衛生管理者 労働生理 問64:血液
血漿タンパク質に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アアルブミンは肝臓で合成され、血液中のタンパク質の中で最も含量が多く、膠質浸透圧の維持・物質輸送(脂肪酸・ビリルビン・薬物等の結合)に重要な役割を果たす。
- イグロブリンはすべて肝臓で合成され、免疫グロブリン(抗体)がその主要な機能である。γグロブリンが最も量が多く、免疫反応においてのみ機能する。正答
- ウフィブリノーゲンは血液中に常時存在し(正常200〜400mg/dL)、血液凝固の際にはトロンビンの作用を受けてフィブリンに変換される。血液凝固以外にも急性相反応タンパクとして炎症時に増加し、血液粘稠度や赤血球沈降速度(ESR)にも影響する。
- エ血漿タンパク質は腎臓の糸球体ろ過膜をほとんど通過しないため、正常では尿中タンパク排泄量は1日150mg未満にとどまる。ネフローゼ症候群では糸球体基底膜の障害によりアルブミンが大量に尿中に排泄される。
- オアルブミン濃度が低下(低アルブミン血症)すると膠質浸透圧が低下して浮腫が生じやすくなる。アルブミン低下は肝疾患(肝硬変等での合成低下)・ネフローゼ症候群(腎からの喪失)・栄養不良(摂取不足)など複数の原因によって起きる。
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誤りはイです。「グロブリンはすべて肝臓で合成され」という部分が誤りです。グロブリンの中でもγグロブリン(免疫グロブリン=抗体)はBリンパ球・形質細胞で産生されます(肝臓ではありません)。α・βグロブリンは主に肝臓で合成されますが、γグロブリンは免疫系の細胞が産生します。また「免疫反応においてのみ機能する」も誤りで、γグロブリン以外のα・βグロブリンは補体成分・鉄輸送(トランスフェリン)・ヘモグロビン結合(ハプトグロビン)などの役割を担います。
その他の選択肢は正しい内容です。アルブミンの機能(ア)。フィブリノーゲンは血液凝固に加えて、急性相反応タンパクとして炎症時に増加し血液粘稠度や赤血球沈降速度(ESR)にも影響する(ウは「血液凝固以外にも...機能する」と正しく記述している)。正常では糸球体は血漿タンパクを通過させない(エ)。低アルブミン血症の多様な原因(オ)はすべて正確です。よって誤っているのはイのみ(単一正答)です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): アルブミン(分子量約66,000 Da)は血漿タンパクの最大成分(3.8〜5.2 g/dL)で、肝臓で合成されます。主要機能: ①膠質浸透圧の維持(血管内に水分を保持する浸透圧の約80%をアルブミンが担う)②物質輸送(脂肪酸・ビリルビン・サイロキシン・コルチゾール・薬物:ワルファリン・フロセミドなどが結合して輸送される)。アルブミンが低下すると薬物の蛋白結合率が変わり、フリーの薬物濃度が上がって薬効・毒性が増強します(薬物動態への影響)。
- イ(誤): グロブリンは分画によって異なる産生部位と機能を持ちます。α1・α2・βグロブリンは主に肝臓で合成(補体成分・輸送タンパク:トランスフェリン・ハプトグロビン等を含む)。γグロブリン(免疫グロブリン)はBリンパ球・形質細胞で産生されます(「すべて肝臓で合成」は誤り)。また免疫機能以外にも補体活性・輸送機能があります(「免疫反応においてのみ機能する」も誤り)。イは2つの誤りを含む本問の正答(誤っているもの)です。
- ウ(正): フィブリノーゲン(分子量340,000 Da)は正常血漿中約200〜400 mg/dLで存在し、血液凝固の最終段階で機能します(トロンビン→フィブリンへの変換)。血液凝固以外の機能として炎症マーカー(急性相反応タンパク・CRPとともに上昇)・血液粘稠度への寄与・血小板凝集促進・創傷治癒への関与があります。設問のウは「血液凝固以外の機能も持つ」と正確に記述しており、正しい内容です。
- エ(正): 正常な糸球体フィルターは、アルブミン(分子量66,000)以上の大きな分子を通しません(選択的透過性: サイズバリアと電荷バリア)。正常尿中タンパク質は1日150 mg未満で、血漿タンパクはほとんど尿中に出ません。ネフローゼ症候群では糸球体フィルターが障害されて大量タンパク尿(3.5 g/日以上)が生じます。エの記述は正確です。
- オ(正): アルブミンが低下すると膠質浸透圧が低下し、浮腫が生じます。設問のオはアルブミン低下の原因として「肝疾患・ネフローゼ症候群・栄養不良など複数」を挙げており、正確な記述です。
#### 1. 血漿タンパク質の分類と電気泳動分画
血漿タンパク質は電気泳動によって5分画に分離されます(セルロースアセテート膜電気泳動)。
| 分画 | 主要成分 | 正常値(g/dL) | 主要機能 |
|------|---------|--------------|---------|
| アルブミン | アルブミン | 3.8〜5.2 | 膠質浸透圧・物質輸送 |
| α1グロブリン | α1アンチトリプシン・α1酸性糖タンパク | 0.2〜0.4 | プロテアーゼ阻害・急性相反応 |
| α2グロブリン | ハプトグロビン・α2マクログロブリン・セルロプラスミン | 0.5〜0.9 | ヘモグロビン結合・銅輸送 |
| βグロブリン | トランスフェリン・LDL・補体C3 | 0.6〜1.1 | 鉄輸送・脂質輸送・補体 |
| γグロブリン | IgG・IgA・IgM・IgD・IgE | 0.7〜1.6 | 抗体(免疫機能) |
血漿タンパク質の総量は正常で6.5〜8.5 g/dL。A/G比(アルブミン/グロブリン比)は1.2〜2.2が正常範囲で、肝疾患ではアルブミン低下・γグロブリン増加でA/G比が低下します。
#### 2. アルブミンの構造・機能と臨床的意義
アルブミンの物質輸送機能の詳細:
- 内因性物質: 脂肪酸(最大7分子)・ビリルビン(間接型・非水溶性)・コルチゾール・甲状腺ホルモン・カルシウム(イオン化Ca²⁺以外のアルブミン結合型)
- 外因性物質(薬物): ワルファリン・フロセミド・ジゴキシン・アスピリン・フェニトイン・ベンゾジアゼピン等
- 低アルブミン血症では薬物の結合率が低下→遊離型(活性型)薬物増加→毒性リスク増大
- 例: ワルファリン(抗凝固薬)の過剰作用→出血リスク増大
- 例: フロセミド(利尿薬)の急激な利尿作用
膠質浸透圧(oncoticpressure)の機序:
- 血管内と組織液のタンパク質濃度の差が「浸透圧差」を生み出し、水分を血管内に引き込む(スターリング力のうち「Πc」成分)
- アルブミンが全膠質浸透圧の約75〜80%を担う(分子数が多く・Gibbs-Donnanの効果も寄与)
- 正常膠質浸透圧: 約25〜28 mmHg(静水圧と拮抗して組織浮腫を防ぐ)
#### 3. 急性相タンパク質と炎症マーカーとしての血漿タンパク
炎症・組織損傷・感染時に変化する血漿タンパク:
増加する急性相タンパク(正の急性相反応物質):
- CRP(C反応性タンパク): 最も鋭敏な炎症マーカー(8〜12時間以内に上昇)
- フィブリノーゲン: 炎症時に増加(赤沈〔ESR〕を促進する主要因子)
- ハプトグロビン: ヘモグロビンとの結合で溶血の指標にもなる
- セルロプラスミン・α1アンチトリプシン等
減少する急性相タンパク(負の急性相反応物質):
- アルブミン・トランスフェリン(栄養状態の指標でもある)
職場での応用: 有害物質暴露・職業性疾病の診断において、血漿タンパク質分画・CRP・血清タンパク(総タンパク・アルブミン)は健康診断の重要検査項目です。
#### 4. 衛生管理者試験での頻出論点と職場への応用
試験では「アルブミン=肝臓で合成・最多量・膠質浸透圧維持・物質輸送(脂肪酸・ビリルビン等)」「γグロブリン(免疫グロブリン)=Bリンパ球・形質細胞で産生(肝臓ではない)」「フィブリノーゲン=血液凝固以外に炎症にも関与」「糸球体は正常ではタンパク質を通過させない(ネフローゼ症候群では通過する)」「低アルブミン血症=膠質浸透圧低下→浮腫」が頻出です。
職場への応用として、低栄養状態(食事制限・偏食)の労働者では低アルブミン血症を生じやすく、浮腫・薬物毒性リスクの増大を招くことがあります。健康診断の血液検査(血清タンパク・アルブミン・A/G比・フィブリノーゲン)の正常値と解釈は衛生管理者として必要な知識です。
【根拠】医学的事実(確立した生化学・臨床検査学)。血漿タンパク質の種類・産生部位・機能・アルブミンの膠質浸透圧への寄与・低アルブミン血症の原因と結果は確立した知識。
【補足】イが誤り:グロブリンは「すべて肝臓で合成」ではなく、γグロブリン(免疫グロブリン)はBリンパ球・形質細胞で産生される(肝臓ではない)。また「免疫反応においてのみ機能する」も誤りで、α・βグロブリンは補体・輸送機能を担う。アルブミン=肝臓合成・最多・膠質浸透圧維持・物質輸送。低アルブミン低下の原因は肝疾患・ネフローゼ症候群・栄養不良など多様。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生化学・臨床検査学)。アルブミンの機能・合成部位・膠質浸透圧への寄与は確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。