行政法150行政法(地方自治法)

行政書士 行政法 問150:行政法(地方自治法)

地方自治法上の国と地方公共団体の関係(関与)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 国が地方公共団体に対して行う「是正要求」は、地方公共団体の法定受託事務に対してのみ行うことができ、自治事務に対しては是正要求を行うことはできない。
  • 国が地方公共団体に対して「是正指示」を行った場合、地方公共団体は指示に従う義務を負う。ただし、是正指示に不服がある地方公共団体は、国地方係争処理委員会に審査の申出をすることができる。
  • 国の「是正の指示」の対象は法定受託事務に限られ、国は自治事務についての是正指示はできない。是正の要求は自治事務・法定受託事務の双方について行うことができる。
  • 国は、地方公共団体が法定受託事務の処理を怠り、かつ是正の指示にも従わない場合には、直ちに高等裁判所に対して地方公共団体に代わって事務を処理することの許可を求めることができる(代執行)。
  • 国の各大臣は、地方公共団体の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠き公益を害すると認めるとき、文書で是正を要求することができ、当該地方公共団体はその旨を尊重し、自ら違反を是正しなければならない。正答
正答:国の各大臣は、地方公共団体の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠き公益を害すると認めるとき、文書で是正を要求することができ、当該地方公共団体はその旨を尊重し、自ら違反を是正しなければならない。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

オが正しい記述です。地方自治法245条の5第1項は、各大臣が自治事務の処理が法令違反または著しく適正を欠き公益を害すると認めるとき、文書で是正を要求できると規定しており、オの記述と対応します(オ正しい)。アは「是正要求は法定受託事務のみ」としていますが、是正要求は自治事務についても行うことができます(245条の5・ア誤り)。イは概ね正しい内容ですが、「指示に従う義務」という部分が是正指示の法的性格と整合するか確認が必要です(地自法上は「必要な措置を講ずるべき旨を指示できる」であり指示への義務は条文上の規定ぶりを要確認)。ウは「是正の指示は法定受託事務のみ・是正要求は双方」としており、これは正しい区別に対応しています。しかし、ウは「是正要求は自治事務・法定受託事務の双方について行うことができる」としており、実際には是正要求は自治事務が対象で、法定受託事務については是正指示等が対象です。エは代執行の手続として「直ちに高等裁判所に許可を求める」としていますが、代執行前に是正指示等の手続が先行する必要があり、「直ちに」は不正確です。

標準試験対策の基準レベル

地方自治法上の国の関与の類型を体系的に整理します。

関与の分類:

自治事務に対する国の関与: ①助言・勧告(245条の4)、②是正の要求(245条の5)

法定受託事務に対する国の関与: ①助言・勧告(245条の4)、②是正の指示(245条の7)、③代執行(245条の8)

是正要求(245条の5): 各大臣が地方公共団体の自治事務の処理が法令違反または著しく適正を欠き公益を害すると認めるとき、文書で必要な措置を講ずべきことを要求できます(オの根拠)。「自治事務が対象」という点が是正指示との重要な違いです。

是正指示(245条の7): 各大臣が地方公共団体の法定受託事務の処理が違法等と認めるとき、必要な措置を講ずるよう指示できます。「法定受託事務が対象」(ウの後半・是正指示は法定受託事務のみ・正しい)。

ウの「是正要求は双方」が誤り: 是正要求(245条の5)の対象は自治事務です。法定受託事務については是正指示(245条の7)が対応します。

代執行(245条の8)の手続: 是正指示→国地方係争処理委員会・高裁への訴え(違反是正訴訟)→認容判決→代執行命令→高等裁判所許可という段階的手続が必要です(エの「直ちに高裁へ」は誤り)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【地方分権改革と国の関与の法定化】

2000年の地方分権一括法施行により、地方自治法の国・地方関係の規定が大きく変わりました。旧来は国が地方公共団体に対して「通達」「指示」等を通じて事実上強い関与を行っていましたが、改正後は関与の種類・手続・ルールが地方自治法に明確に法定化され(関与の法定主義・245条の2)、国の恣意的な関与が制限されました。関与の分類は「助言・勧告」「資料提出の要求」「是正の要求・指示」「代執行」等に整理され、各関与の対象事務(自治事務・法定受託事務)が明確化されています。

【是正要求・是正指示・是正勧告の比較】

是正要求(245条の5・自治事務対象):

  • 主体: 各大臣(法律に特別の定めがある場合は都道府県知事等)
  • 対象: 自治事務
  • 要件: 法令違反 OR 著しく適正を欠き公益を害する
  • 内容: 必要な措置を講ずべきことを文書で要求

是正指示(245条の7・法定受託事務対象):

  • 主体: 各大臣(法律に特別の定めがある場合は都道府県知事等)
  • 対象: 法定受託事務(第1号法定受託事務)
  • 要件: 法令違反 OR 著しく適正を欠き公益を害する
  • 内容: 必要な措置を講ずるよう指示

是正勧告(245条の6・自治事務対象):

  • 主体: 都道府県知事(市町村の自治事務に対して)
  • 対象: 自治事務
  • 「勧告」は法的拘束力の点で「要求」より弱い

【代執行の手続(エの精緻な分析)】

245条の8の代執行は、単純に「是正指示に従わなければ直ちに代執行」ではなく、段階的な手続が必要です:

①是正指示(245条の7)

②是正指示に従わない場合→高等裁判所への違反是正訴訟(245条の8第1項): 国が高裁に対し「地方公共団体に対し、当該法定受託事務の処理に係る義務を履行することを命ずる旨の判決を求める訴え」を提起。

③高等裁判所の履行命令判決(245条の8第2項)

④履行命令に従わない場合→高等裁判所の代執行許可(245条の8第3項)

⑤代執行令書の送付・代執行の実施(245条の8第4項)

エは「是正指示に従わない場合、直ちに高裁に代執行許可を求める」としていますが、実際には高裁への違反是正訴訟(履行命令訴訟)を先行させ、判決後に履行がなければ代執行許可申請に進む多段階手続です。「直ちに代執行許可を求める」という短絡的な手順は不正確です(エ誤り)。

【国地方係争処理委員会との関係(イの補足)】

地方公共団体は、国の関与(是正要求・是正指示等)に不服がある場合、国地方係争処理委員会(総務省設置)に審査の申出ができます(250条の13以下)。委員会は審査・勧告を行い、勧告に従わない場合は高等裁判所への出訴が可能です(250条の20)。イの「是正指示に不服な地方公共団体は国地方係争処理委員会に審査申出ができる」は正しい記述です(ただし、イ全体は「指示に従う義務を負う」という表現が法的に正確かという疑問があり、245条の7の是正指示は「必要な措置を講ずるよう指示する」という規定で、法的義務付けの強さについては解釈上議論があります)。

【試験対策:自治事務vs法定受託事務の関与の違い】

「是正要求=自治事務・是正指示=法定受託事務」という対応関係は行政書士試験の頻出事項です。覚え方:「要求」は比較的弱い(自治事務は地方の自主性尊重・強制力が弱い)、「指示」は強い(法定受託事務は国の利害が強い)というニュアンスの違いと関連付けて理解するとよいです。

【根拠条文】

地方自治法 第245条(関与の定義)、第245条の2(関与の法定主義)、第245条の4(助言・勧告・資料提出要求)、第245条の5(是正要求・自治事務)、第245条の6(是正勧告)、第245条の7(是正指示・法定受託事務)、第245条の8(代執行等・法定受託事務)、第250条の13(国地方係争処理委員会への審査申出)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第245条の5(是正要求)、第245条の6(是正の勧告)、第245条の7(是正の指示)、第245条の8(代執行等) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

地方自治法・国の関与・是正要求と是正指示・代執行の違い頻出度A

行政法の他の問題

1
行政行為の分類・許可・認可・特許の区別
2
行政行為の効力・公定力・国家賠償との関係
3
行政手続法・申請に対する処分・審査基準・理由提示
4
不利益処分・聴聞・弁明の機会の付与
5
行政手続法・行政指導
6
行政不服審査法・審査請求期間・現行法の審査請求中心主義

全443問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。