行政法152行政法(行政手続法)

行政書士 行政法 問152:行政法(行政手続法)

行政手続法36条の3が定める「処分等の求め」に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分または行政指導がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁または当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分または行政指導をすることを求めることができる。
  • 処分等の求めには法律上の申立適格を要し、法令に違反する事実に直接の利害関係を有する者のみが申出をすることができ、一般市民が処分等を求めることはできない。正答
  • 処分等の求めを受けた行政庁または行政機関は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは処分または行政指導をしなければならない。
  • 処分等の求めの申出に際して、申出者は処分等の求めの対象となる法令違反の事実を具体的に記載した書面を提出しなければならない。
  • 行政手続法36条の3の「処分等の求め」制度は、2014年の行政手続法改正で新設された制度であり、同年に同じく新設された「行政指導の中止の求め」(36条の2)とともに、国民の行政参加・関与の仕組みを強化する一環として導入された。
正答:処分等の求めには法律上の申立適格を要し、法令に違反する事実に直接の利害関係を有する者のみが申出をすることができ、一般市民が処分等を求めることはできない。

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イが誤りです。行政手続法36条の3第1項は「何人も」と規定しており、法令に違反する事実がある場合に処分等を求める申出は、法律上の利害関係の有無を問わず、だれでも行うことができます。「法令に違反する事実に直接の利害関係を有する者のみ」という限定は36条の3の条文にはなく、「一般市民が申出できない」とするイは明確な誤りです(イ誤り)。ア(「何人も」の申出権・36条の3第1項)は正しい記述です。ウ(必要な調査と処分等の義務)は36条の3第2項に対応した正しい記述です。エ(書面提出)は36条の3第1項の申出の方法として書面提出が規定されている点で正しいです(条文確認が必要ですが概ね正しい)。オ(2014年改正で新設)は正しい歴史的事実です(行政指導の中止の求め=36条の2も同年新設)。

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行政手続法36条の3(処分等の求め)の概要と各選択肢の根拠を整理します。

36条の3の構造(処分等の求め):

  • 第1項: 「何人も」、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分または行政指導がされていないと思料するときは、権限ある行政庁・行政機関に対し、書面で申し出ることができる。
  • 第2項: 申出を受けた行政庁・行政機関は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分または行政指導をしなければならない。

イが誤りの根拠: 第1項の「何人も」は文字通り全ての人を意味し、利害関係者に限定されません。公益通報・法令遵守の観点から、広く国民が行政の適正な執行を求める権利を持ちます(イ誤り)。

申出の方式(エの根拠): 第1項は「書面で…申し出るものとする」と規定しており、書面(申出書)の提出が要件です(エ正しい)。

行政庁の義務(ウの根拠): 第2項は「必要があると認めるときは処分または行政指導をしなければならない」という義務規定です(ウ正しい)。ただし、調査の結果「必要なし」と判断すれば義務は生じません。

2014年改正との関係(オの根拠): 行政手続法は2014年改正で36条の2(行政指導の中止の求め)・36条の3(処分等の求め)を新設し、国民の行政参加機会を拡充しました(オ正しい)。

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【処分等の求め制度の立法趣旨と背景】

行政手続法36条の3は2014年(平成26年)の行政手続法改正で新設されました。従来、国民が行政の不作為(法令違反があるのに処分等がされない状態)に対抗する手段は、①取消訴訟等の抗告訴訟(ただし処分がない状態では取消訴訟は使えない)、②不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)、③行政上の申立て(法律に規定がある場合のみ)に限られ、一般的な申出手段が欠けていました。36条の3は「法令違反があるにもかかわらず処分等がされていない状態の是正を広く国民が求める手段」として設けられ、行政過程への国民参加を充実させる仕組みです。

【「何人も」の意義(イの詳細)】

36条の3第1項の「何人も」は、制限なしにあらゆる者が申出をできることを明示します。取消訴訟の原告適格(行訴法9条の「法律上の利益を有する者」)と異なり、申出人として自己の権利・利益への直接の影響を要件としません。隣人訴訟的な問題(自分に直接の被害はないが公益違反がある場合)、消費者・住民・市民団体等が広く法令遵守を求める場面での活用が想定されています。なお、「何人も」申出できる以上、外国人・法人・未成年者(法定代理人を通じて)も申出人になれると解されます(イ誤りの根拠:直接の利害関係者に限定されない)。

【調査義務と処分等義務(ウの詳細)】

36条の3第2項は行政庁・行政機関に「必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは処分または行政指導をしなければならない」という二段の義務を課します:

①まず「必要な調査を行う」義務(調査義務): 申出を受けたからには調査をしないまま放置することは許されません。

②調査の結果「必要があると認めるとき」の処分等義務: 調査結果に基づく合理的判断として「必要あり」と認めた場合は処分等を行う義務が生じます。逆に、調査の結果「必要なし」と合理的に判断した場合は処分等の義務はありません。

この「必要があると認めるとき」という要件は行政庁に一定の裁量を与えており、申出があれば必ず処分等をしなければならないというわけではありません。

【行政指導の中止の求め(36条の2)との比較】

2014年改正で同時に新設された36条の2(行政指導の中止の求め)は、行政指導を受けている者がその行政指導が行政手続法の要件に違反していると認める場合に、中止を求める権利です。36条の3(処分等の求め)との比較:

  • 36条の2: 行政指導を「受けている者(相手方)」が対象、行政指導の「中止」を求める、実体的違反が要件
  • 36条の3: 「何人も」が対象、処分または行政指導を「すること」を求める(不作為の是正)、「法令に違反する事実がある」ことが要件

両者は共通して「国民が行政の具体的行動に直接関与する権利の拡充」という2014年改正の方向性を体現しています。

【申出の効果と不服申立ての可否】

申出者は行政庁・行政機関の調査・判断結果(処分等をするかどうかの結果)に対して、それ自体として不服申立てや取消訴訟を提起できるかという問題があります。行政庁が「処分等をしない」という判断(不作為)については、取消訴訟の対象(処分性がない)とは言えず、不作為違法確認訴訟の要件(申請に対する不作為・行訴法3条5項)を満たさない可能性があります。ただし、36条の3の申出への対応が恣意的・不合理であれば、行政の不法行為として国賠法上の救済が検討されます。この「実効性確保の問題」は実務・学説で課題とされています。

【根拠条文】

行政手続法 第36条の2(行政指導の中止の求め・2014年新設)、第36条の3(処分等の求め・2014年新設)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第36条の3(処分等の求め) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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