労働生理49血液

衛生管理者 労働生理 問49:血液

貧血および赤血球に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 赤血球は成熟すると核・ミトコンドリアを失い、ヘモグロビンを豊富に含む無核の細胞となる。寿命は約120日で、老化した赤血球は主に脾臓で破壊される。
  • 鉄欠乏性貧血は最も頻度の高い貧血であり、小球性低色素性貧血を呈する。女性(月経・妊娠)・成長期の小児・慢性出血のある患者に多く見られ、鉄剤投与で治療する。
  • ビタミンB₁₂欠乏や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血では、DNA合成障害により赤血球が正常に分裂できず大型の赤血球(大球性貧血)が生じる。ビタミンB₁₂は内因子(胃から分泌)と結合しないと小腸で吸収されない。
  • 溶血性貧血は赤血球が通常よりも速く壊れる(溶血)状態で、間接ビリルビン(非抱合型)が上昇する一方、直接ビリルビン(抱合型)は上昇しない。間接ビリルビンの上昇は皮膚・眼球結膜の黄染(黄疸)を起こす。
  • 再生不良性貧血(再生不良性血液疾患)は赤血球のみが減少する疾患で、白血球や血小板の数は正常に保たれる。正答
正答:再生不良性貧血(再生不良性血液疾患)は赤血球のみが減少する疾患で、白血球や血小板の数は正常に保たれる。

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誤りはオです。「再生不良性貧血では赤血球のみが減少し白血球・血小板は正常」という部分が誤りです。再生不良性貧血は骨髄の造血幹細胞が障害されるため、赤血球だけでなく白血球・血小板もすべて減少する汎血球減少症を呈します。そのため貧血症状(息切れ・倦怠感)だけでなく、感染症(白血球減少)や出血(血小板減少)も問題になります。

その他の選択肢は正しい内容です。赤血球の特徴(無核・ヘモグロビン・120日寿命・脾臓で破壊)(ア・正)。鉄欠乏性貧血(小球性低色素性・女性に多い)(イ・正)。巨赤芽球性貧血(ビタミンB₁₂/葉酸欠乏・大球性・内因子)(ウ・正)。溶血性貧血(間接ビリルビン上昇・黄疸)(エ・正)はいずれも正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 赤血球は骨髄の造血幹細胞→赤芽球→網赤血球(RNA残存・若い赤血球)→成熟赤血球(核なし・ミトコンドリアなし)という分化過程を経ます。核・ミトコンドリアを失う→タンパク合成不能→解糖系(嫌気性)のみでATPを産生。形状は中央が薄い両面凹レンズ型(柔軟性があり毛細血管を通れる)。寿命約120日→老化した赤血球は変形能低下→脾臓(主)・肝臓・骨髄で破壊(細網内皮系によるERythrophagocytosis)。
  • イ(正): 鉄欠乏性貧血の診断基準: MCV(平均赤血球容積)<80fL(小球性)・MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)<31g/dL(低色素性)・血清フェリチン<12ng/mL(貯蔵鉄の枯渇)。月経のある女性は月20〜60mLの血液損失(鉄換算で10〜30mg)→食事で補えない場合は欠乏に至ります。
  • ウ(正): 巨赤芽球性貧血の機序: ビタミンB₁₂または葉酸欠乏→DNAのチミジン合成に必要な一炭素代謝の障害→細胞分裂が遅延→DNA合成障害なのにRNA・タンパク合成は継続→大型の赤血球(MCV>100fL)が生じます。萎縮性胃炎(内因子欠如)→悪性貧血(pernicious anemia)は胃壁細胞の自己免疫的破壊が原因で、ビタミンB₁₂の筋注が必要です。
  • エ(正): ヘモグロビンの分解経路: 赤血球破壊→ヘモグロビン→ヘム+グロビン。ヘム→ビリベルジン→間接ビリルビン(非抱合型・水に溶けない)→肝臓でグルクロン酸抱合→直接ビリルビン(抱合型・水溶性)→胆汁→腸管→ウロビリノゲン→尿・便へ。溶血↑→間接ビリルビン↑→黄疸。閉塞性黄疸では直接ビリルビン↑(抱合済みのものが胆管閉塞で逆流)。
  • オ(誤): 再生不良性貧血は骨髄の造血幹細胞が障害(自己免疫・毒性物質・放射線等)→赤血球・白血球・血小板の3系統すべての造血が障害されます→汎血球減少症(pancytopenia): 赤血球↓(貧血)・白血球↓(感染症リスク)・血小板↓(出血傾向)。「赤血球のみ減少・白血球血小板は正常」は誤りです。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

貧血は「血液が全身の組織に十分な酸素を運搬できない状態」であり、症状は共通(易疲労・息切れ・頻脈・皮膚蒼白)ですが、原因によって治療が全く異なります。

貧血の分類(形態学的・病因論的):

形態学的分類(MCV: 平均赤血球容積による):

  • 小球性(MCV<80fL): 鉄欠乏性貧血・サラセミア・慢性病性貧血(一部)・鉄芽球性貧血
  • 正球性(MCV 80〜100fL): 再生不良性貧血・溶血性貧血(急性)・出血後・腎性貧血
  • 大球性(MCV>100fL): ビタミンB₁₂欠乏・葉酸欠乏・MDS(骨髄異形成症候群)・肝疾患

病因論的分類:

1. 産生低下(骨髄側の問題): 再生不良性貧血・骨髄浸潤(白血病・転移がん)・骨髄異形成・腎性貧血(EPO不足)・鉄欠乏・ビタミンB₁₂/葉酸欠乏

2. 消耗亢進(破壊・喪失の問題): 溶血性貧血(遺伝性・自己免疫性・薬物性)・出血(急性・慢性)

鉄の代謝:

  • 1日の必要量: 成人男性1mg・月経のある女性2mg・妊婦6〜7mg(食事からの吸収を増やして対応)
  • 吸収率: ヘム鉄(肉・魚:約20〜30%)> 非ヘム鉄(植物性:約2〜5%。ビタミンCで吸収促進・タンニンで抑制)
  • 体内分布: 赤血球ヘモグロビン(65〜70%)・フェリチン/ヘモシデリン(貯蔵鉄:20〜30%)・筋肉ミオグロビン(3〜5%)

【実務・条文構造】

貧血と職場の健康管理(衛生管理者の実務):

定期健康診断の貧血スクリーニング:

  • 血液検査: ヘモグロビン(Hb)の測定
  • 貧血の診断基準(WHO): 成人男性<13g/dL・成人女性<12g/dL・妊婦<11g/dL
  • 鉄欠乏性貧血は女性労働者・食事制限中の若年女性で高頻度

職業性溶血性貧血:

  • 鉛曝露: 鉛は赤血球の酵素(ALAデヒドラターゼ等)を阻害→ヘモグロビン合成障害→溶血→貧血(鉛貧血)。特殊健康診断の血液検査が重要。
  • 砒素曝露: 溶血性貧血
  • 一酸化炭素: 直接的な溶血ではないがヘモグロビンのO₂運搬能を阻害→機能的な貧血

再生不良性貧血と職業性有害因子:

  • ベンゼン(長期曝露): 骨髄毒性→再生不良性貧血→白血病へのリスク
  • 電離放射線(高線量): 造血幹細胞の放射線障害→再生不良性貧血・汎血球減少
  • 抗がん剤: 骨髄抑制→汎血球減少(医療従事者の曝露管理が重要)

腎性貧血(慢性腎臓病とエリスロポエチン):

  • 腎臓は低酸素を感知してエリスロポエチン(EPO)を産生→骨髄の赤血球産生を刺激
  • 慢性腎臓病(CKD)では腎組織障害→EPO産生低下→赤血球産生低下→腎性貧血(正球性正色素性)
  • 治療: エリスロポエチン製剤(ESA)の注射

【試験での位置づけ】

貧血の問題では「鉄欠乏性貧血(最多)=小球性低色素性・女性・月経」「ビタミンB₁₂/葉酸欠乏=大球性(巨赤芽球性)・内因子が必要」「溶血性貧血=間接ビリルビン上昇・黄疸」「再生不良性貧血=汎血球減少(赤白血板すべて減少)」「赤血球=無核・ヘモグロビン豊富・約120日寿命・脾臓で破壊」が最頻出です。オのような「再生不良性貧血で赤血球のみ減少」は、再生不良性貧血の本質(造血幹細胞障害→汎血球減少)を赤血球単独の問題に矮小化した引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ヘモグロビン(Hb)の構造: 4本のポリペプチド鎖(αα・ββ)それぞれにヘム(Fe²⁺+ポルフィリン)が1つ→計4分子のO₂を結合。成人Hbはα₂β₂(HbA)が主体。胎児Hb(HbF: α₂γ₂)は酸素親和性が高く胎盤での酸素受け取りに有利→出生後はHbAに置き換わる。
  • イ: 月経困難症・過多月経を持つ女性労働者への産業保健的アプローチ: 貧血のスクリーニング・鉄補充の指導・必要に応じて婦人科受診の勧奨。また植物性食品が主体のベジタリアン・ヴィーガンの労働者は非ヘム鉄の吸収率が低いため鉄欠乏リスクが高く、ビタミンCと一緒に摂取する指導が有用です。
  • ウ: 悪性貧血の「悪性」はhistorically(歴史的に)「治療不能→致死的」という意味です(現在はビタミンB₁₂注射で完全に治療可能)。胃壁細胞に対する自己抗体(萎縮性胃炎)・内因子に対する自己抗体によって内因子が欠如し、ビタミンB₁₂が吸収できなくなります。ビタミンB₁₂は神経機能にも必要で(ミエリン合成)、欠乏すると巨赤芽球性貧血のほかに亜急性連合変性(後索・側索の変性→振動覚・位置覚障害・錐体路症状)が生じます。
  • エ: ビリルビン代謝の異常で起きる黄疸の鑑別は医療・産業保健で重要です: ①溶血性黄疸: 間接ビリルビン優位上昇(赤血球破壊↑)②肝細胞性黄疸: 間接・直接両方上昇(肝炎・肝硬変)③閉塞性黄疸: 直接ビリルビン優位上昇(胆管閉塞・膵頭部がん)。職業性肝障害(有機溶剤・塩化ビニル)ではウイルス性肝炎との鑑別が重要で、職業性黄疸では職業歴と肝機能検査を組み合わせて評価します。

【根拠】医学的事実(確立した血液学)。再生不良性貧血が汎血球減少症(赤血球だけでなく白血球・血小板もすべて減少)であること・貧血の形態学的・病因論的分類・ヘモグロビンの機能は確立した知識。

【補足】再生不良性貧血は造血幹細胞障害による汎血球減少症(赤血球・白血球・血小板がすべて減少)。「赤血球のみ減少」は誤り。鉄欠乏性貧血=小球性低色素性。ビタミンB₁₂/葉酸欠乏=大球性巨赤芽球性貧血。溶血性貧血=間接ビリルビン上昇・黄疸。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した血液学)。再生不良性貧血は造血幹細胞の障害により赤血球だけでなく白血球・血小板も減少する(汎血球減少症)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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