行政法149行政法(地方自治法)

行政書士 行政法 問149:行政法(地方自治法)

地方公共団体の予算に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 地方公共団体の予算は、一会計年度の歳入・歳出の見積りを記載した当初予算が原則であるが、当初予算では対応できない事態が生じた場合には補正予算を調製して議会に提出することができる。
  • 普通地方公共団体の長は、会計年度開始前に当初予算が成立しない場合において、必要に応じ暫定予算を調製し、一定の期間に係る予算を定めることができる。当初予算が成立したときは、暫定予算は失効する。
  • 予算は議会の議決を必要とするが、法令に基づく義務的経費(職員の給与・法定の公債費等)は長が予算に計上せずに支出することができる。正答
  • 地方公共団体は、特定の事業を実施するための予算として、特定の歳入をもって特定の歳出に充てるための特別会計予算を設置することができる。
  • 繰越明許費とは、歳出予算の経費のうち、その性質上または予算成立後の事由に基づき年度内に支出が終わらない見込みのあるものについて、翌年度に繰り越して使用することを予算で定めることをいう。
正答:予算は議会の議決を必要とするが、法令に基づく義務的経費(職員の給与・法定の公債費等)は長が予算に計上せずに支出することができる。

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ウが誤りです。地方自治法上、地方公共団体の歳出は原則として予算に基づかなければなりません(財政民主主義・地自法210条・211条)。義務的経費(職員の給与・法定の公債費等)であっても、予算の議決を経ずに支出することは許されません。長は予算に義務的経費を必ず計上して議会の議決を得なければならないのが原則であり、「義務的経費だから議決なしに支出できる」というウの記述は誤りです。ア(補正予算)は218条1項に対応した正しい記述です。イ(暫定予算・失効)は218条2項・3項に対応した正しい記述です。エ(特別会計予算)は209条2項に対応した正しい記述です。オ(繰越明許費)は213条に対応した正しい記述です。

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地方公共団体の予算制度の基本構造を整理します。

予算の種類と根拠条文:

  • 当初予算(211条1項): 毎会計年度、長が調製し議会に提出して議決を得る基本的な予算。
  • 補正予算(218条1項): 予算の調製後に生じた事由に基づき、既定の予算に追加または変更を加える必要がある場合に調製。当初予算と同様に議会の議決が必要(ア正しい)。
  • 暫定予算(218条2項・3項): 会計年度開始前に当初予算が成立しない場合に、一定期間の予算として調製。当初予算成立時に効力を失う(イ正しい)。

特別会計(209条2項): 特定の事業を一般会計から区分して管理するための会計。法律または条例で設置(エ正しい)。

繰越明許費(213条): 性質上または予算成立後の事由で年度内に支出が終わらない見込みの経費を翌年度に繰り越して使用することを予め予算に定めるもの(オ正しい)。

ウが誤りである根拠: 地方自治法210条(歳入歳出予算の原則)は「一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない」と規定します。義務的経費も例外ではなく、予算への計上と議決が必要です。予算の議決なしに義務的経費を支出できるという法律上の例外規定は存在しません(長が無予算支出をすることは違法)。

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【財政民主主義と予算原則】

地方公共団体の財政は「法令の定めるところに従い」執行されなければならず(地自法2条14項・財政の原則)、その中核が「予算主義」(財政民主主義)です。予算は住民の代表機関である議会が議決することで、住民が課税・支出について意思を示す仕組みです。予算の議決なしに支出を行うことは、議会(住民)の財政コントロールを無効化するものとして厳格に禁止されています。義務的経費(職員給与・公債費・扶助費等)は予算への計上が必須であり、「義務的だから議決不要」という法律上の例外は存在しません(ウ誤りの根拠)。

【補正予算の実務と法的根拠】

218条1項:「普通地方公共団体の長は、予算の調製後に生じた事由に基づいて、既定の予算に追加その他の変更を加える必要が生じたときは、補正予算を調製し、これを議会に提出することができる」。補正予算は当初予算の修正版であり、追加・削減・組み替え等の内容を持ちます。自然災害・経済危機・感染症対応等の突発的経費対応の典型が補正予算です。補正予算も議会の議決が必要な点で当初予算と同様であり(ア正しい)、長が単独で支出を決定できるわけではありません。

【暫定予算の仕組みと失効(イの詳細)】

218条2項:「普通地方公共団体の長は、必要に応じ、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を調製し、これを議会に提出することができる」。218条3項:「暫定予算は、当該会計年度の予算が成立したときは、その効力を失う」。暫定予算は通常の当初予算審議が間に合わない場合(地方選挙後の新首長・新議会への移行期等)に活用されます。当初予算成立後は暫定予算による支出の扱い(当初予算に吸収)については地自法218条4項が規定しています。

【特別会計の設置要件(エの詳細)】

209条2項:「地方公共団体は、特定の事業を行う場合その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合においては、条例でこれを設けることができる」(法律によっても設置可能)。特別会計の典型例:国民健康保険特別会計・介護保険特別会計・後期高齢者医療特別会計・公営企業会計(水道・交通・病院等)。一般会計との区分経理が必要な場合に設けられます。

【繰越明許費の要件(オの詳細)】

213条:「各会計年度における歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。ただし、歳出予算の経費のうちその性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについては、予算の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用することができる」。繰越明許費の典型:公共工事(年度内完成が困難)・補助金事業(交付決定の遅延)等。繰越明許費として予算に定めることが要件であり、長が事後的に単独で繰り越しを決定することはできません(予め議会の議決した予算に計上が必要)。

【財政規律と地方公共団体の財政健全化法】

予算制度のほか、地方公共団体財政健全化法(2007年制定)による「財政健全化判断比率」(実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債費比率・将来負担比率)のモニタリングが義務付けられており、一定水準を超えた場合は「財政健全化計画」・「財政再生計画」の策定が求められます。この制度は地方公共団体の放漫財政への制度的抑制として機能しています。

【根拠条文】

地方自治法 第209条(会計の種類・特別会計)、第210条(歳入歳出予算の原則)、第211条(予算の調製・提出)、第213条(繰越明許費)、第218条(補正予算・暫定予算)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第210条(総計予算主義)、第211条(予算の調製・提出)、第213条(繰越明許費)、第218条(補正予算・暫定予算) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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