行政法93専決処分・長の専決権

行政書士 行政法 問93:専決処分・長の専決権

地方自治法第179条・第180条に定める専決処分に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 地方自治法第179条に基づく長の専決処分は、議会が成立しない場合や特に緊急を要する事項について、長が議会に代わって議決または決定を行う制度であり、議会の事前承認なく行うことができる。
  • 長が第179条に基づいて行った専決処分については、次の議会において議会に報告し、議会の承認を求めなければならない。
  • 議会が否決した事項について、長は直ちに179条に基づく専決処分を行うことができる。正答
  • 地方自治法第180条に基づく専決処分は、議会が特に指定した軽微な事項について、議会の議決に代えて長が単独で決定できる制度であり、事前の議会の授権(委任)を必要とする。
  • 長が179条の専決処分を行い、次の議会で承認を求めたが議会が不承認とした場合でも、不承認の議決によってその専決処分の効力が遡及的に失われるわけではない。
正答:議会が否決した事項について、長は直ちに179条に基づく専決処分を行うことができる。

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ウが誤りです。地方自治法179条の専決処分は、議会が成立しない場合・議会を招集する暇がない場合・議会が議決すべき事件を議決しない場合等に限って認められる例外的権限です。議会が否決した事項について直ちに専決処分できるわけではありません。否決された事項は「議会が議決をしたこと」になるため、「議会が議決すべき事件を議決しない」という専決処分の発動要件を充たしません。否決された議案を再び専決処分で実現するために使うことは、議会の意思を無視する脱法的運用として認められません。アの「議会が成立しない場合や緊急を要する場合に事前承認なく行える」は179条の正確な説明として正しく、イの「次の議会で報告・承認を求める」も179条2項の正確な記述です。エの180条(軽微事項への委任専決)・オの「不承認でも効力喪失せず」も正しい記述です。

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専決処分の2類型を整理します。179条専決処分(緊急・成立不能時):

発動要件(いずれかに該当する場合):

①議会が成立しないとき(定足数不足等)

②議会を招集する暇がないと認めるとき(緊急の場合)

③議会が議決すべき事件を議決しないとき

ウは「議会が否決した事項について」としていますが、「否決」は「議会が議決した」結果ですから「議会が議決しない」場合の専決処分の要件を充たしません(ウが誤りの根拠)。

手続き: 事前に議会の承認は不要(長単独で専決)→次の議会に報告・承認を求める(地自法179条3項・イ正しい)。

不承認の効力(オ正しい): 議会が承認しなくても、専決処分の効力は遡及的に失われません。ただし不承認があった場合、長は必要な措置を講じなければなりません(地自法179条4項)。

180条専決処分(軽微事項の委任専決):

議会があらかじめ「軽易な事項で議会の議決に代えて長が専決できる事項」を指定します(事前の委任が必要・エ正しい)。これは議会の授権に基づく専決であり、179条の緊急専決とは性質が異なります。180条専決の場合も、長は議会に報告しなければなりません(180条2項)。

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【理論的背景】

専決処分制度は、地方行政の継続性・機動性を確保するための例外的制度です。民主主義の原則から、地方公共団体の重要事項は議会の議決によって決定されるべきですが、議会が機能しない緊急事態や軽微な事項の迅速な処理のために、例外的に長が単独で決定できる手続きが設けられています。179条(緊急専決)は議会の機能不全への対応であり、180条(委任専決)は議会の自発的な権限委任による効率化です。両者は根本的に性質が異なります(179条は例外的・緊急的、180条は事前授権に基づく恒常的な委任)。ウが誤りとなる理由は、179条の専決処分が「議会の代替手段」として認められる例外的制度であるのに、「否決された事項を再処理する手段」として利用することは、議会の決定(否決)を無効化することになり制度趣旨に反するからです。

【実務・条文構造】

179条専決処分の発動が問題となる実務的場面として、地方議会の混乱(ボイコット・定足数割れ等)が頻繁に発生する自治体での運用があります。議会が意図的に欠席して定足数不足を作り出し成立させないような場合、長が専決処分で予算・条例等を処理するケースが実際に問題となりました(一部自治体での事例)。最高裁は、専決処分を行う際に「議会を招集する暇がない」という要件を厳格に解釈しており、長が適法に議会を招集できる状況にあるにもかかわらず専決処分を行った場合は違法となるとしています。不承認の効果(オ正しい)について、地自法179条4項は「長は当該措置について議会に報告し、かつ必要と認める措置を講じなければならない」と定めており、不承認の場合の長の措置義務(修正・是正等)を求めていますが、専決処分そのものの効力喪失を認めていません(法的安定性の要請)。

【試験での位置づけ】

「179条と180条の違い(緊急専決vs委任専決)」「否決された事項への179条専決はNG(ウの誤り)」「不承認でも効力は喪失しない(オ正しい)」が行政書士試験の頻出論点です。専決処分は長と議会の関係の中で最も実務的・法律的に複雑な規定の一つであり、記述式でも出題されることがあります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(正): 179条専決処分の発動要件(議会不成立・招集の暇なし・議決しない)と事前承認不要という特徴を正確に記述しています。
  • イ(正): 次の議会での報告・承認を求める手続き(179条3項)を正確に説明しています。承認を求めることが義務であり、報告だけでは不十分です。
  • ウ(誤・正答): 「議会が否決した」事項は「議会が議決をした」ことであり、「議会が議決すべき事件を議決しない」という専決処分の要件を充たしません。否決された議案に対して179条専決処分を使うことは脱法的運用として許されません。
  • エ(正): 180条専決処分は議会の事前授権(委任)が必要。これが179条との根本的な違いです。180条専決は議会が自ら授権した事項に限定されるため、議会の監督下にある適法な委任といえます。
  • オ(正): 179条の不承認が専決処分の効力に遡及的影響を与えないことを正確に説明しています。法的安定性の観点から、既に生じた法律効果は不承認があっても遡及的に消滅しません(ただし長は必要な措置義務を負う)。

【根拠条文】

地方自治法 第179条(長の専決処分・緊急専決)、第179条第3項(次の議会への報告・承認要求)、第179条第4項(不承認の場合の長の措置義務)、第180条(軽易な事項の委任専決)

【補足】

「否決された事項への179条専決はNG(否決=議決があったこと)」が核心的誤り選択肢。179条(緊急・報告承認必要・不承認でも効力喪失せず)と180条(委任・事前授権必要)の2類型を明確に区別すること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第179条(議会の議決すべき事件の専決処分)、第180条(軽易な事項の専決処分) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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