行政法146行政法(地方自治法)

行政書士 行政法 問146:行政法(地方自治法)

地方公共団体の議会の権限と長の権限に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 地方公共団体の議会は、条例の制定・改廃、予算の議決、決算の認定など、地方自治法に定める事項について議決権を有し、これらは長の専決事項を除き、議会の専属的権限に属する。
  • 長は、議会の議決を要する案件について議案を提出する権限を有するが、議会はその議案の修正議決をすることができ、修正の内容に制限はないとされている。正答
  • 長は予算を調製し、議会に提出するが、地方自治法上、議会は長が提出した予算を増額して議決することができる。ただし、長は増額修正後の予算が適当でないと認めるときは、これを再議に付することができる。
  • 地方公共団体の議会は、地方自治法所定の事項の他に、法律の範囲内で議会自らが議決すべき事項を条例により追加することができる。
  • 地方公共団体の長が専決処分をした場合には、次の議会において報告し承認を求めなければならないが、議会が承認しなかった場合でも、専決処分の効力自体は失われない。
正答:長は、議会の議決を要する案件について議案を提出する権限を有するが、議会はその議案の修正議決をすることができ、修正の内容に制限はないとされている。

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イが誤りです。地方自治法97条2項は「議会は、予算について、増額してこれを議決することを妨げない。ただし、普通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない」と規定しており、議会の予算の増額修正は長の予算提出権を侵さない範囲で認められます。条例案等の一般の議案の修正についても、議会の修正議決は原則として可能ですが、長の固有権限(予算の調製権・人事提案権等)を実質的に侵害するような修正には限界があります。したがって、「修正の内容に制限はない」とするイの記述は不正確です。ア(議会の議決権)は正しい記述です。ウ(予算の増額修正と再議)は97条2項・176条に対応した正しい記述です。エ(議決事項の条例による追加)は96条2項に規定された正しい記述です。オ(専決処分・承認がなくても効力)は179条に対応した正しい記述です。

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地方公共団体の議会と長の権限分担について整理します。

議会の議決権(96条): 地方自治法96条1項は条例の制定・改廃、予算の議決・決算の認定、重要財産の取得・処分、重要な契約の締結等を議決事項として列挙します。96条2項は「前項に定めるものを除くほか、法律又はこれに基づく政令により議会の権限に属する事項及び前条の規定による外、普通地方公共団体の議会は、条例で普通地方公共団体に関する事件につき議決すべきものを定めることができる」と規定しています(エの根拠)。

予算の増額修正(97条2項): 議会は、長の予算提出権を侵すことなく予算の増額修正をすることができます。ウは97条2項の規定を正確に反映しています。増額修正後、長が不適当と認めるときは176条1項により再議に付することができます(ウ正しい)。

イが誤りの理由: 97条1項は「議会は条例を設け変え廃止し、及び予算を定め変更し、若しくは廃除し、並びに決算を認定し、その他この法律の定める事件を議決しなければならない」とし、議会の修正権を認めています。しかし「修正の内容に制限はない」とは規定されておらず、長の固有権限(予算調製権・人事提案権等)を実質的に侵害するような修正は制限される解釈がとられています。

専決処分(179条)と承認(オの根拠): 承認を得られなかった場合の法的効果として、専決処分の効力(効力の消滅)は生じません(オ正しい)。ただし、長はその後適切な措置をとる必要があります。

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【議会の権限の法的構造】

地方公共団体の議会(議決機関)と長(執行機関)は、地方自治法上、それぞれ独自の権限を持ちます。議会の権限の核心は「議決権」(96条以下)であり、条例の制定・改廃・予算議決・決算認定等の法定事項について専属的に意思決定を行います。長は予算を「調製」し議会に提出する権限を持ち(149条2号)、議会は長が提出した予算を審議・修正する権限を持ちます。

【予算の修正権の限界(イの精緻な分析)】

97条2項は「予算について、長の提出した予算を増額修正することができる。この場合においては、議会は、長の予算提出の権限を侵すものと解釈してはならない」と規定します。この「長の予算提出の権限を侵すものと解釈してはならない」という留保の意味は、「増額修正自体は認めるが、長の予算調製権の本質的部分を議会が実質的に取って代わるような修正(例:長が全く提案していない新規大規模事業を議会主導で組み込む等)はできない」という趣旨と解されています。条例案・その他議案についても同様に、「長の固有権限を侵害する内容の修正」には制限があります。したがって「修正の内容に制限はない」というイの記述は正確ではありません。

【専決処分の効力と承認拒否の効果(オの詳細)】

179条の専決処分とは、議会が成立しない場合・議会を招集する暇がない場合・議会が議決すべき事件を議決しない場合に、長が議会に代わって自ら処理する制度です(市長・知事等の緊急権限)。179条3項は「専決処分をしたときは、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない」と規定します。同条4項(2012年改正で新設)は「条例の制定・改廃または予算に関する専決処分について承認を求める議案が否決されたときは、長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない」と規定しますが、承認が得られなかったことによって専決処分の効力そのものが失われるとは規定していません。すなわち、承認が得られなかった専決処分も法的効力は有効に存続します(私法上の契約相手方等との法的安定性の保護)。長は不承認後に必要と認める措置を講じ、議会に報告する義務を負うにとどまります(179条4項)。

【96条2項(議決事項の条例による追加)の実務】

エの根拠となる96条2項は、法律の範囲内で各地方公共団体が独自に議決事項を条例で追加することを許容しています。これにより、例えば「一定金額以上の工事契約は議会の議決を要する」という条例を制定し、法定の議決事項以上の監視機能を持たせることが可能です。この規定は地方自治の本旨(92条の「団体自治」)に基づき、地方公共団体の自主的な組織・権限設定を認めるものです。

【長と議会の均衡メカニズム】

長と議会の関係は、相互にチェック・アンド・バランスが機能するよう設計されています:①議会は長提出議案を修正・否決できる、②長は議決に不服があれば再議に付すことができる(176条)、③議会は長の不信任議決ができる(178条)、④長は議会を解散できる(178条)、⑤住民は直接請求で議会解散や長の解職を求められる(76条以下)。この均衡関係の全体像を理解することが行政書士試験の地方自治法分野では重要です。

【根拠条文】

地方自治法 第96条(議会の議決事項)、第97条(予算の修正権・増額修正)、第149条(長の担任事務)、第176条(再議・再選挙等)、第178条(不信任議決・解散)、第179条(専決処分)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第96条(議会の議決事項)、第97条(予算の増額修正)、第179条(専決処分) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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