行政書士 行政法 問46:行政不服審査法の目的・審査請求中心主義
行政不服審査法(以下「行審法」という)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行審法は、行政庁の処分に対する不服申立ての制度を設けることにより、国民の権利利益の救済と行政の適正な運営を確保することを目的とする法律であり、不服申立ての種類として、審査請求・再調査の請求・再審査請求の3種類を定めている。正答
- イ行審法の2016年(平成28年)全面改正により、旧法の異議申立て制度は維持されつつ、審査請求制度が拡充されることになった。
- ウ行審法において、不服申立てをすることができる者は、処分の相手方に限られ、処分によって権利利益を侵害された第三者は不服申立てをすることができない。
- エ行審法は、法律に特別の定めがある場合のほかは、日本国内にある全ての行政庁の処分及び不作為を対象とし、地方公共団体の機関が行う処分も原則として対象となる。
- オ行審法上の「処分」には、行政庁の行う公権力の行使が含まれるが、「不作為」とは申請に対して何らの処分もしない場合に限られ、処分の遅延(期間超過)はこれに含まれない。
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アが正しいです。行審法は、行政庁の処分または不作為に対する不服申立ての制度を整備し、国民の権利利益の救済と行政の適正な運営の確保を目的としています(1条)。不服申立ての種類は、①審査請求(原則)・②再調査の請求(法律に定めがある場合のみ)・③再審査請求(法律に定めがある場合のみ)の3種類です。イは誤りで、2016年全面改正では旧法の「異議申立て」制度は廃止されました(審査請求中心主義に一本化)。ウは誤りで、第三者も利害関係を持つ場合は不服申立てができます。
審査請求中心主義(アの根拠・イとの対比): 2016年(平成28年)4月1日施行の行審法全面改正の最大のポイントは「審査請求中心主義」への転換です。旧法では、処分庁の上級行政庁への「審査請求」と処分庁自身への「異議申立て」が並存していましたが、新法では異議申立てを廃止し、審査請求に一本化しました。これにより国民の手続選択の迷いが解消されました。ただし、例外として法律に定めがある場合に限り「再調査の請求」(処分庁への簡易な不服申立て・旧異議申立てに相当する機能を一部残したもの)が認められます(5条)。また、裁決に不服がある場合の「再審査請求」も法律に定めがある場合のみ認められます(6条)。エの誤り: 行審法は地方公共団体の機関が行う処分にも原則として適用されます(行政手続法と異なり、条例・規則を根拠とする処分も行審法の適用がある)。もっとも、7条1項には各種の適用除外(国会・裁判所の行為、刑事手続上の処分、外国人の出入国・帰化に関する処分等)があり、また7条2項は、国・地方公共団体等が「その固有の資格」において相手方となる処分を適用除外としています。エは「日本国内にある全ての行政庁の処分」と述べる点で、これらの適用除外を捨象しており不正確です。オの誤り: 不作為とは「法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らかの処分をしないこと」を意味し(3条)、処分が遅延している場合も不作為に含まれます。
【制度趣旨と行審法の体系的位置づけ】
行審法は、行政救済法の三本柱(行審法・行訴法・国賠法)のうち簡易迅速な不服申立て手続を担います。訴訟(行訴法)と比べ、①費用・手間が少ない、②行政庁の自己点検機能(行政の適正な運営の確保)がある、という利点がある一方、公正性の担保(行政が自己の行為を審理する)に懸念がありました。2016年改正ではこの懸念に対応するため「審理員制度」と「行政不服審査会への諮問制度」が導入されました。
【2016年改正の核心(イの誤りの詳細)】
旧行審法(1962年制定)は、①異議申立て(処分庁へ)と②審査請求(上級庁へ)の二本立てでしたが、国民がどちらに申立てるべきか分かりにくいという問題がありました。2016年改正の三本柱:
1. 審査請求への一本化(異議申立て廃止)→再調査の請求(法定の場合のみ)への限定的移行
2. 審理員制度の新設(処分に関与しない職員が審理を担当)
3. 行政不服審査会への諮問制度の新設(第三者機関が審理の公正をチェック)
また審査請求期間が旧法の60日から3か月(処分を知った日の翌日から起算)に延長されました(18条)。これは取消訴訟の出訴期間(6か月)との差を縮めることで国民の救済機会を拡大したものです。
【適用範囲の論点(エ・オの詳細)】
行審法7条の適用除外は以下の通りです(エの補足):
- 国会・裁判所の行為
- 刑事手続上の処分
- 行審法・行訴法による裁決・判決等
- 外国人の出入国・難民認定に関する処分(一部)
地方公共団体の機関が行う処分については、自治事務・法定受託事務のいずれに関するものであっても、原則として行審法が適用されます(行政手続法のように条例・規則を根拠とする処分を一律に適用除外とする規定は行審法にはありません)。例外は、7条2項の「固有の資格」において相手方となる処分等に限られます。
不作為の定義(オの詳細):行審法3条は不作為を「法令に基づく申請に対して、相当の期間内に何らかの処分その他公権力の行使に当たる行為をしない」と定義します。ポイントは「法令に基づく申請」が前提であること(申請のない場合は不作為の問題は生じない)と「相当の期間」の経過が必要であることです。処分の遅延はまさにこの「相当の期間内に処分をしない」状態であり、不作為に該当します。
【各選択肢の詳細分析】
- ア: 正しい。1条(目的)・2条(審査請求)・5条(再調査)・6条(再審査請求)の3種を正確に列挙。
- イ: 誤り。2016年改正で異議申立ては廃止(一部機能が再調査の請求として法定の場合のみ残存)。「維持されつつ」が誤。
- ウ: 誤り。行審法2条は「行政庁の処分に不服がある者」が審査請求できると規定し、処分の相手方以外の第三者であっても、処分によって直接影響を受ける者は申立適格を持つ。
- エ: 誤り。地方公共団体の機関の処分にも原則適用があるという点自体は正しいが、7条の適用除外を「なし」と読ませる点で誤解を招く。また「日本国内にある全ての行政庁」という部分が7条の適用除外と整合しない。
- オ: 誤り。不作為には処分の遅延(相当の期間内に処分をしない)が含まれる(3条)。「処分を全くしない場合に限られ、遅延は含まれない」は誤り。
【根拠条文】
行政不服審査法 第1条(目的)、第2条(処分についての審査請求)、第3条(不作為についての審査請求)、第5条(再調査の請求)、第6条(再審査請求)、第7条(適用除外)
【補足】
2016年改正の「異議申立て廃止→審査請求一本化(再調査の請求は法定の場合のみ)」「審査請求期間60日→3か月」は最頻出の改正ポイント。旧法の知識を混入させないこと。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政不服審査法 第1条(目的)・第2条(処分についての審査請求)・第5条(再調査の請求)・第6条(再審査請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。