衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働生理 問45|循環器・心電図と不整脈の基礎

問題

衛生管理者 | 労働生理

心臓の電気的活動および不整脈に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は ウ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正しいのはウです。心房細動は心房が非常に速い速度(300回/分以上)で細かく震えているような状態で、心拍が不規則になります。心房内の血液がよどんで血栓が形成されやすく、それが脳に飛ぶと脳塞栓(脳梗塞の一種)を起こします。抗凝固療法(ワルファリン・DOAC等)が脳梗塞予防のために使われます。

各誤りの要点: ア→房室結節の自動性は洞房結節より遅い(約40〜60回/分)のでバックアップになる(ペースメーカー階層の理解)。イ→P波は心房の、QRS波は心室の脱分極を反映(逆)。エ→正常安静時心拍数は60〜100回/分(100〜120回/分は頻脈)。オ→電気ショックの対象は心室細動・無脈性心室頻拍で、心静止には電気ショックを行わない(逆)。

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 心臓のペースメーカー階層は「自動性が最も高いもの→低いもの」の順で制御されます。洞房結節(SA node、右心房上部): 60〜100回/分→最も速い→正常のペースメーカー。房室結節(AV node、心房心室間隔部): 40〜60回/分→洞房結節より遅い。ヒス束・プルキンエ繊維: 20〜40回/分→最も遅い。「房室結節の方が速い」は誤りです。洞不全→房室結節がバックアップとして40〜60回/分の逸脱調律を生成します。
  • イ(誤): 心電図波形と心臓の電気活動: P波→心房の脱分極(心房収縮)。PQ間隔→房室伝導時間。QRS波→心室の脱分極(心室収縮)。ST部分→心室の再分極が始まるまでの時間。T波→心室の再分極。「P波=心室・QRS=心房」は完全に逆の誤りです。
  • ウ(正): 心房細動(AF: atrial fibrillation)は最も頻度の高い持続性不整脈です。心房内を無秩序な微細な電気活動が飛び交い(300回/分以上)、心房が規則正しく収縮できなくなります。心室への伝導は房室結節がフィルタリングするため、心室収縮は不規則になります(irregularly irregular)。心房収縮の消失→心房内の血液が流れなくなる→血栓(特に左心耳に形成)→脳塞栓の主要な原因。
  • エ(誤): 健常成人の安静時正常心拍数は60〜100回/分です。100回/分超が頻脈(tachycardia)、60回/分未満が徐脈(bradycardia)の定義です。ただし、訓練を積んだ運動選手(アスリート)では安静時40〜50回/分の徐脈が正常であることが多い(副交感神経優位の生理的徐脈)。
  • オ(誤): 除細動器(AEDを含む)で電気ショックを加える対象は心室細動(VF)・無脈性心室頻拍(VT)です。早期の除細動でVF・無脈性VTが灌流のあるリズムに切り替わることが期待されます。一方、心電図が平坦な心静止に見える状態への除細動は、灌流のない心臓を電気ショックで損傷するおそれがあるため控えるよう推奨されており、心静止が確認された場合はアドレナリンの投与などが行われます。「心静止が主な対象・心室細動は適応外」は対象が逆の誤りです。

【理論的背景】

心臓の電気生理学は心臓の自動性・伝導・収縮の基礎です。

心臓の刺激伝導系の解剖と機能:

1. 洞房結節(SA node): 右心房上部(上大静脈開口部近傍)。固有自動性60〜100回/分(交感神経で増加・副交感で減少)

2. 房室結節(AV node): 右心房下部・心房心室中隔。刺激を遅らせる(PR間隔の遅延)→心室収縮前に心房収縮を完結させる役割。固有自動性40〜60回/分

3. ヒス束: 心室中隔を走行

4. 左脚・右脚: 左右の心室中隔を走行

5. プルキンエ線維: 心室全体に分布。固有自動性20〜40回/分

心電図の各波形の意味と臨床的意義:

波形反映する事象正常値異常の意義
P波心房脱分極(収縮)0.10秒未満消失→心房細動・P波変形→異所性心房調律
PR間隔房室伝導時間0.12〜0.20秒延長→心ブロック
QRS波心室脱分極(収縮)0.06〜0.10秒幅広→脚ブロック・心室調律
ST部分心室の安定期基線と同じ上昇→急性心筋梗塞・低下→虚血
T波心室再分極陽性陰転→虚血・高K血症

不整脈の分類と職業安全への影響:

  • 致死性不整脈(緊急): 心室細動(VF)・無脈性心室頻拍→直ちにCPR+AED
  • 非致死性不整脈: 心房細動(脳塞栓リスク)・WPW症候群(突然の発作性頻拍)・QT延長症候群(突然死リスク)

【実務・条文構造】

不整脈と職場の安全管理:

心房細動(AF)と職場:

  • 日本の心房細動患者数: 約100〜130万人(高齢化に伴い増加)
  • 抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)服用中→出血リスク→切創・打撲を受けやすい危険作業への就業制限
  • 動悸・息切れ症状がある場合: 重作業・高所作業の適性評価
  • アルコール(「ホリデーハート症候群」: 大量飲酒後の心房細動)

AEDの職場設置と法的根拠:

  • 2004年より非医療従事者によるAED使用が解禁
  • 安衛法上の救急処置の一環として事業場でのAED設置が推奨
  • 定期的なAED使用訓練(CPR+AED)が衛生委員会の議題として重要
  • AED稼働率の管理(バッテリー・パッドの定期点検)

WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)と高所作業:

  • 副伝導路(ケント束)による予興奮症候群
  • 突然の発作性頻拍→意識消失→高所作業・運転中に危険
  • 産業医による就業適性評価が必要

【試験での位置づけ】

心臓の電気活動の問題では「洞房結節→房室結節→ヒス束→プルキンエ線維の順で興奮が伝わる」「自動性: 洞房結節>房室結節>プルキンエ線維(ア:逆が誤り)」「P波=心房・QRS波=心室の脱分極(イ:逆が誤り)」「正常心拍数は60〜100回/分(エ:100〜120は頻脈)」「心房細動=心房の細動・脳塞栓リスク」「AED=心室細動・無脈性心室頻拍に電気ショック(オ:心静止は対象外)」が頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 完全房室ブロック(第三度房室ブロック)では心房と心室が独立して動きます。心房は洞房結節の速さ(60〜100回/分)で、心室は房室結節以下の逸脱調律(30〜50回/分)で独立して拍動します。体動・動悸・失神(アダムス-ストークス症候群)が生じ、一時的ペーシングまたは恒久的ペースメーカー植込みが必要です。
  • イ: ST上昇(特にST elevation MI: STEMI)は急性心筋梗塞の典型的な心電図所見です。職場で突然胸痛を訴えた労働者の心電図でST上昇があれば、直ちに救急搬送・PCI(経皮的冠動脈インターベンション)が必要です。「door-to-balloon time 90分以内」が予後改善の目標です。
  • ウ: CHADS₂スコアは心房細動患者の脳卒中リスクを評価するスコアです: C=うっ血性心不全(1点)・H=高血圧(1点)・A=年齢75歳以上(1点)・D=糖尿病(1点)・S=脳卒中/TIA既往(2点)。スコアが高いほど抗凝固療法の適応が強まります。職場の産業医がAF患者の就業適性評価時に考慮します。
  • エ: 訓練されたアスリートの安静時心拍数が40〜50回/分であることは「生理的徐脈」です。副交感神経(迷走神経)のトーヌスが高く、洞房結節の自動性が低下しているためです。病的な徐脈(完全房室ブロック・洞不全症候群等)との区別は12誘導心電図・24時間ホルター心電図で行います。
  • オ: 心停止が目撃され除細動器がその場にある場合、VF・無脈性VTには直ちに除細動を行い、電気ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開します。心電図が平坦に見えても、リードの接続の緩みや外れで心静止に似た波形が出ることがあるため、接続を確認して別のリードでリズムを読み取ります。心静止に見える状態への除細動は控えるよう推奨されています。

【根拠】医学的事実(確立した循環器学)。心房細動が脳塞栓リスクを高めること・洞房結節の自動性が最も速い(房室結節より速い)・P波=心房・QRS=心室の脱分極・正常安静時心拍数60〜100回/分は確立した知識。

【補足】洞房結節(60〜100回/分)>房室結節(40〜60回/分)>プルキンエ線維(20〜40回/分)の自動性の順。P波=心房脱分極、QRS=心室脱分極(逆は誤り)。正常心拍数=60〜100回/分。心房細動=心房の微細な電気活動・脳塞栓リスク上昇。除細動(電気ショック)の対象は心室細動・無脈性心室頻拍で、心静止は対象外。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した循環器学)。心房細動が心房の微細な電気的興奮による不規則な心拍であり、血栓形成・脳塞栓リスクを高めることは確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 循環器・心電図と不整脈の基礎
  • 頻出度B

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