行政法147行政法(地方自治法)

行政書士 行政法 問147:行政法(地方自治法)

地方自治法上の副知事・副市長(以下「副知事等」という)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 都道府県に副知事を、市町村に副市長を置くことができる。ただし、条例で置かないことができるとされており、条例により副知事・副市長を設置しないことも可能である。
  • 副知事等は、長が議会の同意を得て選任するが、その定数は条例で定めることとされている。
  • 副知事等は、長を補佐し、長の命を受け政策及び企画をつかさどり、長が補助機関の事務を監督する権限を代行することができるが、副知事等に長の権限の全部を委任することはできない。
  • 副知事等は、長が欠けたとき又は長に事故があるときは、長の職務を代理する義務があり、長の指定がなくても法律上当然に長の職務を代行する。正答
  • 副知事等は特別職の地方公務員であり、一般職の地方公務員に適用される地方公務員法の分限・懲戒に関する規定は適用されない。
正答:副知事等は、長が欠けたとき又は長に事故があるときは、長の職務を代理する義務があり、長の指定がなくても法律上当然に長の職務を代行する。

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エが誤りです。地方自治法152条1項は「普通地方公共団体の長に事故があるとき、又は長が欠けたときは、副知事又は副市町村長がその職務を代理する」と規定していますが、複数の副知事等がいる場合に誰が代理するかについては、長があらかじめその順序を定めておく必要があります(152条2項)。エの「長の指定がなくても法律上当然に長の職務を代行する」は、副知事等が1名のみの場合は正しいですが、複数いる場合は長の事前指定(順序の決定)が必要であり、「当然に」という絶対的表現は誤りです。ア(条例による置かない規定・定数条例)は161条に対応した正しい記述です。イ(議会同意・定数条例)は162条(選任・議会同意)・161条2項(定数条例)に対応した正しい記述です。ウ(補佐・監督権限の代行・全部委任禁止)は167条の趣旨に沿った正しい記述です。オ(特別職・地公法の分限懲戒不適用)は地方公務員法3条3項1号の特別職に関する正しい記述です。

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地方自治法上の副知事・副市長の法的地位と権限を整理します。

設置(161条): 都道府県に副知事、市町村に副市町村長を「置く」のが原則ですが、条例で置かないことができます(161条1項)。定数は条例で定めます(161条2項・ア正しい)。

選任(162条)・定数(161条2項): 副知事・副市町村長は長が議会の同意を得て選任します(162条)。定数は条例で定めます(161条2項・イ正しい)。議会同意を要する点が重要です(同意なしの選任は無効)。

職務(167条): 副知事・副市町村長は長を補佐し、長の命を受けて担任する政策・企画に係る事務を処理し、長が指定する補助機関の事務を監督します。長の権限の「全部」を副知事等に委任することはできませんが、一部の委任・専決は可能です(ウ正しい)。

職務代理(152条)のエの誤り詳細: 152条1項は「長に事故がある場合は副知事等が職務を代理する」と規定しますが、副知事等が複数いる場合は代理の順序の指定(152条2項)が必要です。1人しかいない場合は当然にその者が代理しますが、複数いる場合の「当然に」は不正確です。

特別職(オの根拠): 副知事・副市町村長は地方公務員法3条3項1号の「特別職」に該当し、一般職の公務員に適用される地方公務員法の分限(28条)・懲戒(29条)規定は適用されません。

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【副知事・副市長制度の歴史的経緯と現行制度】

副知事・副市長は、2007年地方自治法改正で「助役」から改称されました。改称の背景には、単なる「補助者」という従来のイメージを払拭し、地方分権推進にともない権限強化・専門化された「副首長」としての機能を明確化する趣旨があります。現在は都道府県・指定都市については副知事・副市長の設置が原則とされ(置かないとすることも条例で可能)、中小市町村でも任意設置が認められています。

【議会の同意を要する任命制度の法的意義】

副知事・副市町村長は「長が議会の同意を得て選任する」(162条)という仕組みをとります。これは人事権(任命権)は長にあるが、民主的統制として議会のチェックを加える仕組みです。議会の同意は「信任投票」的性格を持ち、同意が得られなければ長は別の候補者を提案するか、副知事等なしで行政を運営することになります(条例で置かないことも可能なため)。なお、副知事等が辞職・失職した場合は長が改めて議会に同意を求めて後任を選任します。

【職務代理の詳細(152条の精緻な分析・エの根拠)】

152条1項: 長に事故があるとき(疾病・出張等)または長が欠けたとき(死亡・辞職・失職等)は、副知事または副市長が職務を代理する。

152条2項: 長は、副知事または副市長が2人以上あるときは、あらかじめその中から職務代理者となる者の順位を定めておかなければならない(「あらかじめ定めておく」義務)。

したがって、副知事等が1名しかいない場合は152条1項により当然にその者が代理しますが、複数いる場合は事前の指定順位がない状態では「当然に」特定の副知事等が代理するわけではありません。エの「長の指定がなくても法律上当然に」は、複数副知事等の場合に152条2項の事前指定義務を無視した誤りです。

【全部委任の禁止とその趣旨(ウの詳細)】

長は副知事等に一定の権限を委任することができますが、長の職権の「全部」を委任することは許されません。この全部委任禁止の趣旨は、地方公共団体の首長たる長(住民の直接選挙による選出)が執行機関の最終責任を負うという「民主的責任」の確保にあります。全部委任が許されると、長は実質的に権限を持たないまま責任だけを持つことになり、直接選挙制度の趣旨に反するからです。一部の委任・決裁の専決委任(長の権限の一部について副知事等が代決・専決する)は認められます。

【特別職としての法的地位(オの詳細)】

副知事・副市町村長は地方公務員法3条3項1号の「就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職」として特別職に位置付けられます。特別職には一般職の公務員に適用される地方公務員法の身分保障規定(分限・懲戒)は適用されず、副知事等の身分はもっぱら地方自治法の規定(163条:任期・解職、164条:欠格事由・失職、165条:退職等)によって規律されます。なお、長は副知事・副市町村長を任期中でも解職することができます(163条但書)。

【根拠条文】

地方自治法 第152条(長の職務代理・副知事等の代理順序の事前指定)、第161条(副知事・副市町村長の設置・定数)、第162条(選任・議会同意)、第163条(任期・解職)、第164条(欠格事由・失職)、第165条(退職)、第166条(兼職禁止)、第167条(副知事・副市町村長の担任事務)

地方公務員法 第3条第3項第1号(特別職の定義)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第152条(長の職務代理)、第161条(副知事・副市町村長の設置・定数)、第162条(選任・議会同意)、第163条(任期・解職)、第166条(兼職禁止)、第167条(副知事・副市町村長の職務) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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