衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働生理 問34|内分泌・副腎皮質ホルモン

問題

衛生管理者 | 労働生理

副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の作用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は ア
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

誤りはアです。「血中コルチゾール濃度が高くなるとさらなる分泌が促進される(正のフィードバック)」という部分が誤りです。実際は負のフィードバックが働き、コルチゾールが増えると視床下部・下垂体前葉への抑制シグナルが送られ、コルチゾールの過剰産生を防ぐ仕組みになっています。

その他の選択肢は正しい内容です。コルチゾールは血糖を上げる(エ・正)、免疫を抑制する(イ・正)、ストレスホルモンとして慢性的に上昇する(ウ・正)、早朝に分泌が最高(オ・正)は確立した事実です。

各選択肢の正誤と根拠:

  • エ(正): コルチゾールは「糖質コルチコイド」の代表で、肝臓での糖新生(タンパク質・脂肪をグルコースに変換する経路)を促進し、インスリン抵抗性を高めて末梢組織のグルコース取り込みを抑制します。結果として血糖値が上昇します。長期大量投与の副作用として「ステロイド性糖尿病」が起きます。
  • イ(正): コルチゾールは炎症性サイトカイン産生・好中球活性・リンパ球機能を抑制します。合成コルチコステロイド(プレドニゾロン・デキサメタゾン等)は関節リウマチ・喘息・アレルギー・自己免疫疾患の治療に広く使用されます。
  • ウ(正): 精神的ストレス・身体的ストレス(疾患・外傷)→視床下部CRH分泌→下垂体ACTH分泌→副腎皮質コルチゾール分泌という「HPA軸の活性化」がストレス反応の中核です。慢性ストレスでは持続的な高コルチゾール状態が続き、免疫抑制・骨粗鬆症・高血糖を招きます。
  • ア(誤): HPA軸は負のフィードバックで調節されます。コルチゾールが上昇すると、視床下部でのCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)分泌と下垂体前葉でのACTH分泌が抑制され、コルチゾールの過剰産生が防がれます。正のフィードバック(雪だるま式増加)ではありません。
  • オ(正): コルチゾールは概日リズムを示し、早朝4〜8時(起床前後)にピーク、深夜に最低となります。これはACTHの概日リズムに従っており、睡眠・活動サイクルと連動しています。夜勤労働者ではこのリズムが乱れ、慢性的な健康影響が生じます。

【理論的背景】

副腎は腎臓の上に位置する内分泌腺で、外側の副腎皮質と内側の副腎髄質に分かれます。

副腎皮質の3ゾーンとホルモン:

  • 球状帯(最外層): 鉱質コルチコイド(アルドステロン)→腎尿細管でNa⁺再吸収・K⁺排泄→血圧・電解質調節
  • 束状帯(中間): 糖質コルチコイド(コルチゾール)→血糖上昇・免疫抑制・抗炎症
  • 網状帯(最内層): 副腎アンドロゲン(DHEA等)→性ホルモン前駆体

HPA軸(Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)の詳細:

1. ストレス刺激(身体的・心理的)→視床下部のPVN(室傍核)でCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌

2. CRH→下垂体前葉のコルチコトロープ細胞→ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)分泌

3. ACTH→副腎皮質(束状帯)→コルチゾール合成・分泌

4. 負のフィードバック: コルチゾール→視床下部(CRH抑制)・下垂体前葉(ACTH抑制)→コルチゾールが元に戻る

コルチゾールの主要作用のまとめ:

作用機序結果
血糖上昇肝糖新生↑・インスリン抵抗性↑高血糖・ステロイド糖尿病
タンパク異化筋タンパク分解→アミノ酸→糖新生筋萎縮・皮膚薄化
脂肪再分布中心性肥満(内臓・顔・頸部に蓄積)満月様顔貌・水牛様脂肪沈着
免疫抑制リンパ球アポトーシス・炎症性サイトカイン抑制感染易感染性・創傷治癒遅延
骨代謝骨芽細胞機能低下・破骨細胞活性化・Ca吸収低下骨粗鬆症
胃粘膜粘膜保護機序障害・胃酸分泌促進消化性潰瘍リスク上昇

クッシング症候群(コルチゾール過剰)の主症状: 満月様顔貌(moon face)・中心性肥満・高血糖・高血圧・骨粗鬆症・免疫抑制・皮膚線条(紫色の線条)

【実務・条文構造】

職場のストレスとHPA軸の関連(産業保健の実務):

慢性職業性ストレスとコルチゾール:

  • 過重労働・ハラスメント・仕事の要求度過多→慢性的なHPA軸活性化
  • 長期高コルチゾール→免疫低下→感染症・悪性腫瘍リスク上昇
  • 夜間コルチゾール低下不全(夜間コルチゾール高値)→睡眠障害・疲労回復不全

バーンアウト(燃え尽き症候群)とHPA軸:

  • 過大な仕事要求・長期ストレス→HPA軸の「疲弊」→コルチゾール朝の立ち上がり(CAR: cortisol awakening response)の減弱
  • CARは起床後30〜45分でコルチゾールが50〜100%急上昇する現象→減弱はHPA軸疲弊の客観的指標
  • バーンアウト者では通常の高コルチゾールではなく、むしろ「HPA軸の反応性低下」が見られることが多い

ステロイド性骨粗鬆症の予防(長期ステロイド服用者の産業保健管理):

  • 服薬3ヶ月以上の予定者には骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート等)の予防投与を考慮
  • カルシウム・ビタミンD補充・負荷運動励行・転倒防止

【試験での位置づけ】

コルチゾール(副腎皮質ホルモン)問題の最頻出論点は「血糖上昇(インスリンとの拮抗)」「免疫抑制(抗炎症作用)」「ストレスホルモン」「概日リズム(朝高・夜低)」「HPA軸の負のフィードバック」です。アのような「正のフィードバック」という記述は、負のフィードバックという基本ルールを逆にした典型的な引っかけです。内分泌系の大半はコルチゾール・甲状腺ホルモン・インスリン/グルカゴン等の「負のフィードバック」で調節されており、「正のフィードバック」は排卵誘発時のLHサージ等の特殊例のみです。

【各選択肢の発展補足】

  • エ: インスリンとコルチゾールは血糖調節において拮抗します。インスリン=血糖低下(インスリン分泌↑→細胞のグルコース取込↑)。コルチゾール=血糖上昇(糖新生↑・インスリン抵抗性↑)。この拮抗は絶食・飢餓・ストレス時の血糖維持に重要です。長期ステロイド服用者でインスリン抵抗性(ステロイド性糖尿病)が起きるのはこの機序による。
  • イ: 合成コルチコステロイドの臨床使用で注意すべき副作用: ①感染リスク上昇(免疫抑制による)②消化性潰瘍③骨粗鬆症④高血糖⑤精神症状(ステロイド精神病)⑥副腎萎縮(外因性コルチゾールによるHPA軸抑制→内因性分泌低下)→突然中断で副腎クリーゼ(急性副腎不全)。
  • ウ: 急性ストレス反応(戦うか逃げるか反応: fight-or-flight response): 交感神経系+副腎髄質(アドレナリン)が主役→即時反応(秒〜分単位)。HPA軸(コルチゾール)は慢性ストレス対応→遅い反応(分〜時間単位)。両者は協調してストレス対応を担います。
  • オ: コルチゾールの概日リズムの乱れは夜勤労働者・シフトワーカーで問題になります。通常の起床時刻に合ったコルチゾール上昇がなくなり、疲労感・認知機能低下・代謝異常が生じます。交替勤務による概日リズム障害は様々な疾患リスク(心血管・糖尿病・乳がん等)と関連することが疫学研究で示されており、衛生管理者が夜勤者の健康管理で考慮すべき重要な知識です。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。HPA軸の負のフィードバック調節・コルチゾールの血糖上昇・免疫抑制・ストレスホルモンとしての役割・概日リズムは内分泌生理学の基礎概念として確立。

【補足】コルチゾールはHPA軸の「負のフィードバック」で調節される(正のフィードバックは誤り)。血糖上昇・免疫抑制・ストレスホルモン・早朝最高の概日リズムは正しい。

この問題の根拠根拠: 医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。HPA軸の負のフィードバック調節は内分泌学の基礎概念として確立。
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。HPA軸の負のフィードバック調節は内分泌学の基礎概念として確立。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 内分泌・副腎皮質ホルモン(コルチゾール
  • 頻出度A

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