衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働生理 問46|呼吸・慢性閉塞性肺疾患

問題

衛生管理者 | 労働生理

肺機能および慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

誤りはイです。「COPDでは吸気困難が主体で肺が過膨張しない」という部分が誤りです。COPDでは実際には呼気(息を吐くこと)が困難になります。肺気腫では肺胞の弾力性(元に縮まる力)が失われるため、空気が吐き出せなくなって肺に空気が「閉じ込められ」(air trapping・エアートラッピング)、肺が過膨張して樽状胸郭(barrel chest)という特徴的な体形になります。「息が吐けない」のがCOPDの主な特徴です。

その他の選択肢は正しい内容です。喫煙が主因・肺気腫+慢性気管支炎(ア・正)。1秒率70%未満=閉塞性換気障害(ウ・正)。職業性COPD(エ・正)。在宅酸素療法の適応と予後改善(オ・正)はいずれも正確です。

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): COPDは喫煙による慢性的な気道炎症が主な原因で、世界的に有病率・死亡率ともに高い疾患です。病理学的には2種類: ①肺気腫(emphysema): 肺胞壁の破壊による気腔の拡大→肺弾性収縮力の喪失。②慢性気管支炎(chronic bronchitis): 慢性的な気道炎症・粘液過分泌→痰・咳が続く(2年以上・1年に3ヶ月以上)。多くの患者はこの両者を合併します。
  • ウ(正): スパイロメトリーの指標: 努力性肺活量(FVC): 最大吸気後に最大努力で吐き出せる空気量。1秒量(FEV₁): FVCのうち最初の1秒間で吐き出せる量。1秒率(FEV₁/FVC): 正常では70%以上。70%未満→閉塞性換気障害(COPD・気管支喘息等)の診断基準に使用します。
  • イ(誤): COPDでは呼気障害が主体です。肺気腫では肺胞の弾性収縮力(elastic recoil)が失われるため、呼気時に気道が虚脱(dynamic airway collapse)して呼気が困難になります。air trapping(空気の閉じ込め)→残気量(RV)増加・機能的残気量(FRC)増加・全肺気量(TLC)増加→肺の過膨張→胸郭が樽型(barrel chest)・横隔膜の低位平坦化(X線所見)。「吸気困難が主体で過膨張しない」は逆の記述です。
  • エ(正): 職業性COPD(occupational COPD)は喫煙以外のCOPDリスクとして重要です。コール塵・シリカ・穀物粉じん・有機粉じん・溶接ヒューム・イソシアネート・カドミウム・バナジウム等への長期曝露。喫煙との相乗効果(相加以上のリスク上昇)が示されています。
  • オ(正): 長期在宅酸素療法(LTOT/HOT)の適応: 安静時PaO₂≦55mmHg(重篤な低酸素血症)、またはPaO₂55〜60mmHgでも肺高血圧・多血症・肺性心等がある場合。1日15時間以上の酸素投与で生命予後が改善することが複数のRCTで示されています(NOTT試験・MRC試験)。

【理論的背景】

COPDは「予防可能かつ治療可能な疾患」とGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)が定義しています。喫煙が主因ですが、職業性曝露・大気汚染・遺伝的因子(α₁アンチトリプシン欠乏症等)も関与します。

COPDの病態生理:

1. 喫煙→気道・肺胞の炎症(好中球・マクロファージ・CD8⁺T細胞が主体)

2. プロテアーゼ(好中球エラスターゼ等)とアンチプロテアーゼのバランス崩壊→肺胞壁のエラスチン・コラーゲン破壊→肺気腫形成

3. 気道の慢性炎症・粘液過分泌→慢性気管支炎

4. 肺胞の弾性収縮力喪失→呼気時の末梢気道の虚脱→air trapping→肺の過膨張

COPDの換気機能の変化(スパイロメトリー):

指標正常COPD(閉塞性)肺線維症(拘束性)
FVC正常正常or軽度低下低下
FEV₁正常低下低下(同率で)
FEV₁/FVC≧70%<70%正常or増加
残気量(RV)正常増加(air trap)低下
TLC正常増加(過膨張)低下

GOLDの重症度分類(FEV₁%予測値による):

  • GOLD 1: FEV₁≧80%(軽症)
  • GOLD 2: 50〜79%(中等症)
  • GOLD 3: 30〜49%(重症)
  • GOLD 4: <30%(最重症)

【実務・条文構造】

COPDと職場の衛生管理:

じん肺法・粉じん則との関連:

  • 珪肺(シリカ粉じん)・石炭肺(炭鉱粉じん)はCOPDと並存しやすく、複合的な肺機能障害を生じる
  • じん肺管理区分(1〜4)の判定:スパイロメトリーが管理区分の判定に使用される
  • 粉じん作業者の特殊健康診断: 肺活量測定が含まれる

職場での禁煙支援(衛生管理者の重要な役割):

  • 喫煙率低下→COPD予防・がん予防・心血管疾患予防の一石三鳥
  • 職場禁煙支援: ニコチン代替療法(NRT)・バレニクリン(チャンピックス)の情報提供
  • 受動喫煙防止(改正健康増進法2020年完全施行): 職場の屋内禁煙が義務化

COPDを持つ労働者の就業管理:

  • 重症COPDで労働能力低下: 就業制限・就業転換の可能性
  • 定期的なスパイロメトリーによる機能評価
  • インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの職場での勧奨(COPD患者は感染症で急性増悪しやすい)

【試験での位置づけ】

COPD・肺機能の問題では「COPDは呼気障害が主体(air trapping・樽状胸郭)」「1秒率(FEV₁/FVC)70%未満=閉塞性換気障害」「拘束性(肺線維症等)はFVCが低下しFEV₁/FVCは正常or上昇」「職業性COPD(粉じん・有害ガス)」「在宅酸素療法は生命予後を改善」が頻出です。イの誤りは「吸気困難・過膨張しない」という呼気障害と吸気障害の取り違えで、COPDの特徴的な症状(息を吐くのが苦しい・口すぼめ呼吸・樽状胸郭)をイメージすれば即座に誤りと判断できます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: α₁アンチトリプシン欠乏症(AATD)はCOPDの遺伝性リスク因子で、喫煙がなくても若年でCOPDを発症します。AATは好中球エラスターゼの阻害因子で、欠乏すると肺胞壁の破壊(肺気腫)が起きます。日本人には稀ですが、白人では頻度が高い(1/3,000〜1/5,000)。
  • ウ: 喘息でも1秒率<70%になりますが、喘息は「可逆性(気管支拡張薬で改善)」という特徴があります。吸入気管支拡張薬(サルブタモール200μg)投与後にFEV₁が200mL以上かつ12%以上改善→可逆性あり→喘息が強く疑われる(COPDでは可逆性が乏しい)。
  • エ: 職業性COPD・職業性喘息の主要な曝露物質の比較: COPDは「粉じん・ガス・有害煙(長期少量曝露)」が主。職業性喘息は「特定アレルゲン(イソシアネート・ラテックス・小麦粉・木材粉じん等)への感作」が主。前者は不可逆的、後者は早期に曝露を断てば改善の余地があります。
  • オ: 「酸素投与量が多すぎると悪化する」は重要な知識です。COPDの重症患者は慢性的な高CO₂血症(hypercapnia)があり、呼吸刺激が「CO₂上昇ではなく低O₂」に依存している場合があります(hypoxic drive)。高流量酸素投与→PaO₂急上昇→hypoxic driveが失われる→呼吸が抑制される→CO₂貯留さらに増加(CO₂ナルコーシス)。在宅酸素療法では目標SpO₂88〜92%(健康人の95〜99%より低め)に設定します。

【根拠】医学的事実(確立した呼吸器医学)。COPDが呼気障害主体(air trapping・肺の過膨張)であること・1秒率70%未満=閉塞性換気障害・職業性COPD・在宅酸素療法の適応と予後改善は確立した知識。

【補足】COPDは呼気障害が主体(吸気障害ではない)。空気が出られず肺が過膨張(樽状胸郭)する。1秒率(FEV₁/FVC)70%未満=閉塞性換気障害。職業性粉じん・ガス曝露もCOPDのリスク。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した呼吸器医学)。COPDでは呼気障害(air trapping)が主体で肺が過膨張(樽状胸郭)する。「吸気困難・肺が入らない」は誤りで、実際は「呼気困難・空気が出られなくなる」が特徴。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 呼吸・慢性閉塞性肺疾患(COPD
  • 頻出度B

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