人票を、当該労働者が退職後も保存しておく義務がある。正答
- エ事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、定期健康診断の結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
- オ健康診断結果の通知は、異常の所見があるかどうかにかかわらず、健診を受けたすべての労働者に対して行わなければならない。
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誤りはウです。健康診断個人票の保存義務は「5年間」(安衛則第51条)と定められており、「退職後も継続して保存する義務がある」という表現は誤りです。退職後も5年間の保存期間が残っていれば保存が必要ですが、「退職後も義務がある」というような無期限の義務ではありません(ただし退職後であっても5年の保存期間が経過していなければ保存が必要です)。
ア(定期健診後は結果を労働者に通知する義務がある)、イ(5年保存義務)、エ(50人以上の事業場は監督署への報告義務)、オ(異常の有無にかかわらず全受診者に通知)はいずれも正しい記述です。
健康診断の通知・記録保存・報告に関する義務の整理:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛法第66条の6により、事業者は健康診断(一般・特殊を問わず)を受けた労働者に対して、遅滞なく結果を通知しなければなりません。通知の方法は特定されておらず(書面が望ましい)、電子メール等も可能です。
- イ(正): 安衛則第51条第1項により、定期健康診断を行ったときは健康診断個人票を作成し、5年間保存することが義務です。
- ウ(誤): 「退職後も保存する義務がある」という表現は不正確です。正確には「健康診断を実施した日から5年間保存する義務」があり、退職後でも5年間の保存期間が残っていれば保存が必要ですが、退職によって保存義務が消えるわけでも、無期限の義務があるわけでもありません。選択肢の表現「退職後も保存しておく義務がある」は「退職後に義務が生じる」と読めてしまい、誤解を招きます。
- エ(正): 安衛則第52条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、定期健康診断の結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません(年1回・所定の様式による)。
- オ(正): 安衛法第66条の6の通知義務は「受診した労働者全員」が対象であり、異常所見の有無にかかわらず全員に通知することが義務です。
【理論的背景】
健康診断の結果通知義務(安衛法第66条の6)は、「事業者が労働者の健康情報を独占しない」という原則を実現するためのものです。従来、健康診断結果は事業者が受け取り、労働者に知らせないケースもありましたが、労働者自身が自分の健康状態を知る権利を保障するため、通知義務が明示されました。
記録保存義務(安衛則第51条)の趣旨は、「健康管理の継続的な追跡が可能になること」と「事後の紛争(労働災害認定・民事訴訟等)における証拠保全」です。5年という保存期間は、労働災害の時効(民事上の損害賠償請求権の時効:原則3年・ただし知った時から20年等)との関係でも設定されています。
【実務・条文構造】
健康診断に関する義務の体系:
【通知義務(安衛法第66条の6)】:
- 対象: 健康診断(一般定期・雇入れ時・特殊等すべて)を受けた全労働者
- 時期: 「遅滞なく」(法定期限なし・速やかにという解釈)
- 方法: 法定なし(書面・電子メール等可)
- 異常所見がなくても全員に通知が必要
【個人票の作成・保存義務(安衛則第51条)】:
- 作成: 定期健康診断実施ごとに健康診断個人票を作成
- 保存期間: 5年間(原則)
※ 特殊健康診断の一部(石綿・電離放射線等)は30年
- 保存場所: 事業場に保存(電磁的記録でも可)
- 退職後の取扱い: 退職後も保存期間(5年)が残っていれば保存義務あり。ただし「退職後も無期限に保存義務がある」わけではない
【報告義務(安衛則第52条)】:
- 対象事業場: 常時50人以上の労働者を使用する事業場
- 報告頻度: 年1回(定期健康診断後)
- 報告先: 所轄労働基準監督署長
- 報告様式: 第6号様式(「定期健康診断結果報告書」)
- 報告内容: 受診者数・有所見者数・措置実施者数等の集計データ
記録保存期間の比較(横断的整理):
- 定期健康診断個人票: 5年
- 雇入れ時健康診断個人票: 5年
- 特殊健康診断(一般)個人票: 5年
- 石綿・電離放射線・一部の特定化学物質の特殊健診個人票: 30年
- 衛生委員会議事録: 3年
- 産業医の勧告記録: 3年
- 特別教育の記録: 3年
- 年次有給休暇の管理記録(2019年改正): 3年
【試験での位置づけ】
健康診断の通知・保存・報告に関する問題は「通知対象(全受診者・異常所見者に限らず)」「保存期間(5年・一部30年)」「報告義務の発生規模(50人以上)」の3点が最頻出です。「退職後も保存義務がある(無期限)」という誤りと「異常所見者のみ通知」という誤りはよく出題されます。また保存期間「3年」「5年」「30年」の使い分けは横断的に問われるため、一覧での整理が効果的です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 通知方法は特定されていませんが、実務では書面交付・封書での個人通知・電子メール等が活用されます。重要なのは「本人が確実に内容を確認できる形での通知」であることです。集団で一覧掲示するような方法はプライバシーの観点から問題があります。
- イ: 健康診断個人票は紙媒体または電磁的記録で保存できます。2023年の安衛則改正により電磁的記録での保存が正式に認められています。保存場所は事業場に置くことが原則ですが、クラウドサービス等での管理も要件を満たせば可能です。
- ウ: 本問の誤りの核心は「退職後も義務がある」という表現の曖昧さです。正確には「健康診断実施日から5年間という保存期間が退職後にも残っている場合は保存が必要」ですが、退職をもって保存義務が「新たに発生する」わけでも「消滅する」わけでもありません。
- エ: 50人以上の事業場への報告義務は毎年実施が必要です。報告書は電子申請(e-Gov)でも提出可能です。50人未満の事業場には報告義務がありませんが、記録の作成・保存義務(個人票)は規模にかかわらず生じます。
- オ: 「異常所見のない労働者には通知不要」という誤りは「異常があった場合のみ問題になる」という誤解から来ます。全員への通知は「自分の健康状態を知る権利」の保障であり、異常がない場合でも「健康であることの確認」として重要な情報です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の6(健康診断結果の通知:全受診者・遅滞なく)・第66条の3(定期健診結果の報告)、労働安全衛生規則 第51条(個人票5年保存)・第52条(50人以上の報告義務・年1回)
【補足】通知は全受診者(異常の有無にかかわらず)。個人票は5年保存(退職後でも期間が残れば保存必要・無期限ではない)。報告義務は常時50人以上の事業場に年1回。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の6(健康診断結果の通知)・第66条の3(定期健康診断結果報告)、労働安全衛生規則(安衛則)第51条(記録の保存期間5年)・第52条(定期健康診断結果報告義務)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。