問題
過換気症候群に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正しいのはウです。紙袋などから自分の吐いた息を再呼吸すると、吸気中のCO₂が増え、過換気で下がったCO₂を補うことができます。この方法は一般的に行われていますが、中枢神経系障害のある患者の一部では危険な場合もあります。
各誤りの要点: ア→過換気でPaCO₂は低下します(CO₂を過剰に排出するため)。「上昇」は逆です。イ→症状の原因はCO₂の「過剰蓄積」ではなくCO₂の過剰排出(低CO₂血症)による血液アルカリ化です。エ→過換気では血液が酸性化ではなくアルカリ化(pH上昇)し、イオン化Caが低下してテタニーが起きます。オ→水泳前の過換気はPaCO₂を低下させ、呼吸刺激が減弱して水中での意識消失リスクを高めます。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 過換気(息を速く・深く吸い過ぎる状態)では、CO₂が過剰に排出されてPaCO₂が低下します(低CO₂血症・低炭酸ガス血症)。CO₂が血液から過剰に排出されると血液はアルカリ化(pH上昇)し、「呼吸性アルカローシス」が生じます。「アシドーシス(酸性化)」は誤りです。
- イ(誤): 過換気症候群の症状(手足・口周囲のしびれ・テタニー・めまい・失神感・動悸)の原因は、CO₂の過剰蓄積ではなくCO₂の過剰排出による低CO₂血症→血液アルカリ化→イオン化Ca²⁺低下→神経・筋の興奮性亢進という機序です。
- ウ(正): 呼吸性アルカローシスはPaCO₂の一次性低下(低炭酸ガス血症)で、吸気中の二酸化炭素を再呼吸(紙袋からなど)によって増加させる方法が一般的に行われます。ただし、髄液のpHがすでに正常範囲を下回っている中枢神経系障害患者の少なくとも一部では危険な場合もあります。なお、呼吸性アルカローシスそのものは生命を脅かすことはなく、治療は原因となる疾患に向けて行います。
- エ(誤): 過換気→低CO₂血症→血液アルカリ化(pH上昇)→蛋白質の電荷変化によりCa²⁺がアルブミンとより多く結合→イオン化Ca²⁺が低下(「増加」は誤り)→Ca²⁺濃度低下→神経・筋の興奮性が亢進→テタニー・しびれ。「酸性化」「Ca²⁺増加」の両方が誤りです。
- オ(誤): 水泳前の過換気(ハイパーベンチレーション)はPaCO₂を低下させ、呼吸刺激(CO₂上昇が主な呼吸刺激)が弱まります。二酸化炭素レベルが再度上昇するのに時間がかかるため、水面に浮きあがって呼吸するようシグナルが送られるのが遅れ、水中で意識を失う「低酸素性の失神(hypoxic blackout)」や溺水のリスクが高くなります。誤りは「PaCO₂も上昇させる」の部分です。
【理論的背景】
過換気症候群は、不安に関連する呼吸困難と頻呼吸で、しばしば全身症状を伴います。理解の核心は「CO₂の濃度が呼吸を調節する最も強力な刺激であり、過換気でCO₂が下がると血液pHとイオン化カルシウムが変化して症状が出る」という点にあります。
低CO₂血症(低炭酸ガス血症)の機序と症状の連鎖:
1. 過呼吸(呼吸数・呼吸量の増加)→CO₂が過剰に排出される
2. PaCO₂の一次性低下(低炭酸ガス血症)
3. CO₂ + H₂O ⇌ H₂CO₃ ⇌ H⁺ + HCO₃⁻ の平衡が左方向に移動→H⁺が減少
4. 血液pH上昇(呼吸性アルカローシス)
5. タンパク質との結合が増え、またH⁺と引き換えに細胞内へ取り込まれることで、血中のイオン化カルシウム濃度が低下
6. 低カルシウム血症(および低リン血症)→末梢性テタニー(指や腕の硬直)
7. 症状: 末梢・口周囲の錯感覚(しびれ)、筋痙攣、ふらつき、錯乱、失神。機序は脳血流とpHの変化と考えられています
水泳前の過換気が危険な理由:
- 水にもぐる前に急速に呼吸すると二酸化炭素レベルが低下する
- 二酸化炭素レベルが再度上昇するのに時間がかかり、水面に浮きあがって呼吸するようシグナルが送られるのが遅くなる
- 水中で長時間息を止めることで意識を失い(低酸素性の失神・息止めによる失神)、ときに溺水する
【実務・条文構造】
職場での過換気症候群対応:
過換気症候群の特徴:
- 不安に関連する呼吸困難と頻呼吸で、ときに精神的ストレスの強い出来事によって引き起こされる
- 胸痛を伴うことがあり、本人が心臓発作と思い込むこともある
診断と対応:
1. 過換気症候群は除外診断による。より重篤な疾患が除外されない限り、不安が過換気の原因であるとは考えない
2. 基本的な検査はパルスオキシメトリー・胸部X線・心電図(心筋虚血の検出)。ときに急性肺塞栓症と鑑別不能で、その検査が必要になる
3. 治療は安心させることが基本。最大呼出や横隔膜呼吸の指導を支持する医師もいる
4. 多くの患者は基礎にある気分症・不安症の治療(認知療法・ストレス軽減法・薬物療法など)を必要とする
紙袋による再呼吸の位置づけ:
- 吸気中のCO₂を増やす方法として一般的に行われている
- ただし、髄液のpHがすでに正常範囲を下回っている中枢神経系障害患者の一部では危険な場合もある
- 呼吸性アルカローシスそのものは生命を脅かさず、pHを下げるための介入は不要とされ、治療は原因に向けて行う
【試験での位置づけ】
過換気症候群問題では「過換気→PaCO₂低下→血液アルカリ化→イオン化Ca²⁺低下→テタニー・しびれ」という一連の機序が最重要です。アのようにPaCO₂が「上昇」するという誤り、エのように「酸性化」「Ca²⁺増加」という方向を逆にした誤りは典型的な引っかけです。「水泳前の過換気が危険な理由(呼吸のシグナルが遅れて水中で意識を失う)」もあわせて押さえておきましょう。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 換気の増加は、不安だけでなく、低酸素症(高地など)、代謝性アシドーシス、発熱などの代謝要求の増大、疼痛、一部の中枢神経系障害でも起こります。いずれの場合も過換気ではPaCO₂が低下し、呼吸性アルカローシスになります。
- エ: 呼吸性アルカローシスの検査では、細胞内への移動による軽度の低リン血症・低カリウム血症と、タンパク質結合の増加によるカルシウムの減少を認めることがあります。テタニーは、呼吸性アルカローシスが低リン血症と低カルシウム血症を引き起こすために発生します。
- ウ: 紙袋による再呼吸は一般的に行われていますが、呼吸性アルカローシスそのものは生命を脅かすことはなく、pHを下げるための介入は不要とされています。過換気症候群の治療の基本は安心させることで、より重篤な疾患(心筋虚血・急性肺塞栓症など)の除外が欠かせません。
- オ: 溺水のリスクを減らすには、1人では泳がず、ライフガードの警備がある場所で泳ぐことが勧められています。水中で息をこらえる行為をする場合は監督の下で行い、その危険性を認識しておくべきとされています。
【根拠】MSDマニュアル プロフェッショナル版「呼吸性アルカローシス」「過換気症候群」、MSDマニュアル家庭版「溺水」「呼吸の制御」「息切れ」。
【補足】過換気→PaCO₂低下・血液アルカリ化→イオン化カルシウム低下→テタニー・しびれ。「酸性化・Ca²⁺増加」は正反対の誤り。紙袋による再呼吸は一般的に行われるが、中枢神経系障害のある患者の一部では危険な場合もある。水泳前の過換気は水中での意識消失と溺水のリスクを高める。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: MSDマニュアル プロフェッショナル版「呼吸性アルカローシス」「過換気症候群」、MSDマニュアル家庭版「溺水」。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

