行政書士 行政法 問103:長と議会・議決事項・不信任議決の要件数値確認
地方自治法に定める普通地方公共団体の議会に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア普通地方公共団体の議会は、毎年4回の定例会を招集しなければならない。
- イ議会が長に対して不信任議決を行うためには、議員の総数の過半数が出席し、その3分の2以上が同意しなければならない。
- ウ長は、議会の議決がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、理由を示してこれを再議に付さなければならない(義務的再議)。正答
- エ議会は、普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会または関係行政庁に提出することができるが、この意見書の議決には特別多数決(3分の2以上の同意)が必要である。
- オ議会の会議は原則として公開されるが、議長が必要と認めたときは、議決を経ることなく議長の職権で秘密会を開くことができる。
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ウが正しい記述です。地方自治法176条4項は、議会の議決がその権限を超え又は法令・会議規則に違反すると認めるとき、長は義務的再議に付さなければならないと定めています。「しなければならない」という義務的な文言が重要で、この種の違法・越権議決については長の再議付議が義務とされています(任意ではない)。アは「毎年4回の定例会」としていますが、現行の地方自治法は定例会の回数を「条例で定める」としており(地自法102条2項)、必ずしも4回とは限りません。イは「過半数が出席・3分の2以上が同意」としていますが、不信任議決の要件は「議員の総数の3分の2以上が出席・出席議員の4分の3以上の同意」です(数字が誤り)。エは「特別多数決が必要」としていますが、意見書の議決は通常の過半数議決で行われます。オは「議長の職権で議決を経ることなく」秘密会を開けるとしていますが、秘密会は「議長又は議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決」したときに開くことができます(地自法115条1項)。議長の職権のみで議決なしに秘密会を開くことはできず、オは誤りです。
議会の主要論点を整理します。定例会の回数(ア誤り): 2012年の地方自治法改正以前は年4回の定例会開催が必要とされていましたが、改正後(2012年施行)は「定例会・臨時会の区分を廃止し、通年議会(通年の会期)を可能にする」等の柔軟化がされました。現行法では定例会の招集回数は「条例で定める回数」に委ねられており(地自法102条2項)、「必ず年4回」という規定は現行法の内容ではありません(2012年改正で通年の会期も可能:地自法102条の2)。不信任議決の要件(イ誤り): 不信任議決の要件は「議員の総数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意」(地自法178条3項)。「過半数出席・3分の2以上同意」というイの数字は誤りです。義務的再議(ウ正しい): 地自法177条は「議会の議決が法令または会議規則に違反すると認めるとき」は長が「再議に付さなければならない」と定める義務的再議規定です。これは177条(義務的再議)であり、176条の一般的拒否権(任意的再議)と区別する必要があります。意見書議決(エ誤り): 意見書(地自法99条)の議決は通常の過半数議決で行われ、特別多数決を要しません。秘密会(オ誤り): 地自法115条1項は「議長又は議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したとき」に秘密会を開くことができると規定しています。オは「議長の職権で議決を経ることなく」開けるとしており、発議・議決の手続を欠いている点で誤りです。以上より正答はウです。
【理論的背景】
地方議会の議決と長の対応の構造は、地方自治の「二元代表制」(長と議会の双方が住民から直接選出)を反映しています。長には議会の議決に対して一定の対抗手段(再議・専決処分)が認められていますが、これは行政の継続性と議会の民主的決定を調整する仕組みです。義務的再議(176条4項)は、権限を超え又は法令・会議規則に違反する議決が地方自治の法的秩序を乱すという観点から、長が必ず再議に付することを義務づけています。これに対し一般的拒否権(176条1項)は長が不服の場合に任意で再議に付する制度です。両者の区別(義務的再議vs任意的再議)は行政書士試験の重要論点です。なお177条は義務費・非常災害費等の削除減額に対する別個の義務的再議を定めるもので、本問の「法令・会議規則違反」の再議(176条4項)とは対象が異なります。
【実務・条文構造】
義務的再議(地自法176条4項:議決・選挙が法令・会議規則に違反すると認めるとき長は再議に付さなければならない)において、再議に付してもなお同じく違反すると認めるときは、長は都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に対し審査を申し立てることができ、その裁定に不服があるときは裁判所に出訴できます(地自法176条5項〜7項)。一方、176条1項の一般的拒否権(任意的再議)では、再議に付された条例・予算について出席議員の3分の2以上の同意で再議決されれば原議決が確定し、長はこれに従わなければなりません(同条3項)。不信任議決の数字(議員総数の3分の2出席・出席議員の4分の3同意。解散後の再度の不信任は出席議員の過半数で足りる:地自法178条3項)も最重要暗記事項です。
【試験での位置づけ】
「不信任議決の要件(3分の2出席・4分の3同意)」「176条4項の義務的再議(権限超過・法令・会議規則違反の場合)vs176条1項の任意的再議(一般的拒否権)」「秘密会の要件(出席議員の3分の2以上)」が行政書士試験の頻出論点です。数字の正確な把握(3分の2・4分の3・過半数)が問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 現行地方自治法は定例会の回数を「条例で定める」としており(地自法102条2項)、「必ず年4回」という規定は現行法にはありません。2012年改正で通年の会期(通年議会)も選択できるようになりました(地自法102条の2)。
- イ(誤): 不信任議決の要件の数字誤り。正しくは「議員総数の3分の2以上が出席・出席議員の4分の3以上の同意」(地自法178条3項)。「過半数出席・3分の2以上同意」では要件を満たしません。
- ウ(正): 地自法176条4項の義務的再議(権限超過・法令・会議規則違反の議決に対して長が「付さなければならない」という義務的規定)を正確に説明しています。
- エ(誤): 意見書(地自法99条)の議決は通常の過半数議決で行われます。「特別多数決が必要」という記述は誤りです。
- オ(誤): 秘密会は「議長又は議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決」したときに開くことができます(地自法115条1項)。オの「議長の職権で議決を経ることなく」開けるという記述は、発議・議決の手続を欠いており誤りです。
【根拠条文】
地方自治法 第176条第1項(長の一般的拒否権・任意的再議)、第176条第4項(権限超過・違法議決等に対する義務的再議)、第177条(義務費・非常災害費等の削除減額に対する義務的再議)、第178条(不信任議決の要件・長の解散権)、第115条(会議の公開・秘密会)
【補足】
「176条4項=義務的再議(権限超過・法令・会議規則違反→長が必ず付さなければならない)」「176条1項=任意的再議(長が不服なら任意で付すことができる)」「177条=義務費等の削除減額への義務的再議」の区別が最重要。不信任議決の数字(議員総数の3分の2出席・出席議員の4分の3同意)は絶対暗記。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第176条第4項(違法・越権議決に対する義務的再議)、第178条(不信任議決の要件)、第115条(会議の公開・秘密会) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。