行政法49審理員制度・審理員の指名と除斥

行政書士 行政法 問49:審理員制度・審理員の指名と除斥

行政不服審査法が定める審理員制度に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 審査庁は、審査請求がなされたときは、当該審査庁に所属する職員の中から審理員を指名しなければならないが、当該処分に関与した職員を審理員に指名することもできる。
  • 審理員は、書面審理を原則とし、審査請求人または参加人からの申立てがある場合でも、口頭で意見を述べる機会を与えることができない。
  • 審理員は、審理手続が終結したときは、遅滞なく、審理員意見書を作成し、これを事件記録とともに審査庁に提出しなければならない。正答
  • 審理員制度は、全ての行政庁が行う処分についての審査請求に適用され、例外なく審理員が選任されなければならない。
  • 審査庁は、審理員から審理員意見書の提出を受けたときは、直ちに裁決を行わなければならず、行政不服審査会等への諮問は任意とされている。
正答:審理員は、審理手続が終結したときは、遅滞なく、審理員意見書を作成し、これを事件記録とともに審査庁に提出しなければならない。

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ウが正しいです。審理員は審理手続の終結後、速やかに審理員意見書を作成して審査庁に提出しなければなりません(行審法42条1項)。アは誤りで、当該処分に関与した職員は審理員に指名できません(9条2項1号)。これが審理員制度の核心である「公正な審理の確保」の趣旨です。イは誤りで、審査請求人または参加人から申立てがあったときは、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません(31条1項)。エは誤りで、審理員制度の適用除外があります(9条1項ただし書)。オは誤りで、審査庁は原則として行政不服審査会等への諮問が義務付けられています(43条1項)。

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審理員制度の趣旨: 2016年改正前は、審査請求の審理を審査庁(処分庁の上級庁等)が自ら行っており、処分に関与した職員が審理を担当する場合があり公正性に問題がありました。新制度では、審査請求を受けた審査庁が「処分に関与していない職員」の中から審理員を指名し(9条1項)、審理員が中立・公正な審理を担う仕組みとなっています。

指名の除外要件(アが誤りの根拠・9条2項):

  • 審査請求に係る処分に関与した者
  • 審査請求に係る処分に係る事件について証人等として調査を受けた者
  • 審査請求人の親族・代理人、または審査請求に係る処分についての当事者(参加人等)

口頭意見陳述(イが誤りの根拠・31条): 審査請求人または参加人から申立てがあった場合、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません(義務規定)。この際、審査請求人は処分庁に対して質問を行うこともできます。

適用除外(エが誤りの根拠・9条1項ただし書): 審理員制度が適用されない場合として、審査庁が①行政不服審査会等(諮問先)である場合、②法律に審理員を置かない旨の規定がある場合等があります。

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【制度設計の背景:公正・使い勝手・透明性の三角形】

2016年改正における審理員制度の導入は、行政不服申立て制度の三つの課題への対応です。①公正性の担保(処分関与者が審理する弊害排除)、②使い勝手の向上(国民の実質的な権利救済機会の拡大)、③透明性の向上(審理手続の外部への説明可能性)。審理員は「行政の内部」(審査庁所属職員)でありながら処分から切り離されることで、行政の専門性を活かしつつ公正性を確保する工夫です。これは完全な第三者機関(裁判所・行政不服審査会)と行政内部の中間に位置する仕組みです。

【審理員の権限・審理手続の詳細】

審理員の権限(主なもの):

  • 審理手続の主宰・審理関係人への通知(9条〜)
  • 弁明書の提出命令・弁明書の副本送付(29条)
  • 反論書・意見書の提出機会の付与(30条)
  • 口頭意見陳述の機会付与(31条)※申立てがあれば義務(イが誤りの根拠)
  • 物件の提出要求・提出物件の閲覧許可(33条・34条)
  • 参考人の陳述・鑑定の要求(34条)
  • 審理関係人への質問(36条)
  • 審理手続の計画的進行(37条)

審理員意見書(ウが正しいの根拠・42条): 審理員は審理手続終結後に「審理員意見書」を作成・提出します。審理員意見書は、事実関係・法律問題について審理員の意見を述べるものであり、審査庁の裁決を拘束するものではありませんが、審査庁は原則として行政不服審査会等(第三者機関)への諮問を経て裁決します。

【行政不服審査会との接続(オが誤りの根拠)】

審査庁は、審理員意見書の提出を受けたとき、原則として行政不服審査会等(国の機関の場合は総務省の行政不服審査会、地方の場合は各地方の機関)に諮問しなければなりません(43条1項)。諮問が不要な例外(43条1項ただし書):

  • 審査請求が不適法で却下する場合
  • 審査請求に理由がある(認容)として処分を取り消す等の場合で、当事者双方が諮問を求めない場合
  • 審査庁が行政不服審査会の組織である場合

行政不服審査会の役割: 諮問を受けた行政不服審査会は調査・審議を経て「答申」を行います(諮問→答申)。この答申は法的拘束力を持ちませんが、審査庁は答申を尊重して裁決を行うことが期待されます。これにより審理員(行政内部)と行政不服審査会(第三者機関)の二段階チェック構造が実現しています。

【各選択肢の詳細分析】

  • ア: 誤り(最重要の誤り)。9条2項は「処分に関与した者」を審理員指名から明示的に除外。審理員制度の根幹である「公正性確保」の趣旨から当然の帰結。
  • イ: 誤り。31条1項は口頭意見陳述を申立てがあれば「与えなければならない」(義務)と定める。書面審理が原則であることは正しいが、申立てがあれば口頭陳述は義務的に保障される。
  • ウ: 正しい。42条1項が「遅滞なく」作成・提出義務を明記。事件記録とともに提出する点も正確。
  • エ: 誤り。9条1項ただし書により適用除外がある。例えば行政不服審査会が審査庁である場合(諮問先が審査庁自身になるため審理員制度が不要)等。
  • オ: 誤り。43条1項により原則として行政不服審査会等への諮問が義務(ただし例外あり)。「任意」は誤り。

【根拠条文】

行政不服審査法 第9条(審理員の指名・除斥事由)、第31条第1項(口頭意見陳述)、第42条第1項(審理員意見書の提出)、第43条第1項(行政不服審査会等への諮問)

【補足】

審理員は「処分関与者を除いた審査庁職員」から指名。審理員意見書提出後の行政不服審査会への諮問は「原則義務(例外あり)」。諮問→答申の流れを押さえる。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政不服審査法 第9条(審理員)・第42条(審理員意見書) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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