行政書士 行政法 問131:行政法横断・取消訴訟と国家賠償請求の関係・公定力・違法性の承継
行政行為の公定力と国家賠償請求の関係に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政行為には公定力(取り消されるまでは有効として扱われる効力)があるため、違法な行政処分によって損害を被った者が国家賠償請求を行うためには、先に取消訴訟を提起して当該処分を取り消すことが必要不可欠である。
- イ最高裁判所は、行政行為の公定力は、国家賠償請求訴訟において裁判所が当該行政行為の違法性を前提として損害賠償を認めることを妨げないと判示しており、取消判決を先行させる必要はないとしている。正答
- ウ違法な行政処分を受けた者が、国家賠償請求は行うことができるが、当該処分については取消訴訟を提起することができない(出訴期間の経過等により)という場合、原則として国家賠償請求は認められない。
- エ行政処分が形式的に適法(手続要件を充たしている)な場合には、実体的に違法であっても、当該処分を前提とした国家賠償請求は認められない。
- オ違法性の承継とは、先行行為(行政行為A)の違法性が後行行為(行政行為B)の違法事由として主張できるかという問題であり、原則として先行行為の違法性は後行行為の効力に影響しない(承継されない)が、先行行為と後行行為が一連の手続として密接に関連する場合は例外的に承継が認められる場合がある。
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イが正しいです。公定力は取消訴訟の排他的管轄(行政行為の無効・取消しは取消訴訟等の方法によらなければならない)を意味しますが、国家賠償請求訴訟においては裁判所が当該行政行為の違法性を前提として損害賠償を認めることを妨げません(最判昭和36年4月21日)。アは「取消判決が必要不可欠」としており誤りです(公定力は国賠請求に先行取消し判決を必要としません)。ウは「出訴期間経過後は国賠請求も認められない」としており誤りです(出訴期間経過後でも国賠請求は可能)。エは「形式的適法なら実体違法でも国賠請求不可」としており誤りです(実体的違法に基づく国賠請求は可能)。オの違法性の承継については正しい説明です。
公定力と国家賠償請求の関係(イが正しい根拠): 行政行為の公定力は、当該行政行為を取消訴訟等の争訟手続によって取り消さない限り、その行政行為の効力を否定(無効を確認・取消し)できないという効力です。しかし最高裁(昭和36年4月21日判決等)は、公定力は国家賠償請求訴訟における「違法性の前提」に影響を及ぼさないと判示しています。つまり、取消判決を得なくても、国賠訴訟において裁判所が処分の違法性を認定して損害賠償を命じることは可能です。
アが誤りの核心: 「取消訴訟→先行取消し判決→その後に国賠請求」という順序は要求されていません。国賠訴訟を直接提起し、その訴訟内で当該処分の違法性を主張することができます。
ウが誤りの核心: 出訴期間(取消訴訟の提起期間)を経過しても、国家賠償請求は別個の請求であり、国家賠償法4条が準用する民法724条の消滅時効(損害および加害者を知った時から3年〔人の生命・身体を害する場合は5年〕、不法行為の時から20年)の範囲内で可能です。「出訴期間経過後は国賠請求も不可」は誤りです。
違法性の承継(オが正しい根拠): 違法性の承継は行政法の重要論点です。原則として先行行為(例:課税処分)の違法性は後行行為(例:滞納処分)の取消訴訟で主張できません(承継されない)。ただし、先行行為と後行行為が一連の手続として密接不可分に関連し、先行行為の違法性を後行行為で争うことが唯一の救済方法である場合(例:安全認定→建築確認)等は例外的に承継が認められます。
【理論的背景】
行政行為の公定力(Tatbestandswirkung)は、行政行為が正当な権限を持つ行政庁によって行われた場合、たとえ違法であっても取消されるまでは有効なものとして扱われるという効力です。この公定力の根拠については、法的安定性説・権限分配説等の諸説がありますが、判例・通説は公定力が取消訴訟の排他的管轄と表裏一体であるとしています。ただし、この「排他的管轄」は行政行為の有効・無効に関する争い(処分性の問題)に関するものであり、国家賠償請求(民法的救済)においては、裁判所が行政行為の違法性を前提として損害賠償の認定をすることは妨げられないというのが確立した判例の立場です。
【実務・条文構造】
公定力と国賠請求の関係についての判例の整理(イの根拠):
最判昭和36年4月21日は、課税処分の違法を前提とする国家賠償請求訴訟において、当該課税処分を取消訴訟で取り消していなくても国賠請求を認めることができると判示しました。この判決により「公定力は国賠請求訴訟における違法性の認定を妨げない」という法理が確立しました。
違法性の承継の類型(オの詳細):
承継が認められない原則(処分ごとに争う):
- 課税処分の違法性→滞納処分の取消訴訟では原則として主張できない
- 行政指導の違法性→後の申請拒否処分の取消訴訟では原則として直接の取消事由にならない
承継が例外的に認められた判例:
- 安全認定・建築確認の関係(最判平成21年12月17日): 安全認定の違法性を建築確認の取消訴訟で主張できる(一連の手続・密接不可分・安全認定に処分性はあるが出訴が困難)
- 土地収用裁決と事業認定の関係等
出訴期間と国賠請求の独立性(ウが誤りの根拠):
取消訴訟の出訴期間(行訴法14条・処分があったことを知った日から6か月、処分の日から1年)が経過した後でも、国家賠償請求は国家賠償法4条が準用する民法724条の消滅時効(損害および加害者を知った時から3年〔生命・身体侵害は民724条の2により5年〕、不法行為の時から20年)の範囲内で請求できます。出訴期間の経過は取消訴訟の提起を不能にするだけで、国賠請求を妨げません。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「公定力と国賠請求の関係」(取消判決は先行要件ではない)と「違法性の承継」(原則承継なし・一連手続は例外的に承継あり)が頻出横断論点です。「公定力→先行取消し判決必要」(ア)という誤肢は毎年のように出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。公定力は国賠請求において先行取消し判決を要件としない(最判昭36.4.21)。国賠訴訟内で違法性を前提として損害賠償を認めることは公定力と矛盾しない。
- イ: 正しい(正答)。公定力が国賠訴訟における違法性認定を妨げないという最高裁の確立した立場を正確に表現。
- ウ: 誤り。出訴期間の経過は取消訴訟の提起を妨げるが、国家賠償請求は別個の訴訟であり、国家賠償法4条が準用する民法724条の消滅時効(知った時から3年〔生命身体侵害は5年〕・不法行為時から20年)の範囲内で可能。
- エ: 誤り。手続要件(形式的適法性)を充たしていても実体的違法があれば国賠請求の基礎となりうる。行政処分の違法性は手続違法と実体違法の両方が原因となりうる。
- オ: 正しい。違法性の承継の原則(承継なし)と例外(一連の手続として密接不可分な場合)を正確に説明。安全認定・建築確認の判例(最判平21.12.17)が典型例。
【根拠条文】
国家賠償法 第1条(公権力の行使に基づく損害賠償責任)
国家賠償法 第4条(民法の準用:国賠請求の消滅時効は民法724条による)
行政事件訴訟法 第14条(取消訴訟の出訴期間:処分があったことを知った日から6か月・処分の日から1年)
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効:知った時から3年・不法行為時から20年。生命・身体侵害は民724条の2により5年)
【参照判例】
最判 昭和36年4月21日(公定力と国賠請求の関係)
最判 平成21年12月17日(安全認定・建築確認の違法性の承継)
【補足】
公定力と国賠請求:先行取消し判決は不要(最判昭36.4.21確立)。出訴期間経過後でも国賠請求は可能(別個の時効)。違法性の承継:原則なし・一連手続で密接不可分なら例外的に承継(安全認定→建築確認)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条、行政行為の公定力(通説・判例)、最判昭和36年4月21日 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。