労働生理45循環器

衛生管理者 労働生理 問45:循環器

心臓の電気的活動および不整脈に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 洞房結節(洞結節)は右心房に位置し、心臓の自発的な電気インパルスを発生させる最初のペースメーカーであるが、房室結節はこれよりも速い自動性(約60〜80回/分)を持つためバックアップとして機能する。
  • 心電図のP波は心室の脱分極(収縮前の電気的変化)を、QRS波は心房の脱分極を反映する。
  • 心房細動は心房が1分間に400〜600回以上の微細な電気的興奮を起こす不整脈であり、心拍が不規則になる。長期間持続すると心房内に血栓が形成されやすく、脳塞栓のリスクが上昇する。正答
  • 健康な成人の安静時の正常な心拍数は1分間に100〜120回であり、毎分60回以下は「徐脈」として病的状態と判断される。
  • AED(自動体外式除細動器)は心室細動・心室頻拍に対して有効であり、除細動(電気ショック)によりすべての心筋細胞を同時に不応期にすることで、洞房結節からの正常な心拍再開を促す。
正答:心房細動は心房が1分間に400〜600回以上の微細な電気的興奮を起こす不整脈であり、心拍が不規則になる。長期間持続すると心房内に血栓が形成されやすく、脳塞栓のリスクが上昇する。

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正しいのはウです。心房細動は心房が非常に速い速度(400〜600回/分以上)で細かく震えているような状態で、心拍が不規則になります。心房内の血液がよどんで血栓が形成されやすく、それが脳に飛ぶと脳塞栓(脳梗塞の一種)を起こします。抗凝固療法(ワルファリン・DOAC等)が脳梗塞予防のために使われます。

各誤りの要点: ア→房室結節の自動性は洞房結節より遅い(約40〜60回/分)のでバックアップになる(ペースメーカー階層の理解)。イ→P波は心房の、QRS波は心室の脱分極を反映(逆)。エ→正常安静時心拍数は60〜100回/分(100〜120回/分は頻脈)。オの内容は正しい(AEDの原理)。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 心臓のペースメーカー階層は「自動性が最も高いもの→低いもの」の順で制御されます。洞房結節(SA node、右心房上部): 60〜100回/分→最も速い→正常のペースメーカー。房室結節(AV node、心房心室間隔部): 40〜60回/分→洞房結節より遅い。ヒス束・プルキンエ繊維: 20〜40回/分→最も遅い。「房室結節の方が速い」は誤りです。洞不全→房室結節がバックアップとして40〜60回/分の逸脱調律を生成します。
  • イ(誤): 心電図波形と心臓の電気活動: P波→心房の脱分極(心房収縮)。PQ間隔→房室伝導時間。QRS波→心室の脱分極(心室収縮)。ST部分→心室の再分極が始まるまでの時間。T波→心室の再分極。「P波=心室・QRS=心房」は完全に逆の誤りです。
  • ウ(正): 心房細動(AF: atrial fibrillation)は最も頻度の高い持続性不整脈です。心房内を無秩序な微細な電気活動が飛び交い(400〜600回/分)、心房が規則正しく収縮できなくなります。心室への伝導は房室結節がフィルタリングするため、心室収縮は不規則になります(irregularly irregular)。心房収縮の消失→心房内の血液が流れなくなる→血栓(特に左心耳に形成)→脳塞栓の主要な原因。
  • エ(誤): 健常成人の安静時正常心拍数は60〜100回/分です。100回/分超が頻脈(tachycardia)、60回/分未満が徐脈(bradycardia)の定義です。ただし、訓練を積んだ運動選手(アスリート)では安静時40〜50回/分の徐脈が正常であることが多い(副交感神経優位の生理的徐脈)。
  • オ(正): AEDの原理の正確な記述。除細動の目的は「心室細動・無脈性心室頻拍(いずれも心肺停止の原因)」に対して強い電流を流し、心室の全細胞を同時に不応期にすること→無秩序な電気活動の終息→洞房結節からの正常な自発的活動(洞調律)の再開を期待するものです。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

心臓の電気生理学は心臓の自動性・伝導・収縮の基礎です。

心臓の刺激伝導系の解剖と機能:

1. 洞房結節(SA node): 右心房上部(上大静脈開口部近傍)。固有自動性60〜100回/分(交感神経で増加・副交感で減少)

2. 房室結節(AV node): 右心房下部・心房心室中隔。刺激を遅らせる(PR間隔の遅延)→心室収縮前に心房収縮を完結させる役割。固有自動性40〜60回/分

3. ヒス束: 心室中隔を走行

4. 左脚・右脚: 左右の心室中隔を走行

5. プルキンエ線維: 心室全体に分布。固有自動性20〜40回/分

心電図の各波形の意味と臨床的意義:

| 波形 | 反映する事象 | 正常値 | 異常の意義 |

|---|---|---|---|

| P波 | 心房脱分極(収縮) | 0.10秒未満 | 消失→心房細動・P波変形→異所性心房調律 |

| PR間隔 | 房室伝導時間 | 0.12〜0.20秒 | 延長→心ブロック |

| QRS波 | 心室脱分極(収縮) | 0.06〜0.10秒 | 幅広→脚ブロック・心室調律 |

| ST部分 | 心室の安定期 | 基線と同じ | 上昇→急性心筋梗塞・低下→虚血 |

| T波 | 心室再分極 | 陽性 | 陰転→虚血・高K血症 |

不整脈の分類と職業安全への影響:

  • 致死性不整脈(緊急): 心室細動(VF)・無脈性心室頻拍→直ちにCPR+AED
  • 非致死性不整脈: 心房細動(脳塞栓リスク)・WPW症候群(突然の発作性頻拍)・QT延長症候群(突然死リスク)

【実務・条文構造】

不整脈と職場の安全管理:

心房細動(AF)と職場:

  • 日本の心房細動患者数: 約100〜130万人(高齢化に伴い増加)
  • 抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)服用中→出血リスク→切創・打撲を受けやすい危険作業への就業制限
  • 動悸・息切れ症状がある場合: 重作業・高所作業の適性評価
  • アルコール(「ホリデーハート症候群」: 大量飲酒後の心房細動)

AEDの職場設置と法的根拠:

  • 2004年より非医療従事者によるAED使用が解禁
  • 安衛法上の救急処置の一環として事業場でのAED設置が推奨
  • 定期的なAED使用訓練(CPR+AED)が衛生委員会の議題として重要
  • AED稼働率の管理(バッテリー・パッドの定期点検)

WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)と高所作業:

  • 副伝導路(ケント束)による予興奮症候群
  • 突然の発作性頻拍→意識消失→高所作業・運転中に危険
  • 産業医による就業適性評価が必要

【試験での位置づけ】

心臓の電気活動の問題では「洞房結節→房室結節→ヒス束→プルキンエ線維の順で興奮が伝わる」「自動性: 洞房結節>房室結節>プルキンエ線維(ア:逆が誤り)」「P波=心房・QRS波=心室の脱分極(イ:逆が誤り)」「正常心拍数は60〜100回/分(エ:100〜120は頻脈)」「心房細動=心房の細動・脳塞栓リスク」「AED=心室細動・無脈性心室頻拍に有効」が頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 完全房室ブロック(第三度房室ブロック)では心房と心室が独立して動きます。心房は洞房結節の速さ(60〜100回/分)で、心室は房室結節以下の逸脱調律(30〜50回/分)で独立して拍動します。体動・動悸・失神(アダムス-ストークス症候群)が生じ、一時的ペーシングまたは恒久的ペースメーカー植込みが必要です。
  • イ: ST上昇(特にST elevation MI: STEMI)は急性心筋梗塞の典型的な心電図所見です。職場で突然胸痛を訴えた労働者の心電図でST上昇があれば、直ちに救急搬送・PCI(経皮的冠動脈インターベンション)が必要です。「door-to-balloon time 90分以内」が予後改善の目標です。
  • ウ: CHADS₂スコアは心房細動患者の脳卒中リスクを評価するスコアです: C=うっ血性心不全(1点)・H=高血圧(1点)・A=年齢75歳以上(1点)・D=糖尿病(1点)・S=脳卒中/TIA既往(2点)。スコアが高いほど抗凝固療法の適応が強まります。職場の産業医がAF患者の就業適性評価時に考慮します。
  • エ: 訓練されたアスリートの安静時心拍数が40〜50回/分であることは「生理的徐脈」です。副交感神経(迷走神経)のトーヌスが高く、洞房結節の自動性が低下しているためです。病的な徐脈(完全房室ブロック・洞不全症候群等)との区別は12誘導心電図・24時間ホルター心電図で行います。

【根拠】医学的事実(確立した循環器学)。心房細動が脳塞栓リスクを高めること・洞房結節の自動性が最も速い(房室結節より速い)・P波=心房・QRS=心室の脱分極・正常安静時心拍数60〜100回/分は確立した知識。

【補足】洞房結節(60〜100回/分)>房室結節(40〜60回/分)>プルキンエ線維(20〜40回/分)の自動性の順。P波=心房脱分極、QRS=心室脱分極(逆は誤り)。正常心拍数=60〜100回/分。心房細動=心房の微細な電気活動・脳塞栓リスク上昇。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した循環器学)。心房細動が心房の微細な電気的興奮による不規則な心拍であり、血栓形成・脳塞栓リスクを高めることは確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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