行政書士 行政法 問83:国賠法3条・費用負担者・4条・5条・6条
国家賠償法第3条から第6条に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア国賠法第3条第1項は、公権力の行使または公の営造物の設置・管理の費用を負担する者(費用負担者)が、現実に当該公権力の行使等を行った者(公務員の任命権者・管理主体)とは別の場合、被害者はそのいずれに対しても賠償責任を求めることができると規定している。
- イ国賠法第3条第2項は、費用負担者が賠償を行った場合、内部的に損害の発生について責任のある者(公権力の行使・管理の主体者)に対して求償できることを定めている。
- ウ国賠法第4条は、国家賠償法に定めのない事項については民法の規定が適用されることを定めており、損害賠償額の算定・過失相殺・消滅時効などについては民法が補充的に適用される。
- エ国賠法第5条は、他の法律において国または公共団体の損害賠償責任について別段の定めをしている場合には、その定めを排除して国賠法が一律に適用されることを定めており、個別法の特例規定は認められない。正答
- オ国賠法第6条は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り国賠法が適用されることを定めており、相互保証主義を採用している。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
エが誤りです。国賠法第5条は「国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」と規定しており、個別法の特例規定が国賠法に優先して適用されることを認めています。エの「個別法の特例規定は認められない」「国賠法が一律に適用される」という記述は5条の内容と正反対です。5条は国賠法が一般法・補充的立場であり、個別法の特別規定が優先されることを明確にしています。アは3条1項(費用負担者への責任追及可)として正しく、イは3条2項(費用負担者の求償)として正しく、ウは4条(民法補充適用)として正しく、オは6条(相互保証主義)として正しい記述です。
国賠法3〜6条の各条文の内容を整理します。3条1項(費用負担者の責任): 例として、国が公務員を地方公共団体に派遣・委任し、その公務員の行為で損害が生じた場合、被害者は「派遣元(国)」と「費用を負担する地方公共団体」のいずれにも賠償を請求できます(ア正しい)。3条2項(費用負担者の求償): 費用負担者が賠償した場合、当該公権力の行使等の主体(公務員の任命権者・管理責任者)に対して求償できます(イ正しい)。4条(民法補充): 国賠法に規定のない事項——損害賠償額の算定方式・過失相殺(民法722条2項)・消滅時効(民法724条)等——には民法が適用されます(ウ正しい)。5条(他法律の特例優先): 「民法以外の他の法律に別段の定めがあるときはその定めによる」として、個別法の特例規定(例:郵便法の損害賠償制限規定等)が国賠法に優先することを認めています。エは「個別法を排除して国賠法が一律に適用」としており、5条の内容と真逆です(エ誤り)。6条(相互保証主義): 外国人に対する国賠法の適用は「相互の保証があるときに限る」として、条約または外国の国内法による相互保証を要件とします(オ正しい)。
【理論的背景】
国賠法3〜6条はいずれも補充的・調整的規定です。3条は費用負担者(財政的責任者)と公権力行使主体(現実の行為者の任命・管理責任者)が分離するケースへの対応規定であり、被害者保護(複数の請求先を認める)と内部求償(責任の適切な帰属)を両立させています。4条・5条は国賠法の他法律との関係を定めており、民法が補充的に適用され(4条)、他の特別法が優先する(5条)という二層構造を形成しています。6条の相互保証主義は、外国人の国賠法上の保護を「互恵原則」に基づいて認める規定であり、国際法上の平等原則との調整を図っています。
【実務・条文構造】
5条の「別段の定め」の具体例として郵便法が重要です。郵便法が国賠法の適用を排除していた条項について、最大判平14.9.11は、書留郵便物の損害賠償制限規定のうち一部を違憲・無効と判断しました。これにより郵便法の規定が国賠法を「排除」する範囲が縮小しています(5条が「個別法が国賠法に優先する」と定めていても、その個別法の規定自体が違憲となりうる)。これは5条・個別法・国賠法の三者関係における重要な発展判例です。3条の費用負担者の典型例は、法定受託事務(国の事務を地方公共団体が執行する場合)における国(費用負担者)と地方公共団体(公権力の行使者)の関係です。この場合、被害者は国・地方公共団体のいずれにも請求でき(3条1項)、賠償した費用負担者(国)は内部求償できます(3条2項)。
【試験での位置づけ】
3〜6条の論点は「各条の内容を正確に把握する」というシンプルな問われ方が多いです。5条は「他の法律が国賠法に優先する(=国賠法は一般法)」という理解が核心であり、エのような「国賠法が一律に適用され個別法を排除する」という逆の記述が典型的な誤り選択肢です。6条の相互保証主義は「外国人は国賠法の対象外」という絶対的否定(誤り)と混同しやすい論点です。
【各選択肢の発展補足】
- ア(正): 3条1項の正確な説明。被害者が費用負担者と行為主体の双方を選択的に訴えられる点が被害者保護に資する設計です。
- イ(正): 3条2項の正確な説明。費用負担者の内部求償を定める規定です。求償先は「損害の発生に責任のある」公権力行使・管理の主体となります。
- ウ(正): 4条の正確な説明。民法の不法行為規定(消滅時効・過失相殺等)が補充的に適用されることを定めています。特に国賠の消滅時効には民法724条(知った時から3年・行為の時から20年)が適用されます(※現行法:改正民法では損害及び加害者を知った時から5年・行為の時から20年)。
- エ(誤・正答): 5条は「他の法律の別段の定めが優先する」規定。「国賠法が一律に適用され個別法を排除する」というエの記述は正反対です。
- オ(正): 6条の相互保証主義。外国人が被害者の場合、当該外国が日本人に対して同様の損害賠償制度を認めているときに限り国賠法が適用されます。相互保証のない外国人の被害者には国賠法が適用されません(この点では不平等扱い)。
【根拠条文】
国家賠償法 第3条(費用負担者の責任・求償)、国家賠償法 第4条(民法の適用)、国家賠償法 第5条(他の法律との関係)、国家賠償法 第6条(相互保証主義)
【参照判例】
最大判 平成14年9月11日(郵便法の損害賠償制限規定の一部違憲・5条との関係)
【補足】
5条の「他の法律が国賠法に優先する(=国賠法は一般法・補充的)」という構造が核心。「国賠法が一律に適用されて個別法を排除する」という逆の記述は必ず誤り選択肢になる。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第3条・第4条・第5条・第6条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。