衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問61:安全衛生管理体制
総括安全衛生管理者に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。
- イ総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならない。
- ウ総括安全衛生管理者が旅行・疾病・事故等によって職務を行えない場合は、代理者を選任しなければならないが、代理者の選任に期限は定められていない。
- エ総括安全衛生管理者は、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者の指揮を行い、これらの者が行う安全衛生業務を統括管理する。正答
- オ総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に選任報告書を提出しなければならない。
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誤りはエです。総括安全衛生管理者が指揮・統括管理する対象は「安全管理者・衛生管理者・その他の者で当該事業場の労働者の安全・衛生に係る技術的事項を管理する者」(安衛法第10条第1項)です。安全衛生推進者は10人以上50人未満の小規模事業場に置かれる者であり、総括安全衛生管理者の選任対象は業種に応じ常時100人・300人・1,000人以上の事業場ですから、両者が同一事業場に並存することはなく、指揮対象に「安全衛生推進者」を含む記述は誤りです。
ア(事業の統括管理者を充てる)、イ(14日以内選任)、ウ(代理者選任義務・期限なし)、オ(遅滞なく届出)はいずれも正しい記述です。
総括安全衛生管理者制度の概要と各選択肢の正誤:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛法第10条第2項により、総括安全衛生管理者は「当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者」でなければなりません。部長・工場長など実質的な意思決定権・予算権限を持つ者が選任されます。資格要件は不要(役職で充てる)。
- イ(正): 安衛則第2条第1項により、選任すべき事由が発生した日(新設・常時労働者数が閾値に達した日等)から14日以内に選任しなければなりません。衛生管理者・産業医も同様の14日ルールです。
- ウ(正): 安衛則第3条により、旅行・疾病・事故等で職務遂行不能の場合は代理者を選任しなければなりません。ただし代理者の選任期限は規定されていません。
- エ(誤): 安衛法第10条第1項が定める統括管理対象は「安全管理者・衛生管理者・その他安全衛生に係る技術的事項を管理する者」です。安全衛生推進者は10〜50人未満の事業場に置かれるものであり、総括安全衛生管理者の選任対象事業場(業種に応じ100人・300人・1,000人以上)とは重複しない制度設計です。
- オ(正): 安衛則第2条第2項により、選任後遅滞なく所轄労働基準監督署長への報告書(様式第3号)の提出が必要です。
【理論的背景】
総括安全衛生管理者制度(安衛法第10条)は、事業場全体の安全衛生管理を「経営者・管理者レベル」が責任を持つ仕組みを法制化したものです。安全管理者・衛生管理者がそれぞれ専門領域を担う一方で、両者を指揮・調整し、経営判断(予算・人員配置・設備投資等)を伴う意思決定ができる「統括者」が必要であるという考え方に基づいています。
選任義務が生じる業種・規模(安衛法第10条第1項・安衛令第2条):
- 林業・鉱業・建設業・運輸業・清掃業: 常時100人以上
- 製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種商品卸売業・旅館業・ゴルフ場業・自動車整備業・機械修理業: 常時300人以上
- その他の業種(情報サービス・金融・小売等): 常時1,000人以上
この「3段階の規模要件」は試験頻出です。衛生管理者(全業種50人以上)・産業医(全業種50人以上)と比べて規模の閾値が高く設定されています。
【実務・条文構造】
総括安全衛生管理者の職務(安衛法第10条第1項各号):
1. 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
2. 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
3. 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
4. 労働災害の原因の調査および再発防止対策に関すること
5. 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で厚生労働省令で定めるもの
「指揮する者」の範囲(安衛法第10条第1項):
- 安全管理者(安衛法第11条)
- 衛生管理者(安衛法第12条)
- その他安全または衛生に係る技術的事項を管理する者
安全衛生推進者(安衛法第12条の2)は10〜50人未満の事業場に置くものであり、総括安全衛生管理者の置かれる事業場(100人以上等)との重複はありません。試験では「推進者を含む」という誤り選択肢が頻出です。
選任・届出・代理者の手続き比較:
| 事項 | 総括安全衛生管理者 | 衛生管理者 | 産業医 |
|------|-----------------|---------|------|
| 選任期限 | 14日以内 | 14日以内 | 14日以内 |
| 届出先 | 所轄労働基準監督署長 | 所轄労働基準監督署長 | 所轄労働基準監督署長 |
| 代理者規定 | あり(安衛則第3条) | あり | あり |
| 資格要件 | なし(統括管理者であれば足りる) | 免許必要 | 医師(研修修了) |
【試験での位置づけ】
本問のエ(安全衛生推進者が指揮対象に含まれるという誤り)は典型的な引っかけパターンです。「推進者は小規模事業場用」「総括安衛管理者は大規模事業場用」という制度の住み分けを理解すれば正答できます。また選任義務の「3段階規模要件」(林業等100人・製造業等300人・その他1,000人)は暗記必須事項です。衛生委員会・衛生管理者・産業医の選任義務(全業種50人以上)と組み合わせた「複合問題」でも登場します。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「統括管理する者」の具体例は、工場長・支店長・事業場長など実際に予算・人事を動かせる立場の者です。肩書きではなく「実質的に統括管理する機能」を持つかどうかが判定基準とされています(行政解釈)。
- イ: 14日以内の起算点は「選任すべき事由が発生した日」です。事業場の新設日・労働者数が閾値に達した日・前任者が退職した日等が起算点になります。
- ウ: 代理者の選任義務はありますが「期限の定めがない」点が他の選任義務と異なります。長期出張・入院等で継続的に不在になる場合は早期に選任する実務が推奨されます。
- オ: 報告書(安衛則様式第3号)には氏名・役職・選任年月日を記載します。選任したことを行政が把握し、監督・指導の基礎情報とするための届出です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第10条(総括安全衛生管理者の職務・指揮対象)、労働安全衛生施行令 第2条(選任義務の規模要件)、労働安全衛生規則 第2条・第3条(選任期限・届出・代理者)
【補足】総括安全衛生管理者が指揮するのは「安全管理者・衛生管理者等」であり「安全衛生推進者」は含まない。選任規模要件は業種によって100人・300人・1,000人の3段階。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第10条(総括安全衛生管理者)、労働安全衛生規則(安衛則)第2条・第3条(選任期限・代理者・届出)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。